2014年12月17日水曜日

マセラティ・ギブリ 「大ヒット御礼!日本にも待望のアレがやってくる!」

  昔からのマセラティのオーナーにしてみれば、「あんまり安売りしないでくれ〜」と言いたくなるかもしれませんが、昨年から続くこのブランドの勢いはまだまだ止まりそうにありません。本来は「プレミアムブランド」のさらに上にそびえる「ラグジュアリーブランド」のマセラティが比較的手頃な入門車(ギブリ)を用意したところ、これが見事に世界各地で大成功を収めているようです。理由は何となくではなく、よ〜く解ります!700~900万円クラスのプレミアムカーを買う層にとって、近年では低価格車ばかりに力を入れるメルセデス・アウディ・レクサスの現在の戦略は全く魅力的に映らないのだと思います。郊外のディーラーに行くとAクラス、A3、CT200hが一番目立つところに置かれていて・・・ふと「ここはスズキやダイハツのディーラーか?」なんて想いが過ったりします。

  点検・メンテナンスでユーザーの囲い込みを図る郊外のレクサス店を訪ねると、休日には朝から点検のクルマが押し寄せます。やってくるのはCT、HS、ISといった日本上陸しての10年間にブームが来た歴代の廉価(入門)モデルばかりで、セレブが好きなクルマを贅沢に買っている!といったイメージとは全くかけ離れていて、失礼ですがこの光景に高級感なんてさらさら「ない」です・・・。メルセデスもアウディも大方は似たようなもので、いつ行っても暇そうな高齢者の客がやってきて営業マンとたわいのない長話をしているのが目に付きます。都心の一等地にある店舗ならだいぶ違うのかもしれませんが、東京の郊外の店舗はどこも押し並べて「緩い」です。高級車を販売するのに相応しい空間造りが必要だと、日本車ディーラーの庶民的な佇まいを激しい剣幕で叩く評論家の感性って一体何なんでしょうか・・・。

  いざアウディA6でも買おうと思い立って、試しにガチで見積もってみると、「アバント2.8」で約800万円、「アバント3.0」は1000万円を超えてしまう価格になります。これを高いと感じるか安いと感じるかは個人の感性の問題でしょうが、どうせA6アバント3.0に1000万円払うくらいならばマセラティ・ギブリにしておこうかなと思うのが割と自然な「所有欲」というヤツかもしれません。アウディには1000万円払えないけど、マセラティになら払える!っていう感覚です。もしくは最近日本でも受け渡しが始まったらしいテスラ・モデルSという高級セダンのEVが、何やらアウディA6には無い独特の魅力を持っていて気になったりします。アメリカではセレブの間でギブリとモデルSの人気に火が付いているのだとか・・・アウディはもう古い!確かに・・・。

  EVはどのモデルでも満タン充電の電力コストがせいぜい500円くらいだそうで、これで最大500km走れてしまうテスラ・モデルSは一旦買ってしまえばあとの維持費の安さは嬉しい限りです。月1000km走るとして1000~1500円程度の燃料代ですから、毎日ドライブに出掛けたくなりそうです。なんで日本メーカー はテスラ・モデルSのような魅力的な長距離EVを作らないのかなんだか不思議です。話題沸騰の燃料電池車は意外に水素がコスト高のようですし、注文殺到にもかかわらず年産700台ペースでまったく手に入る見込みがない「MIRAI」を発売する前に、レクサスからPHVで満タン充電で500kmをエンジンを使わずに走るモデルが出てきてもよかったのではないでしょうか。もしかしたら、ベンチャーメーカーのテスラのシェアを保護するために米国政府が主要な日本メーカーに対して何らかの圧力をかけていたのかもしれません。その代わりにテスラとのバッテリー合弁をトヨタにやらせてあげましょう!っていうカラクリなんでしょうか?

