2016年8月29日月曜日

アストンマーティンDB11 「バイバイ!FとP・・・」

  人類の歴史を見ていると、それの連続であることが証明されますが、かつて王侯貴族が独占的に使用していたものが、年月の経過とともに一般庶民にも利用可能なものになります。かつては貴族だけが食べた食事。かつては貴族だけが使った馬車(自動車)。かつては貴族だけが愉しんだ海外旅行。つまり時代が流れていけば、フェラーリやアストンマーティンもまた一般庶民が愉しめるブランドになっていくのでは?と思うのです・・・。裏を返せば、『貴族趣味』に愚直に憧れ続ける人々だけが、資本主義の荒波の中を突き進んでいけるのかもしれません(詐欺師の常套句!?)。

  ポルシェ、フェラーリに続いてこのブランドにもいよいよ「ターボ化」の波が訪れました。これまでのアストンマーティンのフラッグシップエンジンといえば6LのV12自然吸気でしたが、ちょっとだけダウンサイジングして5.2LのV12ツインターボになったそうです。最高出力もいよいよ600psを越えて、一線級のスーパースポーツあるいはラグジュアリーGTの世界基準をしっかりとキャッチアップしています。

  現代ではスーパーカーの定義に当てはまるクルマは、ブガティ(仏)、パガーニ(伊)、ケーニッグセグ(典)といった幾つかのブランドに限定されていて、フェラーリやマクラーレンなどは、せいぜいポルシェ911ターボや日産GT-Rのような安普請なスポーツカー出身のグループとひとまとまりに『スーパー・スポーツ』と俗称されています。スーパーカーは1台2億円前後なのに対して、スーパースポーツは1500〜4000万円の範囲に収まります。

  さらに1500~4000万円くらいで売られる600psクラスのクルマの内で、サーキット向けのものを『スーパー・スポーツ』とし、日常的に使えるツアラーを『ラグジュアリーGT』と区別し、レーシング・セレブには2台所有してもらおうというマーケットが一般的になっているようです。
ポルシェの代表的なモデルだと前者が「ターボ」「GT3」で後者が「タルガ」です。
フェラーリだと前者が「488GTB」「F12ベルリネッタ」で後者が「GTC4ルッソ」「カリフォルニアT」。
日産だと前者が「トラック」と「NISMO」で後者が「プレミアム」「ブラック」。
マクラーレンだと前者が「675LT」で後者が「570GT」。

  そしてアストンマーティンは・・・前者が「ヴァンテージS」「バルカン(未発売)」で後者が「DB9」「ヴァンキッシュ」です。前者と後者の分かれ目がいまいちハッキリしないのがこのブランドの特徴かもしれません。先ほど列挙した4ブランドは初心者にも解り易くグレードを作り分けているのに・・・なぜ? アストンマーティンが分りにくい理由の一つに「サーキットモデルの方が安い」という特徴があります。やはり英国ブランドはロールスもベントレーもジャガーもそうですが、サーキットカーよりもロードカーに重きを置いているようです。

  さらにアストンマーティンは、スーパースポーツでは常識となっているDCTを採用しない方針に決めたそうです。よってサーキット用途のヴァンテージの上級モデルV12にも順次MTモデルが追加されますし、鋭意開発中と伝えられるバルカンにもMTを組み込む模様です。そして次世代ロードカーを担う新鋭の「DB11」には8AT(ZF製)を配しています。そして細かいことですが、アストンマーティンはサーキットモデルのコンバーティブルは「ロードスター」と呼称し、ロードモデルでは「ヴォランテ」と命名して区別しています。

  現在のアストンマーティンはフォード傘下から放り出されたあと、中東のオイルマネーを資本主としていますが、近々どこかの業界ビッグネームが買収に名乗りを上げるのではないかと言われています。その最有力がルノー日産グループだそうで、カルロス=ゴーンの後継者と言われていた元日産のアンディ=パーマー氏がアストンマーティンにCEOとして迎えられていて現職です。なんでアンディ=パーマーなのか?就任後にほどなく伝えられたのは、次世代のV8はAMGから供給されるというニュース・・・。2007年にGT-Rを発売した日産の中心にいたアンディ=パーマーはゴーンの決断の背中を押した人物だとされています。

  2002年のスカイラインGT-R廃止で一気に低下した日産ブランドの求心力を高めるだけでなく、VW成長の尖兵となっていたポルシェを捉えることができる技術力のプールを使って、911ターボ撃墜作戦を展開。その後にVWグループに戦々恐々のダイムラー(メルセデス)との大規模提携が実現。AMGによるポルシェへの挑発的なエンジン開発が始まり・・・。2010年には英国でマクラーレンをブランド展開し、当初から日産系列サプライヤーの全面協力によってターボモデルばかりを展開するスーパースポーツブランドへと成長します。今では完全にポルシェやフェラーリを越えたスーパースポーツの王道ブランドとして認知されるようになりました。

  「ポルシェを越えるクルマを日産の技術で世界へ」・・・これがアンディ=パーマーが描いた青写真ならば、その続きにロードカーの頂点を目指すべく欧州の名門アストンマーティンを日産傘下へ!!!ゴーンに提言し続けたと言われています。結果的に日産は三菱は買ったけどアストンマーティンは買ってません。ただしアストンマーティンの中枢にはアンディ=パーマーのコネクションによる日産やAMG関連の技術が次々と入り込んでいるようです。そんなパーマー体制が送り出す新しいロードカーが「DB11」・・・今度こそは『デザインWCOTY』は確実か?(ヴァンキッシュは2013年のデザインWCOTYで、ジャガーFタイプとマツダアテンザとファイナル3まで残ったが受賞ならず・・・旧フォード勢によるファイナル独占はスゴい!アストンの前任デザイナー・イアン=カラムのFタイプに獲られたのは屈辱!?)

  さてDB11ですが、前作のヴァンキッシュも相当にスゴかったですけども、これま「洗練」としか形容しえないほどの継ぎ目を感じさせない滑らかなエクステリアになっています。メカの中身は日独の技術が満載ですが、それでも英国ブランドらしい伝統に沿ったGTカーを作る!!ロードカー文化を守る!!という、単なる1車種の設計に関わるエネルギー以上の鬼気迫るものを伝えてきます(ファイスリフトしたGT-Rのユルさときたら・・・)。

  変に流行を追う事はなく、完全にオリジナルを感じる独特のフォルムでありながら、イタリアのスーパースポーツが身に纏う「ウロコ」みたいな異形のカーボンパーツもないのですが、一見大人しそうに見えてそれでいてリアのフェンダー周りの造形一発で、見るものをノックアウトするほどグラマラスで神々しい一面もあります。やっぱりこれぞ「グランドツアラー」なのかなー。名門ポルシェが991(2011年)でやっと辿り着いた『境地』をさらに越えて未来的な予感もひしひし感じます(水冷ポルシェは996の壊滅的なデザインから997で前面の整形を果たし、991で正しいGTカーのリアを手に入れた・・・ポルシェファンに悪いが空冷時代はデザイン面で見るべきものは無い)。

  488GTBが日本で走り始めても、これ見よがしに「フェラーリですよー」っていう主張を、「色」と地べたを這うような「スタイル」それから「爆音」で主張してくるだけ(だと思いますよー)。言葉が悪いですがもう「目立ってなんぼ?」の世界にどっぷり浸かってます(それがフェラーリの意義なんでしょうけど)。これって恐らくですが、たとえ経済的にかなり恵まれていたとしても、これまでランエボ(ランボじゃないよ!)とかM3とか乗ってきた生粋のGTカー好きがそのまますんなりとステップアップして入っていける世界観じゃないと思うんですよ。もし3000万円くらいのお金で好きなGTカーを買える身分になったなら、M4やGT-Rの先にあるのはこの「DB11」なんじゃないのかなー。

  BMWや日産といった少々骨っぽいけども、GTカーの世界でそれぞれにかなりの地位を築いたブランドのコンセプトを飲み込んで、その上に立ってそれらのユーザーを受け入れられる真のGTカーの頂点のブランドは、フェラーリでもポルシェでもマクラーレンでもランボルギーニでもベントレーでもなく、新生アストンマーティンなのかもしれません。そのことを世界中に大きく知らしめる契機となる1台こそがこの「DB11」になりそうな予感がします。

  フェラーリやポルシェが大手を振って進む時代は終わった!!!遡れば1990年にすでにホンダが終わらせていた!!!そこから先の生温い時代に、ダラダラとフェラーリもポルシェも生き続けましたが、1990年から今までの間にこの2つのブランドがどれほどのコトを成し遂げたのだろうか!? もはやフェラーリやポルシェではこれからの時代を切り開くことなんてできない!!!・・・アンディ=パーマーは自身も相当なカーガイだと言われていますが、彼自身の信念の中にスーパースポーツブランドの新陳代謝が必要だ!という想いがあったんでしょうね・・・。

アストンマーティンDB11の動画

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2016年6月30日木曜日

718ケイマンは「リアル」に踏みとどまった!?

