2013年12月10日火曜日

マセラティ・クワトロポルテ 「立派過ぎる先代は重い十字架だ」

  新型Sクラス(W222)の評判がすこぶる良いようです。よっぽどの欠陥車じゃ無い限り1000万円クラスのクルマに評判が良いも悪いもないと思いますが、この「不自然な賛辞」が自然と巻き起こる背景には、先代(W221)モデルを初めとした既存モデルへの様々な不満が潜在的にあったのだと思います。W221は2005年のデビュー当時には高級志向のラグジュアリーカーとしての性格をさらに強めたモデルだったのですが、さすがに登場から8年経過していてさらにクラスの顔といえる存在感から、後発のライバル車に徹底的にマークされれば、見劣りしてしまう点も多くなってしまいます。

  しかし実質的にW221に対する不満を募らせた張本人と言えるライバル車はほぼ同時期に登場したレクサスLSと、W221よりも前の2004年に復活した5代目クワトロポルテであり、2009年頃に相次いで登場した現行のBMW7、アウディA8、ポルシェパナメーラはW221の足元にも及ばない残念な高級車でしかなく、発表当初の印象も薄れた現在ではほぼ存在感は無い(買う理由がない)クルマです。つまりW221は先に発売したクワトロポルテに結果的に完敗したと言っていいでしょう。

  性能でラテン車を蹴散らしたゲルマン車ですが、このクラスのクルマ作りとなると逆に全く歯が立たなくなるのは、W221と5代目クワトロポルテの関係を見ればよく分かります。もっともマセラティ>メルセデスかというとそうでもなく、2000年代のマセラティの成功はデザイン面で大きく協力したピニンファリーナの力によるところが大きいです。5代目クワトロポルテとそのクーペ版にあたるグラントゥーリズモの2台の内外装のデザインは、歴代のマセラティ車の中でもずば抜けていて全く異次元の出来です。まあ年配の評論家は昔のマセラティを神格化して語る向きもあるようですが・・・。

  他力本願のマセラティに対して、メルセデスは表面的には自力で新たなる高級車のブランドイメージを再構築し、新型Sクラス(W222)として結実させました。メルセデス独自の「宇宙船コクピット」モチーフと、偉大なるライバル・クワトロポルテをリスペクトしたかのような「色気」のある色彩豊かな内装へと変貌を遂げ、W221に対する積年の不満へ誠実に対応していて、この点を評論家の皆様が大絶賛しているようです。もちろん同じようにマセラティの色彩にインスパイアされたレクサスLSや日産GT-Rなども同様の進化を遂げています。

  世界の最高級サルーンには大きく分けて3グループが存在し、英国伝統デザインを受け継いだロールス、ベントレー、ジャガーのグループと、マセラティクワトロポルテのフォロアーに属するSクラス、LS、GT-R(ちょっと毛色が違うクルマだが)。そしてそのどちらにも属さないやや質素なオリジナル・ゲルマン・サルーンのアウディA8、BMW7、パナメーラに分けられると言えます。惜しくも生産が終了した5代目クワトロポルテは、孤高の存在であった英国サルーンへ対抗する最高級車の1つのスタイルを確立したと後世に伝えられる名車になっていくと思います。

  そして今年から発売が始まった6代目クワトロポルテですが・・・ほぼ先代からのキープコンセプトの域を出ていないです。まさかのSクラスがパクリ・コンセプトでなり振り構わず猛追してくるとは思っても見なかったのでしょうか。日本でもこれまでの遺産を受け継いだ独自の立ち位置によってSクラスやレクサスLSとシェアを分け合う事が予想されますが、何度見ても先代の方がカッコいいと思うのは私だけではないはずです。これで顔がそっくりのEセグセダンのギブリが日本にも投入されたら、いよいよ微妙な立場に追い込まれてしまいそうな気もします。せめてジャガーXJのような後ろから一目で分かるような特徴のあるリアを備えてほしかったですね・・・。


2013年12月5日木曜日

アルファロメオ・4C 「チャレンジ精神は報われるはず」

  RX-7、NSX、S2000、ケイマン・・・たとえ実用性が限りなくゼロに近くても、今なお世界中のファンから「人類の遺産」というほどの熱い支持を受けています。それもスポーツカーに偏向したマニアだけでなく一般の人々からも好意的な視線が送られているのを感じます。なんだかんだ文句を言うこともありますが、クルマ好きというのは全般に心が広くて、博愛の精神を持ち合わせています。

  そんな事実がどれほどアルファロメオに勇気を与えたかは分かりませんが、来年にも発売されると言われる「アルファ4C」は、歴史を作ってきた幾多のエクストリームなスポーツカーの系譜に、大きな足跡を残すであろう大胆な設計の「新しい」スポーツカーとして完成しました。

  カーボン・ファイバー・レインフォースド・プラスティック(CFRP)製のモノコック構造のボディはこのクルマのオリジナルではないですが、3000万円超のスーパーカーでしか主な採用例がなく、1000万円を切る価格帯のクルマにはあまりにもコストに大きく跳ね返る(実際はそこまでではないようだが・・・)ので、それだけでも革命的な出来事です。もちろん外板だけなら100万円台の軽自動車でもカーボン使えるようですが、モノコック構造となるとやはり勝手が違うはずです。

  鉄鋼メーカーに多くを依存しきっている日本メーカーにはなかなか出来ない芸当ですね。横浜に本拠がある日産などは土地柄もあって鉄鋼メーカーとは完全にズブズブで、世界を驚かせたGT-Rも最初から鉄板ありきの設計でした(というよりGT-Rは鉄鋼メーカーが設計したといっても過言ではないくらいだとか・・・)。プライベートジェットを作るなど、航空機産業にも片足を突っ込んでいるホンダならばカーボン・モノコックは割と身近な技術なはずですが・・・。

  フルカーボンにミッドシップ!とまあ新設計なんで斬新な方向に突き進みます。FRにしたら軽量化が台無しですから当然といえば当然です。ボディと設計にここまでこだわることができるのは、エンジンを新たに新調しなくて良いというアルファロメオの事情があります。まだまだその良さが世界に伝わっていないジュリエッタの最上級グレードに搭載されている1.75Lターボエンジンをチューンナップして流用しています。

  どっかの書物の書いてあったのが、アルファの4気筒エンジンは10年以上前から定評があり、ホンダの4気筒と並んでピストン速度が圧倒的に速く、ロングストロークエンジンでも規格外の高回転を実現する技術を競いあっていて、そんなアルファロメオが作った中型車向けの究極形がこの1.75Lエンジンで限界を超えるためにショートストロークへと回帰しています。これが手持ちのスポーツエンジンが無くなったマツダに供給されて次期ロードスターに載るのでは?と密かに期待しているのですが・・・。

  この4Cと同じようなコンセプトのクルマをつくるメーカーにロータスがあります。耐久性能に特化したトヨタ製エンジンを使うメーカーとして知られ、非力なエンジンでも軽量かつミッドシップで高い動力性能を得るというコンセプトですが、最近ではトヨタのヤマハ製造のエンジン(トヨタ版V-tecと呼ばれる可変バルタイの高効率エンジン)が供給されなくなりやや魅力が失われつつあります。そんなロータスに変わって、ホンダに匹敵(凌駕?)するアルファの傑作エンジンを搭載し、車重もさらに軽くなったライトウエイトスポーツの究極形となった「アルファ4C」には世界中から暖かい拍手が送られるはずです。

 

2013年12月3日火曜日

アウディS3セダン 「日本のカーエンスーが求めるイディア?」

  東京モーターショーに持って来たということは、いよいよ日本で売る気満々なようですね。完全に日本で「波」に乗り遅れているアウディは相当に焦っているようです。ゴルフの共通設計という"弱点"を持つので、どう間違っても大ヒットにはならないだろう新型A3の発売を一応しましたが、もはや日本市場はCセグハッチバックに食傷気味で、残りは全部アクセラが持っていってしまう予感です。

  次期TTも絶賛開発中ですが、アウディの次世代のテーマはズバリ「棺桶からバスタブへ」といったところで、日本車のお株を奪うくらいの徹底的な軽量化に邁進しているようです。ちなみにメルセデスもBMWもほぼラインナップ全てを軽量なモデルへと置き換えを進めています。このS3もアルミボンネットで軽量化されているようで、ベースグレードのA3は1.4LターボのFF車で車重わずかに1250kgで同じCセグセダンのトヨタプレミオ/アリオンと同水準まで軽くなっています!ドイツ車もいよいよトヨタのような乗り味になっていくのでしょうか・・・。

  それはさておき、S3は2LターボでフルタイムAWDですから、1500kg前後になってしまうのでしょう。とりあえず300psのAWDとなるとコーナーで激しくボディがよじれますから、耐久性という意味では、ある程度は車重があったほうが安心して乗り続けられるかもしれません。

  なによりこのクルマの最大の魅力は、日本のクルマファンが長年求めていた”オール・イン・ワン"のホットセダンの理想型にかなり接近していることです。1998年にトヨタがアルテッツァを発売した時にトヨタの"支持率"が急上昇しましたが、このS3にアルテッツァのようなドキドキ感を覚える人も少なくないはずです(価格はともかく・・・)。

  実際にはこのS3はアルテッツァやかつてのアコードやレガシィB4のような5ナンバーサイズではなく、BMW3に匹敵する1800mm幅なのですが、コンパクトなのにスタイリッシュに見せるデザインが、かつてのカローラやサニーを思い起こすようなノスタルジーを掻き立てます。それでいて性能は、日本国内ではとても使い尽くせない最高速250km/hを誇ります(だからどうした?)。とりあえずAWDでBMWやメルセデスのハイパワーFRよりも軽快に加速するだけでも魅力を感じます。ちなみに0-100km/hは直6ツインターボのアルピナB3と同等のタイムです。

  4500mmサイズの4ドアセダンにどれだけの実用性があるかとなると微妙なところですが、ゴルフなどのCセグハッチと同等で、BMW2のような2ドアよりは確実に上です。アクセラセダンみたいなものと考えれば、十分に高い実用性と言えますし、これに"ハイパワー"が加わり、さらに"ノスタルジー哀愁"を感じさせるデザインですから魅力十分だと思います。同じようなパッケージのクルマに「スバルWRX」がありますが、プレミアムブランドの内装が付いてくればなかなかいい勝負になるんじゃないでしょうか?



  

2013年11月29日金曜日

ホンダ新型NSX 「写真写りがちょっと悪いのかも・・・」

  カラーリングによってイメージが大きく変わるのかもしれないですが、青白く見えるくらいに透明感のある白に塗装された新型NSXコンセプトは、写真で見る印象とは全く違った好デザインのクルマでした。アクの強いフロントマスクと大型化したボディのイメージを強く感じていたので、今でも中古車が高値で取引される初代NSXの”再現”とはいかないだろうと勝手に思っていましたが、そんな印象は一目見ただけで吹き飛びました・・・これ欲しいです!

  大型化したはずのボディサイズですが、実車のデザインを全体の印象から見るとGT-Rやコルベットのように大きく見せる作りではなく、むしろ”繊細”という形容がハマるような造形をしています。確かに新しいデザインなのですが、非常にまとまりがあって新しいものに不必要に感じてしまいがちな違和感が予想以上に「ない」です。なんかコンサバなデザインを見ているような安心感だあるのです。それでも似ているクルマがかつてあったか?というと有名なところでは何一つ思いつかないのですが・・・。

  SH-AWDというホンダの次世代ハイブリッドの高級スポーツ向けのものが使われることが、1年以上前からアナウンスされています。この1年でライバルメーカーも次々と新しいシステムを開発するようになり、AWDハイブリッドももはやトヨタとホンダの2大HV先進メーカーだけのものじゃなくなりました。まもなく日本でもリリースされる新型スカイラインはHVのAWDと新しいハンドリングシステムをセットにしてホンダよりも先に発売することになりました。日産はクリーンディーゼルもマツダより早く国内投入するなど、技術面に関しては闘争心を剥き出しにするようです。SH-AWDで来年発売されるレジェンドを狙い撃ちにしたようです。

  日産だけでなくVWグループのアウディとポルシェも豊富な開発資金を背景に、高級スポーツにPHVを組み込んだモデルを用意していています。発売時期もちょうどNSXの前後に重なりそうですが、これに関しては同時期発売はホンダとしては望むところでしょうか。それにしても新型NSX開発のアナウンスこそ積極的に行っていますが、発売時期はどんどん後ろにずれ込んでいくので、ホンダのやり方はどうも発売までがじれったいですね・・・。

  

2013年11月26日火曜日

ジャガー・Fタイプクーペ 「2シーターFRクーペという個性」

  ジャガーの新型スポーツ「Fスポーツ」にハードトップを配したクーペが登場しました。ジャガーというブランドも世間ではずいぶんとナメられているようで、確かに高級車ブランドとしては存続が危ぶまれるような一面もあるせいか「斜陽」なイメージがあるようです。それでもこのメーカーは必死になって今もそのラインナップに「魂」を込め続けていると感じている人も少なくないようです。私もジャガーに頑張ってもらいたいと思っている一人です。

  2シーターのFRクーペしかも価格が1000万円オーバーとなると、もはや小市民の乗るクルマではなく、ゴルゴ13のようなスペシャル・エージェントが愛用するマシンかもしれません。しかし情報化が進んだ現代は、スペシャル・エージェントの時代と言ってよいかもしれません。パソコンなどの情報機器さえあれば、過疎地域に住んでいてもビジネスが出来てしまいます。テレビも新聞も百貨店も書店も”ネット"という悪魔に飲み込まれていくのは時間の問題ですし、すべてのBtoCビジネスはネット広告に牛耳られていくはずです。そして組織に属しないで好きな仕事をする人もどんどん増えていくでしょう。

  組織に属しない自由な空気を吸っている人間の特典は、「好きなヤツだけと付き合っていけばいい」「好きなところに住んでいい」「好きなときに休んでいい」「好きなクルマに乗っていい」・・・・、まあなんでも「好きにしろ」ってことです。余計なことをダラダラ書きましたが、このジャガーFタイプというクルマが新たに世界に現れた理由をあれこれ考えると、日本にもアメリカにもドイツにも"ゴルゴ13"が今後増えていくだろうという「見通し」こそが答えなんじゃないかと思うのです。

  別に1000万円以上する高級車じゃなくて、ジムニーでも別にいいとは思うのですが、高級車にはそれなりの「意味」があります。組織に属しない人間にとっての必須アイテムは高級時計なんだそうです。とくに中国や台湾に行って仕事をするならば、100万円くらいの時計をしていかないとまとまる話もなかなかまとまらないのだとか、いつかの「私の履歴書」にそんなことが書いてありました。つまり一匹狼のエージェントがジャガーFタイプでクライアントの元を訪れれば、「コイツなら信頼できそうだ」となるわけです。そのための1200万円ならお手軽な投資と言えるかもしれません。少なくともセルシオに乗っている人間よりは間違いなく信頼されるはずです。

  レクサスLSの現行モデルよりもずっと「自由な空気」を持ったビジネスカーこそが「Fタイプ」の本質なのでは? 2シーターのFRクーペは「アングロサクソン」のクルマです。ジャガーもそうですが、アストンマーティン、シボレーコルベット・・・英米メーカーが本場です。20世紀のアングロサクソンの成功の象徴と言ってもいいかもしれません。そんなクルマで日本人が調子に乗っていると笑い者なのかもしれませんが、ここまでアメリカナイズされた日本社会でマツダだ!スバルだ!言ってても虚しいだけじゃないですか? 経済そのものが「アングロサクソン」のルールで動いているのだから、フェラーリなんかじゃなくDB9こそがビジネスの流儀!と言い切ってしまっていいでしょう・・・。

  さんざん偉そうなことを書いてきましたが、もちろん毎月のように数千万単位の仕事が舞い込む「敏腕」のみに許される生活です。まだまだ日本にはそういう文化は早いかもしれませんが、TPPが結ばれれば日本も晴れて「アングロサクソン」のルールに支配されるわけです。東京MSでジャガーFタイプクーペをぼんやりと見つめながら、ドイツ車やレクサスなんかじゃなく、このクルマに乗ったヤツが勝者なんだなと感じた次第です。私のようなボンクラでもなんだか心の奥に闘志がひしひしと湧いてくる想いでした・・・。
  

  

2013年11月15日金曜日

フェアレディZ・ニスモ 「軽くできない構造上の欠陥」

  クルマを速く走らせるには何が必要かを一番良く解っている日産が、大排気量NAのFR設計にこだわって作り続けているスポーツカーがフェアレディZです。6気筒エンジンを作らせたら世界一の日産だけあって、ハイパワーが正義のアメリカで今も売れ続ける人気モデルのようです。北米日産の顔といえる立ち位置から、ここまで大きなコンセプトの変更もなく、ズルズルと作り続けているようです。しかし実用性の低さから、だんだんと日本からはフェイドアウトしている印象もあります。

  実際に日本で新車で購入したユーザーが不満を持ちやすいクルマのようで、いわゆるミスマッチを生みやすいようです。ほとんど走ってないのに年数だけ経っている中古車が目立つのもこのクルマの特徴だったりします。たしかに気に入った人は他のクルマが目に入らなくなってしまうほど、中毒性の高いクルマなのですが、やはり2シーターなのに3.7Lで333psを発揮するエンジンはいくらなんでもやり過ぎで、ボクスターSやケイマンSよりも過激なクルマと言えます。

  一般的にポルシェ911と日産GT-R及びスカイラインがライバル関係にあると言われていて、それぞれのショートデッキ版が「ケイマン」と「フェアレディZ」となります。FRのフェアレディZはホイールベースが短くなったためスカイラインよりもピッチ方向に大きく荷重が変動しやすくなっていて、せっかく車重が軽くなった分のアドバンテージが生かせないクルマと言われています。つまり後輪にトラクションを保持し続けるのがかなり難しい設計になっています。

  一方でミッドシップのケイマンはホイールベースを切り詰めても、Zで起こるような弱点は出にくく、むしろハンドリングが冴え渡るので、この2台を比べるケイマンの方にクルマとしての完成度の高さがあります。フェアレディZは少しでもこの弱点を無くすためにロングノーズのスタイルを採用してエンジン搭載部をフロントミッドシップの位置にしたり、BMWと同じように後輪への荷重が十分に確保できるように、前後重量配分に留意した設計をしています。

  しかしこの設計がそもそもBMWと同等と言える欠陥となっていて、前後重量配分を限りなくイーブンにするために車体後方にエンジンと釣り合うだけの重さをぶら下げなくてはならず、車体重量を下げることに限界があります。マツダのロータリーエンジンやスバルのボクサーエンジンはフロントミッドシップに小型軽量でハイパワーのエンジンを積む事でポルシェに匹敵する性能を引き出していましたが、フェアレディZは高級車に使われる3.7LのV6エンジンをそのままドカンと載せてしまっています。

  たしかにこのエンジンは車重が2.7トンほどある日産製の救急車にも使われる強力なものですが、搭載車はいずれも車重を気にしないようなクルマばかりです。そこにラインナップされているフェアレディZは見た目よりももずっと重く、そういうクルマとは知らずに買ってしまう人が驚いてすぐに手放すようです。そういうことをあまり気にしない女性ドライバーに愛好者が多いようですが・・・。

  トヨタ(86)・スバル(BRZ)・マツダ(ロードスター/RX-7/RX-8)・ホンダ(S2000)が徹底的に考えた日本向けスポーツカーを作ろうとしている中で、完全に我が道を行っているフェアレディZですが、新しく登場した「フェアレディZ・ニスモ」は日産がこの中途半端な立ち位置で不人気となっているスポーツカーに再び魂を注入すべく作ったスペシャルモデルといったところでしょうか。VQ37VHRエンジンは直6時代のファンからは相変わらず批判されていますが、そろそろ日産のメカチューン熟成によってかなり良いものになってきたようです。

  スカイラインも国内は全車ハイブリッド化される中で、ガソリンNAを味わうクルマとしての価値は確かに認めますが、レクサスIS350やマークX350とは明らかに違うと唸らせるようなスポーツカーとしての「才能」が欲しいかなという気がします。ガルウイング付けて、可変リアスポイラーとかタルガトップとか「非日常」を楽しむアイテムでもあれば、所有そのものに価値も生まれてくるとは思うのですが・・・。

  

2013年11月7日木曜日

インフィニティQ50Sに対抗する「新世代GT車」は?