  実はテスラ・モデルSと並んで大型セダンとしては異例の成長を誇っているマセラティ・ギブリにも人気の秘密があります。実はこのクルマは、欧州などでは既に販売の大半をディーゼルモデルが占めているんだそうです。BMW320dやアテンザXDが日本市場で異例のヒットを遂げたのと全く同じ構図みたいです。そしてさすがはラグジュアリーブランドだけあって、日本市場向けにガッツリと下処理装置を配備して、日本の排出ガス基準をもすでにクリアしているようで、来年には日本にも待望のディーゼルが発売される見通しだそうです。そしてこれが現在のガソリンモデル(V6ターボ)よりも安いという戦略価格だったら!これくらいは当たり前のように仕掛けてくるのが最近のマセラティなので、ブランドのステータスや燃費などの経済性を考慮すれば、今の段階ですでにギブリに販売台数で軒並み負けているレクサスGS、Eクラス、アウディA6辺りのEセグプレミアムセダンはひとたまりもないでしょう。

  いままでが殿様商売だったということもないでしょうが、GS、E、A6といったEセグプレミアムセダンはそれぞれのブランド内でも販売が低迷していて、だいぶ肩身が狭い思いをしています。まだこのジャンルに参入していない周囲のメーカーはこの惨状と、これらのモデルの商品力の弱さを冷静に分析していたようで、マセラティだけではなくジャガーやキャデラックといったアメリカで伝統的に人気のある高級ブランドも虎視眈々とモデルのブラッシュアップを進めているようです。そして日本未上陸のホンダの上級ブランド「アキュラ」の最上級セダンがホンダ・レジェンドとして再び日本市場に参戦してきます。

  さらに「下」の一般ブランドからもアテンザやレガシィといったDセグセダンがワンサイズアップして新たに名乗りを挙げてきました。プレミアムブランド顔負けの素晴らしい内装設備を見せていて、よっぽどの成金趣味でなく日本人らしい中流意識を持っているのであれば、気持ちよく街中を走れる立派なフラッグシップセダンへと変貌を遂げました。今後はラグジュアリーブランドとプレミアムブランドと一般ブランドが入り交じってのなかなか活気のある競争を繰り広げられればいいですが、それほどセダン市場が大きくない日本ですから、このままではいずれかのモデルが販売台数減に見舞われて日本市場では廃止に追い込まれてしまうでしょう。その第一号は一体どのモデルになるのか?ギブリ・ジャガーXF・キャデラックCTS・GS・E・5・A6・フーガ・レジェンド・アテンザ・レガシィ・・・さてこの中で敗北して日本からフェードアウトしてしまうのはどのクルマになるのか?絶対に負けられない戦いが始まろうとしています・・・。


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2014年12月3日水曜日

フォード・マスタング 「限定車だけで終わりなんてことは・・・」

  2.3L直4ターボで465万円ですか・・・。マスタングで直4というのはいかがなものなんですかね。2ドアボディは本来自由なクルマで、ラフorラグジュアリーに構えるならば特にエンジンを選ばない!という判断もできそうですけど。先代モデルは2万ドルでV6モデルが買える!というアメリカ自動車産業の懐の深さを見せつけるクルマだったんですが、新型モデルが登場してみると、日本仕様はじわじわと値上がりしたようで、気がつけばBMWなどとほぼ変わらない価格になってしまいました。たしかに700万円以下でV8モデルに乗れる点ではコストパフォーマンスの高さを感じますが、比較的手頃なベースグレードに関しては今のところ割安感はないです。

  日本車もドイツ車も選び放題の日本市場で、わざわざマスタングの4気筒に乗ろう!という人はよほどの「マツダオタク」くらいじゃないでしょうか。マツダが設計したMZRエンジンをベースにしているフォードの2.3L「エコブースト」は、その排気量からも、マツダがかつて発売していた「マツダスピード・アテンザ」や「マツダスピード・アクセラ」に積まれたユニットが連想されます。マツダのものは横置きでMSアクセラに至ってはFFだったために相当にデチューンされて安全に走れるものになっていたようですが、マスタングは当然にFRなので、4気筒エンジンとしては世界最高峰に位置するMZRエンジンのポテンシャルをかつて無いほどに引き出した超絶ヴァージョンになっています。

