2016年8月29日月曜日

アストンマーティンDB11 「バイバイ!FとP・・・」

  人類の歴史を見ていると、それの連続であることが証明されますが、かつて王侯貴族が独占的に使用していたものが、年月の経過とともに一般庶民にも利用可能なものになります。かつては貴族だけが食べた食事。かつては貴族だけが使った馬車(自動車)。かつては貴族だけが愉しんだ海外旅行。つまり時代が流れていけば、フェラーリやアストンマーティンもまた一般庶民が愉しめるブランドになっていくのでは?と思うのです・・・。裏を返せば、『貴族趣味』に愚直に憧れ続ける人々だけが、資本主義の荒波の中を突き進んでいけるのかもしれません(詐欺師の常套句!?)。

  ポルシェ、フェラーリに続いてこのブランドにもいよいよ「ターボ化」の波が訪れました。これまでのアストンマーティンのフラッグシップエンジンといえば6LのV12自然吸気でしたが、ちょっとだけダウンサイジングして5.2LのV12ツインターボになったそうです。最高出力もいよいよ600psを越えて、一線級のスーパースポーツあるいはラグジュアリーGTの世界基準をしっかりとキャッチアップしています。

  現代ではスーパーカーの定義に当てはまるクルマは、ブガティ(仏)、パガーニ(伊)、ケーニッグセグ(典)といった幾つかのブランドに限定されていて、フェラーリやマクラーレンなどは、せいぜいポルシェ911ターボや日産GT-Rのような安普請なスポーツカー出身のグループとひとまとまりに『スーパー・スポーツ』と俗称されています。スーパーカーは1台2億円前後なのに対して、スーパースポーツは1500〜4000万円の範囲に収まります。

  さらに1500~4000万円くらいで売られる600psクラスのクルマの内で、サーキット向けのものを『スーパー・スポーツ』とし、日常的に使えるツアラーを『ラグジュアリーGT』と区別し、レーシング・セレブには2台所有してもらおうというマーケットが一般的になっているようです。
ポルシェの代表的なモデルだと前者が「ターボ」「GT3」で後者が「タルガ」です。
フェラーリだと前者が「488GTB」「F12ベルリネッタ」で後者が「GTC4ルッソ」「カリフォルニアT」。
日産だと前者が「トラック」と「NISMO」で後者が「プレミアム」「ブラック」。
マクラーレンだと前者が「675LT」で後者が「570GT」。

  そしてアストンマーティンは・・・前者が「ヴァンテージS」「バルカン(未発売)」で後者が「DB9」「ヴァンキッシュ」です。前者と後者の分かれ目がいまいちハッキリしないのがこのブランドの特徴かもしれません。先ほど列挙した4ブランドは初心者にも解り易くグレードを作り分けているのに・・・なぜ? アストンマーティンが分りにくい理由の一つに「サーキットモデルの方が安い」という特徴があります。やはり英国ブランドはロールスもベントレーもジャガーもそうですが、サーキットカーよりもロードカーに重きを置いているようです。

  さらにアストンマーティンは、スーパースポーツでは常識となっているDCTを採用しない方針に決めたそうです。よってサーキット用途のヴァンテージの上級モデルV12にも順次MTモデルが追加されますし、鋭意開発中と伝えられるバルカンにもMTを組み込む模様です。そして次世代ロードカーを担う新鋭の「DB11」には8AT(ZF製)を配しています。そして細かいことですが、アストンマーティンはサーキットモデルのコンバーティブルは「ロードスター」と呼称し、ロードモデルでは「ヴォランテ」と命名して区別しています。

  現在のアストンマーティンはフォード傘下から放り出されたあと、中東のオイルマネーを資本主としていますが、近々どこかの業界ビッグネームが買収に名乗りを上げるのではないかと言われています。その最有力がルノー日産グループだそうで、カルロス=ゴーンの後継者と言われていた元日産のアンディ=パーマー氏がアストンマーティンにCEOとして迎えられていて現職です。なんでアンディ=パーマーなのか?就任後にほどなく伝えられたのは、次世代のV8はAMGから供給されるというニュース・・・。2007年にGT-Rを発売した日産の中心にいたアンディ=パーマーはゴーンの決断の背中を押した人物だとされています。