  いよいよ日本でも発表が間近と言われている、新型スカイラインこと「インフィニティQ50」は、日産の開発陣が「最後の力」を結集した究極のGTセダンになっているようです。早くも海外動画ではその圧倒的な走行性能が話題になっています。ハイブリッド車でも全く妥協しない360psオーバー(レクサスLS460に匹敵)の出力で1700kgの車体をしばき倒します。ノーマルグレードのDセグセダンでこんなことやってるクルマは世界中見渡してもないです。200psでズルズルと車体を引きずって走るレクサスIS300とは根本的に違うコンセプトのクルマです。

  「価値ある高級車」を作りたいという日産の思想は素晴らしいです。噂される価格も450万円前後だそうで、現行では最高のDセグ"GT"セダンと言える「レクサスIS350」よりも70万円ほど安くなるという抜群のコストパフォーマンスです。ちなみにメルセデスC350が705万円でBMW335iツーリングが720万円ですが、この2台を軽く凌駕する性能を新型スカイラインは標準スペックで発揮します。

  メルセデスやBMWでもお手上げなのに、マツダやスバルじゃもはやどうすることもできないですよね。いよいよDセグ"GT"も新型スカイライン以降は廃れていってしまうのではないかと心配してしまいます。ホンダやフォードでもよっぽど無理しないと500万円程度で対抗車種は用意できないと思います。BMWも4シリーズなど悠長に発売している場合じゃないはずです。これらが日産に追いつくためには、新型パワーユニットに加えて、重量増でもハンドリングを確保する新機構の開発と、スカイラインに匹敵する堅牢なシャシーを用意しなければいけません。

  今後はBMW・マツダ・スバルといった中堅メーカーはCセグで新たに"GT"車の理想を追っかけていくことになりそうです。この3社は揃って日産のライバル筋にあたるトヨタの友好メーカーです。今後はレクサスとともに「スカイライン包囲網」というべき個性的な”GT”ラインナップを増やしてくれると思うのですが・・・。

  レクサスとBMWはどちらも400psオーバーのスーパースポーツ級“DセグGT"をまもなく出します。しかもご丁寧なことにラインナップが被らないようにレクサスは「V8」のRC-FでBMWは新開発の「直6ターボ」のM3・M4と作り分けてあります。特にBMWの新型ターボは先代のV8搭載のM3よりもさらに出力がアップしていて、日産GT-Rのツインターボに似た機構になっているのだとか・・・。

  マツダとスバルも今後スペシャリティ"GT"を幾つか用意するようですが、こちらもラインナップが被らないようにしているようで、マツダはディーゼルとメカチューンで高出力化されたNAガソリンの2本立てで、アクセラをベースにしたスポーツモデルが登場します。スバルもやはりインプレッサをベースにしているのですが、こちらは新開発の1.6Lターボを使ったホットハッチとワゴンで「実用性の高い」欧州で選ばれるような王道"GT"を出すようです。さらにトヨタとコラボしている86/BRZの年次改良で「4座」ライトウエイトスポーツというジャンルの拡大も狙っています。

  すでに発売が発表されているまたは存在が確認されている「トヨタ陣営」の即戦力"GT"を挙げると「マツダアクセラディーゼル」「スバルレヴォーグ」「レクサスGS-F」「レクサスRC-F」「BMW・M3/M4」・・・。さらに価格と性能で新型スカイラインにかなり接近しているのが「BMW235iクーペ」です。トヨタプリウスの軽量化技術を使っていて、320psながらスカイラインよりも300kgも軽く、0-100kmを4.8秒で駆ける俊足マシンです。価格も500万円台で出てくれれば、スカイラインのスポーツモデル「インフィニティQ50S」とほぼ同等になるでしょう。もちろん車体は小さいですが・・・日本の峠には好都合なはずです。期待して待ちたいと思います。


関連記事「BMW2シリーズ〜瀕死のブランドを救うか」



 

2013年10月11日金曜日

レクサスLS 「200万円で買える世界のトヨタの頂・・・」

  たとえ15万キロオーバーの過走行車であっても、レクサスLSは全車がV8エンジンなので耐久性も高く(単純に直4の2倍)、30万キロくらい軽く絶好調で走るらしいので、実質5km/L程度の燃費さえ気にならなければ5年落ち200万円は相当にお買い得です。

  それでも新車乗り出しで1000万円するクルマが5年で200万円!はいくらなんでも値落ち幅が大き過ぎる気がします。しかも10万キロ超のクルマだけでなく、6万キロ前後の通常走行車でも300万円を下回るクルマがたくさんあります。しかも日本のLSはフロントデザインの大規模な変更は行われていますが、まだFMCをしておらず全てが現行モデルなのにこと「下落」です。実質的なFMCと言えるくらいの過激なフロントマスクの変更がありましたが・・・。

  新型グリルの搭載だけでなく、LSの中古車がここまで安くなる理由は他にもあります。2008年くらいまではリーマンショック前ということもあって、今とは高級車に対する認識もだいぶ違っていたようです。当時はまだレクサスが出来て日が浅く、新しいものが好きな日本人のお金持ちが興味を持ったため、LSも相当に売れました。法人名義の割合が多いのは事実ですが、実際は社用車としての利用よりも多くは個人利用しているようです(経費で落としているだけ)。それだけLSにステータスがあったわけですが、まさかトヨタブランドのクルマよりも劣悪な下取り価格の下落が待ち受けているとは思いもよらなかったわけです。

  2008年以降の経済不況はクルマ産業にも大きな影響を与えました。欧州の中堅自動車メーカーはことごとくインド、中国、カタールなどの資本下へ売却され再建の道を進んでいますが、一時はクルマが全く売れずに日本から事実上撤退を余儀なくされるメーカーが続出しました。またこの不況によりアキュラやインフィニティの日本参入を白紙撤回される事態になりました。

  これらはレクサスにとっては追い風だった部分もあるようですが、高級車ブランドの需要がレクサスに過度に集まったことで、供給過多に陥り中古車価格に大きく影響するようになりました。中古車価格の暴落は新車販売の低迷にも直結し、下取りを考えるならレクサスより輸入車ブランドの方がお得という状況になっているようです。

  この頃からレクサスは「ブランド活性化」を図るためにフロントデザインをFMCを経ずに大きく「カスタマイズ」する最先端のブランドビジネス戦略を展開するようになりました。日本でポピュラーなプレミアムブランドの中では、BMWとアウディはFMC以外でのエクステリアの変化が少なく、レクサスとメルセデスはMCでも大きな変更を加える傾向があり、大きく2つに分かれるようになっています。

  クルマの性能で勝負するのがBMWとアウディで、ブランディングで勝負するのがレクサスとメルセデスと安易に分類するのはどうかと思いますが、どちらも一長一短あって、BMWとアウディは「鮮度」を感じないという声もありますし、レクサスやメルセデスはデザインの劣化が早くなる傾向があります。

  結局のところ中型車にウエイトを置くBMWとアウディ、大型車にウエイトを置くメルセデスとレクサスの戦略上の違いなのだと思います。大型車の販売が滞りかけた2008年以降はメルセデスもレクサスもなりふり構わずのフェイスリフトを展開するようになり、顧客にモデルの買い換えを半ば強要しました。その結果として、大量発生したのが200~300万円の5年落ちLSだったり、イヤーモデルの新古車で700万円まで引き下げられたSクラス(大抵は350だが・・・)だったりするようです。

  他にもジャガーXJ、BMW7、パナメーラなども昨年モデルの新古車で走行1000km程度のものが700万円台でたくさん売られるようになっていて、マセラティ・クワトロポルテ以外は超高級車とはいえ大した評価がされていないのがよくわかります。それでも新車を買ってくれる顧客に優越感を存分に味わってもらうために(買い換えを促すために)、今後はますます「フェイスリフト」が大流行しそうな予感です。


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↓ここまで違えばフルモデルチェンジじゃないのか〜

2013年10月9日水曜日

F32・BMW4シリーズ 「3クーペから一体何が生まれる?」

  BMW4シリーズ発売に合わせて3シリーズ全グレードの値上げが行われました。これはライバルから遅れをとっていた衝突回避・被害軽減ブレーキを標準装備したためで、一律に10万円ほどなので、BMWを買うぞと意気込む人々にとってはモテベーションに影響はないでしょう。しかしF30系に至って3シリーズもいよいよ完全に牙が抜かれて、強調するポイントがほとんど無くなってしまったのですが、それでも乗り出しで軽く500万円オーバーという強気な価格設定の無謀さには一体いつまでつづくのでしょうか?

  さて新たに設定された4シリーズには直6ターボ(435i)がまだ残されていてよかったという声も聞かれます。それでもBMWは一体この中途半端な印象しかないクルマをどんなユーザーに届けたいのでしょうか? あまりにもユーザーを甘くみているのではと思う点も多々あります。クルマにあまり興味がない人に向けた「それっぽいクルマ」を作って、底辺を拡大しようというなら意図はわからなくもないのですが・・・。元々3シリーズとは矛盾に満ちた存在ではありましたが・・・。

  3シリーズのコンセプトは2代前のE46までは大きく分けてふたつありました。一つは現在のF30に受け継がれる北米市場を意図したサイズ拡大を意図したもので、もう一つは現在の1シリーズにつながるtiと呼ばれたコンパクトサイズのものです。簡単に言うと「恰好ばっかりでつまらない」ものと「かっこ悪いけど愉しい」ものの2つです。

  このF32はサイズ拡大した方のF30系のクーペなのですが、これが実に「絶妙」というか「微妙」というか解釈の分かれる立ち位置のクルマです(だから中途半端です)。個人的に好きか嫌いか?と問われたら「嫌い」と答えます。一方でこのクルマに満足する人の気持ちもなんとなく分かります。BMWというネームバリューを外して考えても、エコ主流の大人しい日本のDセグとは別路線を突き進むヤンチャなコンセプトだけでも十分に評価に値します。

  ただクルマが持つコンセプトが強過ぎて、例えば50~60歳代のオヤジが満足気に乗っていたりすると、全てが裏目に出てしまいます。かといって20~30歳代が気楽に買える価格のクルマでもないわけで、結局は「日本では」乗る人がいないクルマになってしまいます。現実問題としてドイツでもアメリカでも乗る人がどんどん少なくなっている(クルマが人を選んでしまっている)クルマがF30系だったりします。

  先ほども述べましたが、1シリーズも3シリーズも元々は同じクルマで今もBMWの「L7プラットホーム」を共通で使っていて60%以上の部品を共有しています。この2つが分かれた2004年からBMWの販売が変調し始め、2000年代後半にはドイツでの販売で後発のアウディに追い抜かれ、北米でもE90系がインフィニティG(V36スカイライン)に完敗しました。2006年にBMWの経営陣が突如交替するなど、内部のドタバタもあり2012年までに180万台という目標も未達に終わりました。

  BMWファンの中では「おさかな顔」や「直6モデルの廃止」が不振の原因と言われているようですが、やはり根本的な問題はバブル期から販売の主体を担ってきた3シリーズを安易にクラス分けしたことではないかと思います。後に「品位を失った1シリーズ」と「翼を失った3シリーズ」へと分裂したE46までの旧3シリーズにおいては、走りの面で評価されていたのは「TI」ことコンパクトでした。

  主に1.6~2.0Lの直4NAを搭載していたコンパクトは軽量かつ高剛性で限りなくスポーツカーに近い乗り味を実現し、このクルマの影響下にあるとされているのが、日産のP10プリメーラとマツダのGG系アテンザでいずれも欧州で高い評価を受けました。軽量で高剛性のボディを気持ちよく回るNAエンジンで引っ張るC/Dセグスポーツセダンというコンセプトは2000年代前半のFF車のトレンドとして定着しました。

  しかしホンダやアルファロメオが自慢の高回転型ロングストローク(この両社のエンジンは回り過ぎてバルブの物理的限界値に到達してしまったらしい)を持ち込んだ時点で、突如として自動車のトレンドがSUVなど他のボディタイプのクルマへと移ってしまい、2000年代後半には作られなくなりました。

  結果論ではありますが、C/DセグメントこそがBMW3シリーズにとって理想郷だったのだと思います。Cセグになって「お山の大将」に堕ちた1シリーズと、北米トレンドに乗ってかってD/Eセグまでサイズを上げた3シリーズのどちらも、かつての輝きは大きく失われてしまいました。そもそもが2つのコンセプトを1つの車名で演じたあやふやな存在だったのですが、ターボ化されて大衆化した1シリーズと、プレミアムでもスポーティでもない安モノの3シリーズに分かれてから欠点ばかりが目立ってしまいました。E46時代に318TI(直4NA)と330i(直6NA)を乗り比べた著名な日本人評論家がこう評していました。  〜 330iのオーナーが「オレはいいクルマ乗ってんだ」って318tiのオーナーの前で胸張ったら、そいつはただの裸の王様だよ。 〜  

  現行の1シリーズと3シリーズも未だにこの「ねじれ」の関係から脱していないのではないかと思います。そしてそれぞれのクーペ版である2シリーズと4シリーズにも同じことが言えるようです。BMWとしては4シリーズの直6ターボ2モデル(435iとM4)に従来モデルからパワーアップした設定にして、この寓話からの「脱皮」を図っているようですが、乗り出し価格が435iで約800万円と強気です。コレ買うならR35GT-Rにいくでしょ・・・というのが自然か。もしBMWが本気で硬派なスポーツメーカーならスカイラインのライバル車である3/4シリーズをベースにしてGT-Rを超えるクルマ作るのでは?根性みせろ!



↓プリメーラ・スカイライン・GT-Rの生みの親こと、水野和敏氏はBMWやベンツを決して認めていないようですね。欧州メーカーはポルシェとジャガーだけ!でもプリメーラはパクりじゃ?

