「ミドルサイズセダンの正しい作り方」というテーマを考えてみたい。世界にちらばる幾多のメーカーによって、ほぼ同サイズのセダンがそれぞれ作られている。外見だけを見ても、デザインの差であったり内装であったりと、各メーカーごとに千差万別であるが、これは好みの問題もあるので一概には言えない。少なくとも「北米」「欧州」「日本」で販売されているものに関しては、どれもそれなりの意匠を持って「楽しませてくれる」デザインになっているのではないでしょうか。
ただ各社とも「良いクルマ」に見せようとする努力は、後付けでも十分に対応可能であったりしますが、クルマの駆動方式であったり、使用するプラットフォームは簡単には変更できません。面白いことにこのプラットフォーム(車台)に関する考え方が各メーカーで個性があるので、このクラス(Dセグ以上)のクルマは「選ぶ楽しみ」があるように感じる。近年では車台の共通化が急速に進んでいて、現在は資本提携関係でなくなったメーカー同士が同じルーツの車台を使っていることもよくある。特に日本では最近になって「セダン」人気が再燃しているが、新型セダンに使われている車台は、そのメーカーの考え方を如実に示していていて興味深い。
新型アテンザに使われている「マツダ(フォード)・CD3プラットフォーム」は、2002年の初代アテンザ用に開発されたものを、改良して使っている。この車台はマツダにとっては「虎の子」といえるもので、フォード傘下時代にマツダがフォードグループセダン向けに開発したものです。当然ながら、当時の親会社であるフォードの資金援助によって開発に漕ぎ着けたものであり、マツダ単体であったら同じものをもう一度最初から開発しろといっても、決してできないものだそうだ(山内社長のコメントによる)。10年以上も前の設計ではありますが、マツダは「渾身の一台」である新型アテンザにこのPHを自信を持って投入しているようです。
この車台(CD3)は旧フォードグループの各社によっていまも大切に使われている。そして現在ではDセグセダンの「最大手」と言える車台にまで広く普及していて圧倒的な競争力を誇っている。その原動力となっているのが、フォードの「フュージョン」とその欧州版「モンデオ」だ。北米のセダン市場では「カムリ」「アコード」の2強に新たに「アルティマ(ティアナ)」「フュージョン」の2台を加えた「4強」の激しい争いになっている。年末にはどのクルマが年間販売1位に輝くかはまだまだ不透明な状況だ(すべて日系メーカーの車台!)。これに「新型マツダ6(アテンザ)」と米国安全基準の頂点に輝くボルボ「S60」(CD3PH使用)が加われば、車台としては「マツダ」が頂点に立つ事になる。
「CD3プラットホーム」はFF車用でありながら、FR車に近い(超えた)ハンドリングを実現しつつ、FF車の特性である「直進安定性」「加速性能」「居住性」で他のFR車用の車台を大きく凌ぐ実力を持っている。弱点はV8のような大排気量エンジンが搭載できないこと、小回りが利かない点くらいだ。さらに下級車種との共用の車台ではなく「Dセグ専用」となっていて「性能」が保障されていることはユーザーにとっては嬉しい情報と言えます。しかし最新のVWの「MQB」(次期パサートに使用?)やPSAの「EMP2モジュラー」(508後継に使用?)といった「B〜Dセグ」までを網羅する「汎用性の高い」プラットホームにコスト競争で苦戦する可能性もあります。
マツダ・フォード・ボルボとしては「CD3」を今後も改良してセダンを作り続けるらめには、この車台の優越性を生かした「高性能セダン」のブランディングが必要です。簡易的な車台を使ったクルマとの実力差をしっかりとユーザーへ伝えていく努力に加え、さらなる「走り」の改良を進めていかないと(メルセデスEクラスに匹敵するようなクルマにしていかないと)、この欧州の「コストダウン」の波に飲み込まれてしまうかもしれません。
↓旧フォードグループの中でも最先端を走る「アテンザ」は世界最良のパッケージと言っても過言ではないかも・・・(世界はその事実を日本以上に認めていたりします)。
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