最初に言ってしまうと、このクルマを並行輸入するとしたら、ランチアからではなく、クライスラーから持ってきたほうが100万円以上安い。つまりクライスラー200コンバーチィブルのOEMを「ランチアブランド」に変えただけだ。このクルマの最大の特徴はマセラティグランカブリオやBMW6カブリオレのような、雄大な車格の4座のオープンカーで、クライスラーが日本で売るなら400万円くらいで出てしまう割安さだろう(もちろんスペックは2.4L直4だが)。
このクルマのようにソフトトップで5m級のクルマとなると日本ではかなり「嗜好性」が強いとされてしまうので、よっぽどの人気ブランドでもなかなか思うように売上を伸ばせないようだ。この手のクルマを日本で所有するとなるとそれなりのインフラ(ガレージ)が必要だ。ソフトトップにとって想像される一番の天敵はやはり「雪」だろう。よって自宅駐車場にはかならず屋根が必要だし、冬にちょっと中部地方の温泉にでも出かけようものなら、一晩の「どか雪」で朝には見るも無惨な状況になってしまうだろう。以前長野県の蓼科温泉に行ったときに驚異的な降雪で、翌朝クルマを「掘り出す」のに2時間くらい掛かった・・・。
このフラヴィアには2.4L直4エンジンが使われている。特性としては、トヨタのミニバンに使われているのと同じロングストロークエンジンだ。車重があるクルマを直4で動かすにはベストな設定だし、あくまでオープンカーなので高回転でスピードと追求する必要もない。このクルマにとっては納得できるエンジンだ。回らない(高回転でパワーが出ない)直4エンジンは高級車には不向きとする意見もあるが、これも時代の流れであり各国の燃費の基準はどんどん厳しくなっているので仕方がないようだ。スポーツ仕様のボクサーエンジンで知られるあのスバルでさえも、現行モデルのNA用2Lはロングストロークを採用しているくらいだ。
トヨタがもし同様の5mクラスのオープンカーを手がけるなら、やはりスポーツセダン用の2.5LのV6ではなく、エスティマなどに使われている2.4L直4エンジンを使うだろう。クラウンHVなども2.5Lの直4が使われたが、2.4ないしは2.5Lのトヨタの手持ちのエンジンはショートストロークのV6よりもロングストロークの直4のほうが低速トルクに優れ、ハイブリッドのような重量があるクルマには向いていると判断しているようだ。よってボディを大幅に補強して重量が嵩むオープンモデルも同様のことが言える。
逆に言うとミニバンやオープンカーはエコではない。同様にハイブリッドもどこまでエコなんだかよくわからない。休日くらいしか乗らないオープンカーと、人によっては毎日のように使っているミニバンやハイブリッドが同じくらいに「エコじゃない」としたらこれは衝撃的なことだが、否定できない事実である。トヨタとしてはハイブリッドを突破口にして高級ミニバンや高級セダンを拡販したいだろうが、いつまでもそんな作戦が通用するだろうか。
ちょっと話がそれたが、トヨタの最新鋭のハイブリッドと比べて、エコとは無縁で時代遅れのイメージさえあるこの「フラヴィア」だが、トヨタのHVと基本的には考え方はいっしょだ。それなりに環境にも配慮されたすばらしいクルマだと言える。さらに燃費を伸ばすためにハイブリッドになってもいいかもしれない。なにより休日のみの稼働だから環境に悪影響を与えるにしてもかなり限定的だ。それでも週1回しか乗れなくても満足してしまうだけの優雅なクルマでもある。トヨタももっとこういうクルマを作って、環境と日本経済にさらに貢献してくれれば良いのにと思う。
↓クライスラー車の「ダッジ」に変わる日本戦略ブランドとして「ランチア」というのもいいですね。「アルファロメオ」「アバルト」とは違った魅力がありますね。
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