 

2013年10月4日金曜日

シボレー・コルベット 「古典的なスポーツカーに哀愁の情」

  スポーツカーのデザインというのは、実際のところ他の車種と比べても保守的なのだということに最近気がつきました。セダンやSUV、ミニバンは街中に溢れていて、どんなに優れたデザインも見慣れてしまえば、つまらないものに成ってしまいます。よって割と控えめと言われるトヨタ車のデザインでも、飽きられるのを防ぐために、ミニバンなどはかなり大胆なデザインを配すクルマが多かったりします。

  ただこれが日本では圧倒的に少数派になるアメリカ生産モデルとなると、あまりに奇抜なデザインは斬新であると好意的に評価されるのではなく、奇抜過ぎる事でクルマとしての整合性を失い、見る人には気味悪いとすら認識されてしまうかもしれません。私がある日突然に、シボレーカマロに乗って実家に出向いたら、母親のぶったまげる顔が目に浮かびます。おそらくBMW6だったら「いいクルマだねぇ〜」くらいなものでしょうが・・・。

  カマロも6シリーズも母親からすれば見慣れない程度としては同レベルなのでしょうが、デザインが与える刺激は完全に別物です。カマロと6シリーズどっちに乗りたいかはまた別の話ですが、周囲により「まろやか」な刺激を発する6シリーズのどこか心の奥底に潜む感性に合致するデザインには、一日の長があると思います。

  そんな「保守的」な感情に支配されてしまっている田舎者の私にとって、スペシャリティカーの「原風景」と言えるようなデザインのクルマが間もなく発売されます。7代目となるシボレー・コルベットは、北米色全開のデザインが特徴のシボレーブランドにあって5代目以降はことごとく日本市場に高い親和性を持っている。5代目(C5)がマツダRX-7FD3Sのデザインをパクっていて、6代目(C6)がホンダNSXの後期モデルにそっくりなので、親和性もへったくれもなく「疑似」以外の何者でもないです。一応、コルベットの名誉の為に一言付け加えると、C6コルベットのリアデザインは個性的ですばらしい造りをしていて、2年後に登場した日産GT-Rが露骨にパクっています。

  さて7代目(C7)は日産GT-Rでもパクるのかと思いましたが、今度はオリジナリティ溢れるデザインに落ち着きました。それでもとても日本的な面構えで、まるで日本メーカーが作ったかのような印象すらあります。クライスラーのSRTヴァイパーに似ているかなという気もします。コルベットは湾岸線などを走っているとちょいちょい出没する、日本でも人気のスポーツカーです。一旦見つけると無意識に追跡してしまうくらいに美しいボディラインにうっとりしてしまいます。ちょっと道路が空いてくると、6.2LのV8エンジンで凄い加速をするので、油断してるとあっという間に置いていかれます。その加速は体感だとGT-Rのそれに近くて日本で日常的に見られるクルマでは最速と言って良さそうです。あくまでC6の話ですが・・・。

  C7コルベットの日本販売の詳細はまだわかりませんが、デザインや走行性能以外にも期待できそうな点があります。日本市場にはすでにポルシェの3車種と日産GT-R、ジャガーFタイプなどが同価格帯の高性能スポーツカーとして存在しています。C7コルベットははまだ価格が発表されていませんが、歴代モデルはこのライバルに対して高いコストパフォーマンスを発揮していました。そして今回はクーペでもカブリオレでもない第3のスタイルとして「タルガ」仕様が標準ボディになると報じられています。

  歴代のポルシェやNSX、80スープラなどにはルーフの天頂部だけがスライドしてオープンになる「タルガ」スタイルが用意されていましたが、最近ではリトラクタブルハードトップ(RHT)の流行で少なくなっていました。ただスポーツカーの走行性能を大きく後退させてしまうRHTはポルシェを初めとするスポーツメーカーからは敬遠され、ソフトトップのフルオープンモデルが今なお主流です。ただソフトトップはガレージを所有していないとなかなか購入できないという難点もあります。

  C7コルベットももちろんガレージで保管するのが好ましいクルマなのですが、リトラクタブルのタルガトップのおかげで、青空駐車でも心理的負担は少ないかもしれません。コルベットはこのクラスのクルマでもっともキャビンが小さいという特徴があり、マツダロードスターのようにクーペ仕様ではやや窮屈で長時間のドライブが億劫になるかもしれません。タルガトップになったとはいえ、雨天でのドライブはややナイーブになりそうです。

  6.2LのV8はアメリカンなガソリン垂れ流しエンジンのイメージがありますが、最新の気筒休止システムが組み込まれていて、燃費もかなり改善されているようです。燃費とパワーそして軽量化を優先すると直4ターボという結論になったりするのですが、「NAエンジンで底が見えない出力という孤高の魅力を堪能する」「長く劣化しないで良い状態のエンジンを楽しむ」という2点においては、現状ではまだまだV8から替えが利かないです。ホンダやGMなどのアメリカ市場を主戦場とするメーカーでは今後さらなる気筒休止システムやハイブリッドの活用で「魅惑のパワーユニット」が期待されます。

  

  

  

  

2013年10月2日水曜日

日産R35GT-R 「今の日本にムダなクルマを作る余裕はない!」

  マクラーレンMP4-12C ポルシェ911ターボ ポルシェ911GT3といった3000万円級のスーパースポーツカーが次々と日本に上陸してきます。600psを発揮する場所となると、サーキットしかないですし、これだけ高性能だと乗り心地が良いわけはなく、全く実用的ではないクルマです。いや、クルマというより競技用車両として括っていいと思います。

  こういうクルマが雑誌にどどんと登場していると、思わず「アホか」とつぶやきたくなります。自分の生活を豊かにしてくれる最高のGTカーを探しているのに、なんでこんなワケの解らないクルマを見せられなきゃいけないのだろう・・・。フェラーリに乗って爆音たてて、周囲の好奇の目にさらされて、ガソリンを垂れ流して走るなんて、完全にDQNがやることだと思うのですが。

  そんな3000万円するDQN車を持ち出して最高級とか言われても、何もコメントできないですね。さらに「やっぱりイタリア車はスゴい」とか真顔で言っているモータージャーナリストの非常識さは呆れるしかないです。イタリア人の1%くらいはフェラーリに乗ってるとでも思っているのでしょうか? 日本の結構有名な評論家が挙ってフェラーリを所有しています。プロとして評論する立場になったら、取りあえずフェラーリくらい所有しておかないと仕事に成らないということでしょうか。

  グダグダと書きましたが、ハッキリさせておきたいのは600psの2シータースポーツなどはもはや「乗用車」ではなく「競技車両」です。また日本車・ドイツ車・イタリア車とまるで国民性が反映されたかのように比較する対象などでは決してないということです。

  2007年に日産が発売したR35GT-Rは、800万円の価格で3000万円クラスのスーパースポーツを性能で圧倒してしまうという、世界をひっくり返すような衝撃でした。フェラーリが手組みでつくるエンジンや車体を、スカイラインの生産ラインに載せて作ってしまうという思いきった手法で生産コストを低減しました。

  GT-Rは日産が世界に放った強烈なメッセージではないかと思います。「どんな手組みのスーパースポーツを日本に持ってきても、絶対に日産の技術には勝てない。それくらいに世界と日産には歴然たる差が存在する!」といったところでしょうか。しかもGT-Rは決して「競技車両」ではなくて、最高のドライブを演出できる究極のGTカーとして設計されています。

  生活とは無縁の「競技車両」を作って悦に入るなんて、かつてのパトロンが付いて絵画を書いた芸術家みたいなものです。一方で、「乗用車」はユーザーの利便性向上の要求に最大限に応えるために開発されます。日産はあくまで「乗用車」のメーカーであり、社会をより良くしようとして作られる「乗用車」の尊厳を守るためにも、欧州の芸術家の「気まぐれ」に強烈な鉄槌を喰わす必要があると感じたのではないでしょうか。フェラーリやランボルギーニなんて所詮は「オモチャ」に過ぎないのですが、そんなものが最高のクルマと評されている現状を許せなかったのかもしれません。

  日本は世界の最先端を行く「超高齢社会」です。もはや日本で「競技車両」を所有して楽しむという趣味は、乗馬用のサラブレッドを所有するような類いのものです。3000万や5000万といった価格になれば、プロレーサーでもなければ使い切れない性能のクルマになります。日本の公道でドライブデートするのに、そんなクルマが必要なはずはないですし、まあせいぜい1000万円程度のクルマにしておけば十分に幸せではないかと思います。

  そういう意味でもGT-Rやポルシェ911、レクサスLS、Sクラス、7シリーズといったフラッグシップカーがおよそ1000万円程度で横並びに設定されるのも自然なことなのかもしれません。そういった理性的な潮流を作り出したという意味で、4座で世界最高クラスの性能を誇るGT-Rを日産が開発したのはとても価値があることだと思います。

 

2013年9月26日木曜日

新型メルセデスSクラス 「インテリジェント・ドライブって本気なの?」

   いよいよ本国では販売が始まった、メルセデスの最高級セダンSクラスが間もなく日本にも上陸するようです。このクルマはただの超高級セダンではなくて、いままでのクルマの常識を変えてしまう「スゴい装置」が載っていると話題になっているようです。なんとついに自動でハンドルを切って曲がってくれる自動運転機能(インテリジェント・ドライブ)が付いたクルマが発売されます。

  自動でアクセルとブレーキはもうすでに実用化されています。クルコンとセンサーを使えば簡単にできるようです。それでもさすがに、ハンドルを自動で切るというのはハードルが一気に上がるのかなと思ってましたが、元祖自動ブレーキの「アイサイト」から1年足らずで出来てしまったようです。もしこの技術が完全に確立して、普通の人が運転するよりも遥かにトラブル発生率が低いのであれば、クルマの価値を大きく変えてしまうでしょう。

  単純にSクラスに運転手がオマケで付いてくるようなものですから、10万キロ走るとして平均車速30km/hで割ると3333時間分の運転手の人件費が付加価値として付いてきます。ざっと333万円分です(案外少なかったな・・・)。

  ナビに一旦目的地を設定したら、後はシートを倒して到着するまで寝ていても基本的には困らないというのがこの機能の意義なのだと思います。設定する場所を間違えて、起きたらとんでも無い場所に着いているリスクなんてのは、とりあえず無視してもいいですね。広い車内なので、東京から福岡まで割と快適に寝ながら夜間移動なんていう事もできます。こうなると北海道と沖縄以外のテーマパークに全国から気軽に遊びに行けます。TDLに全国のクルマが結集してしまうかもしれませんが・・・。また東京から青森のフェリー乗り場まで夜間に移動しておけば、北海道の雄大な自然の中を思う存分走らせることもできます。

  寝るだけではなくて、インパネにはやたらとでっかい14インチテレビくらいのナビモニターが付いているので、字幕の映画も無理なく見れてしまうようです。おそらくネットもスカパーもその気になれば簡単に付けられるでしょう。さらにちょっとバカついでに想像してしまいますが、駅まで一人でクルマに乗ってきて、クルマはそのまま無人で家まで帰って車庫に収まってくれるのでしょうか? 帰りはスマホでナビを呼び出して設定すれば、無人のまま駅のロータリーにタクシーを掻き分けて、迎えにきてくれることもそんなに難しいことではなさそうです。

  これだけズラッと書きましたが、この程度の機能を持ったクルマはオーストラリアの鉱山などでとっくの昔に実用化されていて、鉄鉱石を運ぶ超大型ダンプが大量に無人のまま運用されているのだとか。

  肝心の新型Sクラスですが、ジャガーXJの後を追うようにアルミボディで100kgの減量になるようです。先代までは2トンオーバーの車体をV6エンジンで頑張って引きずっていたS350がいくらか軽快になるだけでなく、ディーゼルHVなる新開発パワーユニットを世界で初めて投入するようです。100kgのシェイプアップを帳消しにしそうなディーゼルとバッテリーの重量感ある組み合わせですね・・・。

 

  

2013年9月24日火曜日

ジャガーXJ 「欲しい・乗りたいと思わせてくれるスーパーセダンは貴重だ!」

  本体価格が1000万円以上するクルマを買う人々の生活水準は、当たり前ですが相当に高いです。新車を10年乗るとして、車両価格の減損分だけで月にほぼ10万円掛かります。屋根付き車庫代やガソリン代、諸費用がさらに掛かります。GT-Rは消耗品だけで年間100万円近くかかるとか・・・。車体だけで月10万はやっぱり破格ですな。

  ただ見方を変えれば、毎月10万円以上の書籍代を計上する人なんて案外ザラにいたりします。業界新聞を数紙購読していれば、気がつけば軽く超えている金額です。他にも実家に部屋が空いているのに、わざわざ家賃を10万円以上払って一人暮らしをしている人も、理屈で言えば捻出可能な金額です。さらに趣味に月10万以上を注ぎ込む人だって珍しくないでしょう。

  ということで、ベルリネッタやアヴェンタドールとなると話は別ですが、ポルシェ911やジャガーFタイプやGT-Rならば平均的な日本人が楽しんでもよいくらいの価格じゃないかという気がします。まあ1000万円程度の頭金をどうやって貯めるかはその人次第ではありますが・・・。親が貸してくれるってケースも結構あるのだとか。まあ20代そこそこのアクティブさで、スーパースポーツカーのアクセルをヴァンヴァン踏んでセレブに成りきるのもいいかもしれません。

  別の見方をすれば20代そこそこでスーパースポーツに乗ることは「若さ」の浪費とも言えます。20代という年齢は、どんなクルマに乗ってもいい年頃な訳で、軽自動車でもスイフトでもマーチでも好きなクルマに乗っても、特に誰にバカにされることもないです。周囲の視線を気にしてクルマ乗るなんてナンセンスという意見もあるとは思いますが、結局はそういう部分(周囲から見た社会性)はクルマにとってかなり本質的なものなのではないかと思います。

  あくまで個人的な意見ですが、外見上も変化が現れる30代後半にもなれば、人はみなそれなりに分相応のクルマに乗り換えなければいけないと思います。高齢者が「終末」のクルマとして乗るならいざ知らず、40~50歳代でゴ◯フやミ◯に乗っていい気になっている大人は相当にみっともないと感じます。そういう大人にはなりたくないので、お仕事頑張ろう!そして40歳になったらジャガーのセダンにでも乗りたいなと思ったりします。

  そんな「偏屈」な自分に強いモチベーションを与えてくれる魅力的なクルマを作っているジャガーはとても素晴らしいブランドです。最高のセダンだけでなく、最高のスポーツカーも作っていて、この2つがここまで高いレベルで揃っているブランドは他にないような気がします。「アストンマーティン」はスポーツカーだけだし(ラピードはちょっと・・・)、「マセラティ」はセダンだけのブランドです。

  セダンのXJの乗り味はしばしば「極上」かつ「最高の世界観」と評されています。ライバル車をすべて所有した経験がないと安易にこんな言葉は吐けない気もしますが・・・。それでも最高のクルマには、常に理想(イディア)がありそこに到達するために、いかなる高価な設計を使うことも辞さない不退転の決意みたいなものがみなぎっているはずです。ジャガーXJの設計を細かく見ていくと、レクサスLSに匹敵する最高の静粛性と、Sクラスを凌駕する極上の内装と、BMW7シリーズのような独特の乗り味のすべてをどん欲に追っかけている様子がわかります。

  旧フォードグループの「PAG」(プレミアム・オート・グループ)に名前を連ねていたブランド群は、資本がインドや中東、中国へと変わりましたが、いずれも最近になって復活の動きが活発で、各分野で話題を独占するような傑作車が相次いでいます。今年の3月に発表された「ワールド・デザイン・COTY」のベスト3はいずれも旧フォードのブランドである、アストンマーティン「ヴァンキッシュ」、ジャガー「Fタイプ」、マツダ「アテンザ」の3台でした。その前年の大賞はレンジローバー「イヴォーグ」、さらに前々年はアストンマーティン「ラピード」といずれも旧フォードブランドで占められています。

  これらはデザインだけでなく、クルマとしての性能ももちろん高く評価されていて、各方面の最先端のカーアイコンとして君臨しています。かつてフォードがまとめ上げた「非ドイツ系」集団は、それぞれのブランドには今なおフォードの優秀な遺伝子が組み込まれ、いずれもクルマ作りにごまかしがなく、誠実に良いクルマを作ろうという姿勢が目立っているように思います。ボルボもV40という味のあるモデルで日本市場に挑戦しています。

  その中でも今最も輝いているのが、ジャガーだと思います。セダンにおいてもスポーツカーにおいても基本設計で、できるだけ良い素材・部品を使ってクルマを作るという姿勢が貫かれています。このXJもフルサイズセダンとはいえ「走り」に関して妥協したくないようで、ライバルの超高級セダンの中でドライビング性能の向上を一番真剣に考えた設計が取られています。最大の特徴は軽量化のためにコスト度外視のアルミボディを採用していることです。つまりホンダが究極のスポーツカーとしてNSXを作るくらいのテンションでフルサイズセダンを作ってしまっているわけです。これは最高級クラスのセダンにおいては他のメーカーの追従を許さないジャガーXJの最大の個性と言えます。Sクラスと同じサイズながら、V8搭載モデルで単純に比較すると200kg以上ジャガーXJの方が軽いです。ジャガーはアルミボディを他の車種でも多用しており、「アルミのジャガー」と言っていいほど特徴的です。

  Sクラス・7シリーズ・パナメーラ・クワトロポルテといったライバル関係の中で、他のモデルが「とりあえずV6とV8の二本立て」という無個性にハマっている中で、軽量なアルミボディを生かして、直4ターボモデルまで作ってしまったのには多少は困惑しました。しかし車重が1780kgとEクラスや5シリーズ並みに抑えられているので、4気筒が増えているEや5の現状を考えると妥当な設定かもしれません。

  4気筒は正直言ってほしいとは思いませんが、ジャガーXJのような考え抜かれたクルマこそが、1000万円以上かけてでも買う価値のあるクルマなのだと、つくづく思ってしまいます。ポルシェ・パナメーラやマセラティ・クアトロポルテの方がスポーティで個性がある超高級セダンというイメージがありますが、フタを開けてみるとポルシェだからと言ってもミッドシップでもなければボクサーエンジンでもない、ただのデカいクルマだったりします。最高級モデルでくらべても「パナメーラ・ターボ」より「XJ・V8スパチャー」の方が軽量で、ターボよりレスポンスのいいスーパーチャージャーでチューンナップされて、出力も上回っています。おそらくXJの方が基本的な運動性能は上ではないでしょうか。まったく調べれば調べるほど好きになる新生ジャガーです(ポルシェも好きですが・・・)。

  
ジャガーXJ 動画 クルマカタログ
  

2013年9月20日金曜日

ポルシェ991型911 「軽井沢に乗って行くベストカー?」

  暇さえあれば、ネットで別荘の物件を見てしまいます。伊豆と軽井沢は高級物件がたくさんあって5000万とか8000万とか東京でも結構いい家が買えてしまうほどの価格が付いています。これだったら1500万円の家を買ってリフォームした方が安上がりではないかという気もしますが・・・。

  別荘を買ったらそこに似合うクルマも用意しなければいけないなと思わず考えてしまいます。場所にもよりますが、北軽井沢といった「いかにも」な場所に構えるとなると、ラグジュアリーでプライベート感がある高級スポーツカー、つまりGTカーがいいなと思います。まず思いつくのがポルシェ911でしょうか。ポルシェと聞くとバブル時代の生き残りのイメージがあり、当初はまったく好きではなかったのですが、いろいろなメーカーのクルマの構造を調べていくうちに、気がついたらいつの間にか憧れのクルマになっていました。

  それでも周囲の人に「ポルシェほしいんだよね」と気軽に言える身分でもないので、内に秘めたる想いを抱えながら日々暮らしております。もちろん別荘についても同様ですが・・・。現行の991型が7代目の911だそうで、エンジンの冷却方式が水冷に変わった2代前(996型)からボディサイズが4400mm程度に拡大して、それ以降のモデルがイメージにピッタリなので、いわゆる空冷式の旧型にはまったく興味はないです。さらにこんなこと言っては怒られてしまいそうですが、先代(997型)までのモデルは内装デザインに年代を感じてしまって満足できないので、厳密に言うと現行(991型)のみが憧れです。

  内装だけを見るとポルシェはジャーマンプレミアムに見劣りしてしまう印象がありましたが、現行モデルは911だけでなくボクスターもケイマンも良くなったので、武骨な内装にトゲトゲした思いをしながらドライブするんじゃないかという、「皮算用」的な妄想に耽る必要もないですね。有名車種の先代モデルの内装だけを単純に比べると、好みの問題もあるでしょうが、ドイツ勢ではアウディA6のデザインが突出して良いです。メルセデスEとBMW5・6・7も質感はとても良さそうですが、アウディと比べて対象年齢が高めで客観的に見ても50歳代以上が対象なのかなという気がします。