  718ケイマンのMTモデルが619万円。真面目に働くサラリーマンにとっては、そこまで無理な価格ではないかもしれません。クラウンマジェスタを買うか?718ケイマンを買うか?なかなか究極の選択です。どちらも600万円台で全く方向性は逆ですけども、内面から滲み出る「凄み」が溢れていて素直に憧れます。クルマ本来の価値をそのまま値踏みしたら両方とも600万円以上は十分にある!!!

  日本市場で売られている600万円台で売り出しているクルマってよくよく考えると、あれれーといったハンパなものが結構多いです。大抵は世界的にシェアが大きくてコストがかかっていないCセグ車をベースにしたモデルが想像以上に出てきます。元々は・・・ゴルフ(アウディTT)、アクセラ(レンジローバーイヴォーグ)、Aクラス(A45AMG)、プジョー308(プジョーRCZ)だったり・・・。でもそういったモデルの方がブランドも広告宣伝費をたっぷり注ぎ込めるので、よく認知されていて、日本ではむしろ売れ筋だったりするんですよね・・・。ブランド戦略恐るべし。

  それとは全く逆に「価値ある600万円台倶楽部」の候補を選出してみると、718ケイマン、マジェスタの他には・・・うーん。「ボルボV70」「VWトゥアレグ」「ホンダレジェンド」「アウディA5」「BMW・M235i」「フェアレディZニスモ」「ロータスエリーゼ」
「アルファードエクゼクティブラウンジ」くらいでしょうか(案外多いかも)。どれも到底に売れているとはいい難いのが現状です。本当に価値があるクルマってのはたくさん売っても大して儲からないから宣伝量が少ないのかなー。

  もちろんクルマなんて使う人次第です。選ぶ人間(私)が「大型車=2ペダル」「スポーツカー=3ペダル」なんて固定概念があっての選出です(ご了承ください)。「誰かをエスコートする」❌「自分で愉しむ」という2つの視点で選んでみました。「自分で愉しむ」だけのクルマに600万円はちょっと贅沢過ぎて気が引ける部分もありますが・・・。ケイマン、M235i、Zニスモ、エリーゼ。どれも逸品のスポーツモデルです。86、BRZ、WRX STI、ロードスター、S660といった国産の手軽なスポーツカーもいいですけど、単なる早朝・深夜の1人ドライブではなく、目的地がハイソサイエティーな宿泊所だったり、ロードムービー的な雰囲気に浸れる極上レジャーだったり、とにかく人生にとってインプレッシブな経験を!!!というなら「600万円台倶楽部」のスポーツカーもありかなー・・・。

  考えようによっては、手に入れて1年くらいの間にリストアップしたスポットに次々と出掛けていって、満足したら売り払ってしまえばいい!わけです。どれくらいマイナス出るのかな?とか気になるけども「600万円台倶楽部」なら中古市場も底堅いので650万円→500万円くらいで売り抜けられるんじゃないかと目論んでいます・・・。1年でクルマの償却だけで150万円は破格ですけども、300万円のクルマを10年も有り難がって乗ったからといってどーなるものでもないですよね・・・。3年も過ぎればエンジンもミッションも相当に劣化しますし、ドライブの満足度もだんだんと下がっていきます。

  安全性は折り紙付き!のアコードみたいなクルマに長くのるのは確かに意義がありそうですけど、安全性にいくらかの疑義が残るスポーツカーに10年乗り続けるメリットってのはよっぽどのサーキットフリークで無い限りは、使い勝手なども含めてデメリットの方が多い気もします。もちろん86もロードスターも1年乗って清算することもできます。300万円→200万円くらいが相場でしょうか? 86の1年分のレンタカー料金が「100万円」、ケイマンの1年分のレンタル料金が「150万円」。スポーツカーに乗るのが目的ならば「86」という選択で十分ですけども、「相応のエクスペリエンス」を追いかけてスポーツカーを選ぶならば、150万円のケイマンの方がむしろ割安かな?という気もします。

  「600万円台倶楽部」は高級な場所に行くためのクルマだ!ってのは確かなんでしょうけど、もっとも満足度の高い「エクスペリエンス」は・・・ファッションを愉しむことだと思います。休日ごとに街に現れるポルシェユーザーを観察していると、かなり高い確率で愉しんでますよ。「ポルシェ」❌「英国風コスチューム」なんかが割と定番なのかな?1年も続ければ飽きる部分もあるかもしれないけど、そうしたらまた新しいライフスタイルを見つければいいですね・・・。タクシーと新幹線(飛行機)しか乗りません!!!ってのもいいですけど、外出はタイトなケイマンにタイトな英国ルック・・・だけど自室ではシルクのパジャマでゆったり〜。若い時分はどんな生活でも格好がつきますけど、これが年喰ってくると、「スタイル」とか「規律」とかで人生に関わるあらゆることに影響が出ますよね・・・。ストレスとか自尊心とか上手くコントロールできないと人生が愉しめない。

いつまでも若者と同じことしていちゃいけないな〜・・・。
若者と一緒になって86やロードスター乗っている場合じゃない・・・。
そんな「意識高い系」の人ならば718ケイマンのコスパは案外高いと思います!!

「ケイマン駆って(買って)行ってみよか!?『星のや』イメージ動画」

  

2016年6月21日火曜日

プジョー308GTi"プジョー・スポール" 「左MTはまだまだ続く!?」

  いわゆる「ホットハッチ」と呼ばれるクルマには、時代の「息吹」と言えるような興味深いトレンドなどあるのでしょうか!? ちょっと乱暴な言い方ですけども、ユーザーが「これ!」を望んでいるだろうからという前向きな戦略を顧みる余裕などないから「ホットハッチ」なのでは!? 「理念」なんてすっごく抽象的なものですが、開発者の熱意が込められた「野心的な1台」と、メーカー都合の結果として生まれた「予定調和」では、天と地ほどの差があると思いますね。グレード名で「GTカー」と名乗るのであればなおさらのことです。

  は〜???と思われるかもしれないですが、野心的な1台だから素晴らしい!!!だとか予定調和だからダメという単純な話ではないです。例えば「メルセデスA45AMG」と「プジョー308GTライン」では同じCセグのホットハッチですけども、想定しているユーザーも全然違うでしょうし、一方はメルセデスがこのクラスでも頂点に立つ!という「野心的」なモデルで、もう片方は平凡な大衆モデル「308」の弱点をカバーする程度の「予定調和」モデルでして、価格差は2倍以上!!!・・・ホットハッチなのに単純比較がナンセンスなほどに「振り幅」がデカい。

  価格から想定するに「A45AMG」(713万円〜)はメルセデスの野心を象徴した1台ですし、その狙い通り実際に日本でも反響が大きかったです。「308GTライン」(314万円〜)は単純にマーケティング上の判断で設定されているベース車よりも35万円高の「セットオプション車」という予定調和です。・・・何が言いたいかというと、「スペシャルティカー」という基準ならばAMG謹製エンジンを積んだ「A45AMG」に納得させられますけども、「ホットハッチ」という観点で考えると、314万円で納得の走りを追求したプジョー側に軍配が挙がるのでは?ってことです。

  「ホットハッチ」というジャンルを作ったのは「VWゴルフGTI」というおなじみの伝統モデルです。1991年に発売された3代目ゴルフはとにかくゴルフの黒歴史とか言われちゃうぐらいに評判悪いモデルでしたけど、今になってみれば2000年以降の自動車産業の未来を確実に暗示したクルマでした。当時の日本車はまだまだバブル真っ盛りで、世界一といっていいくらいに豪華なクルマ作りをしてましたが、その頃VWは世界に先駆けて「コストを抑えるクルマ作り」を始めました。・・・自動車評論家が語る「日本車=コストダウン」という通説とは全然違いますね。ネット普及のおかげで今では調べれば誰でもわかることですけども。

