アウディというブランドははっきり言って嫌いなのですが、それでも未だに「これだったら欲しいな」と思わせるクルマがこのTT。他のクルマとは違うコンセプトが前面に出ていて所有欲をやたらくすぐる魅力があります。このクルマのコンセプトとは「既存のクルマの嫌なところを削ぎ落すことによるプレミアム」なのだと推測してるのですが、このクルマで示されている方向性はとても共感できます。「プライベートカーなのだから所帯染みた後席は飾りでいい」「フォーマルカーでないのだから3BOXに拘る必要もない(ハッチバックでも3BOXよりも美しいスタイリングを目指す)」「スポーツクーペのような窮屈さをなくす」といったとこでしょうか。この3点を見事に達成してプライベートカーの新たなスタイルを作った歴史的名車といっていいと思います。
このクルマを見てアウディを知ったという人も多いのではないでしょうか。アウディのデザインはセダンだろうがSUVだろうがこの小さなクーペから全て発信されています。レクサスはアウディをお手本にしていると言われますが、このブランドの核心となるTTのような存在のクルマがすっぽり抜けてしまってます。2代目TTが2006年に出たので、ちょっとしたタイミングの違い(レクサスの日本展開は2005年)だったのでしょうが、いまになってデザインの確立を目指すレクサスを失敗と見る向きもありますが、アウディがTTの輝きによって奇跡的なサクセスストーリーを歩んだだけですね(レクサスがんばれ)。このクルマは一過性のブームで終わると見る向きもありましたが、2013年になっても勢いは衰えていません。使い勝手が悪く(小回りはききますが)、燃費も悪いクルマなので、ライバル不在(なかなか参入してこない)というのもあるのでしょうか。数年前からすこしずつは同タイプのクルマが出てきてはいます。プジョーRCZ・ホンダCR-Zくらいでしょうか。
なぜかTTのパッケージに近づけて作っているはずのプジョーRCZやホンダCR-Z(名前が!)にはTTと同じような良さをあまり感じないんですよね・・・。この3台の共通点は4シーターだけど実質2人乗りで空間を贅沢に使い、スポーティーなのだけど動力性能はかなり控えめ(一般のクルマと同じエンジン)なので、グランドツアラーというよりはクルーズカーです(向きです)。実際にこの3台の中で「海辺でドライブデートするならどれ?」と訊いたら、アウディTT:プジョーRCZ:ホンダCR-Zは7:2:1くらいになりそうです。デザインの完成度でこの結果は仕方ないですね。ホンダCR-Zは年配のユーザーに配慮(落ち着いたデザイン)しつつもフロントのデザインなどはよく出来ています。ただ個人的にクルーズカーを含めた高級車全般と勝負するならリアデザインまでトータルで作り込みを徹底していかないとダメだと思います。リアが大衆車プリウスにそっくりでは不味いですね。ただ内装を見るとホンダCR-Zが一番良かったりするんですがね・・・。
プジョーRCZは価格も抑えめで「GT料金」が上乗せされていないクルーズ仕様なのに、ターボを積んでブーブーいわせてる設定に多少ブレがあると思います。あのミッドシップみたいなデザイン(FFなんですが)でエンジン音がまったく聞こえないのも問題かもしれないですが・・・。デザインは個性的で良いのですが、理想のデートカーとしては大事な部分が抜け落ちているのかも。好きなモータージャーナリストの一人である岡崎五郎さんが乗っているのですが、あの方は(面識はないです)、おそらくクルマにおける哲学で私のような凡人には理解できない高い次元へ到達されてこのクルマを選んでいるのでは?一度TVK(テレビ神奈川)の番組に手紙書いて訊いてみたいと思います。「ほぼ同価格のRCZとレクサスCTを比べるとどちらがデートカーに向いていますか?教えてください。」
TTには「GT料金」がたっぷり乗っかったTT-RSというハイパワーバージョンがあります(中間にはTTSというのもあります)。「TTはクルーズカーでTT-RSはGTカーだよ。」という棲み分けができる万能デザインのクルマですね。アウディがいかにこのクーペをブランドの魂として扱っているかが解りますね。というよりこのクルマなかったらアウディのブランドイメージをここまで確立することはできなかったと思います。2代目のデビューから5年が経ってかなりお手頃(200万くらい)のクルマも増えてきて、これからがお買い得になってきた気がします。それなら86/BRZを新車で買えば良い気もしますが・・・。TTの世界的な成功のおかげであのトヨタがやる気になって86/BRZを作ったんだろうと想像できますけどね。
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