  最近になってバタバタと発売されたAクラスやCLAは若者ユーザーを意識したそうですが、「若者には価値なんてわからないから、これくらいでいいだろう」といった感じがぷんぷんします。特に悪い内装ではないですが、200万円以上の日本車ならこれと同等以上のものもあったりするので、どこがプレミアムだ?と突っ込みたいです。メルセデスは背伸びしたい若者の気持ちが分かっていない気がします。今の若者にSクラス(CLクラス)とEクラス(CLSクラス)の内装を見せて選ばせれば、多くの人はSクラスは憧れるけど、Eクラスは欲しくないと思うはずです。Eクラスはやはり高齢者の為のクルマなんだということが分かります。Aクラスの内装はというと、この2台ともまた違っていて、トヨタかホンダのコンパクトカーのノリにしか見えないです。

  ちょっと話がズレましたが、ポルシェの内装は大きく改良されて、メルセデスSクラスのような艶やかさが見られるようになりました。多くの評論家が991型を「最新にして最良の911」と絶賛してましたが、おそらく内装の雰囲気に呑まれたと思います。スポーツカーとしてだけでなくラグジュアリーカーとしての魅力が高まったわけですが、やはり最大のネックは価格でしょうか・・・。新車でオプション装備を納得いくまで付けたらベースグレードでも1500万円近くなってしまいます。しかも手頃な新古車なんてのもなくて、中古でも割高感すら感じます。Sクラスの350なら未使用の中古車が700万円で買えたりするのですが(けどS350はタダでくれても乗りたくない・・・)。

  E250やS350は散々に否定して、ポルシェ911やGT-Rを絶賛するなんていかにも「クルマわかってないヤツ」と思われそうですね(実際そういうヤツです)。割と乗り心地には文句を付けてしまうほうなので、911やGT-Rを実際に所有したらあまりの突き上げに「こんなはずはなかった」とかなりの確率で困惑しそうな気がします。これだけのスーパースポーツとなると現実と妄想とのギャップがちょっとした試乗くらいでは簡単に埋まらないのは百も承知なのですが・・・。そんなマヌケ度100%のユーザーでも相手にしなければいけないので、911もGT-Rも一生懸命に内装を磨き上げ、高性能な電制ダンパーでマヌケのお尻が痛くならないように作られているようです。そういう至れり尽くせりのクルマなら1000万円払ってもいいかなって思います。



  

  

  
  

2013年9月14日土曜日

マセラティ・グランツーリズモ 「中古車前提なら一番お買い得?」

  日本における高級車の意味合いがやや変化してきたようだ。高級車販売の主体であるOECD諸国の高齢化に歯止めがかからず、その先頭を走る日本では小型モデルの高級化グレード設定の要望が増えているとか。トヨタが総力を挙げてプロモーションした「86/BRZ」は300万円で買える本格設計のスポーツカーとして見事に成功を収めた。まだまだ高いという意見も外野では聞かれるが、実際に興味を持ってディーラーに訪れる客の多くは値上げしてもいいから高級グレードを切望しているようだ。トヨタもスバルもそんなニーズを見逃すはずはなく、評判が悪かった86/BRZの内装を見直した限定モデルを最近になって発売している。

  86/BRZのインパクトは日本よりも欧州/北米/豪州のスペシャリティ市場へ大きな影響を与えているようだ。メルセデスやアウディは300万円という価格を狙ったような「プレミアム・コンパクト」を相次いで投入した。欧州プレミアムコンパクトと86/BRZ、ホンダCR-Z、マツダロードスターがほぼ同じ価格で横一線で、目指すは引退世代のプライベートカー市場というわけだ。近所(東京西部)で見かけるCR-Zやロードスターはほとんどが老人(か年配の女性)が乗っている気がする。

  誰がどんなスポーツカーに乗るのももちろん自由だが、この手のお手軽なスポーツカーが流行の兆しをみせていることから、各メーカーともに手持ちの廉価設計を駆使してよりお手軽な「なんちゃってスポーツカー」の開発競争が進むかもしれない。廉価なスポーツカーは「痛車」のネタ車にされてしまうリスクも大きい。86/BRZ、CR-Z、RX-8、シビックR、インテR、WRX、エボ、アテンザスポーツといった面々はすでに痛車によって甚大な「風評被害」を受けている。もはやアニメ好きの為のクルマと見做されている。マツダのアテンザスポーツとRX-8の廃止は英断と言えるかも・・・。



  よっていざスポーツカーを買うとなると、中古車が割と豊富なポルシェ911の水冷などから探したい。996だと200万円〜程度で最近では痛ネタになりつつある。997なら500万円〜で何とも悩ましいところだ。ただポルシェという知名度のあるブランドのせいで、「ポルシェ 痛車」と検索するとたくさん出てくる・・・。よって「痛車ベース」が絶対に嫌な人はマセラティ・グランツーリズモが800万円〜が一つの理想なのかなという気がする。同年式の997が650万円〜だが、このマセラティGTはまだ現行モデルなので妥当な金額だといえる。しかも2004年デビューの997の内装は高級車とは思えないほど貧相で、2007年デビューの「黄金世代」であるマセラティGTの内装はまさに「ラグジュアリー」そのものだ。

  新車で買うとなると、現行の991は内装の質感がかなり上がっていて。一般論ですが2007年頃のFMCのモデルは特に内装のレベルが高い。スカイラインもクラウンもEクラスもこの時期のものが史上最高だと思う。マセラティ全体でも恐らくこの2007年のグランツーリズモの質感を今後超えるモデルは出てこない気がする(グレードによって若干内装に差があるが・・・)。2007年と言うとGT-Rという有力な候補がいて直近の中古車は500万円〜という価格帯だ。もちろん内装では世界最高水準に達している日産なので抜かりはない。マセラティGT、GT-Rの2台が中古車を視野に入れるなら、お買い得な「高級スポーツカー」として価格に見合った満足感を提供してくれるクルマだと思う。


  せっかくトヨタが本腰を入れて健全なスポーツカー文化を作ろうとしているが、やはりメーカーが主導するというスタンスは、この国の歪んだクルマ文化を浮き彫りにしている。もちろんメーカーがクルマと作らなければ何も起こらないのだけど、結論としては300万円のスポーツカーでは「文化」は作れないということなのかもしれない。悔しいがフェラーリやランボルギーニの現行モデルに乗ることこそが、スポーツカー趣味においては正義なんだろうな・・・。

  
  

  

2013年8月31日土曜日

レクサスISがダサいなら、メルセデスCLAは・・・

  レクサスISもメルセデスCLAも、あくまで「ちょっとオシャレな実用車」なので、雑誌のデザイン評などどうでもいいと頭では解っているのですが・・・。どちらもブランド内の最量販車なのだから、特筆に値するデザインなど望むべくもないです。それでも7月26日発売の自動車各誌を一通り読んでみて、ISとCLAについてまるで同じ執筆者が書いているかのような内容にとても違和感を感じました。クルマ雑誌の使命はどのクルマも均等に売れて販売のバランスがとれるようにプロパガンダ的な記事を注入することなんでしょうねおそらく・・・。

  やや強引に不当な評価を押し付けられているクルマというのは、執筆者・編集者を完全に怒らせてしまうほどに全能感溢れる「極上車」である可能性が高いようです。あまりのレベルの高さに執筆者が理解不能というわけではなく、意識的か無意識かはわかりませんが、そういうクルマを前に欠点の一つでも見つけないとプロ意識が玉砕するのを感じるようです。

  一方で素人目には同じように良さそうなクルマでも、執筆陣にやたらとちやほやされているクルマは、実際には「駄作」である可能性がとても高いです。全自動車の99%以上が乗っても眺めても特筆する点がないクルマでしかないわけですから、そういうクルマの長所を見つけることがプロの証明になるわけです。

  これらのルーティンを経て、結果的に雑誌の編集者達は高い倫理感・使命感を持って世論を操縦し販売台数の極端な乖離を防ぐかのような仕事をすることになるようです。この方程式によるとこの1年の新型車で、「極上車」に当てはまるのはレクサスISのみです。一方で「駄作」に分類されるのがマツダアテンザ、ホンダアコードHV、メルセデスCLAということになるのでしょうか・・・。

  今回レクサスISとメルセデスCLAは全てのメディアが取り上げている最重要車種となっています。価格・基本性能・デザインのどれをとっても「IS>>>>>CLA」であり、比較対象にも成り得ないのですが、各雑誌を読んだだけでは「CLA>IS」と解釈する初心者もたくさん現れそうな勢いです。もちろん専門誌ですから直接比較するような記事はないです。ニューモデルマガジンXのISデザイン評がとても辛辣でした・・・。自称独立デザイン事務所デザイナーという覆面ライターの語る「デザインのトレンド」とやらがなかなか見えてきません。ISの「煩雑なディティール」って・・・。モダンデザインは「レスイズモア」だからVWやアウディが至高って・・・。パサート借りてきて隣りに並べてみればいいじゃん。ドイツデザインが至高とか言ってるの日本人だけじゃ? 「ドイツ=欧州」ってなんて乱暴な定義なんでしょうか。

  私のような素人目にもレクサスISは「フランスセダン」の影響下にあることはデトロイトショーの写真で解ったのですが・・・。アウディA6が欧州セダンの象徴となりドイツでアウディがBMWの販売台数を超えたのは事実ですが、そのインパクトが他のメーカーに影響を与えたかというと確認できるフォロワーはほとんどありません。アウディという「ドイツ」ブランドがその殻を破ってキャッチーなデザインのクルマを作ったことはニュースですし、確かにデザイン競争に火をつけました。しかし多くのフォロワーを生んだのは、ライバルだったプジョーのミドルセダン407です。打倒アウディを掲げたPSA(プジョー)とフォード(マツダ)から生まれたデザインがいまの主流なのは間違いありません。

  プジョー407が目指したデザインを完成させたのが、マツダアテンザ(GH系、2代目)でした。この顔は日本以上に欧州で広く知られることとなり、その後旧フォード系ブランドのジャガーXFやボルボS60のフェイスリフトへとつながります。さらにGM(オペル)が、今ドイツで最も美しいセダンと言われるインシグニアを発売しました。このインシグニアもGH系アテンザのデザインを延長したような見事な先代アテンザ顔になっています。

  日本の今日のセダン復権は燃費の向上だけでなく、2000年代後半からのセダンデザインの革新が次第に浸透した結果だと思います(ダサいならだれも買わないはず)。V36スカイラインとGH系アテンザがそれぞれ独自にフランスのテイストを取り入れて、ドイツ車を軒並み上回るスタイルを手に入れました。当時はミニバン全盛だったので、セダンを選択肢にする人はとても少なかったようですが、日本車のデザインが向上していることが周知されるようになった結果が、今日のセダンが再び売れるようになりました。デトロイトショーのISプロトはこのGHアテンザとV36スカイラインが築きつつあるトレンドを上手く受け継いでいると思うのです。

  確かにこのデザイナー氏が言うようにISにはショルダーラインの高さなど気になる弱点があります。ただこのISを酷評するなら、CLAはいったいどう評価すればいいのでしょうか? CLS以来気になっている驚異的にダサいあのリアデザインをそのまま受け継いでしまっています。ヒュンダイもパクらないほどの酷いリアデザインをそのまま継承するなど、時代錯誤も甚だしいし、いったいこのクルマに乗って何を気取るの?と思わず本音が出てしまいます。


  
  

2013年8月12日月曜日

官能至上主義! 頂上決戦! BMW6・マセラティグラントゥーリズモ・ジャガーXK

  「BMW6・マセラティグラントゥーリズモ・ジャガーXK」 この3台には日本車が逆立ちしても敵わないラグジュアリーカーの「イディア」が備わっているような気がしてならない。動力性能だけなら日産GT-Rやシボレーコルベット、ポルシェ991型911の方が上なのだろうけど、彼女と幸せな時間を過ごすならやはりカッコイイ車の方がいい。同じ理由でランボルギーニ・フェラーリ・アストンマーティンのV12モデルもこの3台から見れば蛇足に過ぎるクルマだ(と思う)。

  やはりクルマは相対的な評価をされるものではなく、むしろ絶対的な評価で「ほしいか?ほしくないか?」こそが唯一の基準なのではないかと思う。0-100km/hのタイムが5秒台ならば十分にスペシャルなクルマだと言える。それが3秒を切ったからといっても大した価値は感じられない。1000万円出してもほしいと思えるクルマは?と訊かれれば、その答えは人それぞれだろう。独断と偏見で日本で乗り回すクルマを選ぶとしたら、今のところこの3台くらいしか見当たらない。

  この3モデルはいずれも現行モデルだが、いずれは廃盤になってしまう。果たしてこの3台に変わるクルマを作ってくれるメーカーはあるのか? とりあえずBMWは後継モデルを作りそうだが、マセラティとジャガーはなかなか気まぐれで、そもそもFMCという発想がないメーカーだ。他のブランドで期待できるのはレクサス・ヒュンダイ・ホールデンの3社だろうか。

  レクサス(もしくはトヨタ)はBMW6の次期モデルを移植してBMWからのOEMを行うことを発表している。トヨタもかつてはソアラなど好デザインのラグジュアリーカーの実績があるが、どうやらレクサスブランドのデザインが迷走している中で自信を無くしているようで、無難に売れそうなBMW製を選択した模様だ。VWとの激しい競争が続く中で、ライバルと同じ方法を採用するのもやむを得ないことだろう。

  ヒュンダイは高級車重視の方針を既に発表している。これまでは日産とメルセデスをベンチマークして高級車を開発してきた経緯があるが、韓国国内ではイマイチ支持されずシェアが低下していると言われている。ヒュンダイの急拡大路線を考えると、今後はV8エンジン搭載のスポーツラグジュアリーへの進出が濃厚だ。VWやトヨタと違って老舗ブランドと協調することなく、独力でブランドを創出しようという高い志を感じるが、一体どんなクルマが完成するのだろうか?

  ホールデンは右ハンドルのラグジュアリー部門で今後台風の目になりそうな、GM系の豪州メーカーだ。すでに欧州でも500psクラスのVXR8というスーパースポーツセダンを同じGM系のボクスホールから発売していて実績もある。このクルマはスペックとしてはSRTチャージャーやシボレーカマロのような米国型V8セダンなのだが、デザインは日本や欧州と親和性が高い。ちょっと雑な話だが、GMグループが総力を挙げてコルベットのようなデザインのボディをホールデンに持ち込めば、割と簡単にラグジュアリーセダンができてしまうだろう。

  この3社以外にも、マセラティの親会社フィアットグループに属するクライスラーのSRTブランドや、GM・クライスラーへの対抗からフォード=マツダ陣営も協調して趣味性の高いクルマを開発してくることも十分に考えられる。アメリカメーカーが本気で参入すれば、日本での発売価格も高騰が避けられるだろう。日本で1000万円を下回る価格帯で、官能的でV8を積んでいて100%趣味の豪華なクルマがしのぎを削るようになる日も近いような気がする。


 

2013年7月22日月曜日

プジョーRCZ 「Cセグスペシャリティが意外に盛り上がらなかった・・・」

  世界中の人々はやはりクルマへの興味を失いつつあるのでしょうか? 2010年に大きな反響とともに登場したプジョーRCZも発売から3年が経過し、ほとんど名前が聞かれない存在になってしまいました。BMW3シリーズ並みの価格でド派手なスペシャリティカーが買えるとあって、見栄っ張りな東アジアで大ヒット間違いなしかと思われましたが、中国でも日本でも大惨敗になっています(北米未導入)。日本においてはまだまだプジョーブランドの実力が不足している印象でした。

  プジョー308というCC以外はやや地味なクルマがあります。このクルマのボディを派手なものに変えてターボのチューンを変えて出力を上げたクルマがRCZです。ライバル車のアウディTTがゴルフGTIと共通のパワーユニットを使っていますが、ほぼその手法を真似たクルマと言っていいと思います。現行の日本車にはなかなかない種類のクルマなので評価が難しいですが、トヨタがかつて販売していた最終型(7代目)セリカみたいなもので、カローラと共通の設計にスペシャリティボディを載せたクルマといったところです。

  TTはそのデザインの見事さと高品質化した5代目ゴルフをベースにしていたことから、「セリカと同じ様なクルマ」と言われるとやや違和感を感じます。一方でRCZはというと、プジョー308のトーションビームの足をそのまま持ち越して、今度は「セリカですらダブルウィッシュボーンに履き替えていて、フロントもスーパーストラットという独自サスで武装しているのに・・・」とややネガティブな評価になってしまいます。セリカ発売時はホンダの「タイプR」が猛威をふるっていて、対抗する為にトヨタとしては否応なしにスポーツサスとスポーツNAエンジンを投入せざるを得なかったようではありますが・・・。

  そんなセリカでも不人気(安っぽいから?)で車種廃止に追い込まれました。日本のスポーツカーユーザーのニーズには「スペシャリティカー」はなかなか響かないようです。そんな市場でまともにRCZが、それこそ3シリーズやCクラスが新車で買えてしまう価格で、売れるわけがないというのが率直なところだと思います。アウディTTよりもRCZのデザインがツボだという人ももちろん居たとは思いますが、ただでさえ狭いスペシャリティカー市場で、決定的にライバルを上回るわけではなく、偶発的に流れて来るお客を拾うだけの商売ではなかなか苦しいのかなという気がします。

  先駆者のTTはやはりあの鮮烈なスタイリングで、従来はスポーツカーに興味が無かった層もだいぶ取込むことに成功しました。あのスタイリングを見てクルマが欲しいと思う人も続出するほどで、見事に「潜在需要」を掘り起こした素晴らしいクルマだったわけです。それを見てスタイリングに自信のあるプジョーはデザイン勝負のRCZを投入し、スタイリングにそれほど自信のないトヨタは専用設計のスポーツカー(86/BRZ)を投入しました。カネがないPSAとカネがあるトヨタで当然策略が違うわけですが、どちらもリスクに見合った成果を得ているようです。

  今後Cセグスペシャリティは無視できない市場として、さらなる参入を呼び込みそうです。具体的に発表されているコンセプトカーもスバルの「新型WRXコンセプト」やスズキの「オーセンティックス」など、デザイン面での進化が大きいように感じます。スバルやスズキがこれほどに艶やかなデザインのクルマを作るようになったという変化に素直に驚きます。大型のスペシャリティクーペを所有するのも、乗り心地が最悪のスポーツカーを所有するのにも及び腰のユーザーは多いです。一般の乗用車と同じ乗り心地でデザインが優れていて高級感がある小型(Cセグ以下)の需要が高まりを見せるのはこれからが本番でしょう。プジョーもRCZを簡単には諦めないようで、すでにMCを施してのテコ入れを発表しています。TTも来年にFMCを予定していて、BMWも新型クーペの2シリーズを投入する予定です。ただこの市場が今後どれだけ盛り上がるのかは予想がつかないですが・・・。