  そんな3代目ゴルフの性能面での弱点を押し隠すように企画されたのが、2.8LのV6自然吸気エンジンを積んだ「GTI」でした。これまでのGTIは1.6L直4でしたから大幅なパワーアップを果たしています。アウトバーンを250km/hで巡航できる小型車!!!確かに「コストダウン」とは誰も思いません・・・・上手い!!!そもそもコストダウンってとってもネガティブな響きがありますけど、大衆モデルを性能が落ちないように作れるならば、どんどんコストダウンして、ユーザーにもメーカーにも恩恵があるクルマにしていけばいいじゃん!!!とも思いますけどね。この3代目ゴルフの場合はある程度「恣意的」に粉飾しようとしたわけですから・・・エンジン以外の性能面でやや厳しいところがあったのでしょうね。

  4代目ゴルフになると2.8Lから3.2Lにエンジンがさらに拡大され、「R32」と呼ばれます(笑)。しかし同時期に発売された欧州フォードのフォーカスによってゴルフはクラストップの地位から引き摺り降ろされます。フォード(フォーカス)・ボルボ(C30)・マツダ(アクセラ)が三位一体になって繰り出した新しい「ホットハッチ」の波がVW、オペル、PSA、ルノーといったドイツやフランスの名門をまとめて飲み込んだ結果・・・、プライドも何も投げ捨ててVWがフォードの設計をパクリます。5代目ゴルフで息を吹き返したVWの設計がオペル、PSA、ルノーにも広がっていきます。

  フォード陣営の中核を担ったのがマツダでしたが、そもそもファミリア〜アクセラに強い影響を与えたのは常にマツダの先を歩みホンダのシビック。つまりホンダを源流とした「ホットハッチ」スタイルが欧州全域へと流れ込んだことになります。ただしホンダがシビックタイプRに用意した「Vテック」搭載エンジンは代を追うごとに他のメーカーの追従が難しい究極エンジンになりました。2L自然吸気で225psを出すホンダに対抗するために選ばれた現実的な路線がターボによるスープアップでした。

  いまではホンダもターボに転身し、「横置きFFの2Lターボ」に265~380psと出力のバラツキはあるものの、ほぼ同じような設計の「ホットハッチ」が並んでます。まるでニュルで競争しているVW、ホンダ、ルノーが話題作りのために口裏合わせして「2Lターボで行きましょう!」と決めているのかな!?そんな「談合」すら匂わせる今どきのメーカーからは、ちょっと距離を置いて登場したのがPSAのホットハッチです。いまどき「ガソリンの2Lターボが無い」というメーカーも珍しいですが、ターボチャージャーの恩恵で様々なバージョンが生まれている1.6Lの「EP6」というBMWと共同で開発されて話題になったエンジンをいまも熟成させています(BMWではすでに廃止か)。

  この「EP6」にはTHP150、THP165、THP200、THP208・・・と最高出力に応じた数字が付けられたバージョン番号があるわけですが、同じ方式に従うと新たに追加された308GTIにはTHP250とTHP270の2種類が使われるようです。ちなみに270ps版ですがモデル末期を迎えている旧型シャシー(EMP2ではない)の「プジョーRCZ-R」に搭載されたバージョンをそのまま横流ししたものだと思われます。プジョーが「野心的」に発売した(アウディTTのパクリですけど)ものの、横置きFFのスペシャルティカーに500万円以上の値札を付けてもさっぱり売れない!とやっと悟ったプジョーが「ホットハッチ」らしいパッケージへ原点回帰しています。

  270psのRCZ-Rは550万円でしたが、270psの308GTIならば436万円。250psバージョンならば385万円まで抑えられます。220psのゴルフGTI(389万円)でもMTが選べるようになりましたが、308GTIは「左MT」のみ!!!考えようによっては、シフト操作とウインカー操作が左右の手に分散できる「左MT」にもそれなりのメリットはあります。さてこのプジョー308GTiを「野心的」と見るか「予定調和」と見るか・・・。「ホットハッチ」を巡る市場の判断はとても興味深いです。

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2016年6月10日金曜日

アルファロメオ・ジュリア「なんかすっごいらしい・・・」

  某ウェブ記事に西川淳さんによるアルファ・ジュリアの海外インプレが出ていました。内容をごくごく簡単に要約すると「迷わず買え!」・・・。ロードスターだの86だのに押しまくられて居場所を失っていたスポーツセダンがこのジュリアを契機に復活するぞ!とでも言いたげです。

  先日、知人に連れられて都内のBMWジャパンへ行ってきました。420グランクーペが500万円を切るとのことだったので、ちょっと興味を持ったのですが、結局はレザー限定で在庫を探してもらったら600万円という提示!!!そこからさらに50万円くらいなら行けます・・・といったニュアンスでした。まあ全て想像の範囲内でしたね(笑)。即決しろ!!!と言われてもすでに予算から100万円オーバーですから。

  都内という立地なので家賃が高いのでしょうね。いつもお世話になっている東京西部にあるムラウチBMWのショールームとは比べものにならないくらいにタイトで猫の額のような大衆向け商談ルーム、そんな場所で見苦しい貧乏人アピール(値引交渉)も悲しいので特に何も言いませんでしたよ・・・。

  ただし試乗したクルマは予想以上でしたね・・・。用意されていたのは社員の私用車だという「420グランクーペMスポ」でした。F30の3erと同じベーシックな180psそこそこの直4エンジンのはずなのに、以前に乗った320非Mスポ車とはレスポンスがまるで別物なのに驚きました。ハンドリングもアクセルも「スポーティで多いに結構!!!」という意味でクイックです。これ428じゃないですか?ってくらいに3人乗車でもエンジンがパワフルなこと。

  次第に疑い出しましたね・・・なんだこの怪しい「試乗スペシャル」は・・・走行約9000kmでこれまた、スポーティなセダンの乗り出し時にはほぼ不回避な、ぎこちない足回りの堅さもなく、同乗している営業担当者が「Mスポですから多少は・・・」とかいう発言がジョークに聞こえるくらいに固さなんてないです。乗った印象がほぼクラウンだったF30非Mスポに比べれば固いのかもしれないですけど、マツダに乗ってきたケツでは全く不快感など感じ取れませんでした。一つ気になることは、この日に都内までナビシートに乗ってきたE91Mスポが固かったので、その乗り心地との対比になったからかも!!!いやーF30世代はMスポなんですね・・・どうでもいいが、この試乗車を500万円で売ってくれ!!!

  そんなバリエーションを持つF30系3erよりもさらにスポーティという、攻撃的な売り込み文句をいろいろなメディアで見かけるのが、ジャガーXEですが、直4ターボ同士の争いに限定するならば、今回試乗した「420グランクーペMスポ」はそのXEをも完全に上回っていたと思います(試乗コースが違うとしても)。なんでこんなに素晴らしい「420グランクーペ」が不人気車なんだろうか・・・。やっぱり今回はジャパンに一杯喰わされたかな?乗り心地だけでなくエンジンも好調すぎ明らかにゴルフGTIよりもいい加速でしたよ!!!(GTIは1400kg&220psだぞ)

  西川さんが言うには、BMW3/4erやジャガーXEよりもさらにスポーティに仕上がっているのが、このアルファ・ジュリアなんだそうですよー。ハンドリングはさらにクイックになり(おー!!!)、エンジンの噴けもさらにダイナミック。420グランクーペとはフロントサスからして次元が違うのよ!!!ってことなんでしょうかね。想像しているものと一致するならば、ちょうど探しているど真ん中のポジションになるので、とりあえずコレに乗らないとクルマ選びがまったく進まないです。個人的には420グランクーペMスポでも大満足ですし、もう十分なんですけども・・・。

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2016年5月26日木曜日

日本市場にはもっとお買い得ですっごい存在感のGTカーがありました!!!

