2014年5月20日火曜日

マツダ・アテンザ 「スカイラインとVIPカーの隙間」

  自動車雑誌を開くと、最近では小さなモデルばかりが多いことに気がつきます。読んでいる世代の多くが、暇な引退世代だったりするようで、ライターの皆様の文章もまさに高齢者ユーザーをターゲットにしたものが多い気がします。BMW1シリーズ、メルセデスAクラス、VWゴルフ、アルファロメオジュリエッタといずれも、「日本車と同じように手軽に乗れます!」みたいなことが強調されている気がします。「ターボエンジンは低速トルクがあって街乗りでも乗り易い」などと言われていますが、そんなことを強調されても全く欲しいとは思わないのですが・・・。

  日本市場全体が高齢者中心だから仕方のないことですが、もっと乗っていて気分がいい「優雅な」クルーズカーが欲しいなと思っているので、Cセグ以下の「スモール」や「ミニ」の記事は飛ばして読んでしまいます。そうすると「Car and Driver(日本版)」などは、ほとんどの頁を飛ばしたあげく、「月間販売台数」と「オーナーズクラブ紹介」を過ぎ「定点観測」に辿り着きます。この頁は東京の青山で通るクルマを観測するというなかなか面白い企画なのですが、そこに掲載されるアルファ166とかを見て、「いいなあ〜」と思ってしまいますね。

  仕事の帰り道に日産の新型スカイラインを見かけました。前々から思っていたのですが、このクルマはどうも「貧相」でダメですね。事前の期待が大きすぎたのもあるのですが、どうも高級サルーンとしてグッとくるものが無いのです。最も気に入らないのが側面窓がむやみやたらと広いことです。やはり高級車たるものはキャデラックCTSのように高くて特徴があるショルダーラインこそが命です。レクサスISも先代からデザインが飛躍的に進化しましたが、最も高級車然な雰囲気を与えているのが、少々過剰気味とも言えるショルダーラインです。

  スカイラインは車幅の割に小さく見えるのは「なで肩」なショルダーラインによるところが大きい気がします。車高を低く見せる4ドアクーペ風なアプローチとも言えますが、結果としてなんだかシルビアを少し大きくしたイメージに収束してしまい、高級感が損なわれています。デビュー時には随分と話題になったメルセデスCLSやCLAもまた「なで肩」デザインなので、個性的なスタイリングではありますが、どうも重みがなくやはりやや貧相に見えます。

  ただし「なで肩」は悪いことばかりではありません。かつてマークⅡの兄弟車として発売されていた、トヨタ・ヴェロッサというセダンも全体的に軽さを帯びた「なで肩」デザインだった為に、当時のマークⅡ需要を担っていた「VIPカー」愛好家から嫌われ、販売不振のまますぐにモデル廃止に追い込まれました。その希少なシルエットは皮肉にも、現在では同時期のマークⅡとは違って古さを感じさせない良さがあったりします。それ以上に重要なのは「なで肩」はVIPカー愛好家から敬遠されるという点です。

  VIPカーとは日産のシーマ、グロリア、セドリック、トヨタのセルシオ、マジェスタ、クラウン、マークⅡなどの中上級セダンをベースにした改造車を指します。暴走族やローリング族の御用達車種として親しまれた結果、やや反社会的なイメージが強くなり、日産もトヨタも企業イメージを守るために、これらのモデルを廃止したり、大幅に値上げするなどしてシーンの幕引きを図っていますが、ピーク時はクラウンもマークⅡも月販2万台を超えていたこともあり、まだまだタマ数が多いようで街中でもよく見かけます。最近ではいよいよ発売から8年が経過したレクサスLSなどこれに加わっているようです。

  昔からスカイラインはこれらVIPカーとは一線を画してきましたが、新型スカイラインもまた高級化が進んだと言われつつも、伝統のポリシーをある一面ではしっかりと守っているのだなと気づかされます。「VIPカーと思われたくない!」そういう意味では新型スカイラインを敢えて選ぶ意味はあると思います。ボディがまだまだ小振りなレクサスISに関しても同じことが言えますが、どちらにせよ「ラグジュアリーでプライベート感がある」クルーズカーのイメージが足りないですね。どうも2台とも冒頭で述べたような「高齢者シフト」をメーカーが意図しているように感じます。

  「VIPカー」か?「高齢者向け」か?という絶望的な選択をユーザーに強いている限りは本格的なセダン人気はやって来ないでしょう。そんな状況の中から現れ、話題をさらっていったのが、マツダ・アテンザだと言えます。先代のアテンザはスカイラインのようなやや小振りでスポーティさを売りにした、セダン/ワゴン/ハッチバックの3タイプあるDセグ車でしたが、現行のアテンザは「VIPカー」に仲間入りしない程度に立派で、「スカイライン」のような貧相さを排除した高級感溢れるデザインを取り入れたセダンが大きくイメージを牽引しています。そして一応、派生車種といった立場でホイールベースまで違うワゴンも設定されています。

  マツダのデザイナーがセダンの魅力を引き出すために、「非VIPカー」で「非スカイライン」という考えを持っていたかどうかはわかりません。しかし実際に国産・輸入を問わず現行モデルの3BOXカーを選ぶとしたときに、これまでは無意識にアウディA6やBMW5に引っ張られてしまっていた人々(実際にこのクラスの輸入車シェアはかなり高い)にとって、国産にも選択肢が出来たと感じられる状況へと変わってきたように思います。このアテンザが切り開いた道を辿って、今後はレガシィ、レジェンド、フーガがさらに趣向を凝らして登場してくれば、「セダンが面白い」時代がやってくる予感がします。

  
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