2013年7月22日月曜日

プジョーRCZ 「Cセグスペシャリティが意外に盛り上がらなかった・・・」

  世界中の人々はやはりクルマへの興味を失いつつあるのでしょうか? 2010年に大きな反響とともに登場したプジョーRCZも発売から3年が経過し、ほとんど名前が聞かれない存在になってしまいました。BMW3シリーズ並みの価格でド派手なスペシャリティカーが買えるとあって、見栄っ張りな東アジアで大ヒット間違いなしかと思われましたが、中国でも日本でも大惨敗になっています(北米未導入)。日本においてはまだまだプジョーブランドの実力が不足している印象でした。

  プジョー308というCC以外はやや地味なクルマがあります。このクルマのボディを派手なものに変えてターボのチューンを変えて出力を上げたクルマがRCZです。ライバル車のアウディTTがゴルフGTIと共通のパワーユニットを使っていますが、ほぼその手法を真似たクルマと言っていいと思います。現行の日本車にはなかなかない種類のクルマなので評価が難しいですが、トヨタがかつて販売していた最終型(7代目)セリカみたいなもので、カローラと共通の設計にスペシャリティボディを載せたクルマといったところです。

  TTはそのデザインの見事さと高品質化した5代目ゴルフをベースにしていたことから、「セリカと同じ様なクルマ」と言われるとやや違和感を感じます。一方でRCZはというと、プジョー308のトーションビームの足をそのまま持ち越して、今度は「セリカですらダブルウィッシュボーンに履き替えていて、フロントもスーパーストラットという独自サスで武装しているのに・・・」とややネガティブな評価になってしまいます。セリカ発売時はホンダの「タイプR」が猛威をふるっていて、対抗する為にトヨタとしては否応なしにスポーツサスとスポーツNAエンジンを投入せざるを得なかったようではありますが・・・。

  そんなセリカでも不人気(安っぽいから?)で車種廃止に追い込まれました。日本のスポーツカーユーザーのニーズには「スペシャリティカー」はなかなか響かないようです。そんな市場でまともにRCZが、それこそ3シリーズやCクラスが新車で買えてしまう価格で、売れるわけがないというのが率直なところだと思います。アウディTTよりもRCZのデザインがツボだという人ももちろん居たとは思いますが、ただでさえ狭いスペシャリティカー市場で、決定的にライバルを上回るわけではなく、偶発的に流れて来るお客を拾うだけの商売ではなかなか苦しいのかなという気がします。

  先駆者のTTはやはりあの鮮烈なスタイリングで、従来はスポーツカーに興味が無かった層もだいぶ取込むことに成功しました。あのスタイリングを見てクルマが欲しいと思う人も続出するほどで、見事に「潜在需要」を掘り起こした素晴らしいクルマだったわけです。それを見てスタイリングに自信のあるプジョーはデザイン勝負のRCZを投入し、スタイリングにそれほど自信のないトヨタは専用設計のスポーツカー(86/BRZ)を投入しました。カネがないPSAとカネがあるトヨタで当然策略が違うわけですが、どちらもリスクに見合った成果を得ているようです。

  今後Cセグスペシャリティは無視できない市場として、さらなる参入を呼び込みそうです。具体的に発表されているコンセプトカーもスバルの「新型WRXコンセプト」やスズキの「オーセンティックス」など、デザイン面での進化が大きいように感じます。スバルやスズキがこれほどに艶やかなデザインのクルマを作るようになったという変化に素直に驚きます。大型のスペシャリティクーペを所有するのも、乗り心地が最悪のスポーツカーを所有するのにも及び腰のユーザーは多いです。一般の乗用車と同じ乗り心地でデザインが優れていて高級感がある小型(Cセグ以下)の需要が高まりを見せるのはこれからが本番でしょう。プジョーもRCZを簡単には諦めないようで、すでにMCを施してのテコ入れを発表しています。TTも来年にFMCを予定していて、BMWも新型クーペの2シリーズを投入する予定です。ただこの市場が今後どれだけ盛り上がるのかは予想がつかないですが・・・。


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2013年7月11日木曜日

レクサスIS 「レクサスがユーザー目線に徹した傑作車」

  先日あるSAでレクサス愛好者の集会を見かけました。クルマ自体は都内を走っていれば何台も見かけるので珍しくはないですが、どんな人々がレクサスの熱烈な支持者なのかが少しわかった気がしました。これまでのイメージとはちょっと違ってレクサスの「オフ会」も、SAの駐車場で群れをなして談笑しながら行われるようです。他の利用者からするとちょっと迷惑を目くじらを立てられそうですが、私のようなクルマ好きから見れば、混雑してない時間帯なら問題ないとは思います。

  車種はほとんどがLSかGSで普通のIS(初代)では参加できないような「敷居の高さ」を部外者ながら感じてしまいました。それでも数十台並ぶLSやGSのオーナー達を見てみると、極めてラフな出で立ちで服装にはそれほどこだわりはないようです。正直言って自分の恰好の方がレクサスオーナーにふさわしいなと思うくらいでした。そんな彼ら(平均年齢50歳くらいか?)はスポーツカーに乗る感覚でレクサスの大型セダンを愛用しているようでした。

  LSや2代目GSのクルマとしての実力は疑いないのですが、果たしてプライベートカーとしてそのサイズを持て余すことなく使えるのか?という気もします。大きなクルマをデコって見て楽しむ、いわゆる「VIPカー」趣味ならいいとは思いますが、クルマでしか行けないような秘境を目指すなら、山岳路が溢れる日本の地形を走るのに、この都市型セダンはどれだけ快適だと言うのでしょうか。