  このスタイリング見てください!!!誰がどう見てもGTカーのスタイリングです!!!超ロングノーズといえば・・・初代(1969年)や二代目(1978年)のフェアレディZですけども、このクルマもいいですよ!!!→「光岡・ヒミコ」動画リンク フェアレディZは現行のZ34と先代のZ33は女性人気抜群のデザインナー中村史郎さんが指揮をとったのがよくわかる、とっても「かわいらしい」デザインが特徴です。アウディTTのようなコンパクトさに凝縮された「美」を醸し出すデザインです。これらをGTカーと呼んでいいのか!?スタイリングから分類すればダイハツ・コペンみたいな位置ですかね・・・。

  ・・・ということで、フェアレディZとアウディTTは除外させてもらいました。しかしもう1台ありました!!!これぞどこからどう見てもGTカーのスタイリングです。初代フェアレディZよりもさらに強調された長いフロントノーズが只者ではないオーラを発しています。富山県にある「光岡自動車」というマイナーなメーカーが作るGTカーが「ヒミコ」です。最初から女性向けのGTカーですよ!!!という意図を予感させるネーミングですが、アルファロメオ「ジュリア」に対抗したと思えば男性が乗ってもいいですよね。

  光岡はクラシカルデザインによる趣味車を作るメーカーだと一般的には思われてますが、まあその通りですね・・・。ただし、モディファイしている年代は1950年代という、日本の自動車産業の中では極めて早い段階にあたる、「オースチンA40サマーセットサルーン」という英国車を日産がノックダウン生産する形式で作られていたクルマみたいです。ガチのお金持ちしかクルマが所有できなかった時代の「貴族イメージ」を、現代のクルマのパッケージで販売するという極めて独特な製品です。つまり昔の工芸品を愛でるというスタンスではなく、極めて貴族文化的で「ロココ」調です。それに対して、VWザ・ビートルやミニなどは庶民文化を基調としていて「新古典主義」的な質実剛健さが光るので、クルマとしての意味合いは「近そう」で全くの「対極」にあるとも言えます。

  日本の高級車というと、レクサスもインフィニティもあくまでコンテンポラリーな「プレミアム枠」を律儀に守ったクルマ作りをしています。ロールスロイスやベントレーが見せるような「ロココ」(あくまで貴族向けという意味)を体現できるクルマは、特別に誂えられたプレジデントやセンチュリーといった公用車だけです。そんな中で唯一ブランド単位で「ロココ」を志向しているのが光岡ですね。ちなみに現行モデルは4車種のようです。

  238万円〜の設定の「ビュート」は日産マーチの設計を使うも全長は4515mmまで延長されています。とはいってもホイールベースはマーチと全く同じで2450mmなので、キャビンの部分ではなく、前後に張り出したオーバーハングの部分が違うだけなので決して広くはないです。ただし外からみて狭そうには見えません。なんとも不思議なクルマです。価格設定も十分に納得できる範囲ではないでしょうか。日産のコンパクトというのは歴代モデルがそうですが、トヨタやホンダよりも品格を重んじる設計なので、マーチというベース車選択はクルマの性格を考えると大正解じゃないでしょうか。

  もう少し大きいキャビンの「光岡」が欲しい人には、ホイールベースも2600mmまで伸びてエンジンも1.5L自然吸気に変わってパワフルになった「リューギ」というモデルがあります。こちらはトヨタのカローラアクシオ/フィールダーをベースにしています。価格は258万円〜となっていて、これまた「ロココ」趣味を楽しむにはえらくリーズナブルです。キャビンスペースを拡大→カローラという着地点がなんとも絶妙です。そしてなんとHVモデルも既にラインナップされてます!!!

  さらに5mクラスのフルサイズがお望みならば「ガリュー」というフラッグシップサルーンがなんと403万円!!!というお値打ち価格です。ベース車は日産ティアナですから、このクラスのFFサルーンでは質感ナンバー1で車内も最も広い設計で非常に快適です・・・これまた素晴らしいベース車選択です。さらに日産自慢の自動ブレーキまで標準装備されていて、性能面でも最先端ですね!!!日産とトヨタを厳選して選んでますから、メンテナンスに関しても安心して乗れますね・・・もし中身がマレーシアや韓国のメーカーだったらちょっと買うのを躊躇ってしまうでしょうけど。

  そしてGTカー「ヒミコ」ですが、こちらも光岡がベース車を厳選したようで、マツダNCロードスターが使われています。「セダンは日産」で「スポーツカーはマツダ」という選択がとても的確です。リトラクタブルハードトップ機能も含めてNCロードスターを流用していますが、あちらは既に新型が登場しているので、「ヒミコ」も「オロチ」のあとを追って間もなく販売終了になるかも・・・。ちなみに「オロチ」というのはトヨタの3.3Lの横置きV6(MZ系エンジン)をミッドシップに積んだ1200万円する光岡のスーパーカーです。ほぼ同じ機構のロータス(トヨタエンジン)の上級モデルよりも割高ですが、ロータスなんて歯牙にもかけないくらいの強烈なエクステリアが売りで、アストンマーティンもマツダも裸足で逃げ出すほどの出来映えです。

  その「オロチ」に負けず劣らず「ヒミコ」もかなり押し出しの強い割にエレガントなGTカーです。価格はちょっと高めの502万円です。ただし他の3台と違って、ロードスターのシャシーを根本的に弄っていて、ホイールベースは3030mm!!!もはやロードスターとは全く別のクルマです。超絶ハンドリングマシンのロードスターの最大の特徴を「要らない!!!」と切り捨てるのはちょっとビックリですが、これはマツダのスポーツカーに捧げる熱意に対する敬意だと思います。

  それにしてもマツダ自慢の「MZRエンジン」を積んだモデルがまだまだこんなところに生きていたとは!!!フォードが撤退し、ボルボがデンソー開発のエンジンに変わり、残るジャガーとランドローバーも段階的にMZRから新開発の「インジウム・モジュラー」に変わるそうなので、この「ヒミコ」はマツダファンそして名機「MZR」のファンにとってはとても貴重なモデルと言えるかもしれません。さらにマツダではなかなか実現しなかったロングホイールベース車への搭載も実現しました。直進安定性が高められた、まさにGTカー仕様のシャシーでハイオク仕様の高回転型MZRはどんなフィールを出すのか!?・・・やべー欲しくなった!!!


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2016年5月19日木曜日

日本で一番お買い得なGTカーはなんと・・・「アノ」ブランドだった!!!

  あまりにも「ニワカ」過ぎで自分でも笑ってしまうくらいなんですけども、GTカーが欲っしーなー!!!! とはいっても・・・さらに厄介なことに「ニワカ」にありがちな本格指向でガチガチなので、ハッチバックにGTウイング付けた「サーキット」ルックなスタイルは「違う」って感じです。近頃多く見かけるのがメルセデスAMGのアレとかスズキのスイスポだったりのデモカー仕様みたいな派手なヤツです。他人が乗っている分には楽しそうでいいね!って思いますけど・・・ちょっとGTカーとはいい難い。

  やっぱりGTカーってのは、どこまでも磨き抜かれたスタイルで、町中にただならぬオーラを発信できる絶対的な存在感が必要だと思います。しばしば休日などに見ることができるポルシェ911と日産GT-Rがその代表格でしょうか。他にもちょっと古いクルマになりますがトヨタ・スープラ(特に最終型)は今でも現役バリバリといっていいくらいのGTカー王道スタイルで、いいですねー。同じトヨタが作るレクサスIS・Fや比較的新しいRC・Fなどよりも断然に「GTカー好き」の心を揺さぶってくれます。

  どうやらトヨタは新しいスープラを企画しているようで、その設計・開発・製造をドイツのBMWとかいう弱小メーカーに委託したようです。このメーカーについてはよく知らなかったのですが、なんと日本にも正規輸入がされているんですね!!!ただし公式HPでその製品を見たらなんだか、ボデーちょっと古くさい断面を使うスタイルで、まるで東欧諸国で見かけるような昔のアウディを連想させます。どうやら日本にも完全にオタク・マニア向けに輸入されているようですね。価格もちょっと高めのマニア価格でした。こんなメーカーに任せて大丈夫なのかな〜・・・なんか嫌な予感しかしないです。

  さらに「なんじゃこりゃ!」と思ったのは、Dセグ?と思われるクラスのセダンでもいまだにサイドブレーキのレバーがセンターコンソールに生えているんですよ!!!日本ではかなり昔に使われなくなっていて、割と最近まではに日本でも一番遅れているとされる広島のマツダというメーカーだけが使ってましたが、さすがに恥ずかしくなって一昨年くらいに廃止してましたね。小型やスポーティなモデルではまだまだ使われていますけども・・・。

