2015年3月21日土曜日

スカイラインクーペ 「苦悩?新型モデルに期待」


  ジュネーブモーターショーで、年内に発売が予定されているスカイラインクーペのプロとタイプが公開になりました。このクルマの現在位置は日本生産&日本販売のモデルとしてはかなりの「変わり種」と言えるもので、日産の懐の深さを端的に示す1台となっています。それゆえに今後のトレンドを業界がどのように考えているかを占う意味で重要な意味があります。海外の自動車ファン、特に熱烈なハイエンドスポーツモデルのユーザーからも絶賛されている日産の技術力とその崇高なまでのプライドには大いに期待ができますが、それと同時に今回のモデルチェンジではいよいよ大きな「経営判断」が下されるのは避けられない状況ではあります。そして何よりも因縁のレクサスがいよいよ2ドアクーペを復活させたことでこのクルマの市場が大きな影響を受けるのは必至です。

  日産にとっておそらく頭が痛いのは、この手のラグジュアリーカーのユーザー層は病的なまでの「ブランド志向」が顕著に顕われていることです。クルマの性能よりもまずは「ブランド力」が絶対条件でクルマを選ぶ人が圧倒的に多いです(反論もあるでしょうが)。マーチやキューブと同じ「日産」マークに我慢が出来ないというユーザーが間違っているのではなく、「ラグジュアリーカー」の本質を突き詰めると販売チャンネルを分けることに異論を差し挟むのは不粋です。そして安易な「ブランド志向」は日本に限った話ではなく、むしろ欧州や中国市場のほうが顕著といえます。評論家に世界の頂点に立ってトヨタやGを制する勢いだと絶賛されるVWでも、まさかのゴルフ派生の2ドア(3ドア)クーペのシロッコやイオスが不振でモデル廃止へと追い込まれています。VWは途上国でのノックダウン生産で台数を稼ぐメーカーであり、それらの国々で十分に根を張った現在では欧州や北米といった先進国市場を逆に軽視する方針へと変わっています。VWのクルマをみてゾクゾクするような所有欲に駆られることなんてふつうは無いですし、ラグジュアリー路線の派生モデルなど経営上では邪魔でしかなく、今後は傘下のアウディに役割を集約していくようです。

  日産の身内であるルノーや、日本では高級車と思っている人すらいるプジョーやシトロエンも2ドア(3ドア)の販売にはかなり慎重になってきました。現在クルマ雑誌で猛烈にプッシュされているプジョー308も、カローラのような素っ気なさという本来の姿のまま日本にも導入されました。まあクルマそのものを真っ当に評価すると200万円台前半まで価格を下げられればガソリン2Lのアクセラと同じくらいになりますから、それなりに納得できますが・・・。またプレミアムブランドへの脱皮を目指しているマツダも、やはり2ドアを作って売らなければ、「ブランドの確立」とまでは認められませんし、ブームが去ればまた薄利多売の競争サイクルへと逆戻りし苦境に追い込まれるはずです。そしてトヨタの下請けとしてメキシコで頑張るつもりでしょうか?

  マツダ車が目指す欧州市場では一般的なブランド(非プレミアム)では2ドア車の販売は難しくなってきたのは間違いないです。北米では従来からホンダがシビックやアコードの2ドアを販売するなどのうらやましい環境が続いていますが、これもまた中国から富裕層が多く移住するなどで消費の嗜好も年々変わりつつあるようです。去年のマセラティの躍進などは消費税の駆け込み需要やアベノミクスで盛り上がった日本を上回る割合で増加しています。アメリカに移住した中国人がギブリを喜んで買っているというデータこそありませんが、マセラティと聞くとやや盲目的になってしまうのが東アジア人の特徴なのは我々も薄々気がついてしまうところです。

  日本では「なんでインフィニティなんだ!」という日産ファンからの反発も大きいようですが、日本でもラグジュアリーなクルマのユーザーは明らかに移住してきた中国人かそれに近い価値観を持った日本人なのはトヨタ・日産の一致した判断のようです。私も富裕層向けサービスに従事していますが、中国人のお客様の割合は想像以上に高くなってきています。近年の日産は外国人のトップによる長期政権が続いていて、ほかの日本メーカーが舌を巻くような合理化政策を強烈に押し進めています。幾多のモデルが現行のノートやエクストレイルなど集約されていて、これらに対する批判的な意見もあるようですが、日本の道路環境を考えるとターボではなくスーパーチャージャーだろうというこだわりや、SUVとしての妥協ない基本性能の高さは、クルマ好きなら「世界最高のメーカー」と手放しで誉めたいはずです。残念ながら多くの一般ユーザーはそんなことは知らない(どうでもいい)ようですし、輸入車が大好きな評論家の皆様は意図的にこの事実を「黙殺」しています。

