いわゆる「ホットハッチ」と呼ばれるクルマには、時代の「息吹」と言えるような興味深いトレンドなどあるのでしょうか!? ちょっと乱暴な言い方ですけども、ユーザーが「これ!」を望んでいるだろうからという前向きな戦略を顧みる余裕などないから「ホットハッチ」なのでは!? 「理念」なんてすっごく抽象的なものですが、開発者の熱意が込められた「野心的な1台」と、メーカー都合の結果として生まれた「予定調和」では、天と地ほどの差があると思いますね。グレード名で「GTカー」と名乗るのであればなおさらのことです。
は〜???と思われるかもしれないですが、野心的な1台だから素晴らしい!!!だとか予定調和だからダメという単純な話ではないです。例えば「メルセデスA45AMG」と「プジョー308GTライン」では同じCセグのホットハッチですけども、想定しているユーザーも全然違うでしょうし、一方はメルセデスがこのクラスでも頂点に立つ!という「野心的」なモデルで、もう片方は平凡な大衆モデル「308」の弱点をカバーする程度の「予定調和」モデルでして、価格差は2倍以上!!!・・・ホットハッチなのに単純比較がナンセンスなほどに「振り幅」がデカい。
価格から想定するに「A45AMG」(713万円〜)はメルセデスの野心を象徴した1台ですし、その狙い通り実際に日本でも反響が大きかったです。「308GTライン」(314万円〜)は単純にマーケティング上の判断で設定されているベース車よりも35万円高の「セットオプション車」という予定調和です。・・・何が言いたいかというと、「スペシャルティカー」という基準ならばAMG謹製エンジンを積んだ「A45AMG」に納得させられますけども、「ホットハッチ」という観点で考えると、314万円で納得の走りを追求したプジョー側に軍配が挙がるのでは?ってことです。
「ホットハッチ」というジャンルを作ったのは「VWゴルフGTI」というおなじみの伝統モデルです。1991年に発売された3代目ゴルフはとにかくゴルフの黒歴史とか言われちゃうぐらいに評判悪いモデルでしたけど、今になってみれば2000年以降の自動車産業の未来を確実に暗示したクルマでした。当時の日本車はまだまだバブル真っ盛りで、世界一といっていいくらいに豪華なクルマ作りをしてましたが、その頃VWは世界に先駆けて「コストを抑えるクルマ作り」を始めました。・・・自動車評論家が語る「日本車=コストダウン」という通説とは全然違いますね。ネット普及のおかげで今では調べれば誰でもわかることですけども。
そんな3代目ゴルフの性能面での弱点を押し隠すように企画されたのが、2.8LのV6自然吸気エンジンを積んだ「GTI」でした。これまでのGTIは1.6L直4でしたから大幅なパワーアップを果たしています。アウトバーンを250km/hで巡航できる小型車!!!確かに「コストダウン」とは誰も思いません・・・・上手い!!!そもそもコストダウンってとってもネガティブな響きがありますけど、大衆モデルを性能が落ちないように作れるならば、どんどんコストダウンして、ユーザーにもメーカーにも恩恵があるクルマにしていけばいいじゃん!!!とも思いますけどね。この3代目ゴルフの場合はある程度「恣意的」に粉飾しようとしたわけですから・・・エンジン以外の性能面でやや厳しいところがあったのでしょうね。
4代目ゴルフになると2.8Lから3.2Lにエンジンがさらに拡大され、「R32」と呼ばれます(笑)。しかし同時期に発売された欧州フォードのフォーカスによってゴルフはクラストップの地位から引き摺り降ろされます。フォード(フォーカス)・ボルボ(C30)・マツダ(アクセラ)が三位一体になって繰り出した新しい「ホットハッチ」の波がVW、オペル、PSA、ルノーといったドイツやフランスの名門をまとめて飲み込んだ結果・・・、プライドも何も投げ捨ててVWがフォードの設計をパクリます。5代目ゴルフで息を吹き返したVWの設計がオペル、PSA、ルノーにも広がっていきます。
フォード陣営の中核を担ったのがマツダでしたが、そもそもファミリア〜アクセラに強い影響を与えたのは常にマツダの先を歩みホンダのシビック。つまりホンダを源流とした「ホットハッチ」スタイルが欧州全域へと流れ込んだことになります。ただしホンダがシビックタイプRに用意した「Vテック」搭載エンジンは代を追うごとに他のメーカーの追従が難しい究極エンジンになりました。2L自然吸気で225psを出すホンダに対抗するために選ばれた現実的な路線がターボによるスープアップでした。
いまではホンダもターボに転身し、「横置きFFの2Lターボ」に265~380psと出力のバラツキはあるものの、ほぼ同じような設計の「ホットハッチ」が並んでます。まるでニュルで競争しているVW、ホンダ、ルノーが話題作りのために口裏合わせして「2Lターボで行きましょう!」と決めているのかな!?そんな「談合」すら匂わせる今どきのメーカーからは、ちょっと距離を置いて登場したのがPSAのホットハッチです。いまどき「ガソリンの2Lターボが無い」というメーカーも珍しいですが、ターボチャージャーの恩恵で様々なバージョンが生まれている1.6Lの「EP6」というBMWと共同で開発されて話題になったエンジンをいまも熟成させています(BMWではすでに廃止か)。
この「EP6」にはTHP150、THP165、THP200、THP208・・・と最高出力に応じた数字が付けられたバージョン番号があるわけですが、同じ方式に従うと新たに追加された308GTIにはTHP250とTHP270の2種類が使われるようです。ちなみに270ps版ですがモデル末期を迎えている旧型シャシー(EMP2ではない)の「プジョーRCZ-R」に搭載されたバージョンをそのまま横流ししたものだと思われます。プジョーが「野心的」に発売した(アウディTTのパクリですけど)ものの、横置きFFのスペシャルティカーに500万円以上の値札を付けてもさっぱり売れない!とやっと悟ったプジョーが「ホットハッチ」らしいパッケージへ原点回帰しています。
270psのRCZ-Rは550万円でしたが、270psの308GTIならば436万円。250psバージョンならば385万円まで抑えられます。220psのゴルフGTI(389万円)でもMTが選べるようになりましたが、308GTIは「左MT」のみ!!!考えようによっては、シフト操作とウインカー操作が左右の手に分散できる「左MT」にもそれなりのメリットはあります。さてこのプジョー308GTiを「野心的」と見るか「予定調和」と見るか・・・。「ホットハッチ」を巡る市場の判断はとても興味深いです。
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