  かくいう私も相当なマツダ贔屓なので、「マスタング買うならV8だろ!」という信念を持ちつつも、「MZRエンジンならば、直4もアリだな・・・」と思ってます。現在のところ日本への正規輸入は直4ターボのみ価格がアナウンスされている状態です。日本の税制を考えたら3.7LのV6や5LのV8よりも、2.3Lが相当にリーズナブルなのは確かですけど、そもそも自動車税のこと考えてる人はマスタングなんてまず買わないでしょう。「スタートエディション」ということで少々高めに設定されての465万円なんでしょうけど、マスタングのイメージに合わない直4のみでしかも右ハンドル導入が決定されてる中で、第一弾は左ハンドルのみですから、売れ残り必至じゃないかという気がします。

  あと1年ほど待てば直4モデルならば400万円以下(であろう)の通常グレードで右ハンドル車が買えることがすでにバレバレです。足回りに大きな変更があってマルチリンクを採用したので、乗り心地の熟成・改善のためにも年次改良を2~3回ほど待ったほうがいいのかもしれません。BMWを買わないでマスタングを待つ人々ならば、それくらいのことはお見通しですから、この初期モデルは予想以上に苦戦しそうな気がします。しかしその結果を受けて新型マスタングの日本導入は「見送り」なんて最悪な決定が下されたりするのはちょっと困ります。

  新型マスタングが300万円台で、右ハンドル装備で、2.3L直4ターボ318psというスペックならば、日本市場のBMW、レクサス、日産などに大きな影響を与えてくれるでしょう。BMW328の2L直4ターボ245psで604万円という「殿様商売」な価格がアホらしく思えてくるでしょう。3シリーズよりもかなり大きくて余裕のあるボディを持ち車重も100kgしか変わりません。「大き過ぎる」「2ドア」というネガさえなければ、まずはマスタングを考えよう!という気になるはずです。確かにBMWの直6には美学がありますが、435iで765万円となり、おそらくマスタングのV8モデルが買えてしまいます。そして直4エンジンに関してはBMWは二流の域を出ず、マスタングに使われる「MZR」の素性と比べるとドイツの雑誌がBMWの全面敗北を認めてしまうほどの開きがあります。

  年明けにも発売されるというスカイライン・クーペも今頃は価格設定にあれこれ苦慮していると思います。マスタング陣営が、世界最高の6気筒を持つ日産の新鋭クーペを過度に警戒しているのは確実で、おそらくマスタングの通常価格を発表せずに「後だしジャンケン」を意図しているように思います。メルセデスの2L直4ターボ211psがベースグレードに使われるようです。マスタングとほぼ同じ車重を誇るスカイラインですから、やはりBMWの直6を圧倒した「伝家の宝刀」であるV6搭載モデルでないと、スポーティで魅力的な日産らしさは得られないですし、マスタングのコストパフォーマンスの前に霞んでいまう恐れがあります。先代モデルくらいの価格で登場すればかなりセンセーショナルではありますが・・・。この10年で国産車ファンにとっての「心の拠り所」といった地位を確立したスカクーには今後もぜひ頑張ってもらいたいです。

  さてマスタングの眼前で丸裸になっているのがレクサスRCです。いまいちスペシャル感が伝わってこないのは、レクサスへの偏見もあるのかもしれないですが、このRCと新型マスタングが駐車場で並んだ光景を見れば、RCのオーナーはかなり悔しい思いをさせられそうです。それでもRCには「350Fスポ」と「RC-F」というトヨタの実力を端的に示す素晴らしいグレードがあります。レクサスへの批判をぴしゃりと止めたのが、スーパーカーの「LFA」と「IS350Fスポ」でBMWや日産を相手に完全勝利を目指した「開発資源の投入」はVWグループの戦略を彷彿とさせます。ランボルギーニやポルシェを作るほどの情熱を本体価格615万円の「IS350Fスポ」に注ぎ込んだわけです。