  自身がクルマ好きであることをやたらと吹聴するトヨタの社長の影響もあってか、スカイラインクーペのライバルとなるべく登場したレクサスRCは、ラグジュアリーというよりもスポーティさを強調した仕上がりになりました。少なくともソアラではなくスープラを作ろうとした意図は十分に感じられます。その一方で従来のスポーティで武骨(貧相)でラグジュアリーには程遠いイメージの歴代「BMW3クーペ」の殻を突き破って登場したBMW4シリーズは、MTモデルの廃止などと合わせてエクステリアで主張するクルマへと劇的な変化を遂げました。そんな方向性をかなり評価する向きもあるようで、近頃では都内のあちこちで(中央区から八王子市まで!)よく見かけるようになりました。ややギラついた塗装が気になるレクサスRCに対して、4シリーズは定番&安定のBMWホワイトがとても様になっていて新たにBMWジャパンを救う救世主になりそうな予感です(400万円で3気筒モデル出す?)。RCも4シリーズもそれぞれに好みがあるでしょうが、私が思うに2台が並んだときに引き立て役に回るのはレクサスの方かもしれません。

  RCも4シリーズも価格相応に非日常感は味わえるという意味で、なかなか無視できない魅力があるのではないか?と見直しつつあります(上から目線で恐縮ですが)。そこに投入されるスカクーがどういう方向性を示すかには大いに注目です。先代モデルではこのカテゴリーの主導権を握っていたBMWの直6ターボを軽く捻るくらいに清々しいまでの3.7Lにまで拡大したV6自然吸気で、あっさりとBMWを窮地に追い込みました(BMWの自滅説もありますが)。フェアレディZと共用されるこのユニットは、ポルシェの独壇場となっていた「6気筒自然吸気&MT」という聖域に切り込むためのもので、これぞまさに日産が得意にしてきたオーバースペック(やりすぎ)モデルです。そして間違いなく日産車の魅力はここにあるのですが、そんなモデルをやや勢いで買ってしまったミーハー(軽はずみ)なユーザーにとっては、このユニットの北米基準のオイルイーターっぷりが手に余ることも多いようです。3.7Lのスカイラインを持っている知り合いは「ぜんぜん乗ってないよ〜!」と口癖のように言っています。

  スカイラインクーペと平行して開発が進んでいるという35フェアレディZの動向も気になりますが、現行まで共通のユニットを使ってきた両車ですが、経営効率を無視してでも今回は別々のユニットを用意するのではないかという気がします。スカクーは4シリーズとRCを相手に、長距離を楽しめる王道GTカーとして燃費に配慮したハイブリッドの投入も当然にあるでしょうし、居住性に劣るZはポルシェ(ケイマン)を追従する従来の路線(V6自然吸気&MT設定)を継承すると思われます。さて公開された新型スカクー(インフィニティQ60)ですが、リアデザインになにやらデジャブ感が・・・これはメル◯デスSク◯スクーペにそっくり! マーケティングの基本は「分り易さ」というならばまあ納得できますね、こりゃあ誰が見ても高級車というお尻になってます。セダンより高いお金を払ってわざわざクーペを買うわけですから、一目見てマ◯クXにそっくりな最近の日本車セダンに流行しているデザインとは一線を画す存在でなければいけません。

  このデザインから無理矢理にパワーユニットを選ぶとしたら、やはり高出力&高トルクを発生させる現行エンジン(3.7L自然吸気)かそれ以上のスペックが欲しいです。インフィニティFX用に作られているガソリンのV8か、ディーゼルの3L・V6ターボを載せてRC-FやアルピナD4に張り合ったバリエーション展開しても良さそうです。しかし現実には211psのメルセデス2Lターボの冴えないエンジンが主力になりそうな予感です。コンバーチブルで2Lターボという極めてトヨタ的なスペックの「セレブなオバさん専用モデル」が登場しそうです。たとえどんな設計であれ、ある種のユーザーに恩恵があり、そのモデルが存続するに足るだけの台数がグローバルで稼ぎ出せるのであれば結構なことですが、「オバさん専用モデル」(2Lターボ)にいい年したオッサンがドヤ顔で乗ってたりするのは勘弁してほしいですね・・・。


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