2013年6月27日木曜日

BMW135i クーペ 「ポルシェに最接近したBMW車」

  BMWとポルシェを比べるなんて、あまり実りの多いことではないが、どちらにも共通するであろうことは、スポーツカーメーカーとしての「野蛮さ」を十分に持ち合わせていることだ。多くの自動車好きはこの「野蛮さ」を所有することに絶えず憧れている。しかしそれと同時に、その「野蛮さ」がほぼ手に負えないレベルであることも良く分かっている。よくスポーツカーに乗る人は自身を「マゾ」と評することが多いが、これは実に的を得た表現だと思う。

  BMW135iクーペは、カタログスペックからすでに「野蛮さ」が滲みでている。BMWにしては決してカッコいいとは言えないスタイリングであったり、後席の居住性を無視したほぼ2シーターの設計であったりと、すでに「乗用車」とは呼べないレベルのクルマだ。これに170psの直4ターボが乗っているだけならなんの魅力もないクルマだが・・・。結局のところBMWの直6ターボを存分に楽しみたいという「根源的な欲求」に対して、他の全てをスポイルしてでも応えようとした「男気溢れる」クルマだ。

  本来はプレミアムブランドとして、居住性にも十分に配慮されたクルマ作りをするBMWが「本能のままに」作ってしまった問題作と言えるのかもしれない。とにかくBMWで一番に「マゾヒズム」に徹したクルマだ。同時にBMWの魅力の源泉といえる直6ターボ搭載モデルを、このブランドにしては比較的低価格で所有することができるという「究極のエントリーモデル」だ。しかし残念なことに、せっかく「エントリー」してもBMWの上位モデルではスポーツ性をこれ以上に体感できるクルマが用意されているわけではない。この135iクーペでポルシェに近い世界観に近づいたものの、あとはひたすらにフォーマルな高級車基調の上級車種がラインナップされているだけで二度とポルシェ的世界観には近づくことはない・・・。

  ポルシェもまた「BMW的」な高級車展開で完全に味を占めてしまっていて、カイエンやパナメーラは高級車の趣でしかなく「野蛮さ」とは無縁に感じられる。現行の911(991型)もかつて持っていた「野蛮さ」を失いつつあるようだ。それでもさすがはポルシェで、911ターボSの試乗動画などを見ていると、経験豊かなライターが「おっかなびっくり」でおそるおそる運転している様子が分かる。海外試乗ともなればアウトバーンを250km/hで走るシーンが出て来たりするが、いつもは偉そうなコメントを連発するライターの声が心無しか震えて聞こえたりする。

  BMW1シリーズクーペは現行モデルを持って廃止され、次期モデルは「2シリーズ」としてラインナップされる予定だが、不思議なことに2シリーズと聞くと「野蛮さ」が影を潜めてしまうような気がする(スペックがどうなるかなど全く説明されていないが・・・)。1シリーズクーペに一定の「ラグジュアリーさ」を追加しようという意図で2シリーズをデビューすれば、一時的にはスポーツ車メーカーとしてのBMWにとって大きな打撃と言えるかもしれない(装備が豪華な135iクーペなんて魅力半減では・・・)。

  BMWの本来のライバルのメルセデスはいよいよA45AMGを投入して、高級車ブランドというだけでなく、スポーツカーブランドとしての地位を築こうとしている。このクルマは過剰スペックなハッチバックといった印象になっていて、「野蛮さ」を前面に出してくるブランディング方法を意図しているのかもしれない。やや「野蛮さ」が薄れつつあるポルシェやBMWを尻目にどこまで成長を遂げるのだろうか・・・。「野蛮さ」が全くないくらいのレクサスやアウディに比べて、非常に野心的なメルセデスの戦略はなかなか奥が深い。


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↓だいぶジェントルになってきたが、それでもRRという時点で相当過激だ・・・

  

  

  

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