  評論家の間でもこのレクサスの動きには当然に大きな衝撃があったようです。今ではBMW3シリーズや5シリーズが素晴らしいスポーツセダンだと呑気に言っている評論家は急速に減りました。BMWと言えばやっぱり「i3」でしょ!なんてそんな調子です。レクサスとしては「IS350Fスポ」のDNAを引き継いだ「RC350Fスポ」と「RC-F」も、VWグループとのつば迫り合いの中で必要な戦略モデルになっているようです。このトヨタの動きに呼応して日産もBMWもさらなる努力をするでしょうし、ホンダも間もなく日本にレジェンドを再登場させます。しかし615万円という価格も決して安いものではないですから、そこに新型マスタングが300万円台〜の価格設定で投入されれば、トヨタも「IS350Fスポ」のノウハウを使った対抗モデルを用意してくるのではないかという期待もできます。なんとか無事に新型マスタングがフルグレードでの日本上陸を果たしてくれればと思います。


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2014年11月14日金曜日

スカイライン350GT vs WRX-S4 「至高のGTセダンとは?」

  クルマを嗜む人口がどんどん減っている・・・というデータが本当に正しいのかどうかはさておき、クルマを作る側のメーカーとしては趣味性の高いクルマを複数ラインナップするのは経営上非常に難しい時代になってきたようです。一国一城主義ではないですが、多くの日本メーカーにとって「勝負するクルマ」は1モデル限りというのが現実になってきています。そして各メーカーの絶対的な価値を象徴するような「絶対に負けられない」1台同士が、一般的な日本人がなんとか払える価格帯でガチンコになり、壮絶な死闘を繰り広げる販売合戦は見ていてとてもスピリッチュアルで、思わず感動のあまり「両方とも買います!」とか調子のいいことを言ってしまいたくなります。

  2014年に相次いで登場した日産「スカイライン350GT」とスバル「WRX S4」の2台は、どちらもまさにそんなブランドの威信を賭けたスペシャルなモデルです。意外なことにどちらも輸入車好きのミーハー?でクルマの良さなど、体感的にまるで分ってないんじゃないかと思うような言動が目立つ自動車評論家からは、やたらと厳しい評価が下されるケースが目立ちます。それでもそんな評論家の影響力など、今日の日本の良識ある自動車ファンにはまったく関係はないようで、雑誌のクソ評価とは対称的にも興味を持った人々が、クルマ離れなんて無かった!とばかりに、”地割れ"のように日産とスバルに殺到していて、どちらも予想以上の売れ行きを見せています。もしこれが売れなかったら日産もスバルもやる気無くしていじけちゃいそう・・・そんな空気すら善良なクルマ好きのみなさんは感じ取っているみたいです。

  両陣営(ディーラー)に尋ねたところ、日産側は「(スカイラインは)ライバル不在の孤高の絶対性能&コスパだけど、今の日本人の購買力にはやや疑問で弱気です・・・」という主旨の説明がありました。本当はもっと高く設定したいけど、国産ブランドではこれが限界という価格(400~600万円)に収めた自他ともに認める謙虚でお買い得なクルマです。もしこれをさらに作り込んで1000万円を超える価格にしても、マセラティなどの一流ブランドに肩を並べるにはインフィニティを日本に本格導入して、それを浸透させて・・・となかなか気の長い売り込みプランが必要です。さらに本音を言うと1000万円超の金額をクルマに注ぎ込めるアッパーな顧客は、既存の日産ディーラーの設備ではとても歓待できないみたいです。