  しかしよくよく考えてみると、GTカーにはサイドブレーキレバーがぜひ欲しいですね。別に私は「滑らす」ためとかじゃなくてコクピットデザイン的にいいかなと・・・。トヨタの社長はとても「滑らせる」のが大好きなようですから、このBMWってメーカーに恐らくよく「滑る」GTカー作らせているのかなー。個人的にはGTカーは滑ってはダメだと思っているんですけどね。スープラも決して滑らせるクルマじゃなかったんですけども、トヨタの社長の趣味がヘンに発揮されるとメチャクチャなクルマ(公道の凶器)になりそうですね・・・。

  速いクルマならいくらでもあるので、やっぱりスタイルを追求してほしいですね。調べた限りだとBMWにはデザイン面では何も期待できそうにないです。本当に素晴らしいGTカーを作り上げるつもりなら、ピニンファリーナ(イタリアのデザイン会社)にオファーするべきだと思います。このピニンファリーナは2000年代に入ってあまり市販車のデザインをやらなくなりましたが、それでもその少ない中でアルファロメオ・スパイダー、ボルボC70、マセラティ・グランツーリズモなど、さすがと言える2ドアデザインを送り出しています。ボルボに倣って日本やドイツのメーカーはイタリアのデザインに頼るしかないんじゃないでしょうか・・・ホンダやマツダのようにフェラーリ(ピニンファリーナ)がパクるくらいのデザイン力があれば別ですけど。

  世界的なブランドの中で、バリバリのGTカーデザインを誇る現行モデルって一体どれだけあるの?「アウディR8」「BMWi8」「BMW6er」「AMG・GT」「ポルシェ911」「ポルシェケイマン」「アストンマーティン・DB11」「アストンマーティンV12ヴァンテージ」「アストンマーティンDB9」「アストンマーティン・V8ヴァンテージ」「アストンマーティン・ヴァンキッシュ」「ベントレー・コンチネンタルGT」「ジャガーFタイプクーペ」「ロータス・エヴォーラ400」「フェラーリ・カリフォルニアT」「マセラティ・グランカブリオ」「マセラティ・グランツーリズモ」「ホンダNSX」「レクサスLC」「日産GT-R」「シボレー・コルベット」「ダッジ・ヴァイパー」「ダッジ・チャレンジャー」「フォード・マスタング」。

  結構ありますね・・・しかし最もお買い得であろうフォード・マスタングの日本撤退は悔やんでも悔やみ切れないです。正規輸入の中で最もお買い得なのは!!!なんとポルシェ!!!最も安いGTカーがポルシェというとても歪な状況を一刻も早く変えるためにトヨタとBMWには次期スープラの早期の発売を期待したいです。しかーし800万円〜とかいうとんでもない価格設定で、最廉価はケイマンのまま!!!という可能性もありますが・・・。個人的には「ダッジ・ヴァイパー」の正規輸入に期待したいです。これこそが現代GTカーの理想型じゃないかと思います(約900万円〜なのでGT-R北米価格より安い!!!)。
ダッジ・ヴァイパーの動画


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2016年5月11日水曜日

英国経済復活で・・・いよいよ「タスカン」が再始動するみたいです。

  この20年あまりの間、ドイツブランドや日本ブランドが世界で大活躍するのを、指をくわえて見続けてきたイギリスの自動車産業は、完全に新しい展開を迎えているようです。21世紀に入って巻き起こった業界再編の中で、イギリスの自動車産業はことごとく独立性を失っていきました。日本メーカーも状況はほぼ同じで、トヨタとホンダ以外は全て外資に身売りしましたが、イギリスでは一定規模のメーカーの全てのブランドが身売り・・・。

  ベントレーはVWに、ロールスロイスとMGローバーはBMWに、アストンマーティンとジャガーはフォードにそれぞれ買収されましたが、これら「まとも」な自動車メーカーに買収されたブランドにとっては幸運だったようで、再びクルマを自力で作るだけの開発&製造スキームを、あるいは必要に応じて開発が難しい部分の供給を受けられる体制を作ることができたようです。F1で知名度が高いマクラーレン・カーズが2010年頃から市販車の取り扱いを再開して新型モデルを次々と発表し、一躍スーパーカーシーンの主役に躍り出ると、それに続けとばかりにインドやカタールといった新興国資本を株主として復活したジャガー=ランドローバーやアストンマーティンも、日本に直営ディーラーを建てるなど再び攻勢にでています。

  そんな押せ押せムードのイギリススポーツカーブランドですが、10年前まで日本にも正規輸入を行っていた名門ブランドがいよいよ復活を果たします。一度はロシア資本に身請けされたものの、倒産の憂き目を経て再び英国資本で再建されたのが「TVR」というGTカーや小型スポーツカーが得意なブランドです。英国人の資本家レス=エドガーが「イギリスの誇りを取り戻す」と宣言してから活動が再開し、デザイナーにはマクラーレン・F1を手掛けたゴードン・マレーが登用されたようです。

  英国人が英国人のために英国車の誇りを取り戻すためにGTカーを作っているという話なんですが、・・・日本メーカーで例えれば!?水野和敏さんが日産でGT-Rを作ったみたいなものでしょうか。どう考えても中途半端な仕事で終わるとは思えない雰囲気です。日本でも再び人気が高まっている英国車・・・だけどどうでしょうか?多くの日本のユーザーはジャガーのXFとかXEとかいったドイツ車もどきなセダンを買って満足しているような気がします。あるいは・・・マツダロードスターのコンセプトを拝借して自らのアイデンティティとしたロータス辺りをよく見かけます。マレーシア資本でトヨタのエンジンを使って作られる日本風のスポーツカー・・・もちろんイギリスにもライトウエイトスポーツの伝統はありますけど(コーリン=チャップマンに敬礼)。

  ロータスはともかく、ジャガーのセダンはどうも期待ハズレですね。デザインにオーラが無いです(B◯Wのコピーみたい)。内装も走りも「これは!」ってのが無い・・・作っている連中の熱意ってのが伝わってこないです。それに引き換えエモーショナルだと感じるのはFタイプですね。もちろん900万円以上という価格帯ゆえの「説得力」もありますが、発売当時に誰もが「これは安いのでは?」と感じたでしょうし、ジャガーの売る気マンマンの気合と、「これが新生ジャガーです!!!」という挨拶代わりのインパクト大な待望のGTスポーツカーだったんじゃないかと思います。

  やっぱり英国車を買うならGTカーかな〜・・・。セダンはダメだ。なんて思っていた矢先に舞い込んできたTVR復活のニュースです。免許取りたての頃(2000年頃)に、日本で販売されていた幾多の輸入ブランドの中でもとびきりの個性派だと感じたのが、「TVRタスカン」(2代目)でした。4Lの直6エンジンで350psくらい出るのに、車重が1200kgの2シーターですから、フェアレディZをあらゆる意味で過激にしたような「エクストリーム」なスポーツカーだったと記憶しています。その佇まいは古のフェラーリ・デイトナ(365GTB)を思わせるような「王道GTカー」そのものでした。

  同時期の英国GTカーといえば「ジャガーXK」と「アストンDB7」という稀代の好デザインGTカーの時代なんですが、それでもタスカンの存在感と、孤高ともいえる欧州の古典的なスタイルを正常進化させたような「味の濃さ」を感じましたね。日本の道路だったらXKやDB7よりも断然に目立つはずです。

  新生TVRの門出を祝う「タスカン」後継モデルは、2017年の発売を予定しているそうです。2017年前後に発売を予定している新型GTカーあるいはスポーツカーは、噂の部類も含めてかなりの数に上ります。アストンマーティンのフラッグシップ「DB11」やレクサスLC、ホンダNSXなどが話題ですけども、それ以外に「アルファロメオ・ジュリアクーペ」、「インフィニティQ60(スカイラインクーペ)」、「フォードGT」。さらにマツダ(RXヴィジョン)とDS(E-TENSE)からいよいよ王道GTカーが登場するのでは?という噂もあります。そしてアルピーヌからもスポーツカーが復活らしい・・・。

  数年後の赤坂・六本木界隈の休日の地下駐車場には、見渡す限りのGTカーと高級SUVばかり・・・(それとスーパーカー)といった光景が広がるんでしょうか!?オシャレじゃなきゃクルマじゃない!!とかいう過激なコピーがクルマ雑誌に並び、今以上にプレミアムブランドによるプロモーション合戦が繰り広げられるてそうです。・・・都心でクルマをオシャレに乗る人は、ドイツ車のセダンとか呑気に買っている場合じゃないですよ!!!あと1年しっかりと貯金して2017年以降のトレンドを見極める必要がありそうですね。

2000年頃のTVRタスカンの動画を付けておきます!!!
シフトレバーがカッコいい!!