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  プジョーRCZ         アウディTT  トヨタ86    トヨタセリカ
 

2013年7月11日木曜日

レクサスIS 「レクサスがユーザー目線に徹した傑作車」

  先日あるSAでレクサス愛好者の集会を見かけました。クルマ自体は都内を走っていれば何台も見かけるので珍しくはないですが、どんな人々がレクサスの熱烈な支持者なのかが少しわかった気がしました。これまでのイメージとはちょっと違ってレクサスの「オフ会」も、SAの駐車場で群れをなして談笑しながら行われるようです。他の利用者からするとちょっと迷惑を目くじらを立てられそうですが、私のようなクルマ好きから見れば、混雑してない時間帯なら問題ないとは思います。

  車種はほとんどがLSかGSで普通のIS(初代)では参加できないような「敷居の高さ」を部外者ながら感じてしまいました。それでも数十台並ぶLSやGSのオーナー達を見てみると、極めてラフな出で立ちで服装にはそれほどこだわりはないようです。正直言って自分の恰好の方がレクサスオーナーにふさわしいなと思うくらいでした。そんな彼ら(平均年齢50歳くらいか?)はスポーツカーに乗る感覚でレクサスの大型セダンを愛用しているようでした。

  LSや2代目GSのクルマとしての実力は疑いないのですが、果たしてプライベートカーとしてそのサイズを持て余すことなく使えるのか?という気もします。大きなクルマをデコって見て楽しむ、いわゆる「VIPカー」趣味ならいいとは思いますが、クルマでしか行けないような秘境を目指すなら、山岳路が溢れる日本の地形を走るのに、この都市型セダンはどれだけ快適だと言うのでしょうか。

  従来のLSやGSは「車格」がやたらと強調されていて、ユーザーではなくライバル車にばかり目を向けたクルマになっています。先代のISもブランドのエントリーモデルであることを意識し過ぎて「狭いだけ」のクルマになっていました。失礼ですが、スポーツカーとしてもセダンとしても中途半端な存在だったと思います。今考えるとセダンの「地味さ」とスポーツカーの「悪燃費」を兼ね備えた酷いクルマをレクサスブランドの「魔力」だけで売りさばいていたクルマです(MBもBMWも同じようなものですが・・・)。今やスポーツカーの復権とCセグへの移行が進み、そんなクルマ作りではいよいよ通用しなくなってきました。先代ISも3シリーズ、Cクラスも世界中で在庫がダブつき始めています。

  新型ISは徹底的なモデルの強化が図られていて、先代から大きく進歩していますが、このクルマはレクサスにとっても大きな転機を意味しているようです。全世界的な個人主義の風潮からプレミアムブランドにとって「車格」ではなく「コンセプト」でいかに他車を上回るかが重要になってきていると思います。新型ISの拡げられた全長や、「地味さ」から脱皮してLSやGSにはない華やかさを持つデザインはまさに「ユーザー目線」のクルマ作りへの転換だなと感じます。

  このISを買った人は新型ISの「コンセプト」に惹かれただけであり、今後GSやLSに乗り換える割合はかなり低いと思います。トヨタは3年以内にこのISの乗り換え用のさらなる「ユーザー目線」のコンセプトを備えたスペシャリティカーを用意してくるはずです。それが噂されているソアラやスープラの後継車だという予想がつきます。ただそれだけでなくトヨタは近々MCでSAIのデザインを一新するなど、高級路線のクルマに関してはかなりのテコ入れを図ってくるようです。マークXの後継なども恐らく相当にデザインにこだわったクルマに生まれ変わるのではないかという気がします。もちろんとても歓迎すべきことではありますが・・・。



2013年7月4日木曜日

ランチア・フラヴィア 「オサレクルーズカーfromスポーツブランド」

  最初に言ってしまうと、このクルマを並行輸入するとしたら、ランチアからではなく、クライスラーから持ってきたほうが100万円以上安い。つまりクライスラー200コンバーチィブルのOEMを「ランチアブランド」に変えただけだ。このクルマの最大の特徴はマセラティグランカブリオやBMW6カブリオレのような、雄大な車格の4座のオープンカーで、クライスラーが日本で売るなら400万円くらいで出てしまう割安さだろう(もちろんスペックは2.4L直4だが)。

  このクルマのようにソフトトップで5m級のクルマとなると日本ではかなり「嗜好性」が強いとされてしまうので、よっぽどの人気ブランドでもなかなか思うように売上を伸ばせないようだ。この手のクルマを日本で所有するとなるとそれなりのインフラ(ガレージ)が必要だ。ソフトトップにとって想像される一番の天敵はやはり「雪」だろう。よって自宅駐車場にはかならず屋根が必要だし、冬にちょっと中部地方の温泉にでも出かけようものなら、一晩の「どか雪」で朝には見るも無惨な状況になってしまうだろう。以前長野県の蓼科温泉に行ったときに驚異的な降雪で、翌朝クルマを「掘り出す」のに2時間くらい掛かった・・・。

  このフラヴィアには2.4L直4エンジンが使われている。特性としては、トヨタのミニバンに使われているのと同じロングストロークエンジンだ。車重があるクルマを直4で動かすにはベストな設定だし、あくまでオープンカーなので高回転でスピードと追求する必要もない。このクルマにとっては納得できるエンジンだ。回らない(高回転でパワーが出ない)直4エンジンは高級車には不向きとする意見もあるが、これも時代の流れであり各国の燃費の基準はどんどん厳しくなっているので仕方がないようだ。スポーツ仕様のボクサーエンジンで知られるあのスバルでさえも、現行モデルのNA用2Lはロングストロークを採用しているくらいだ。

  トヨタがもし同様の5mクラスのオープンカーを手がけるなら、やはりスポーツセダン用の2.5LのV6ではなく、エスティマなどに使われている2.4L直4エンジンを使うだろう。クラウンHVなども2.5Lの直4が使われたが、2.4ないしは2.5Lのトヨタの手持ちのエンジンはショートストロークのV6よりもロングストロークの直4のほうが低速トルクに優れ、ハイブリッドのような重量があるクルマには向いていると判断しているようだ。よってボディを大幅に補強して重量が嵩むオープンモデルも同様のことが言える。

  逆に言うとミニバンやオープンカーはエコではない。同様にハイブリッドもどこまでエコなんだかよくわからない。休日くらいしか乗らないオープンカーと、人によっては毎日のように使っているミニバンやハイブリッドが同じくらいに「エコじゃない」としたらこれは衝撃的なことだが、否定できない事実である。トヨタとしてはハイブリッドを突破口にして高級ミニバンや高級セダンを拡販したいだろうが、いつまでもそんな作戦が通用するだろうか。

  ちょっと話がそれたが、トヨタの最新鋭のハイブリッドと比べて、エコとは無縁で時代遅れのイメージさえあるこの「フラヴィア」だが、トヨタのHVと基本的には考え方はいっしょだ。それなりに環境にも配慮されたすばらしいクルマだと言える。さらに燃費を伸ばすためにハイブリッドになってもいいかもしれない。なにより休日のみの稼働だから環境に悪影響を与えるにしてもかなり限定的だ。それでも週1回しか乗れなくても満足してしまうだけの優雅なクルマでもある。トヨタももっとこういうクルマを作って、環境と日本経済にさらに貢献してくれれば良いのにと思う。

  

  
↓クライスラー車の「ダッジ」に変わる日本戦略ブランドとして「ランチア」というのもいいですね。「アルファロメオ」「アバルト」とは違った魅力がありますね。
  

2013年6月30日日曜日

ルノー・メガーヌ・ハッチバックGTライン 「新型欧州Cセグよりも◎」

  20代の頃はCセグハッチバックのデートは普通だと思っていましたが、今はちょっと恥ずかしいというのが正直な気持ちだったりします。2000年頃はまだまだ2BOXカーが日本ではそこまで多くなくて、トヨタか日産かよく分からないような無個性なセダンが溢れる中をハッチバックで走るのはなかなか壮快でした。それから10年以上が経過して、やっぱりというかB/Cセグのハッチバックが今度は増えすぎてしまい、ハッチバックで「オシャレ」な気分を味わうのはだんだん難しくなってきていると感じます(あくまで個人的な意見ですが)。

  ハッチバックのデザインのバラエティの無さもまたセダンの二の舞になってしまいました。欧州型のオーソドックスなタイプよりも、ちょっと日本的なアレンジがされている「箱形」のキューブやbBが一時期大ヒットしたことが、このクラスのクルマの楽しさを一気に奪ってしまったようです。これって大したことでは無いようですが、ドイツのメディアなどでは欧州の伝統デザインをアレンジしていることに対して厳しい批判を目にすることがあります。キューブのデザインには「日本のカルトカー」というような紹介がされています。トヨタの2代目オーリスなどは、何の因果かミニバンのようなフロントデザインを与えられていたりと、いろいろ不可解なデザインが今も続いています。

  それでは本場の欧州車のデザインはそんなに良いのか?というと結局はどれも、「大衆車なんだからそこまで頑張らなくてもいいじゃん」といった雰囲気から脱出できていなくて、まずデザインから夢中になれるモデルは皆無ですね。結局はマツダの初代アクセラが今でも一番理想かなという気がします。一番がっかりするデザインは、失礼ですがアウディA3ですね、これは「アウディ」という期待が高い部分もあっての評価ですが・・・。

  初代アクセラに迫る好デザインは無いわけではないですが、308やDS4といったどこかむず痒いような「オシャレ」デザインはいざ自分のクルマとなるとあれこれ考えてしまいますね。要は「コペン」とか「カプチーノ」に乗る感覚に近いのかなってことです。「俺のクルマかわいいでしょ!」っていうキャラクターでOKなら何の問題もないでしょう。ただ自分にとっては愛車というのは、自分の人生を投影できる「裏表のない」存在であってほしいと思うので、「かわいいでしょ」の境地にはとても立てないですね。「オシャレ」なCセグを否定するつもりはありませんが、それで良かったらもうクルマでもバイクでも原付でも「オシャレ」なら何でもいいじゃんという気がします。

  クルマにこだわっていて、それでなおCセグに乗りたいという人の気持ちにしっかりと応えられるクルマとなるとなかなか難しいです。おそらく欧州車ではこの「メガーヌ」だけじゃないかと思います。このクルマのデザインは他の欧州Cセグが中性的なのに対して、「筋肉ムキムキ」の男性的なデザインになっていて、個人的には非常に所有欲が芽生えます。しかもこのデザインで本体265万円ですから一声値引きが掛かれば、結構真剣に考えてしまいそうです。

  レクサスCTという好デザインのCセグカーがあります。本体価格が非常に高いのであまり評価されていませんが、これもCセグとしては非常に優れたデザインだと思います。正直言って、新型の欧州Cセグ車はなんだかんだでこのレクサスCTにスタイルで勝てないので、仕方なく価格で勝負してきています。しかし「メガーヌ」ならば純粋にデザインだけでレクサスCTと勝負できてしまいます。

  つまらない言葉でたらたらと語りましたが、簡単に言うとCセグにはいろいろと「種類」があって、特に日本に続々とやってくるドイツ車はどれも「ゲイ」っぽいです。シトロエン(DS4)もプジョー(308)も同類です。どうもこうもSUV的な「流行り廃り」の臭いがプンプンします。つまり業界に言わせると日本市場なんて「色モノ」で、普遍的な価値観でモノが売れる世界ではないと考えているのでしょう。

  実際に欧州や北米で売れるフォーカスやシビック、アクセラ、メガーヌが売れません。こういう伝統のCセグではなく、本来は別クラスの専門だったメルセデスやBMWのCセグを簡単に受け入れてしまう浅はかな国民性を見透かされています。そんなこと考えもせずにCセグの代表車のようにAクラスや1シリーズを取り上げてきた「低能」極まるカーメディアの責任も非常に大きいと思います。一人くらい「ゲイっぽい」と言い放つ「国士」が居てもよさそうですが(手前ミソですみません・・・)。

  
↓かラーリングも冴えてますが、ゾクゾクとする「存在感」を備えるCセグってもはや名車。
  

2013年6月27日木曜日

BMW135i クーペ 「ポルシェに最接近したBMW車」

  BMWとポルシェを比べるなんて、あまり実りの多いことではないが、どちらにも共通するであろうことは、スポーツカーメーカーとしての「野蛮さ」を十分に持ち合わせていることだ。多くの自動車好きはこの「野蛮さ」を所有することに絶えず憧れている。しかしそれと同時に、その「野蛮さ」がほぼ手に負えないレベルであることも良く分かっている。よくスポーツカーに乗る人は自身を「マゾ」と評することが多いが、これは実に的を得た表現だと思う。

  BMW135iクーペは、カタログスペックからすでに「野蛮さ」が滲みでている。BMWにしては決してカッコいいとは言えないスタイリングであったり、後席の居住性を無視したほぼ2シーターの設計であったりと、すでに「乗用車」とは呼べないレベルのクルマだ。これに170psの直4ターボが乗っているだけならなんの魅力もないクルマだが・・・。結局のところBMWの直6ターボを存分に楽しみたいという「根源的な欲求」に対して、他の全てをスポイルしてでも応えようとした「男気溢れる」クルマだ。

  本来はプレミアムブランドとして、居住性にも十分に配慮されたクルマ作りをするBMWが「本能のままに」作ってしまった問題作と言えるのかもしれない。とにかくBMWで一番に「マゾヒズム」に徹したクルマだ。同時にBMWの魅力の源泉といえる直6ターボ搭載モデルを、このブランドにしては比較的低価格で所有することができるという「究極のエントリーモデル」だ。しかし残念なことに、せっかく「エントリー」してもBMWの上位モデルではスポーツ性をこれ以上に体感できるクルマが用意されているわけではない。この135iクーペでポルシェに近い世界観に近づいたものの、あとはひたすらにフォーマルな高級車基調の上級車種がラインナップされているだけで二度とポルシェ的世界観には近づくことはない・・・。

  ポルシェもまた「BMW的」な高級車展開で完全に味を占めてしまっていて、カイエンやパナメーラは高級車の趣でしかなく「野蛮さ」とは無縁に感じられる。現行の911(991型)もかつて持っていた「野蛮さ」を失いつつあるようだ。それでもさすがはポルシェで、911ターボSの試乗動画などを見ていると、経験豊かなライターが「おっかなびっくり」でおそるおそる運転している様子が分かる。海外試乗ともなればアウトバーンを250km/hで走るシーンが出て来たりするが、いつもは偉そうなコメントを連発するライターの声が心無しか震えて聞こえたりする。

  BMW1シリーズクーペは現行モデルを持って廃止され、次期モデルは「2シリーズ」としてラインナップされる予定だが、不思議なことに2シリーズと聞くと「野蛮さ」が影を潜めてしまうような気がする(スペックがどうなるかなど全く説明されていないが・・・)。1シリーズクーペに一定の「ラグジュアリーさ」を追加しようという意図で2シリーズをデビューすれば、一時的にはスポーツ車メーカーとしてのBMWにとって大きな打撃と言えるかもしれない(装備が豪華な135iクーペなんて魅力半減では・・・)。

  BMWの本来のライバルのメルセデスはいよいよA45AMGを投入して、高級車ブランドというだけでなく、スポーツカーブランドとしての地位を築こうとしている。このクルマは過剰スペックなハッチバックといった印象になっていて、「野蛮さ」を前面に出してくるブランディング方法を意図しているのかもしれない。やや「野蛮さ」が薄れつつあるポルシェやBMWを尻目にどこまで成長を遂げるのだろうか・・・。「野蛮さ」が全くないくらいのレクサスやアウディに比べて、非常に野心的なメルセデスの戦略はなかなか奥が深い。


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↓だいぶジェントルになってきたが、それでもRRという時点で相当過激だ・・・

  

  

  

2013年6月25日火曜日

BMW M3 「さらばM3・・・?」

  誰の目にも明らかだがBMWとレクサスのグレード名が様々な点で似て来ている。「奇妙な」までのこの両社の連動性のあるラインナップの変化は、どいういう意図があるのか分からないが、攻勢を強めるメルセデスとアウディの安易なクラス設定を揶揄する意味合いがあるのかな?などと勘ぐってしまう。具体的にトヨタとBMWが新たに何をするかというと、Dセグ(ISと3シリーズ)におけるセダンとクーペの車名を分けて発売するようだ。さらにスペシャルモデルだった「IS-F」と「M3」を廃止して、次期モデルはクーペのみの「RC-F」と「M4」となって登場することが濃厚だ。

  「AMG」「S」「M」「F」は暗黙のうちに「V8」エンジン搭載モデルを意味していたが、最近ではその「称号」が「商号」化してきたようで、直4ターボの「AMG」「S」が登場してきている。あまり目くじらを立てるのもどうかと思うが、どうやら「記号化」によってユーザーが得をするケースはないようだ・・・。さらに「Mスポ」「Fスポ」なるグレードも今やBMW・レクサスに全車に設定されている。「Mスポ」というのはてっきり電制サス(アクティブサス)装備だとばっかり思っていたが、どうやらスポーツサスが付いているだけのようだ。

  10年前の「M5」と言えば、Mシューマッハが認めた最高のGTカーとして、BMW最強のイメージリーダー的クルマだった。2001年の雑誌sightでクルマ特集(英国雑誌の企画の邦訳)が組まれていたが、その中でもM5の評価は絶大だった。R34GT-RやS2000といった日本の名車も多く参戦していたが、M5とポルシェ911の優位は全く動かずだったような記憶がある。あれから12年が経ち、同じような企画をやったとしたら911はともかく、M5が同じような評価を受けられるかはちょっと疑問だ。BMWの開発はブランドの「頂上」ではなく、「裾野」のほうでむしろ盛んになっていて、販売のボリュームゾーンを考えるとその平均価格はどんどん下がっている印象だ。決して「庶民的」なブランドだとは思わないが、もはや世界中の金持ちがもて囃すブランドではないし、1500万円のM5がブランドを象徴する時代ではないのは確かなようだ・・・。

  そんな「究極のGTカー」イメージを確立した名車M5の弟分としてM3も約1000万円で日本のエリートサラリーマンならなんとか買える価格設定でMシリーズの稼ぎ頭だった。しかしBMWがただV8を載せるだけでほったらかして、シリーズの進化を放置したツケが回ってきたようだ。911やGT-Rのよう4座のスーパースポーツに走行性能で大きな差をつけられ、スポーツセダンとしての地位すらV8搭載で価格がM5よりも300万円安いアウディS6に主役の座を奪われつつある。

  そこでBMWがアウディ対策に導入するのが、新型M4のようだ。噂によると直6ツインターボになるのではと言われている。これは同じベース車両を使うアルピナB3と同じスペックになるが、M4は2ドアクーペのみで、B3はセダン(リムジン)とワゴンの設定でボディ形状で差別化する作戦らしい。ただ4シリーズはクーペ専用モデルなのだから、ベースで直6ターボを装備し、M4でV8モデルになったほうが、良かったように個人的には思う(BMWは「愚直」なブランドイメージがあったが、どうやら完全に過去のものになってしまったようだ・・・)。


↓M3の伝統はM4にしっかりと引き継がれるのか?
  