  一方スバルは、「S4はやたらとスカイラインと商談でガチンコになるんですよ!」とこちらはやや一方的にライバル意識がメラメラのようです。最初からS4だけを目当てにしている客には、S4のポテンシャルを相対的に伝えるのに良好なセールストークかもしれないですが、実際に乗り比べてみると「GTセダン」としても両車の方向性は全くと言っていいほど違います。まあ「宣伝文句」というのはときにとても厄介なもので、スバルと日産の今回の場合はそれぞれに不足している部分を盛んにアピール合戦している印象です。日産がスカイラインで掲げる「万能・最速HV・圧倒的な潜在能力・プレミアムセダン」というのも、スバルがS4で掲げた「高級感・洗練・一体感・革新」というのも、コンセプトが目指した本当の価値と向き合っていないような気がするのですが・・・。

  始めにも書きましたが、どちらもとても素晴らしいクルマです。年がら年中スーパースポーツに乗っている評論家から見ればツッコミどころがある走りかもしれないですが、どちらもクローズドなコースでアクセルを踏み切れば、息切れすることなくゼロ発進から10秒足らずでリミッター速度に達する能力の片鱗を感じられます。どれだけ踏んでも底が見えない強靭な心臓に加えて、どちらも市販車で世界最高水準の「受動安全性」と「予防安全性」を備えています。その実力は総合的に見ても、「安全性」を喧しいほどに盛んに謳っているメルセデス・VW・レクサスを軽く上回ります。ただし日産もスバルも悩ましいところは、走りを愛していてドライビングに自信がある頑固なオヤジ層の間に支持基盤を持ってますから、完全に女性向けに作られているCクラス、レクサスIS、ゴルフのように「安全性」を前面にだしてアピールするのは逆効果という点です。

  素直にGTカーとして「世界で一番安全なクルマですよ!」とシンプルに言えばいいのに、「プレミアムが〜」だとか、「磨きぬかれた洗練」とか、回りくどいだけじゃなく、本質すらもねじ曲げてしまうような「やぶ蛇」な宣伝文句が飛び交っています。スカイラインの足踏み式サイドブレーキだったり、旧態依然なパワーシートを「標準装備です!」とドヤ顔で言ってしまうところが、実際のところ気になってしまいます。クルマの基本性能は申し分ないのですが、シート・ステアリング以外の部分の装備にあまり手が回っていないのが残念すぎます。プレミアムブランドが盛んに争うポイント(セレブな奥様を喜ばせる!?)がどうも分ってない気がします。最初から「走り」にだけ集中したGTセダンなんだ!って言っておけばいいですし、日産の開発陣の頭にも「硬派な男のGTセダン」というイメージが明確にあったはずです。「プレミアムとは呼ばないで!」くらいの矜持があっても良かったのではないでしょうか?

  「6気筒エンジンではどこも日産には太刀打ちできない!」と世界で評される自慢のV6にハイブリッドを組み込み、近年のGTカー開発の肝となっている燃費をも大幅に改善したスカイライン350GTは、すでに発売されているフーガHVの弱点を克服する形で登場しました。GTセダンならばハンドリングをおろそかには出来ないという強い想いから、ステアバイワイアを標準で装備してきました。賛否両論あるようですが、”違和感がある"とか言っている人の多くは雑誌の受け売りなんじゃないか?と思っています。本質的には欧州で絶賛されたフォードとマツダが協力して開発したハンドリングの味にとても近いです。まあ確かにハンドルの効き始めるところで手応えが変わらないのを「違和感」というのかもしれないです。それでもマツダのようなクイックなハンドルに慣れた人なら、その性能の高さに心が震えるはずです。