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2016年5月7日土曜日

GT-Rと同等の加速をするフルサイズセダンがすでに市販・・・おいおい。

  テスラ・モデルS・アメリカ政府の手厚い保護により頭角を表したテスラの大ヒットモデルです。ボデーは大きめのEセグセダンくらい。バッテリーをたくさん積んで航続距離を500km程度まで伸ばしているEVです。フーガがリーフのようなピュアEVになってそのボデーにバッテリーをたくさん積んで航続距離を伸ばした感じのクルマです。発売当初は800万円を下回るくらいだったのですが、最新モデルはいよいよ1500万円にまでなるようです。

  このクルマは年次改良で、価格も上がるけどスペックがどんどん上がるという、なんとも新しいタイプのクルマです。そのスペックの上昇度が、ノートパソコンのメモリーやハードディスクの容量が上がるかのようで、完全に自動車業界の常識を越えてます。その最新バージョンである「テスラ・モデルS・P90D」ではいよいよシステム出力が773psまで到達したそうで・・・スペックだけ見るとケーニッグセグか何かですか!?(笑)。最高出力は0-100km/hの公式タイムが2.9秒だそうですよ〜。

  フェラーリが最新の488GTBでやっと到達した3秒を切るタイムを、4ドアで車重2.3トンもあるセダンが実現してしまうって・・・まあ加速だけがスーパーカーの価値ではないですけど、「BMWアルピナB6グランクーペ・アルラッド」というモンスターセダンが3.9秒を達成すると、今度はおなじみの「アウディS8」がFMCによってV8ツインターボ600psに換装されて3.8秒を誇りますけど、この両者(どちらも2000万円以上!)をあっさり追い越していきました・・・。もうポルシェもアストンマーティンも現行モデルのセダンでは太刀打ちできません。

  7erやSクラスくらいの豪華なボデーながらもGT-R並みの加速しちゃうわけですから、よく考えればこのクルマは全くエコじゃないですね。もはや石油関連企業から利権を奪い取るために新エネルギー発電関連企業が仕掛けたという陰謀論まで噴出しそうです。これに日本の電力会社まで加担して拡販をはじめたらいよいよ怪しいですね。クルマ自体はゼロエミッションですけども、エネルギー消費量はバスとかトラックに匹敵するんじゃないでしょうか。英国価格で約1500万円というスペックを考えればかなりのコスパに感じますけども、このクルマを日本で乗るのはかなり大変みたいです。

  あるユーザーの話によると、家庭用電源で充電しようとすると200Vで40Aも必要なんだとか、しかも充電完了までに要する時間は12時間だそうです。1500万円もするEVなんだから放電にはなんらかの対策が取られていると思いきや、未だに大量の電気を蓄える具体的な方策がないように、電気は「無くなる前に使わないといけない」生ものみたいです。一応後続距離は500km程度はあるようなので、国産のリーフやiミーブほどにこまめに充電する必要はなさそうです。週に1回やれば十分かと。ハイオク満タン(航続距離500kmくらい)で1万円が消えていく高級セダンを基準に考えればいくらか経済的なメリットは見出せそうですが・・・。

  そんなテスラ・モデルSですが英国カーメディア(AUTO EXPRESS)のユーザーアンケート企画で、上位を独占しているレクサス軍団を全て抑えてトップに輝きました。ユーザーアンケートとはつまり「何度故障したか?」とか「満足度は?」とかの統計で、その中でモデルSはイギリスで市販されるクルマのナンバー1を獲得したということです。レクサスが何気にイギリスを席巻していたのもちょっとした驚きですが、それをモデルSがまとめて追い抜かしているとは・・・。アメリカの世界戦略は展開が早いですね。

  テスラに対する現状打破の期待ってちょっとありましたよね? 既存メーカーがセオリー&セオリーな戦略しか取らずに魅力的なクルマが減ってきたなという閉塞感をこのブランドが破壊してくれるのではないか?という期待が。メルセデス、BMW、アウディ、レクサスが主導権を握って利益を出しまくる時代に風穴を開けてくれるんじゃないか? 確かに顧客の評価でレクサスを喰い破って、性能でもBMWやアウディをケチョンケチョンにしているわけですから、ある程度は期待通りなのかもしれないですけども、1500万円のセダンを当たり前のように売るブランド・・・プレミアムを越えた超プレミアムブランドになってしまった〜・・・。これにはちょっと複雑な想いがします。

  アメリカ連邦政府の保護政策というこれ以上ない安全な環境で、ビッグベンチャーとして旗揚げしたテスラでした。当然のようにアップルのようにクルマをよりユーザー本位の製品へと変えてくれるだろう! アメリカの最先端の人間工学による自動車産業の「大転換」が見られると思っていたのは浅はかな読み違えだったようで・・・これからの時代は欲しいクルマは1500万円&相応の維持費を負担しないと乗れませんよ!という資本主義のシビアな「末路」を見せられたのではないか・・・という気が。つまり従来のフェラーリやポルシェのユーザーくらいの財力こそが、クルマを巡る資本主義での最低限のプレーヤー資格だと。なんか敷居が高い話ですね〜・・・。

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2016年4月8日金曜日

ポルシェ718ボクスター 「4気筒がめちゃ速いらしい!これで全てが変わるのか!?」

 「輸入車のスポーツカー」と聞くとなんだかと〜っても貴族趣味な感じがします。例えばイタリアのF社だったりL社だったり、あるいはイギリスの新興勢力M社だったりが販売するガチの「スーパーカー」をまずはイメージします。「こんなクルマを一体誰が買うの?」 ・・・バブルの頃ならいざしらず、低成長のまま20年が過ぎ去ってかなりまともな金銭感覚になってきた日本では、いよいよマニアかプロだけが買うクルマになってきたみたいです。日本では商売にならないと判断したようで、東京MSには「F」も「L」も「M」もすっかり来なくなりました・・・。調べてみると3000万円クラスのスーパーカーは最も多いモデルでも月に数十台が輸入されている程度に過ぎません。もはや「乗用車」ではなく、「競技用」もしくは「投機商品」なんですね・・・。

  一度は話のネタに所有してみたい!と思ってもまずは当然にガレージが必要ですし、都内で屋根付き駐車場を確保するだけでも月5〜10万円くらいかかります。さらに車両保険は膨大な額に上りますし、都内の混雑した道を日中にゆっくりとしたペースで走っていると、突然発火する!なんていう恐ろしいリスクも、大衆的な日本の乗用車よりも圧倒的に高いようです。この手のクルマを公道で走らせる人向けに、エンジンルームに即座に消化液を流し込む装置なんてのも用意されています(これ付けると保険料がほんの少し割安になるらしい)。

  日本車(トヨタ)の感覚では「V8やV10エンジンが燃えやすい」なんてことは考えられないのですが、3000万円もするスーパーカーだと高温多湿に耐えられない性能でも、どうやら許されるようです(わざわざFやLが東アジアにクルマを持ってきてテストなんてしない)。・・・この時点でよっぽどの信者でない限りはスーパーカーの「虚構」に気がつきます。ほかにもまだまだ唖然とさせられることがあるんですが、それはまたの機会に。

  そんなわけのわからないスーパーカーなんぞ「日本には無い」ものとしておきましょう。他にも「輸入車スポーツカー」はまだまだたくさんあります。その中でも知名度ナンバー1ブランドはなんといっても「ポルシェ」です。世界最速に異常な執着を見せるブランドなのでトップエンドのカスタマイズカーになると、FやLと同等の価格になりますけども、一般モデルでは日本価格でもかなり良心的な600万円台から販売されています。そのボトムを担っているモデルが「ボクスター」という2シーター・オープンタイプのスポーツカーです。

