2013年10月9日水曜日

F32・BMW4シリーズ 「3クーペから一体何が生まれる?」

  BMW4シリーズ発売に合わせて3シリーズ全グレードの値上げが行われました。これはライバルから遅れをとっていた衝突回避・被害軽減ブレーキを標準装備したためで、一律に10万円ほどなので、BMWを買うぞと意気込む人々にとってはモテベーションに影響はないでしょう。しかしF30系に至って3シリーズもいよいよ完全に牙が抜かれて、強調するポイントがほとんど無くなってしまったのですが、それでも乗り出しで軽く500万円オーバーという強気な価格設定の無謀さには一体いつまでつづくのでしょうか?

  さて新たに設定された4シリーズには直6ターボ(435i)がまだ残されていてよかったという声も聞かれます。それでもBMWは一体この中途半端な印象しかないクルマをどんなユーザーに届けたいのでしょうか? あまりにもユーザーを甘くみているのではと思う点も多々あります。クルマにあまり興味がない人に向けた「それっぽいクルマ」を作って、底辺を拡大しようというなら意図はわからなくもないのですが・・・。元々3シリーズとは矛盾に満ちた存在ではありましたが・・・。

  3シリーズのコンセプトは2代前のE46までは大きく分けてふたつありました。一つは現在のF30に受け継がれる北米市場を意図したサイズ拡大を意図したもので、もう一つは現在の1シリーズにつながるtiと呼ばれたコンパクトサイズのものです。簡単に言うと「恰好ばっかりでつまらない」ものと「かっこ悪いけど愉しい」ものの2つです。

  このF32はサイズ拡大した方のF30系のクーペなのですが、これが実に「絶妙」というか「微妙」というか解釈の分かれる立ち位置のクルマです(だから中途半端です)。個人的に好きか嫌いか?と問われたら「嫌い」と答えます。一方でこのクルマに満足する人の気持ちもなんとなく分かります。BMWというネームバリューを外して考えても、エコ主流の大人しい日本のDセグとは別路線を突き進むヤンチャなコンセプトだけでも十分に評価に値します。

  ただクルマが持つコンセプトが強過ぎて、例えば50~60歳代のオヤジが満足気に乗っていたりすると、全てが裏目に出てしまいます。かといって20~30歳代が気楽に買える価格のクルマでもないわけで、結局は「日本では」乗る人がいないクルマになってしまいます。現実問題としてドイツでもアメリカでも乗る人がどんどん少なくなっている(クルマが人を選んでしまっている)クルマがF30系だったりします。

  先ほども述べましたが、1シリーズも3シリーズも元々は同じクルマで今もBMWの「L7プラットホーム」を共通で使っていて60%以上の部品を共有しています。この2つが分かれた2004年からBMWの販売が変調し始め、2000年代後半にはドイツでの販売で後発のアウディに追い抜かれ、北米でもE90系がインフィニティG(V36スカイライン)に完敗しました。2006年にBMWの経営陣が突如交替するなど、内部のドタバタもあり2012年までに180万台という目標も未達に終わりました。

  BMWファンの中では「おさかな顔」や「直6モデルの廃止」が不振の原因と言われているようですが、やはり根本的な問題はバブル期から販売の主体を担ってきた3シリーズを安易にクラス分けしたことではないかと思います。後に「品位を失った1シリーズ」と「翼を失った3シリーズ」へと分裂したE46までの旧3シリーズにおいては、走りの面で評価されていたのは「TI」ことコンパクトでした。

  主に1.6~2.0Lの直4NAを搭載していたコンパクトは軽量かつ高剛性で限りなくスポーツカーに近い乗り味を実現し、このクルマの影響下にあるとされているのが、日産のP10プリメーラとマツダのGG系アテンザでいずれも欧州で高い評価を受けました。軽量で高剛性のボディを気持ちよく回るNAエンジンで引っ張るC/Dセグスポーツセダンというコンセプトは2000年代前半のFF車のトレンドとして定着しました。

  しかしホンダやアルファロメオが自慢の高回転型ロングストローク(この両社のエンジンは回り過ぎてバルブの物理的限界値に到達してしまったらしい)を持ち込んだ時点で、突如として自動車のトレンドがSUVなど他のボディタイプのクルマへと移ってしまい、2000年代後半には作られなくなりました。

  結果論ではありますが、C/DセグメントこそがBMW3シリーズにとって理想郷だったのだと思います。Cセグになって「お山の大将」に堕ちた1シリーズと、北米トレンドに乗ってかってD/Eセグまでサイズを上げた3シリーズのどちらも、かつての輝きは大きく失われてしまいました。そもそもが2つのコンセプトを1つの車名で演じたあやふやな存在だったのですが、ターボ化されて大衆化した1シリーズと、プレミアムでもスポーティでもない安モノの3シリーズに分かれてから欠点ばかりが目立ってしまいました。E46時代に318TI(直4NA)と330i(直6NA)を乗り比べた著名な日本人評論家がこう評していました。  〜 330iのオーナーが「オレはいいクルマ乗ってんだ」って318tiのオーナーの前で胸張ったら、そいつはただの裸の王様だよ。 〜  

  現行の1シリーズと3シリーズも未だにこの「ねじれ」の関係から脱していないのではないかと思います。そしてそれぞれのクーペ版である2シリーズと4シリーズにも同じことが言えるようです。BMWとしては4シリーズの直6ターボ2モデル(435iとM4)に従来モデルからパワーアップした設定にして、この寓話からの「脱皮」を図っているようですが、乗り出し価格が435iで約800万円と強気です。コレ買うならR35GT-Rにいくでしょ・・・というのが自然か。もしBMWが本気で硬派なスポーツメーカーならスカイラインのライバル車である3/4シリーズをベースにしてGT-Rを超えるクルマ作るのでは?根性みせろ!



↓プリメーラ・スカイライン・GT-Rの生みの親こと、水野和敏氏はBMWやベンツを決して認めていないようですね。欧州メーカーはポルシェとジャガーだけ!でもプリメーラはパクりじゃ?

 

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