  従来のLSやGSは「車格」がやたらと強調されていて、ユーザーではなくライバル車にばかり目を向けたクルマになっています。先代のISもブランドのエントリーモデルであることを意識し過ぎて「狭いだけ」のクルマになっていました。失礼ですが、スポーツカーとしてもセダンとしても中途半端な存在だったと思います。今考えるとセダンの「地味さ」とスポーツカーの「悪燃費」を兼ね備えた酷いクルマをレクサスブランドの「魔力」だけで売りさばいていたクルマです(MBもBMWも同じようなものですが・・・)。今やスポーツカーの復権とCセグへの移行が進み、そんなクルマ作りではいよいよ通用しなくなってきました。先代ISも3シリーズ、Cクラスも世界中で在庫がダブつき始めています。

  新型ISは徹底的なモデルの強化が図られていて、先代から大きく進歩していますが、このクルマはレクサスにとっても大きな転機を意味しているようです。全世界的な個人主義の風潮からプレミアムブランドにとって「車格」ではなく「コンセプト」でいかに他車を上回るかが重要になってきていると思います。新型ISの拡げられた全長や、「地味さ」から脱皮してLSやGSにはない華やかさを持つデザインはまさに「ユーザー目線」のクルマ作りへの転換だなと感じます。

  このISを買った人は新型ISの「コンセプト」に惹かれただけであり、今後GSやLSに乗り換える割合はかなり低いと思います。トヨタは3年以内にこのISの乗り換え用のさらなる「ユーザー目線」のコンセプトを備えたスペシャリティカーを用意してくるはずです。それが噂されているソアラやスープラの後継車だという予想がつきます。ただそれだけでなくトヨタは近々MCでSAIのデザインを一新するなど、高級路線のクルマに関してはかなりのテコ入れを図ってくるようです。マークXの後継なども恐らく相当にデザインにこだわったクルマに生まれ変わるのではないかという気がします。もちろんとても歓迎すべきことではありますが・・・。



2013年7月4日木曜日

ランチア・フラヴィア 「オサレクルーズカーfromスポーツブランド」

  最初に言ってしまうと、このクルマを並行輸入するとしたら、ランチアからではなく、クライスラーから持ってきたほうが100万円以上安い。つまりクライスラー200コンバーチィブルのOEMを「ランチアブランド」に変えただけだ。このクルマの最大の特徴はマセラティグランカブリオやBMW6カブリオレのような、雄大な車格の4座のオープンカーで、クライスラーが日本で売るなら400万円くらいで出てしまう割安さだろう(もちろんスペックは2.4L直4だが)。

  このクルマのようにソフトトップで5m級のクルマとなると日本ではかなり「嗜好性」が強いとされてしまうので、よっぽどの人気ブランドでもなかなか思うように売上を伸ばせないようだ。この手のクルマを日本で所有するとなるとそれなりのインフラ(ガレージ)が必要だ。ソフトトップにとって想像される一番の天敵はやはり「雪」だろう。よって自宅駐車場にはかならず屋根が必要だし、冬にちょっと中部地方の温泉にでも出かけようものなら、一晩の「どか雪」で朝には見るも無惨な状況になってしまうだろう。以前長野県の蓼科温泉に行ったときに驚異的な降雪で、翌朝クルマを「掘り出す」のに2時間くらい掛かった・・・。

  このフラヴィアには2.4L直4エンジンが使われている。特性としては、トヨタのミニバンに使われているのと同じロングストロークエンジンだ。車重があるクルマを直4で動かすにはベストな設定だし、あくまでオープンカーなので高回転でスピードと追求する必要もない。このクルマにとっては納得できるエンジンだ。回らない(高回転でパワーが出ない)直4エンジンは高級車には不向きとする意見もあるが、これも時代の流れであり各国の燃費の基準はどんどん厳しくなっているので仕方がないようだ。スポーツ仕様のボクサーエンジンで知られるあのスバルでさえも、現行モデルのNA用2Lはロングストロークを採用しているくらいだ。

  トヨタがもし同様の5mクラスのオープンカーを手がけるなら、やはりスポーツセダン用の2.5LのV6ではなく、エスティマなどに使われている2.4L直4エンジンを使うだろう。クラウンHVなども2.5Lの直4が使われたが、2.4ないしは2.5Lのトヨタの手持ちのエンジンはショートストロークのV6よりもロングストロークの直4のほうが低速トルクに優れ、ハイブリッドのような重量があるクルマには向いていると判断しているようだ。よってボディを大幅に補強して重量が嵩むオープンモデルも同様のことが言える。

  逆に言うとミニバンやオープンカーはエコではない。同様にハイブリッドもどこまでエコなんだかよくわからない。休日くらいしか乗らないオープンカーと、人によっては毎日のように使っているミニバンやハイブリッドが同じくらいに「エコじゃない」としたらこれは衝撃的なことだが、否定できない事実である。トヨタとしてはハイブリッドを突破口にして高級ミニバンや高級セダンを拡販したいだろうが、いつまでもそんな作戦が通用するだろうか。

  ちょっと話がそれたが、トヨタの最新鋭のハイブリッドと比べて、エコとは無縁で時代遅れのイメージさえあるこの「フラヴィア」だが、トヨタのHVと基本的には考え方はいっしょだ。それなりに環境にも配慮されたすばらしいクルマだと言える。さらに燃費を伸ばすためにハイブリッドになってもいいかもしれない。なにより休日のみの稼働だから環境に悪影響を与えるにしてもかなり限定的だ。それでも週1回しか乗れなくても満足してしまうだけの優雅なクルマでもある。トヨタももっとこういうクルマを作って、環境と日本経済にさらに貢献してくれれば良いのにと思う。

  

  
↓クライスラー車の「ダッジ」に変わる日本戦略ブランドとして「ランチア」というのもいいですね。「アルファロメオ」「アバルト」とは違った魅力がありますね。