  1989年にマツダから発売されたロードスターの大ヒットによって、世界中のスポーツメーカーから「2シーター・オープン(通称ロードスター)」のクルマが次々と発売されました。ボクスターもその時に誕生したの1台です。初代(986型)、二代目(987型)を経て、三代目(981型・現行)で一気にデザインが洗練されて日本でもスマッシュヒットを飛ばしました。日本市場で次々とMTシフトを装備したスポーツカーが次々と姿を消していたこともあって、スポーツカー大好き・絶対MT派の人々から注目を浴びたというのもあったようですが・・・同じ年(2012年)に86/BRZも大ヒット。

  2016年の今見ても十分にカッコいい三代目(981型)ですが、ポルシェのブランド戦略としてあらたに車名を変更して「718ボクスター」となり、エンジンが大幅に変わりました。「718」とはかつて4気筒エンジンを搭載していたポルシェのシリーズだそうで、改めてボクスターを「4気筒」のクルマとして定義するために、なんともドイツメーカーらしい四角四面なネーミングをしてきました。

  1980~90年代のポルシェは、今では想像できませんがアメリカで盛んに叩かれていて、完全に行き場を失った名門ブランドでした。そんなポルシェの存続を支えてきたのは日本のバブル景気で、これが無かったらポルシェはこの世から消滅していただろうと言われています。しかしバブルも1990年代半ばから急速に陰りを見せ始めていて、再び窮地に追い込まれていたポルシェは藁にも縋る想いで、手持ちのスポーツカー「911」のシャシーを切り詰めて急ごしらえでボクスターを作りました。エンジンブロックも911と共通のままで水平6気筒をそのまま使いました。

  その後ボクスターのハードトップ版としてケイマンが登場し、これにより911を小型&軽量化したような設計のケイマンは、911と同じエンジンを使ったモデルでは上位車の911より速い!なんて事態が起こってきたようで、当然にケイマンを指名買いしてくるユーザーもボチボチ現れ始めたようです。911の半額ぐらいのケイマンの方が性能が良くて売れてしまうという事態にポルシェもいよいよ手直しに動きだしたわけです。

  新たに発表された「718ボクスター/ボクスターS」では衝撃ともいえる4気筒ターボへの換装が断行されました。4気筒と6気筒ではエキゾーストの音質が大きく変わってくるので、より深い味わいを求めるユーザーは自然と6気筒ターボの「911」を納得して買うようになるだろうという目論見のようです。

  それでも新たに4気筒化された「ボクスター/ボクスターS」がまたまたメチャクチャ速いらしいです。2.5L直4ターボを使う「ボクスターS」は、996世代の「911ターボ」と0-100km/hの加速タイムがほぼ同じです(4.2秒)。「911ターボ」というのは、911の中でも究極のバージョンとされていて、日産GT-Rが開発時にその性能を決めるターゲットとしたクルマです。4.2秒はRWD駆動のクルマにならば、まずは負けない素晴らしいタイムです(スーパーカー/競技用を除く)。例えばBMWのチューナーとして名高いアルピナのB6(FRモデル)やB4などと同じタイムです。850万円のボクスターSで1000万〜2200万円のアルピナと同等の加速性能というのは、ちょっとお買い得な気がします。

  410ps〜600psで高性能な直6やV8のツインターボを使うBMWアルピナに対して、4気筒ターボ350psながらミッドシップによるトラクションの有利さと車体の軽さで対抗する718ボクスターS。なんだかそれぞれにクルマの個性が引き立ってきて、とてもいい感じになったんじゃないかと個人的には思います。4気筒ターボ化が発表された時には、ボクスター/ケイマンはもう終わった・・・なんて想いも少しはありましたけど、改めて4年が経過しても全く風化しないスタイルも素晴らしいですし、そもそもが日本車のアイディアから生まれたクルマだけあって、サイズも非常に日本の交通事情に合ってます。また予告されていた「値上げ」もボクスター(MT)で630万円から650万円へ20万円程度に収まっているので、性能のアップ分を含めれば妥当な線ではないかと思います。

  直4でスポーツカーを仕立てるのは、日本メーカー各社も得意としてきたわけですが、これまでは一部のジャーナリストによって散々に貶されてきました。世界では伝説の名スポーツカーとして崇められているホンダの「インテグラtypeR」や「S2000」、あるいはスバル「インプレッサWRX STI」シリーズや三菱「ランエボ」シリーズなどへの評価が国内では案外低かったりします。気筒数を意識するのであれば静粛性を要求される高級セダンでやってくれ!と思うのですが、彼らはBMW、メルセデスの直4ターボ化には決して異議は唱えないんですよね。

  スポーツカーだったらある程度は静粛性は犠牲になってでも、ミッドシップだろうがFRだろうが4気筒で高回転まで気持ちよく回せるエンジンを積んだらいいと思うんですよ。ボクスターSの2.5L4気筒ターボも7500rpmまできっちり回るようなので、欧州乗用車の4500rpmでデッドになるクソ・ターボとは前提が全く違うものになってると考えて良さそうです。

  直4のFRセダンはとても許せない設計ですけど、直4のFRスポーツカーならば大いに歓迎したいです!ジャーナリストの節操の無い価値観なんて完全に無視して、ユーザーの良識に基づいて新たに4気筒ターボ化されたボクスターが正当な評価を受けて、さらに多くのユーザーに受け入れられるといいですね。ベースグレードの「ボクスター」は「水平対抗4気筒」の2Lターボで300psです。即座に日本の「あのクルマ」が浮かんでくるスペックです。

  「ボクスターS」の2.5Lターボ(350ps)も・・・かつて「プアマンズ・ポルシェ」と呼ばれるクルマをアメリカでヒットさせた日本の「あのメーカー」が再びポルシェに挑むのにもちょうどいいスペックです。すでに脅威の圧縮比を達成している2.5Lターボが完成しているようなので、あとは「あのシャシー」に積むだけですね・・・。他にもフェアレディZの4気筒ターボ化や、86/BRZの高性能化にとっても良い指針になりそうです。「718ボクスター」は日本のユーザーと日本メーカーにとって良い刺激になってくれそうな予感がします。

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2016年3月1日火曜日

レクサスGS-F 「塊であれ、宴であれ」

  英国ブランド車、その中でも特に高級車の評判がすこぶるいいようです。それに対して性能は申し分ないものの、あまりにも商圏を広げ過ぎたばっかりにやや薄味になりすぎた日本車やドイツ車は迷走気味です。そのおかげもあってか、かなり前に解体されたMGローバー・グループの残骸でしかなかった「ランドローバー」と「ミニ」、それから業界再編の波に完全に取り残されたはずの、「ジャガー」、「アストンマーティン」、「ロータス」、「ケータハム」、「モーガン」、「マクラーレン」が新型モデルを次々と持ってきます。さらにドイツ資本傘下で生きる「ベントレー」と「ロールス」・・・こんなにあるのかよ!なんと見事にドイツ勢や日本勢と同等以上に多彩なブランドが日本で展開されています。

  フォードが撤退を余儀なくされるくらいの御時世なのに、吹けば飛びそうな(失礼!)ほど小粒ぞろいのイギリスブランドにはなぜかそんな気配は感じないです・・・。もちろん「身の丈」にあったビジネスを展開しているということもあるでしょうが、やはりクルマ好きの潜在意識の中で、「英国ブランドの英国生産車」が日本車・ドイツ車よりも着実に「高いステータス」を持つようになったことで、比較的明るい展望を各ブランドともに持てているのではないかと思います。もっともミニ以外は高級車ブランドもしくは純然たるスポーツカーブランドですから、フォードと比べるのは少々筋違いではありますけど。

  メルセデスGLCとジャガーFペース買うならどっちですか?・・・「SUV買うならMBやジャガーじゃなくてボルボ辺りだろ」と横槍を入れられると、ちょっとは正気に戻るかもしれないですけど。ジャガーとベントレーが相次いでSUVを発表しました。ジャガーFペースは「対マカン」でしょうか?、ベントレー・ベンタイガは見るからに「殿上人のSUV」であり、どちらも六本木・赤坂界隈で増殖しそうな雰囲気を持ってます。とりあえず見る限りでは、芸能人が乗りまわしそうな高級車のマーケットを見事に掴みそうな出来映えなんですけど、そう感じさせてくれる要素は、どちらも「英国車ですよ!」という主張がハッキリしているところですね(ドイツ車や日本車は眼中にない!?)。それと同じ島国の住人だからでしょうか? 英国ブランドが打ち出すデザイン意匠は非常に共感できるものが多いです。

