スポーツカーを作るメーカーはどこも綱渡りの経営をしていることが多い。当然ながらスポーツカーを好む人はクルマに造詣が深く、そんなカスタマーを満足させて購入に至らせるクルマを作ることは並大抵の努力ではない。それこそ「クルマなんてなんでもいい」という人を相手にする大衆車と比べて何倍も労力がかかるだろうことが想像できる。たとえライバルモデルを軽く凌駕するような「画期的な」スポーツカーが出来たとしても、世界同時不況などが起これば真っ先に販売は落ちて行くからまったくもって安定とは無縁のビジネスモデルだ。
スポーツカーの代名詞とも言える「ポルシェ」も幾度となく経営破綻の危機を迎えてきたが、近年ではスポーツカー専業を諦めてSUV(カイエン)やセダン(パナメーラ)を作るようになった。しかしそこはさすがポルシェの知名度というべきか、まったく実績がないジャンルでのクルマ作りにもかかわらず、初代モデルからあっさりと大ヒットさせている。いくら頂点を極めたスポーツカーブランドとはいえ、それなりに歴史があり「秘伝の味」を持つ幾多のライバルがいる「高級セダン」や「高級SUV」でいともあっさりと成功を収めたのか? それはひとえに40年の歴史を誇るポルシェの主力モデル「911」のクルマ作りへの「尊敬」(世界的評価)による「ブランドイメージ」の賜物といえるだろう。
ちょっと語弊があるかもしれないが、ポルシェというブランドは「秘伝の味」に値する1つのモデル(911)と、経営安定化を図った4つの戦略モデル(ボクスター、ケイマン、カイエン、パナメーラ)によって構成されている。「1:4」という数字を見てピンときた方もいるだろうが、まさに「パレートの法則」でポルシェは成り立っていると断定できる。この法則をそのまま当てはめると「2割の車種が8割のブランドイメージを作り上げている」ということになる。簡単に言うとポルシェは「911だけでブランドイメージの8割を体現している」ということだ。
これは他のスポーツカーブランドおよびプレミアムブランドにも十分に当てはまることだと思う。よってそのブランドの「2割」に入るクルマを選ぶと、そのブランドが研究費などを特に重点的に配分している可能性が高く、結果的にお得なクルマになるというわけだ。ポルシェのたった5つしかない現行モデルの出来を改めて見てみると(あまり詳しくはわかりませんが)、「911」ばかりに最新技術が集中して運用されていることがわかる。991型から導入されたものもいくつもある。なんていっても7速MTという聞いた事がないミッションを積んでいる(もはやライバルは高速バスなのか?)。
見も蓋もない言い方だが、ドイツ車は基本的に嫌いだ。それでもこの991型なら好きになれそう(ほしいと思える)な予感がする。このクルマは「スーパースポーツ」であることは確かだが、いろいろと調べてみると、フェラーリともGT-Rとも「意味合い」が大きく違うクルマだということに気がつく。まずフェラーリのような「華美さ」を意図的に抑えてあるクルマだ。このクルマなら日常に使ってもそれほど「嫌味」ではない気がする(これはスーパースポーツとしては異例のことだ)。もちろん近所のスーパーにこれで出かけていけば、少なからず違和感はあるだろうが、フェラーリでいくよりは断然にマシだ(フェラーリでスーパーに行くのは「公序良俗」に反する!そもそも障害者用スペースじゃないと停められないし)。
GT-Rともまったくと言っていいほど違うクルマだと思う。結局は911はその性能でR35GT-Rに圧倒されてしまった「負け犬」である。カタログモデルでは「911ターボ」でもまったく歯が立たない(ポルシェじゃ反撃するカネもない・・・)。一方でGT-Rは日産が得た「世界最高」の勲章そのものだ。誰でも911より安全に速く走ることができる「とんでもない」クルマだ。ただ「負け犬」と「世界最高」のどちらを愛車にしたいですか?と言われて、即座に「世界最高」と返答するのはあまりにも風情がないように思う(つまり軽薄だ)。
911とGT-Rを選ぶのはなかなか難しいところがあるが、今の心境ではGT-Rにはまったく勝負にならない「NAの911」(それでもGT-Rよりかなり高価だ)を選びたいところだ。「華美でない(地味だ)」「負け犬」の911のイメージが定着し、影が薄くなってきた2012年に登場したのがこの「991型」だ。その佇まいはなんとも「哀愁」をさそう。日本でのポルシェ人気は他の4車種に完全に分散し、911は元からの愛好家が騒いでいるだけの存在といってもいいくらいだ。そんな「991型」が911史上の最高傑作だと専門家は口を揃えている。カイエンやパナメーラにはまったく興味はないが、この991型にだったら「べらぼう」な金額を使ってもいいかなと思えてくるのだ。
↓ポルシェ大好きな担当ライターがゲストオーナーでそのまま出てくるお粗末さがありますが・・・
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