  

2013年6月21日金曜日

ホンダNSX 「気持ちのよいNAとでこぼこの都会を駆け抜けるトラクション炸裂のはずが・・・」

  日曜日に都内を走っていると、いろいろな「趣味性」の高いクルマが見られて楽しい。どこぞの博物館にお金を払ってもなかなか見られないような「スゴいクルマ」が見られたりするので、ちょくちょくと田舎からわざわざ見に行ってしまう。先日も黒のメルセデスCLSの「痛車」(ボディにアニメがペイントされたクルマ)が走っていたりして、思わず笑ってしまった・・・。R35GT-RやNSXの「痛車」などもすでに複数存在していて、実際に見かけたら、ちょっとショックを受けそうだ。

  幸いなことに都内でNSXの痛車は見かけたことはない。どうやら最近ではすぐに現状回復できるラッピングフィルムがあるようで、特別なイベントなどがないときは、ノーマルの状態で走るという人もいるらしい。お台場などの信号の少ない広い道路でNSXをよく見かける。乗っている人を見ると、やはりというか「痛車」に乗っててもおかしくないような「イケメン」が多い気がする(かなり若い人が多い)。別に揶揄するつもりはない。NSXを所有できる社会性とアニメ趣味のオタクというスペックなら、ほぼ確実に「イケメン」じゃないと成立しないのでは?という意味だ。

  たいていは見た目がとても若そうで、普通に友達でも同僚だとしても害のなさそうなオーラを出している。外見からのイメージ通りで、運転もかなりジェントルでNSXをまるでカローラのように運転していたりする。ちょっと偏見かもしれないが、せっかくのNSXなのにトラクションの良さを味わおうとする様子でもなく、まるでトヨタのHV車に乗っているような立ち上がりだ(ちょっと言い過ぎか?)。立ち上がりもクルマがスムーズに動く性か、VWポロなどの出だしに見られるような「せわしない様子」など少しもみせない。こんな「草食系」のNSXのドライバーが増えているように思う。

  「痛車」が街中でも見られるようになった背景には、ある種の意味を発信しているような気がする。そもそも特大のアニメの絵を誇るようにプリントされたクルマに乗ることは、クルマが持つ重要な役割を根本的に変えてしまっている。そこには現代のクルマが抱える深刻な問題があるように思う。つまり今のクルマは総じて「ダサい」ということだ。ノーマルのクルマのデザインがダサいから、「痛車」に乗っていてもそこまで違和感を感じないし、引け目に思うことなどまったくなく、好きならやればいいのではないか? 「痛車」は周囲から好奇な目で見られるかもしれないが、街中に溢れる、ノーマルデザインのプ◯ウスに乗っている人に比べれば「マシ」と思えるのかもしれない。

  そんな「痛車」乗り達が実際に憧れを持つクルマは2000年頃に発売されていたスポーツカーが多いようだ。割合としてはスバルや三菱のものが多いだろうが、その中でも特別なステータスを誇るのがFD(RX-7)とNSXだと言われている。やはり「痛車」乗りの中には一定割合でセンスがいい人も多いのだ。この2台は走行性能もさることながら、スタイルの良さから惹かれるという人もかなり多いと思う。どちらも発売から20年以上が経過しているが、まったく風化しないデザインには、まさに「不変」「永劫」のものなのかもしれない。

  去年出たばかりのトヨタ86はなぜFDやNSXのデザインを超えられないのか? 極限的性能を持つクルマのデザインはバイアスがかかってカッコ良く見えてしまうのか(たしかにGT-Rもカッコいいな・・・)? デザインそのものを科学的に「カッコいい」ものへ変えることはできないのだろうか・・・。





  
 
  
  

2013年6月19日水曜日

R35GT-R 「日産が持て余すほどの国産スーパースポーツ。だけど性能以上に『特別なクルマ』な気がしてならない」

  「いつかはクラウン」じゃないが、イマイチ仕事に精が出ない若者達を奮い立たせる意味での「クルマの役割」は現在でも非常に効果があるように思う。「憧れのクルマ」と過ごす時間はかけがえのないものだ。2代目アテンザを生産終了直前で購入して、約1年感乗ってきたがとても幸せな時間を過ごせたと思う(クルマの代金分はもう十分に回収できたと思えるくらいだ)。それでもまだまだ、「あんなクルマに乗れたら・・・」と思わせるほどの「魅力あるクルマ」は幾つもある。いつかは乗ってみたいとまた新たな野心がくすぶるのを感じる。

  いま乗っている「アテンザ」を超えるステータスを感じさせてくれる「憧れのクルマ」も「国産の現行車種」に限定してしまうと、その数はだいぶ減ってしまう。というより厳密に言うと「R35GT-R」くらいしかないかもしれない。もう少しすれば、レジェンドとNSXが復活し、ソアラとスープラもやがて復活するのだろうけど。輸入車ならば「マセラティグランツーリズモ」「メルセデスCL」「ポルシェ911(991型)カレラ4S」「BMW6シリーズ」「シボレーコルベットZR1」・・・とりあえず10台は軽く出てきそうだ。

  よく「クルマにお金を注ぎ込む人は馬鹿」と言われるが、自分が幸せになれることにお金を使うことはそんなに悪いことだとは思わない。ローンを組まずに買える範囲なら好きなクルマに乗ればいいと思うし、自分の分身として人生を投影できるクルマに巡り会ったと確信したなら、初回の車検までに乗り換えるなんて思わないだろうから、5年も10年も夢中にさせてくれるクルマならば、むしろお得だと言える。

  たとえその「憧れ」のクルマが「日産R35GT-R」だったとしても、それで仕事が人一倍頑張れるのであれば、遠慮せずに新車で買ってしまえばいいと思う。これだけのクルマを所有してしまったら、もはや後戻りはできないだろう。それなりの経済力が要求されるから仕事や自分の生活への責任感が重圧となって襲ってくるだろうが、このクルマに乗れるならばそれほど苦痛じゃないと思えるならば問題ないはずだ。GT-Rを所有することで自分自身への意識は飛躍的に高まるだろうし、いま以上に「洗練された人生」が約束されたと言ってもいいかも(いいすぎか?)。

  簡単に言うと「R35GT-R」は乗り手を幸せにする力があるクルマだと思う。下世話な話だが、プロ野球選手の愛車の一覧などを見ていると、この選手がどういう意識を持った選手なのかが、なんとなくわかってしまう。「R35GT-R」を愛車にしている選手は、確認できただけで2人(巨人の坂本と千葉ロッテの唐川)だけでかなり少数派のようだ。だがどちらも球団を背負う若手のホープとして活躍している。

  あまり酷いことを言いたくはないが、ベンツに乗っているような選手にスターはまずいない。ポルシェに乗る若手は伸び悩む(カイエンは選手生命を縮めるのか?)。マセラティやランボルギーニに乗るベテラン選手は晩節を汚すタイプが多い・・・気がする。あくまで国産車好きの私の「色眼鏡」での見え方なので、気を悪くしないでほしい。

  日産がこんなことを意図したかどうかはわからないが、R35GT-Rにはその性能とはまた違った「魅力」が備わっているように感じる。ちょっと高価だけれども、自分の感性に最高にマッチしたキーホルダーやネックレスを身につけていると、物事が上手くいくことがある(私はそれを何度も経験しているので、キーホルダーやボールペンにムダにカネをかける)。GT-Rはそんな効果が詰まった「究極のアイテム」なのではないかという気がするのだ・・・。おそらく900万円出して買ったら、次の年にその倍のお金が返ってくるのでは・・・。


小沢コージさんがマジで面白いです。クルマDVDには珍しいほどの、とても清々しい内容で、続編がぜひ見たいです。

  
  

2013年6月14日金曜日

ボルボS80 「フォードが作ったレジェンド?BMW?」

  新型車やFMC自体の少なさもあるが、近年エコカー志向の逆風もあり、絶望的なほどにヒット車に恵まれていない「フルサイズセダン」(Eセグ)は、その存在価値が相当に怪しくなってきている。先日MCで大々的に日本でも展開を始めた新型Eクラスはデザイン面で見るべきものがあり、この逆境の中でそれなりに売れそうな気配はあるが、従来からのファンにはさまざまな仕様の変更が不評で、売れ残っている先代モデルがにわかに景気付いているらしい。

  日本車でもレジェンドが撤退し、フーガもレクサスGSも先の見えない販売不振に陥っている(はっきり言って新型アテンザに完全に喰われた!ようだ)。このままでは、後席の居住性を改善した「新型レクサスIS」に残りの客も全部さらわれてしまいそうな予感がする(アテもISも嫌いというセダン好きも結構いそうだが・・・)。とにかくEセグの魅力をしっかりと発信できるクルマが見当たらないという悲惨な状況だ。

  バブル以降の社会構造の変化もこのクラスの販売に大きく影響しているという見方もある。MBもBMWもレクサスも同じことがいえるが、世界の富裕層にとってみれば1000万円以上をクルマにかけることは大した問題ではないようで、Sクラス・7シリーズ・LSは先進国では確実に売れるし、むしろ上級グレードのほうが人気がある。一方でその下のグレードはというと、中流階級が無理して買うケースがほとんどでベースグレードにボリュームゾーンがきてしまう。よってプレミアムブランドはどこもEセグの低価格化に必死だ。しかしその努力は結局は「ブランドイメージの悪化」につながる悪循環ともいえる。

  Eセグ以上のセダンの最大の欠点は、1人で乗るのに適さないことだ。観光地などで大きなセダンに1人で乗っているのはとても恥ずかしい気がするのは自分だけじゃないはずだ。そもそも1人で乗っているだけだと、豪華すぎるほどに広い車内空間は持て余すだろうし、燃費も悪かったりするので、なにもいい事がない・・・。また奥さんと子供を乗せて走るクルマは「Eセグセダン」がベストかというと、必ずしもそうではない。むしろ最近の傾向としては、Eセグセダンより割安で高級感もあり、居住性も高い「高級SUV」の方が人気がある。いまでは各メーカーが一番力を入れるジャンルとして確立している。車種もたくさんラインナップされ、レクサス、BMW、MB、ランドローバーからラグジュアリーなSUVが発売され、家族連れの「定番車」としてこちらの方がウケている。

  それでも個人的な意見としては、「Eセグセダン」はデートカーとして「最高レベルのステータス」を誇っている。ドライブ好きの熟年夫婦ならスポーツカーのほうがシックリくるかもしれないが、若い未婚のカップルなら断然Eセグセダンがスマートに見える。20代や30代で新車のEセグセダン乗ってしまう独身男子は、クルマ別ではスーパーカー以上に「モテる」印象がある。しかし新車で買うとなると600万円以上は軽くかかってしまう。しかも主力のドイツ勢の最廉価グレードには、BMW528やメルセデスE250など4気筒のものまであったりして、これを選んでしまうと「スマート」ではなくなってしまいます。よってなかなか面倒くさいです。

  いっそのことエンジンは6気筒で3~3.7Lくらいの1グレードにしてほしいなと思います(もしくはアシストHV)。そういうクルマ作りをしているメーカーにはなんだか好感が持てます。6気筒以上のエンジンで統一してくれているプレミアムブランドのクルマとしては、「ボルボS80」「キャデラックCTS」があります。ボルボS80は3L直6ターボのAWDで、デザインはホンダ「レジェンド」を思わせるような「高級感」と「スポーティ」なイメージです。

  このS80はフォード傘下時代の開発なので、エンジンや設計はジャガーのXFと共通点が多いです。AWDのS80に対して、FRのジャガーXFの方が低価格の設定になっています。S80は同じフォード傘下だったマツダのハンドリング技術がAWDのS80には使われていて、電動パワステながら定評のあるハンドリングが魅力です。ジャガーXFは直4ターボ化が発表されていて、さらなる低価格戦略でドイツ勢と競合するようですが、同時にブランド価値の低下がやや懸念されます。一方でボルボは、ドイツ勢の「逆」を選択していてより重厚感のある開発スタンスを取っています。BMWからフェードアウトしつつある「直6ターボ」を前面に打ち出したスポーティさで、ドイツ勢を性能面で上回るという方向性が感じられて、今後さらに期待できる予感があります。

  

   

2013年6月11日火曜日

フォルクスワーゲン・シロッコR 「直4車の限界価格はいくら?」

  どんなに興味がないブランドであっても、1台くらいは気になるクルマがあったりする。フォルクスワーゲンだと、それに該当するのは「シロッコ」で、ドライブに行った先で見かけるとついつい見とれてしまう。VWのクルマとは思えないほどの豊かな曲線で構成される側面デザインは、このブランドにはまったくそぐわないほど「芸術的」ですらある。そのスタイルは、同じVWグループ・アウディの看板モデル「TT」と比べてもまったく見劣りしない。最近ではむしろ「シロッコ」の方がカッコいいのではと思えるくらいだ。

  しかしカタログでその価格を見ると、その「割高」な設定に思わず卒倒しそうになる。大衆モデルと同じ1.4Lターボ搭載車なのに本体価格で350万円もするのだ。同スペックのゴルフのハイラインと比べて50万円も高いとは驚いた。日頃からゴルフは割高と主張しているのに、それをさらに上回る価格設定になっている(ゴルフGTIが買えてしまう)。それでも簡単には引き下がれないほどデザインは素晴らしい。やはりVWは商売上手だ・・・、デザインの価値とそれに見合う価格がよく分かっている。だからこそリーマンショックが起こって「トヨタショック」に見舞われても、このメーカーだけは利益を出し続けるのだろう。日本のどっかのメーカーのように好デザインをむざむざ安売りしたりは決してしない(ユーザーにとってはマ◯ダは素晴らしいメーカーだが・・・)。

  シロッコのグレード設定は実に巧みだ。ベースグレードに使われているVWの1.4LターボTSIはブランドの屋台骨と言える主力エンジンなので、悪いということはないが、あくまで「大衆車」向けの良質なエンジンに過ぎない(日本の1.5LのNAのスカスカ加減からすれば良いということになるだろうが・・・)。そこで上級グレード(シロッコR)の2Lターボ(256ps)に目がいくのだが、本体価格は515万円と一気に跳ね上がる。これはアウディTTの2Lターボ(211ps)のクワトロ(4WD)が買えてしまう価格帯なので、このサイズのスポーツモデルが欲しい人なら、TTに流れることが多いのかなという気がする。

  シロッコRがゴルフR(505万円)に10万円上乗せでOKなら、ゴルフハイライン(299万円)やゴルフGTI(368万円)にも10万円上乗せでいいんじゃないの?と勝手なことを考えてしまう。もしその価格で発売されたら、間違いなくシロッコはとてもお買い得だ。さらにこのクルマの良い点として、スポーティなデザインにも関わらずホイールベースはゴルフと変わっていないので、後席空間が犠牲になってはいないことだ(もちろん2ドアだから乗り降りには支障はあるが・・・)。アウディTTやプジョーRCZといった同サイズのスポーツモデルはことごとく後席には大人が乗車できなくなっているのとは対照的だ。TTはゴルフのシャシーを100mmも切り詰めているから実質2シーターだ。

  さらにゴルフの外観上の最大の欠点と言える「腰高感」を解消すべく、全高を65mm低くしてある。これにより伸びやかで美しいデザインというだけでなく、低重心でコーナ―での旋回性能もゴルフに比べて格段に高い(だろう)。特にシロッコRは同スペックのゴルフRと比べて車重が120kgも軽いので、10万円の価格差は安いくらいで「R」を買うなら間違いなくシロッコだと思う(某試乗レビューではトラクションの関係もあって、一概にシロッコRがいいという訳ではなかったようだが・・・)。


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↓メルセデスAクラスやボルボV40などでは「逆立ち」しても勝てないほど、シロッコのデザインはいいですね。

2013年6月9日日曜日

プジョー508 「プジョーデザインは世界を制することができるか?」

  世界の有名ブランドメーカーの中で最も優れたデザインを生み出しているのはどこか? クルマの価格にも大きく差があり単純に比較はできないので、簡単に1番はどこかなんて決めることはできないが、確実に上位に来るメーカーはある程度は見当がつく。20年前ならばホンダで、10年前ならアウディだったような気がするが、今はいったいどこなのか?特に「優美」なデザインが際立っているのは、間違いなくマセラティだろう。5年ほど前から台頭が著しく、現代の「スペシャリティカー」デザインの先端に位置している。ライバルの超高級車の中でも抜群のプロポーションをしていてとても目を引く。しかし1000万円超のクルマばかりを展開するメーカーなので、これが1番と言われたら「大衆ブランド」に出番はない。

  他のブランド(大衆ブランド)ではフランスの「プジョー」が、上から下のグレードまで良いデザインのクルマを揃えているように思う。新型車208はBセグということで注目度はそれほど高くないが、このクラスでは珍しいほどにデザインの作り込みの良さを感じる。Cセグの308は2007年デビューを感じさせないほどの完成度を誇っていて、他の追従(BMW1やメルセデスA)を許さないハッチバックの頂点のデザインだと言える(特にリアの造形はCセグ車では孤高の地位にある)。スポーツカーの「RCZ」も強烈な個性を発していて「スペシャリティカー」としての存在感はあるが・・・。それでも308と共通の足回りを使うのはいかがなものか(オーリスに86のボディを被せたようなものだ・・・)? 