  先日も日曜日にダラダラと家に居たらメルセデスから電話きました。どうやら新たに発売したGLCの売れ行きにかなりの不安があるようでして、リストを潰して必死に台数確保に走っている感じですね・・・。元々それほど興味もないクルマなので値引きに関しては特に聞きませんでしたが、価格で競合するジャガー・Fペースがとても良さそうだからな〜・・・と勝手に相手の事情を想像しながらちょこっと話を聞いてました。いよいよ3月ですからいよいよジュネーブMSの開催で、各ブランドからどんどん出てくる「高級SUV」がカーメディアの誌面にずらりと並ぶでしょう。ベントレーにランボルギーニ、マセラティが揃い踏みに加えて、なぜかやる気満々な日産からもエクストレイルのプレミアム提案があったりと目新しさで注目を呼びそうですが、控えめなデザイン!?のメルセデス陣営SUVには少々厳しいコメントが出てきそうです。

  いくら成長市場だからといっても、どんなSUVでも売れるというわけではなく、特にレクサス、メルセデス、BMW、アウディといったプレミアムの定番ブランドにとっては、それぞれのここ数年の取り組みが如実に値踏みされる結果になりそうです。その為にはどこよりも真面目にいいエンジンを作ったり、所有欲が高まるような内外装の演出を地道に磨くなど、いろいろな要素があるとは思います(もちろん一般に認知されるかどうかですけど)。その中でもここ数年のメルセデスは「上手くやっている!」とカーメディアが声を揃えてお墨付きを与えてますが、それが「正鵠」と言える評価だったならば、お客が殺到して忙しい日曜の日中にドブ板的な営業電話をかける暇なんてないとは思いますけどね。

  今ではコンフォータブルな内装なんてプリウスやレガシィでも十分に満喫できますから、カーメディアがMBを絶賛することが多い内装の良さだけで「プレミアムブランド」を名乗るのはちょっと違うんじゃないかと思っています。それよりももっと大事なことは、メルセデス、BMW、アウディ、レクサスにはブランドが尊敬を集められるような「圧倒的」といえるクルマがあるのか?だと思います。それぞれに「AMG」「M」「RS」「F」といった「記号主義」こそ採用してはいますけど、どうも昨今のモデルはどれもケツの穴が小さい!?ような気がします。日本で健気に営業を続ける英国ブランドの強みと言えば、やはり「圧倒的な存在感」です。12気筒エンジンを2ドア車にぶち込むといった「スーパーカーまがい」なクルマはもちろんですが、ベントレーやアストンでは入門車とされる8気筒のモデルでも・・・一言で片付けるならば、プレミアムカーのお手本のようなブランディング(演出)が見事に様になっています。

  ベントレーと同じグループであるアウディや、ロールスロイスを抱えるBMWが、やや控えめで小振りなモデルを展開するのは、戦略上やむを得ないことだとは思います。残った2つは当然ですが、「メルセデス」と「レクサス」にはそれなりの覚悟があるようで、それぞれに「ベントレー」や「アストン」に対抗できるクルマ作りを意図しているのが伺えます。メルセデスが掲げるのはAMG専売の「GT」と8気筒と12気筒の2系統だけで仕立てる「Sクーペ」の2台。このどちらかのオーナーになれれば・・・とりあえずフェラーリ乗りからナメられることもないでしょうし、老若男女問わずにあらゆる人々から「名士」と尊敬される存在にもなれるでしょう。どちらも新車で買っても2000万円まではいかないですし、スーパーカー並みに値落ちもすくないでしょうから、下手な高級車を買うよりもよっぽど経済的だと思いますよ。だけど昨今の日本市場ではこの2台の存在はそれほど知られずに、A45AMGといったどうでもいい「平凡」なクルマばかりが注目されているのが残念です・・・。

  一方のレクサスの看板モデルは1989年から一貫して最上級サルーンである「LS」なわけですが、このクルマは法人車の割合が圧倒的に多いというデータが示すように、これはあくまで「カンパニーカー」のラスボスに過ぎません。知っている人からみれば経費で買ったクルマと陰口を叩かれるのがこのクルマの悲しい宿命です。LSとSのオーナーは家業を次いだ2代目、3代目が多いのは事実です。先日のデトロイトMSでは、新たなレクサスのフラッグシップとして「LC500h」という2ドアのラグジュアリー車が登場しました。これはレクサスが「カンパニーカー・ブランド」から「プライベートカー・ブランド」へ新たな一歩を踏み出す決意の表れだと思います。「LS」に乗るのが嫌な人向けの待望のラグジュアリー・クーペになりそうです(2ドアは経費処理すると「怖い」らしい・・・)。

  そしてもう1台。昨年12月の発売以来いまいち話題にならない。プリウスに完全に喰われてしまっている可哀相なモデルが「GS-F」です。本体価格1200万円のEセグセダン・・・というだけで日本市場のユーザーからはリアクションがかなり薄く、というより完全に無視されていると言った方がいいかもしれません。そういう不憫なクルマだから気になってしまう・・・これが自分の性分であることはわかっているのですが、このクルマはそんな理由などなくても「素晴らしい」と思いますけどね。

  日本の自動車産業が時代遅れと言われた10年前、「クルマ屋はミライが無い」と世間はあざ笑っていたように記憶しますが、現在も兆円単位の売り上げを誇る日本の製造業のほとんどが自動車メーカーです。世間では台湾によるシャープの買収が取りざたされていますが、電機トップのパナソニックでもトヨタ傘下のデンソーやアイシンより遥かに下の売り上げしかありません(なんで世間はそこまでシャープに固執するの?)。そういった荒波を乗り越えてきた日本の自動車産業が、さらに力強く、多くのユーザーを巻き込んで進見続ける「うねり・ムーブメント」のためにも、期待された「旗艦」といえるモデルだと思うのですよ。

  「GS-F」は端的に言ってしまうと、トヨタのクルマ作りの中に鎮座する「巨魁」だと思います。そう臆面もなく言えるようなモデルをトヨタが生み出したことに、まずは「最敬礼」することこそがクルマ好きの正しい姿勢かなと・・・(それから検分)。やはり「1200万円」というだけで否定すべきでもないですね・・・5年後に600万円で売れるならば、ポルシェよりも価格の下落幅は少ないと言えます。いや、金額じゃないです!レクサスが英国ブランドと互角に並び立つために「挑戦」にしたことにこそ価値があると思います。かつて「フェラーリは過去のクルマ」と言い放ったホンダのNSX陣営は、後世になって決して不遜などいうレッテルは貼られませんでしたし、間違いなく大きな足跡を残しました。

  初代NSXが伝説を作っていたころ、トヨタのアリストターボも「市販最速セダン」という称号を得ていました(GSの前身モデル)。セルシオもスープラもソアラもあったトヨタにあっては、一般の認知度はそれほど高くはなかったでしょうが、クルマ好きからはめっぽう愛された名車でした。簡単に言ってしまえばスープラのエンジンをクラウンのボディに押し込んだ、いわゆる「改造自動車」というジャンル(ランエボ、GT-Rなど)なんですけど、この手法は今では少なくなりましたが日本車とドイツ車がそれぞれに覇を称えた「得意技」でもあります。

  いまでもBMWやメルセデスはせっせと改造自動車を市販してますけども、失礼を承知でいうと・・・完全に煮詰まってますね。もうすでに新しい3シリーズの開発が始まっているので、次のM3の企画もあると思うのですが、現行の何ら影響力を持たないM3を放置して一体どこへ向かうというのでしょうか? A45AMGの次なんて、もう想像もしたくないです・・・。何も勝ち取れなかった「なんちゃって高級車」の亡骸が、「輸入車ガイドブック」には累々と積み上げられています。

  そうした迷える子羊ブランドに、目指すべき指針を与えるクルマ。1000万円以上の巨費を「趣味」に投じるとするならば・・・時代を区切るだけの器量を持った名車を選びたいものです。
(熟々と書いていたらヘンな着地点になってしまいました〜・・・すみません)


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