  2002年のスカイラインGT-R廃止で一気に低下した日産ブランドの求心力を高めるだけでなく、VW成長の尖兵となっていたポルシェを捉えることができる技術力のプールを使って、911ターボ撃墜作戦を展開。その後にVWグループに戦々恐々のダイムラー(メルセデス)との大規模提携が実現。AMGによるポルシェへの挑発的なエンジン開発が始まり・・・。2010年には英国でマクラーレンをブランド展開し、当初から日産系列サプライヤーの全面協力によってターボモデルばかりを展開するスーパースポーツブランドへと成長します。今では完全にポルシェやフェラーリを越えたスーパースポーツの王道ブランドとして認知されるようになりました。

  「ポルシェを越えるクルマを日産の技術で世界へ」・・・これがアンディ=パーマーが描いた青写真ならば、その続きにロードカーの頂点を目指すべく欧州の名門アストンマーティンを日産傘下へ!!!ゴーンに提言し続けたと言われています。結果的に日産は三菱は買ったけどアストンマーティンは買ってません。ただしアストンマーティンの中枢にはアンディ=パーマーのコネクションによる日産やAMG関連の技術が次々と入り込んでいるようです。そんなパーマー体制が送り出す新しいロードカーが「DB11」・・・今度こそは『デザインWCOTY』は確実か?(ヴァンキッシュは2013年のデザインWCOTYで、ジャガーFタイプとマツダアテンザとファイナル3まで残ったが受賞ならず・・・旧フォード勢によるファイナル独占はスゴい!アストンの前任デザイナー・イアン=カラムのFタイプに獲られたのは屈辱!?)

  さてDB11ですが、前作のヴァンキッシュも相当にスゴかったですけども、これま「洗練」としか形容しえないほどの継ぎ目を感じさせない滑らかなエクステリアになっています。メカの中身は日独の技術が満載ですが、それでも英国ブランドらしい伝統に沿ったGTカーを作る!!ロードカー文化を守る!!という、単なる1車種の設計に関わるエネルギー以上の鬼気迫るものを伝えてきます(ファイスリフトしたGT-Rのユルさときたら・・・)。

  変に流行を追う事はなく、完全にオリジナルを感じる独特のフォルムでありながら、イタリアのスーパースポーツが身に纏う「ウロコ」みたいな異形のカーボンパーツもないのですが、一見大人しそうに見えてそれでいてリアのフェンダー周りの造形一発で、見るものをノックアウトするほどグラマラスで神々しい一面もあります。やっぱりこれぞ「グランドツアラー」なのかなー。名門ポルシェが991(2011年)でやっと辿り着いた『境地』をさらに越えて未来的な予感もひしひし感じます(水冷ポルシェは996の壊滅的なデザインから997で前面の整形を果たし、991で正しいGTカーのリアを手に入れた・・・ポルシェファンに悪いが空冷時代はデザイン面で見るべきものは無い)。

  488GTBが日本で走り始めても、これ見よがしに「フェラーリですよー」っていう主張を、「色」と地べたを這うような「スタイル」それから「爆音」で主張してくるだけ(だと思いますよー)。言葉が悪いですがもう「目立ってなんぼ?」の世界にどっぷり浸かってます(それがフェラーリの意義なんでしょうけど)。これって恐らくですが、たとえ経済的にかなり恵まれていたとしても、これまでランエボ(ランボじゃないよ!)とかM3とか乗ってきた生粋のGTカー好きがそのまますんなりとステップアップして入っていける世界観じゃないと思うんですよ。もし3000万円くらいのお金で好きなGTカーを買える身分になったなら、M4やGT-Rの先にあるのはこの「DB11」なんじゃないのかなー。

  BMWや日産といった少々骨っぽいけども、GTカーの世界でそれぞれにかなりの地位を築いたブランドのコンセプトを飲み込んで、その上に立ってそれらのユーザーを受け入れられる真のGTカーの頂点のブランドは、フェラーリでもポルシェでもマクラーレンでもランボルギーニでもベントレーでもなく、新生アストンマーティンなのかもしれません。そのことを世界中に大きく知らしめる契機となる1台こそがこの「DB11」になりそうな予感がします。

  フェラーリやポルシェが大手を振って進む時代は終わった!!!遡れば1990年にすでにホンダが終わらせていた!!!そこから先の生温い時代に、ダラダラとフェラーリもポルシェも生き続けましたが、1990年から今までの間にこの2つのブランドがどれほどのコトを成し遂げたのだろうか!? もはやフェラーリやポルシェではこれからの時代を切り開くことなんてできない!!!・・・アンディ=パーマーは自身も相当なカーガイだと言われていますが、彼自身の信念の中にスーパースポーツブランドの新陳代謝が必要だ!という想いがあったんでしょうね・・・。

アストンマーティンDB11の動画

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