  そしてプジョーが誇るDセグセダンが「508」で、こちらも強力なライバルを押しのけての鮮やかなシルエットが印象的だ。BMW6シリーズグランクーペをDセグに落とし込んだと言うとやや語弊があるかもしれないが、サイドのキャラクターラインはややシンプルながら、リアの造形はまさに「スペシャル」で、全体的に豊かな曲線美に360°覆われている。現在大流行中のサイドにプレスラインを思いつくままに入れて、「エッジ感」を競い合っている日独メーカー車とは一線を画しているのも特徴で、むしろそのおかげで個性が引き立っていて、Dセグではとても「華」のあるデザインだ。

  ただせっかくの好デザインなのだが、クルマ自体のスペックはなかなか特筆すべきことが見当たらないのがやや残念だ。1.6Lターボの1グレード設定で1500kg超の車重を考えると、もうちょっとバリエーションのあるパワーユニットを用意してもいい気がする。ただ設計自体は後から登場している新型セダンに影響を与えている点もある。FF車としては2815mmで最大級のホイールベースを持っていて、後席の居住性はFFの全長5m超サイズのクルマ並みに優れている。登場の時点でトヨタカムリや日産ティアナよりホイールベースが50mm程度長く設計されているから、どれだけ「ゆとり」があるか分かると思う。このプジョー508のサイズにかねてから注目していたであろうマツダは、新型アテンザのセダンでは2830mmになり先代と比べて100mm以上も伸ばして来た。

  プジョー508が導入し、新型アテンザが追従した新しい設計は「FF専業メーカー」が仕掛ける「セダン革命」の尖兵と言うべき「革新性」に富んだものになっている。FFセダンの有利さを生かした上での更なる「戦略的設計」は、従来のFRセダンにとってかなりの脅威になっている。

  508とアテンザの2台はDセグとEセグの中間点の「クラスレスな魅力」を掲げていて、メルセデスEクラスやBMW5、レクサスGSといったクラスのFRセダンと同等以上の居住性を持っている。ミドルセダンの「ホットゾーン」が現在どこにあるのか、まだ定かではないがこの2台のFFセダンは居住性だけでなく、デザイン面においてもプレミアムセダンを相手に優位に立っていて、勢力図を徐々に塗り替えつつある。その印象は「狭くてダサい」DセグFRセダンや、「中小企業の社長車」のEセグFRセダンのどちらにも無い輝きを放っているように見える。今後プジョーとマツダがどこまでマセラティに迫る魅力を発揮できるのか? この3社が現状では「デザインTOP3」なのは間違いない。


   ↓508のコンセプトを上手くコピーし、時流に乗りつつある「マツダ6」
  

2013年6月5日水曜日

レクサスISとBMW3 「クルマの本質が見えにくい『八方美人』っぷりに疑問」

  「レクサスIS」と「BMW3」どちらもベースグレードで総額500万円するのだから、「満足度」はそこそこ高いクルマであることは間違いない。大衆車と変わらない性能だと考えると「高い」が、高級車の中では「格安」という二面性を持っているので、当然ながら「毀誉褒貶」が激しく、人によってまったく別の評価だったりする。さらにややこしいのが、クルマそのものへの評価云々ではなく、「レクサス」と「BMW」というブランドの価値も評価に含まれてしまうので、そのブランドの好き嫌いでも大きく意見が分かれてしまう。

  どちらもブランドの屋台骨を背負うクルマであることには「異論」の余地はない。そういうクルマは多様なニーズに応える必要があるので、「廉価グレード」「低燃費グレード」「高性能グレード」と大きく設定が分かれてしまうので、余計に「単一車種」としての評価は下しにくい(スタイルや内装に関しては一定の評価はだせるが・・・)。本来、高級車はその設計に一番理想的なパワーユニットを積んでいるべきものだと思うが、日本車やドイツ車には「高級車の廉価グレード」という訳のわからないものが溢れている。

  しかし昨今の消費行動はそういう「訳のわからない」ものを避ける傾向があるようで、この両車の最量販グレードは「廉価グレード」ではなく「低燃費グレード」へとはっきりと移っているようだ。どちらもモデル全体の半数以上のシェアを「低燃費グレード」が持っている、とくに全体の8割に迫ると言われるほど好評なのはディーゼル仕様のBMW320dだ。現行モデルから日本でも大々的に「ディーゼル搭載モデル」が発売されて、その価格設定(ディーゼルだから当然安い)も大いにウケているようだ。ただこれほどまでに極端に販売が集中してしまうということは、従来からあった「ガソリンモデル」の評価が「十分に確立していない」ことの裏返しといえる。とくにBMWは先代モデルから4気筒ターボへの積み替えが急速に進んでいて、「500万円の4気筒車」に対して厳しい評価があるのも事実だ。

  現在のBMWは4気筒への置き換えと同時に、さらなるブランド価値向上を目指し、「直列6気筒+HV」(アクティブハイブリッド)と「V型8気筒」エンジンを搭載した「上級モデル」の拡充にも力を入れている。ここまで「露骨」に二極化が進められると、BMWの4気筒モデルは、たとえば男性服の高級ブランド「ポールスミス」における「PSライン」のような「ライセンスプロダクツ」(疑似ブランド)の態に見えてしまう・・・。結局このBMWの戦略は日本においてはうまく機能してはいない。500万円をクルマに注ぎ込める日本人の客層は、世界で「最も賢い消費者」といっても良いほどでこの手の「商法」には敏感に反応して購入を控えてしまうようだ(同じような手法で儲けている人々なのだから当然だが)。当然の結果ながらBMWは「高性能グレード」も「廉価グレード」も販売が振るわず、販売の8割が「エコカー」なのだから、もはや「エコカーブランド」(ディーゼルカー・ブランド)と言ってしまっても差し支えないと思う。

  これはレクサスに対しても同じことが言える。高級車の象徴とも言える「大排気量」のグレードで軒並み大苦戦を強いられていて、販売の主体は「ハイブリッド」に大きく依存した体質になっている。さらにGSとISの「廉価グレード」で使われている「V6の2.5Lエンジン」も基本設計が古いということもあり、パワーも無く燃費も悪いので、最新型のプレミアムカーに搭載されるようなものではないように思う。このエンジンの開発費の「減価償却」はとっくに終わっていて、本体価格250万を下回る「マークX」に搭載されるものと共通のエンジンに過ぎない。そんなクルマに500万円を払う価値があるのかどうか疑問だ・・・。

  結局レクサスISもBMW3も「エコカー」として買うか、「高性能車」として買うならまだまだ賢い買い物になるとは思うが、「廉価グレード」に関してはちょっとオススメできない。


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2013年6月3日月曜日

マセラティ・クワトロポルテ 「このクルマが売れる理由」

  所用があり赤坂にある「東京ミッドタウン」にクルマで行ってきました。日曜日の午後で多くの買い物客でテナントはとても賑わっているにもかかわらず、マイカー利用者は少ないようで駐車場渋滞などはまったくありませんでした。スムーズに地下駐車場に進むと、空いている場所を探す必要もないくらいに、どこでも停められる状態でした。しかもどの場所も駐車スペースは十分で、東京西部に住む「田舎者」の私にとっては「豪華」すぎてとても驚きました。

  さらに驚いたのは、異常なまでの「輸入車率」の高さで、軽く50%を超えていたと思います。地上であれだけ沢山走っている「プリウス」や「アクア」がなんと1台もいないのです。国産車は家族連れのミニバンが数台と、あとは各メーカーのフラッグシップセダンばかりだったと思います。いつもは大きく見える自分のクルマが平均以下の大きさ(小ささ)に見えてしまうほどでちょっと圧倒されました(不思議なほど小さく見えてしまうんですよね)。年配の女性が運転していたBMW1シリーズがまるで「日産マーチ」に見えるほどで、旧型のドイツ車などはもっと悲惨で、旧型メルセデスEクラスなどはデザインも古臭いので、完全に「空気」でした(ごめんなさい)。

  輸入車で人気のフォルクスワーゲンなんて絶対にミッドタウンは「無理」という雰囲気です(ゴルフで乗り込んでいったら間違いなく「勇者」です)。BMWなら「M5」か「M6」、メルセデスなら「AMG63」じゃないとカッコ付かないほどです。前向きに駐車するのが基本ですが、M5だけが洞窟のような駐車場にわざわざ頭から入れて後向きに停めていて、尻についている「M」マークを必死で見せていて、とても面白かったですね(BMWの面だけじゃ笑われるのか?そんなことないだろ)。ポルシェ996型911もなんだか「軽のオープン」(コペン?)のような存在感しかなかったです。カイエンもぜんぜん「普通」のクルマに見えます。あくまで自分が感じたってだけですが・・・。

  そんな想像を絶する空間でひと際輝いているのが、マセラティの「クワトロポルテ」と「グランツーリズモ」でした。ドイツ車を圧倒する存在感は抜群で、このクルマならフェラーリやランボルギーニに囲まれても一歩も引けをとらないほどに「優美」ですね。普段の「お買い物」にミッドタウンを使う人にとっては1500万円で4000万のランボルギーニ・アヴェンタドールに匹敵するマセラティはお買い得と言えるのではないでしょうか? 改めて実車を見ると「イタリア車」のレベルの高さをまざまざと感じます。「ドイツ車」で対抗できそうなクルマはオープン状態で入ってきた「SL・AMG63」くらいだったと思います。

  「マセラティ>ジャガー(XJ)>レクサス=メルセデス>BMW>ポルシェ>アウディ」のヒエラルキーを感じました。「アベノミクス」で最近はマセラティが絶好調のようですが、この状況を見れば誰だってマセラティが欲しくなるのはよく分かります。それにしても「赤坂」の人々はやはりクルマの価値がよくわかっている人が多くて、見事にV8モデルばかりだったような印象があります。直4モデルの輸入車では決して入ってはいけない場所が「ミッドタウン」の地下駐車場ですね(東京近郊だったらどこ走っていてもバカにされますが・・・)。



  
↓「ミッドタウン・マッドネス」とはまさに・・・

2013年6月1日土曜日

メルセデスSLKとBMW Z4 「スポーティカーだから許される4気筒&FRということか・・・」

  現代のクルマは十分なエンジンの高性能化の恩恵を受けて、どんな設計であれ大抵のクルマならリミッターに当てることも簡単に出来てしまいます。特別に高性能なクルマを欲しないならば、クルマ選びの最大のポイントは「デザイン」でOKではないかと思います。よくプロの自動車評論家の中には「カッコだけ」と揶揄する人もいたりしますが、全員が本気モードのスポーツカーを選ばなければいけないということはないはずです。よって「デザイン」さえ良ければ、クルマはそれでOKで、評価される(ヒットする)ようになってきています。日本メーカーは最近になってやっとこのことがわかって来たようです。

  「デザイン」を徹底的に重視して作られたクルマの例として、真っ先に思い浮かぶのが「メルセデスSLK」「BMW Z4」「アウディTT」のドイツプレミアム御三家の小型スポーティモデルです。それぞれにユーザーを魅了する豊かな造形美を湛えていて、このジャンルに関しては日本車の追従車(フォロワー)が現行では見当たらないほどです。ひと昔まえにトヨタが出していた、最終型「セリカ」はこの系譜に連なるクルマと言えるかもしれませんが、もはやデザインの精緻さでだいぶ差があるように感じてしまいます。デザインだけならフェアレディZ(Z34)がドイツの3台に対抗できる優美さを持っていますが、日産の開発者に言わせれば、Zをその3台と同じジャンルには括らないでほしいというのが本音のようです。つまりZは「デザイン」だけのクルマではないという事です。

  トヨタが昨年に大ヒットさせた「86」もまた、開発を担当したスバルの人たちに言わせると、ドイツの「その」3台とはいっしょにしてほしくないと思っているのではないでしょうか。よくトヨタ「86」の批判の中に「SLK」「Z4」「TT」にデザインで負けているというものがあります。実際にデザインでは86の方が分が悪いでしょう。さらにスポーツカーとしての性能についても言及して「86」を貶める意見もあったりするのですが、その点に関してはスバルの開発者に言わせれば、ドイツ車の3台は純粋なスポーツカーとして誕生したわけではなく、一般乗用車の車台を流用して作られたものにすぎないもので、「86」や「マツダロードスター」のような専用設計のスポーツカーとは本質的に異なる「乗り物」に過ぎないから下手に比べないでくれといったところでしょうか。

  「SLK」「Z4」「TT」の3台は日本でもちゃんとラインナップされていて、そこそこ人気はあるようです。しかし日本車のフォロワーが生まれないのは、この3台がトヨタや日産の哲学に「反した」クルマだからでは?と思っています。一般論として日本メーカーよりもドイツメーカーの方がクルマ作りにポリシーがあると考えられているようですが、小型スポーツカーに関して言えば現実はむしろその逆と言えます。日本メーカーの開発者達は世界トップ水準の優秀さを誇っていますが、彼らが本当に素晴らしいと感じるのは、設計するクルマが非常に高い「純度」(ポリシー)を持っていることです。日本車の持つポリシーは他の自動車生産国では見られなかったりしますし、トータルで見て、日本車より高いポリシーを掲げる国はまずないです。

  トヨタや日産の開発陣にとって、おそらく「SLK」のベース車の「ベンツCクラス」や「Z4」のベース車の「BMW3シリーズ」は、彼らなら絶対にやらないような設計になっています。「4気筒エンジンにFRのセダン」という設計は、現代の自動車工学の常識ではありえない設計だと言えます。もちろんどちらのクルマにも6~8気筒を積んだグレードもあるので一概に「ひどい設計」とは言えませんが、軽量な4気筒に積み替えたモデルが販売のほとんどを占める状態になっていて、MBとBMWのポリシーが問われています。いずれどちらもFF化してくるのでしょう。日産やトヨタにしても2.5LのV6というガラパゴスなエンジンを使ってユーザーを欺いている気もしますが・・・。

  次期スカイラインも4気筒化が噂されていますが、これに対して日産の開発陣が大反発していると言われています。日産の開発者には絶対に譲れないものが当然にあるでしょうし、現行のV型スカイラインの原点の設計を手がけた水野和敏さん(GT-Rも開発した)が最近になって日産を突然に退社するという事態もあり、どうやらスカイライン開発の現場ではかなりの刷新が行われたようだ。日産が日本メーカーのポリシーを捨てて「ドイツ化」しようがしまいがどちらでも良いのですが、日産経営陣の眼に映っているのは、「デザイン」だけ雰囲気を出して、中身は4気筒ターボに載せ変えた「SLK」や「Z4」に群がる日本人ユーザーなのだと思います。


↓カーグラフィックにはぜひ、ドイツ車の「4気筒FR」とトヨタ&日産の「2.5LのV6」についての告発をしてほしいと思います。

2013年5月29日水曜日

ポルシェ911(991型) 「今のドイツ車で一番の会心作だと専らの評判」

  スポーツカーを作るメーカーはどこも綱渡りの経営をしていることが多い。当然ながらスポーツカーを好む人はクルマに造詣が深く、そんなカスタマーを満足させて購入に至らせるクルマを作ることは並大抵の努力ではない。それこそ「クルマなんてなんでもいい」という人を相手にする大衆車と比べて何倍も労力がかかるだろうことが想像できる。たとえライバルモデルを軽く凌駕するような「画期的な」スポーツカーが出来たとしても、世界同時不況などが起これば真っ先に販売は落ちて行くからまったくもって安定とは無縁のビジネスモデルだ。

  スポーツカーの代名詞とも言える「ポルシェ」も幾度となく経営破綻の危機を迎えてきたが、近年ではスポーツカー専業を諦めてSUV(カイエン)やセダン(パナメーラ)を作るようになった。しかしそこはさすがポルシェの知名度というべきか、まったく実績がないジャンルでのクルマ作りにもかかわらず、初代モデルからあっさりと大ヒットさせている。いくら頂点を極めたスポーツカーブランドとはいえ、それなりに歴史があり「秘伝の味」を持つ幾多のライバルがいる「高級セダン」や「高級SUV」でいともあっさりと成功を収めたのか? それはひとえに40年の歴史を誇るポルシェの主力モデル「911」のクルマ作りへの「尊敬」(世界的評価)による「ブランドイメージ」の賜物といえるだろう。

  ちょっと語弊があるかもしれないが、ポルシェというブランドは「秘伝の味」に値する1つのモデル(911)と、経営安定化を図った4つの戦略モデル(ボクスター、ケイマン、カイエン、パナメーラ)によって構成されている。「1:4」という数字を見てピンときた方もいるだろうが、まさに「パレートの法則」でポルシェは成り立っていると断定できる。この法則をそのまま当てはめると「2割の車種が8割のブランドイメージを作り上げている」ということになる。簡単に言うとポルシェは「911だけでブランドイメージの8割を体現している」ということだ。

  これは他のスポーツカーブランドおよびプレミアムブランドにも十分に当てはまることだと思う。よってそのブランドの「2割」に入るクルマを選ぶと、そのブランドが研究費などを特に重点的に配分している可能性が高く、結果的にお得なクルマになるというわけだ。ポルシェのたった5つしかない現行モデルの出来を改めて見てみると(あまり詳しくはわかりませんが)、「911」ばかりに最新技術が集中して運用されていることがわかる。991型から導入されたものもいくつもある。なんていっても7速MTという聞いた事がないミッションを積んでいる(もはやライバルは高速バスなのか?)。

  見も蓋もない言い方だが、ドイツ車は基本的に嫌いだ。それでもこの991型なら好きになれそう(ほしいと思える)な予感がする。このクルマは「スーパースポーツ」であることは確かだが、いろいろと調べてみると、フェラーリともGT-Rとも「意味合い」が大きく違うクルマだということに気がつく。まずフェラーリのような「華美さ」を意図的に抑えてあるクルマだ。このクルマなら日常に使ってもそれほど「嫌味」ではない気がする(これはスーパースポーツとしては異例のことだ)。もちろん近所のスーパーにこれで出かけていけば、少なからず違和感はあるだろうが、フェラーリでいくよりは断然にマシだ(フェラーリでスーパーに行くのは「公序良俗」に反する!そもそも障害者用スペースじゃないと停められないし)。

  GT-Rともまったくと言っていいほど違うクルマだと思う。結局は911はその性能でR35GT-Rに圧倒されてしまった「負け犬」である。カタログモデルでは「911ターボ」でもまったく歯が立たない(ポルシェじゃ反撃するカネもない・・・)。一方でGT-Rは日産が得た「世界最高」の勲章そのものだ。誰でも911より安全に速く走ることができる「とんでもない」クルマだ。ただ「負け犬」と「世界最高」のどちらを愛車にしたいですか?と言われて、即座に「世界最高」と返答するのはあまりにも風情がないように思う(つまり軽薄だ)。

