2013年9月14日土曜日

マセラティ・グランツーリズモ 「中古車前提なら一番お買い得?」

  日本における高級車の意味合いがやや変化してきたようだ。高級車販売の主体であるOECD諸国の高齢化に歯止めがかからず、その先頭を走る日本では小型モデルの高級化グレード設定の要望が増えているとか。トヨタが総力を挙げてプロモーションした「86/BRZ」は300万円で買える本格設計のスポーツカーとして見事に成功を収めた。まだまだ高いという意見も外野では聞かれるが、実際に興味を持ってディーラーに訪れる客の多くは値上げしてもいいから高級グレードを切望しているようだ。トヨタもスバルもそんなニーズを見逃すはずはなく、評判が悪かった86/BRZの内装を見直した限定モデルを最近になって発売している。

  86/BRZのインパクトは日本よりも欧州/北米/豪州のスペシャリティ市場へ大きな影響を与えているようだ。メルセデスやアウディは300万円という価格を狙ったような「プレミアム・コンパクト」を相次いで投入した。欧州プレミアムコンパクトと86/BRZ、ホンダCR-Z、マツダロードスターがほぼ同じ価格で横一線で、目指すは引退世代のプライベートカー市場というわけだ。近所(東京西部)で見かけるCR-Zやロードスターはほとんどが老人(か年配の女性)が乗っている気がする。

  誰がどんなスポーツカーに乗るのももちろん自由だが、この手のお手軽なスポーツカーが流行の兆しをみせていることから、各メーカーともに手持ちの廉価設計を駆使してよりお手軽な「なんちゃってスポーツカー」の開発競争が進むかもしれない。廉価なスポーツカーは「痛車」のネタ車にされてしまうリスクも大きい。86/BRZ、CR-Z、RX-8、シビックR、インテR、WRX、エボ、アテンザスポーツといった面々はすでに痛車によって甚大な「風評被害」を受けている。もはやアニメ好きの為のクルマと見做されている。マツダのアテンザスポーツとRX-8の廃止は英断と言えるかも・・・。



  よっていざスポーツカーを買うとなると、中古車が割と豊富なポルシェ911の水冷などから探したい。996だと200万円〜程度で最近では痛ネタになりつつある。997なら500万円〜で何とも悩ましいところだ。ただポルシェという知名度のあるブランドのせいで、「ポルシェ 痛車」と検索するとたくさん出てくる・・・。よって「痛車ベース」が絶対に嫌な人はマセラティ・グランツーリズモが800万円〜が一つの理想なのかなという気がする。同年式の997が650万円〜だが、このマセラティGTはまだ現行モデルなので妥当な金額だといえる。しかも2004年デビューの997の内装は高級車とは思えないほど貧相で、2007年デビューの「黄金世代」であるマセラティGTの内装はまさに「ラグジュアリー」そのものだ。

  新車で買うとなると、現行の991は内装の質感がかなり上がっていて。一般論ですが2007年頃のFMCのモデルは特に内装のレベルが高い。スカイラインもクラウンもEクラスもこの時期のものが史上最高だと思う。マセラティ全体でも恐らくこの2007年のグランツーリズモの質感を今後超えるモデルは出てこない気がする(グレードによって若干内装に差があるが・・・)。2007年と言うとGT-Rという有力な候補がいて直近の中古車は500万円〜という価格帯だ。もちろん内装では世界最高水準に達している日産なので抜かりはない。マセラティGT、GT-Rの2台が中古車を視野に入れるなら、お買い得な「高級スポーツカー」として価格に見合った満足感を提供してくれるクルマだと思う。


  せっかくトヨタが本腰を入れて健全なスポーツカー文化を作ろうとしているが、やはりメーカーが主導するというスタンスは、この国の歪んだクルマ文化を浮き彫りにしている。もちろんメーカーがクルマと作らなければ何も起こらないのだけど、結論としては300万円のスポーツカーでは「文化」は作れないということなのかもしれない。悔しいがフェラーリやランボルギーニの現行モデルに乗ることこそが、スポーツカー趣味においては正義なんだろうな・・・。

  
  

  

2 件のコメント:

  1. コメント失礼します。
    HIROBEEさんのブログは車文化など広い視点で語られておりよく読ませていただいてます。
    ちょっと気になる点があったので質問させてください。
    今回の投稿でも語られていますが、HIROBEEさんはよく「この国の歪んだ車文化」について触れられていますが、どういった点が歪んでいるのでしょうか?
    よろしければHIROBEEさんの考える正常な車文化についての考えを聞かせていただきたいです。

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  2. パウロさんへ
    コメントありがとうございます。

    当方、学もなく稚拙な表現で混乱を生じさせてしまい大変恐縮です。

    ご指摘頂いた件ですが、この記事に関してはですね・・・

    かつて人気を博したシルビアというスポーツカーがあったのですが、
    なんでこれほど熱狂的に支持されたクルマを日産はラインナップから外すのか?と誰もが疑問です。
    その答えはトヨタが86というクルマに頑としてターボを設定しないことにあると思います。
    国交省がライトウエイト&ターボは反社会的だという理由で圧力を加えているのでしょう。
    国交省・メーカー・ユーザーの誰が悪いのかはわかりませんが、結果的に落としどころを作ることなく、若者のクルマ離れが叫ばれてるのかなという気がします。

    「クルマは悪」と考える人も多く、高速道路の建設そのものに反対の人も都市部を中心に多いです。私の住んでいる東京西部のある市では、先日全国を騒がせた道路建設の是非を巡る住民投票の開票を要求する活動が今も続いています。詳しいことはわかりませんが、クルマを使わない住民にとっては「税金の無駄遣い」にしか思えないようです。ただ真夜中の高速道路を良く利用する人なら、おびただしいトラックの車列を見て、自動車そのものが日本を支えているのがよくわかっていると思います。

    東京都の食料自給率はわずかに1%です。トラックなしには1300万人の生活はありえません。それをまるで邪魔者かのような目で見ている人が多いのではないでしょうか? 私は高速道路を走っていてもトラックの割り込みにはまったく腹が立ちません。

    まあほんの一例ですが、日本においてはクルマに対する認識がメチャクチャなのではないかと思うことが多いです。

    そもそも日本においてプライベートカーの意味とは交通の便が悪い、山間部などへも自力でいつでも出掛けていけるという便益に大きく依存すると私は思っています。TDLや赤坂ミッドタウンに出掛けるのに、究極的にはクルマは要らないはずです。それなのに車重があって山間部では走りにくい高級輸入車や、高速道路では燃費が出ないHVカーを所有するのが「常識」といった風潮を感じます。

    高級輸入車を家の前の飾りとして、または渋滞が好きなのか知りませんが混雑時の燃費がよくなるHVカーというのは、クルマ本来の楽しさとはズレたもの(歪んだもの)じゃないか?という気がします。


    私が思う健全なクルマ文化とは、乗っている人がドライブが楽しくて幸せになれて、例えば交通の便の悪い場所にある宿泊所を利用するなど、社会全体が潤うような潤滑油としてクルマが機能してる感じですかね。

    また気になることがありましたら、お気軽に質問を頂ければと思います。

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