  911とGT-Rを選ぶのはなかなか難しいところがあるが、今の心境ではGT-Rにはまったく勝負にならない「NAの911」(それでもGT-Rよりかなり高価だ)を選びたいところだ。「華美でない(地味だ)」「負け犬」の911のイメージが定着し、影が薄くなってきた2012年に登場したのがこの「991型」だ。その佇まいはなんとも「哀愁」をさそう。日本でのポルシェ人気は他の4車種に完全に分散し、911は元からの愛好家が騒いでいるだけの存在といってもいいくらいだ。そんな「991型」が911史上の最高傑作だと専門家は口を揃えている。カイエンやパナメーラにはまったく興味はないが、この991型にだったら「べらぼう」な金額を使ってもいいかなと思えてくるのだ。


↓ポルシェ大好きな担当ライターがゲストオーナーでそのまま出てくるお粗末さがありますが・・・

2013年5月26日日曜日

ランエボX 「ドイツ車って結局はエボを目指してるだけじゃ・・・」

  見も蓋もない話をするが、結局「セダン」というものは駆動シャフトの周りに「べったりと」粘土が詰まっているんじゃないかという感覚が絶えずつきまとう乗り物だ。これはエンジンの性能が低いからではなくて、ジェントルな乗り味と安全性を追求するために急激なGの変化をコンピュータで制御しているからです。ほとんど「放置プレイ」状態のタイヤを履いていることが多い一般車に無制御の駆動系を組み合わせたら、そこいら中で事故が起きまくるだろう。

  そんな「粘土」な乗り味のセダンをひたすらに改良して、スポーツカーに仕上げて「市販化」するという非生産的な行為(失礼!)を続けてきたのが、三菱の「ランエボ」だ。そもそも市販化はレースに出るための「アリバエ」作りに過ぎなかったが、世界的に評価が高まってきて欧州圏では「ポルシェ」や「フェラーリ」と同等のブランドイメージを持っていると言われていて(だからこそいまだに生産されている)、日本国内では散々な三菱でも、好調なマツダと同等の利益を挙げることに(イメージアップで)貢献している(と思う)。

  近年、ドイツブランドで一番成功しているといわれる「アウディ」も、その要因を考えると、世界を席巻していたランエボ人気に一番うまく追従した結果だと言える。ドイツプレミアムの主力であったFRの「粘土」セダンと乗り比べれば、アウディの4WDモデルはエンジンの性能以上のトルク感がわかるほどで躍進も素直に頷ける結果だ。いまや欧州車はアウディの躍進とともに新たな流行へと変化していて、「低速トルク」を重視したエンジンを使うことが多くなっている。カタログの数字だけを見ると日本車とはだいぶ性質が違っていて、俄には信じ難い高出力に驚かされる。

  とくにFRを中心に展開するMBやBMWは徹底的に「軽量化」を志向している。4気筒ターボエンジンを主流にして車重の増加を抑えつつエンジンの性能を最大限に活用することで、トラクションでアウディ車に対して不利なFRの弱点を軽減しようとしている意図がよくわかる。4気筒の採用については欧州の環境基準が理由という説もあるが、6気筒や8気筒モデルも当たり前のように市販化されているので、やはり「軽量化」が第一の狙いだと思われる。BMWは3シリーズの車重を1500kg程度まで抑えていて、4WDのアウディよりも150kg程度優位に立っている。

  この潮流を作り出した「ランエボ」の現行モデルは4WDで1500kg程度に抑えている(それでも先代モデル(エボ9)よりも100kg増加してはいるが・・・)。評論家はしばしば「日本車とドイツ車の差はまだまだ大きい」などと言っているが、ドイツ車の目指す先に君臨しているのは「トヨタ」(ドイツ顧客満足度2位)の完成度だったり、「マツダ」(同3位)「三菱」(同4位)の技術力だったりする。何度か他のブログで書いているが、ドイツの老舗ブランドの「メルセデス」(同1位)ですら、三菱を「買い取って」得た技術を使ってクルマ作りをしているに過ぎない。AクラスやCLAクラスといったFFの新商品は三菱車そのものだ(ある意味お買い得ではあるが・・・)。

  そんな日本を代表する「ランエボ」もいよいよ過渡期を迎えていると言われている。三菱ワークスチームがラリーから撤退したため、市販車を売る理由がなくなってしまったためだ。来年に噂されている「ギャランフォルティス」のFMCでは、とうとうセダンのベース車が日本国内では消滅すると言われていて、セダンの「ランエボ」も現行がラストになるのだそうだ。「エボ」のためだけに後輪に「マルチリンク」を使っていた現行ギャランフォルティスはコスト面でもかなり苦しいらしい・・・。セダンじゃなきゃエボじゃないという気もしないでもないが、「エボ」に乗ってゴルフに出かける「風流人」も少なくなっているようで、残念だが仕方がないようだ(GT-Rをもうやらないなら、日産がスカイラインを供給すればいい気もするが、「スカ=エボ」なんてどちらのファンも激怒しそうな展開だ・・・)。


 ↓北米・欧州で絶賛発売中のランサーを日本ではなぜ売らないの?シビックと同じ理由か?
 

2013年5月21日火曜日

新型アテンザ 「世界のスタンダードセダンの最先端へ」

  「ミドルサイズセダンの正しい作り方」というテーマを考えてみたい。世界にちらばる幾多のメーカーによって、ほぼ同サイズのセダンがそれぞれ作られている。外見だけを見ても、デザインの差であったり内装であったりと、各メーカーごとに千差万別であるが、これは好みの問題もあるので一概には言えない。少なくとも「北米」「欧州」「日本」で販売されているものに関しては、どれもそれなりの意匠を持って「楽しませてくれる」デザインになっているのではないでしょうか。

  ただ各社とも「良いクルマ」に見せようとする努力は、後付けでも十分に対応可能であったりしますが、クルマの駆動方式であったり、使用するプラットフォームは簡単には変更できません。面白いことにこのプラットフォーム(車台)に関する考え方が各メーカーで個性があるので、このクラス(Dセグ以上)のクルマは「選ぶ楽しみ」があるように感じる。近年では車台の共通化が急速に進んでいて、現在は資本提携関係でなくなったメーカー同士が同じルーツの車台を使っていることもよくある。特に日本では最近になって「セダン」人気が再燃しているが、新型セダンに使われている車台は、そのメーカーの考え方を如実に示していていて興味深い。

  新型アテンザに使われている「マツダ(フォード)・CD3プラットフォーム」は、2002年の初代アテンザ用に開発されたものを、改良して使っている。この車台はマツダにとっては「虎の子」といえるもので、フォード傘下時代にマツダがフォードグループセダン向けに開発したものです。当然ながら、当時の親会社であるフォードの資金援助によって開発に漕ぎ着けたものであり、マツダ単体であったら同じものをもう一度最初から開発しろといっても、決してできないものだそうだ(山内社長のコメントによる)。10年以上も前の設計ではありますが、マツダは「渾身の一台」である新型アテンザにこのPHを自信を持って投入しているようです。

  この車台(CD3)は旧フォードグループの各社によっていまも大切に使われている。そして現在ではDセグセダンの「最大手」と言える車台にまで広く普及していて圧倒的な競争力を誇っている。その原動力となっているのが、フォードの「フュージョン」とその欧州版「モンデオ」だ。北米のセダン市場では「カムリ」「アコード」の2強に新たに「アルティマ(ティアナ)」「フュージョン」の2台を加えた「4強」の激しい争いになっている。年末にはどのクルマが年間販売1位に輝くかはまだまだ不透明な状況だ(すべて日系メーカーの車台!)。これに「新型マツダ6(アテンザ)」と米国安全基準の頂点に輝くボルボ「S60」(CD3PH使用)が加われば、車台としては「マツダ」が頂点に立つ事になる。

  「CD3プラットホーム」はFF車用でありながら、FR車に近い(超えた)ハンドリングを実現しつつ、FF車の特性である「直進安定性」「加速性能」「居住性」で他のFR車用の車台を大きく凌ぐ実力を持っている。弱点はV8のような大排気量エンジンが搭載できないこと、小回りが利かない点くらいだ。さらに下級車種との共用の車台ではなく「Dセグ専用」となっていて「性能」が保障されていることはユーザーにとっては嬉しい情報と言えます。しかし最新のVWの「MQB」(次期パサートに使用?)やPSAの「EMP2モジュラー」(508後継に使用?)といった「B〜Dセグ」までを網羅する「汎用性の高い」プラットホームにコスト競争で苦戦する可能性もあります。

  マツダ・フォード・ボルボとしては「CD3」を今後も改良してセダンを作り続けるらめには、この車台の優越性を生かした「高性能セダン」のブランディングが必要です。簡易的な車台を使ったクルマとの実力差をしっかりとユーザーへ伝えていく努力に加え、さらなる「走り」の改良を進めていかないと(メルセデスEクラスに匹敵するようなクルマにしていかないと)、この欧州の「コストダウン」の波に飲み込まれてしまうかもしれません。

↓旧フォードグループの中でも最先端を走る「アテンザ」は世界最良のパッケージと言っても過言ではないかも・・・(世界はその事実を日本以上に認めていたりします)。

2013年5月17日金曜日

BMW3シリーズとトヨタ86 「女性のためのベストクルーズカーは?」

  彼女が予想以上にクルマに詳しくなってしまって、ドライブしていて見かけたスポーツカーの名前をことごとく知っていて驚かされます。自分のクルマを買うことを決めているらしいのですが、どうやら「スポーツカー」に乗りたいと考えているらしいです。中古車価格なんかを自分以上に細かくチェックしていたりして、相場にも相当に詳しかったり(女性は価格にシビア)するので、話をしていてもとても面白いです。

  ただ自分なんかよりも確実にスポーツカーが似合うのは彼女の方だと思うので、気に入ったものがあればぜひ乗ってもらいたいものだと思います。彼女のクルマ選びの為という「名目」があれば、男だったらまず買わないようなクルマにも堂々と試乗することができそうです。スポーツカーに限らず、BMW3シリーズなんかにも試乗してみたいものです。こういうクルマを好き好んで乗っている知り合いなんてまずいないので、ほとんど乗る機会がなかったりします。30歳を過ぎたら購入することもないだろうから、男が乗るチャンスがあるとしたら20歳代半ばくらいまででしょうか? 

  BMW3シリーズは女性が乗るにはとてもいいクルマに思えます。あくまで主観的な「イメージ」でしかないですが、女性が運転しているととても「知的」に見えるクルマだ(その逆のイメージがゴルフと旧Aクラス・・・)。男が乗ると「とんでもないイメージ」になってしまいますが、女性にはとても似合うクルマは、輸入車・日本車問わずとても多かったりします。まるで「現代のクルマは女性の為にある」といってもいいくらいではないでしょうか?

  「トヨタ86」なども彼女が乗るにはピッタリのクルマに思います。とにかくあの「狭さ」は身長が180cmもあるとかなりの抵抗があって、とても自分のクルマには考えられません。トヨタの渾身の「スポーツカー」がなんでこんなに縮こまったものになってしまったのでしょうか?次はぜひにマセラティ「グランツーリスモ」みたいなスポーツクーペを600万円以内で作ってほしいと思います。せっかくのトヨタ86ですが、現状ではメルセデスSLKとBMWZ4への「対抗車種」以上のポテンシャルを感じられません。もちろん「スポーツカー専用設計」であることは大きなポイントで、「一般車」の改造車に過ぎないSLKやZ4よりは、スポーツカーとしての価値は高いように思うのですが・・・。

  彼女は他にも「RX-8」だの「ロードスター」だの羨ましいほどに「楽しそうなクルマ」を物色しています。これだったらお世話になっているマツダのディーラーに行けば用意してもらえるだろう。どちらも自分にとっては小さいので購入対象として考えたことはほとんどない。マツダのスポーツカーならハンドリングも超絶だと思うので、彼女がもし買ったらちょくちょく運転させてほしいなと密かに期待しています。


2013年5月13日月曜日

レクサスLS 「4ドア車だけじゃもったいないな・・・」

  「オットマン」装備の豪華なシートと飛行機のファーストクラスを思わせるセンターコンソールを配した後部座席の写真ばかりが、関連パンフレットなどに多く収録されていて、レクサスLSの「セレブ」イメージをバラまいている。よくよく読むとこの後部座席は「エクゼクティブ仕様」という特別なグレードのもので、いわゆる「超」が付くくらいのお金持ちのお嬢様の通学の送迎に使われる為のクルマだ。間違っても独身男が愛車にするクルマではない・・・。

  それにしても、クルマ好き(男がほとんどだろう)しか買わないようなパンフレット本に、そんな写真ばっかり挿入されても、まったくといっていいほどクルマの良さが伝わってこない。こんな写真ばかりを使ったカタログなら、特定の顧客向けに作って、菓子折り持参で営業マンに自宅まで届けさせたらいいのでは?と思う(そもそも一般人がLSのカタログを手にするのが間違いなのか?)。

  それでもLSは「超」金持ちに媚びたラインナップ以外は、とても真っ当でカタログモデルでは「世界最高」のクルマといっても過言ではない。日産GT-Rがその性能を考えたら「安い」と言われるのと同じように、LSもそのパッケージングの良さを考えたら「安い」でOKではないかとすら思う。トヨタ(レクサス)ももっとこのクルマに自信を持っていい気がする。もちろん「フラッグシップ」として自信を持ったクルマになっているとは思うが、ベンツSクラスのようなクーペを用意しないあたりにまだまだ自信の無さが伺える。もっとクルマ好きな「セレブ」に訴求できるようなグレードを作ってもいいのではと思う。とりあえず「Lパッケージ・エクゼクティブ」はカタログ落ちさせて、特定の顧客にセンチュリー的に販売すればいいので、プライベートカーとしての「LS」の魅力を引き出すクルマに仕上げてほしい気がする。

  このクルマなら「2ドア」にして、メルセデスCLに対抗することも可能なはずだ。4輪マルチリンクで、エンジンはもちろん全車V8。当然ながら世界最高レベルの静音設計。しかも2ドアなのに「Lパッケージ」で150mmのストレッチという余裕の設計(Lパッケージなのに長くならない「アテンザ」って何者?ラグジュアリーってことだろうが・・・)。これ以上ないほどに「所有欲」をくすぐる設定が元々のクルマに備わっているので、そんな「究極なクーペ」に1000万くらい払ってしまう人はかなりいると思います。会社経費で引き落とせない「2ドア」だからこそ「乗りたい」という人も多いはずです。むしろ会社のお金で乗ってる感「丸出し」の4ドアセダンなんて絶対に乗りたくないという意見もあります。一緒に頑張っている社員の前で4ドアの「Sクラス」や「LS」乗り回す経営者なんて魅力もセンスもないですね・・・。

  日本の若者が仕事を頑張ろうという動機になるクルマとして、日産「GT-R」がありますが、どうやら日産は開発を終了してしまうようです。トヨタはBMWと提携してスープラの後継車を作ることを決めているそうですが、すでにBMW6として存在しているクルマなので、いまいち「所有欲」が高まりません(十分にいいクルマですが)。もっと「最高のクルマ」と言える国産プライベートカーがあった方が、やる気のあるヤツは一生懸命働いて、結果として日本の景気も良くなるのではないでしょうか。


↓スープラ復活より、LSクーペを希望!

2013年5月10日金曜日

ジャガーXK 「1000万円超のお買い得 ”純正スポーツ”」

  欧州の「純正」スポーツカーの新車日本価格は当たり前に1000万円を超えるものばかりで、ポルシェのボクスターが一番低価格の部類になるほど高額だ。そもそも「純正」スポーツカーを日本の公道を走らせるためだけに買うという「発想」はいくらクルマ好きでもなかなか出来ないし、たぶん欧州でも状況は同じだと思う。それでも日産が1000万円以下でGT-Rを発売するようになってから、いわゆる高出力の「スーパースポーツ」も一部の人気ブランドを除き「中古車市場」ではかなりの値崩れを起こしてきている(新車価格はまだまだ強気だが・・・)。

  ジャガーXKはV8エンジンをフロントに積んだ、まぎれもない「スーパースポーツ」だが、同様のパッケージングのアストンマーティン「V8ヴァンテージ」に比べて、中古車価格はかなり下がり気味だ。5年落ち1万キロ走行(!)のものを探すと、XKが400万円でヴァンテージが750万円だ。今まで新車で1500万円以上するスポーツカーは無意識のうちに購入対象から外れていたが、少なくとも「XK」に関してはかなり現実的な価格な気がする。しかもこのXKは現行モデルだ。いくら維持費が多くかかるとはいえ、5LのV8搭載で4シーターのスポーツカーがメルセデスSLKとほぼ同じ中古車価格になっている。

  スポーツカーを実用車とするにはなかなか「弊害」が多いのだが、パッケージを考えた時に、「英国スポーツカー」はなかなか魅力があるように思う。日産がGT-Rを開発した時にこだわったのが「安全で実用性がある」という点で、その結果採用されたのがフロントシップエンジン&4シーターだ(スカG後継なのだから当然ではあるが・・・)。このフォーマットはドイツやイタリアのスポーツカーにはなかなか見られないが、イギリスのスポーツカー(アストンマーティンとジャガー)では基本となっているスタイルだ。実際に日本でGT-Rを所有している多くの人が家族と一緒に乗れる(自分だけが楽しむものではない)という発想があるように思う。同じ島国のイギリスでも同様の「考え」があるのかもしれない。

  とりあえず「完全4シーター」というのは、純正スポーツを検討するにあたって、背中を押される「必須」の設定だと思う。ただここで見落としがちなのが、このスポーツカーの1台体制で「健全」なカーライフが送れるのか?という点だ。人それぞれ意見は分かれるだろうが、例えば仕事の後に帰宅して夜に近所のスーパーに買い物に行き、その辺を一回りしてくるような「習慣」がある人なら、夜の11時に5Lエンジンを点火する時に毎回気まずい思いをするかもしれない。さらに夜中に必要なものが出て来て「ドンキホーテ」に行くのに「スーパースポーツ」で出かけていくのは不粋だ・・・。結論としては「スーパースポーツ」は2台体制が大前提な気がする(少なくとも自分は)。とりあえずは頑張って稼ぐしかないようだ・・・。


↓先日ひっそりと2013年版が出てました。ドイツの「ワールドオートガイド」よりも、日本のこちらの方が見やすい気がします。