   ハンドリングだけでなく、フーガHVから評価が高かった「1モーター2クラッチ」によるトヨタを超えて滑らかな発進加速は、ドイツ勢ごときには絶対に辿り着けない極致です。トヨタ(レクサス)もアイシンAWが作るキックダウン時でも超絶に滑らかな8速ATを使っていて、BMWなどのZF製8ATに比べて圧倒的なアドバンテージを持っていますが、日産はここに照準を合わせたフィールを見事に作りだしています。日産、トヨタに追従しているのがマツダが内製している「湿式多板方式」を採用した6ATくらいなもので、この3ブランドのATが醸し出す極上のドライブフィールに比べれば、BMW(8AT)もVW(6湿式DCT)も・・・でしかないです(悪くないですけど・・・)。そしてあまり言いたくはないですが、メルセデス(7AT/7DCT)とスバル(8CVT)は「やり直し!」と言いたいレベルです(熟成不足・・・)。

  さてすでに処刑してしまったWRX-S4ですが・・・。CVT以外のところはいろいろ頑張っています。スバルもCVTの至らなさを理解しているようで、いよいよ「アクセル・レス」なクルマ作りへと方向転換しているようです。WRX-S4の最大のセールスポイントが、高速道路での自動運転モードです。カメラで車線を確認しステアリングまで自動的に動かす機能がついています(レガシィには無いそうです)。なるほど・・・究極のGTセダンですね。私は買おうとは思いませんが、いろいろな人に訊かれてこの話をすると、「それってスゴいね!」とかなり前のめりになることが多いです。ドライバーズブランド・スバルという先入観がなければたしかに「スゴい!」かもしれません(300psはただの飾りか?)。

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2014年10月28日火曜日

ロータス・エキシージSロードスター 「なかなか無視できない価格かも」

  人生で2シーターのオープンスポーツを所有することはあるのかな・・・。もしあったとしても通算で1~2台ってとこだと思うので、マツダ・ロードスターとポルシェ・ボクスターさえあればあとはどうでもいいかも・・・でもなんだかんだで日々あれこれ妄想してます。クルマ選びは本当に楽しいので、仕事がしんどい時などにふと考えると、なかなか精神衛生上にも良い効果があります。特に非日常なクルマというのは想像している段階が一番幸せで、いざ「買うぞ!」となって現実的に維持費を計算し始めると、とたんに熱が冷めるなんてこともあります。「ボクスターならなんとかなるかも!?」と思っている分には幸せですが、実際には余裕もないのに安易に買ってしまって、オイル交換で毎回5万円を支払払ったりしていたら、今度は逆に「消耗」してしまいそうです・・・。

  マセラティ・グランカブリオやフェラーリ・カリフォルニアといった貴族趣味のイタリアン・オープン・ラグジュアリーは、とてもじゃないですが現実味が無い価格(新車2000万円〜)です。「手の届く非日常」ということで、ポルシェとジャガーが日本のサラリーマンの懐具合をよく見定めたであろう、ボクスターとFタイプならば・・・ってのが現実です。同じ日本にはマセラティやフェラーリを大胆にも痛車にしてしまう道楽者(不届者)もいるのに、ボクスターでため息をついている自分の小者っぷりが悲しい限りです。

  最近になって英国のスポーツカーブランドであるロータスから「エキシージSロードスター」という2シーターのオープンスポーツが、本体価格1000万円以下という価格で登場しました。パワーユニットはもうロータスではおなじみになったトヨタ製V6スーパーチャージャー(350ps)を使っていて、しかも1200kgを楽に下回る超軽量ボディですから、これだけ見てもスポーツカーとしてのピュア度はなかなかのものです。ライバル車としてポルシェ・ボクスターの新グレード「GTS」やジャガーFタイプのV6スーパーチャージャーが頭に浮かびますが、これだけのリアルスポーツを押し退けてしまう正統スポーツカー設計ですから、少なくとも期待を裏切らないはずです。

  ロータスにはエリーゼというもっと手軽なオープンモデルもあります。元々はトヨタのセリカ用1.8L(190ps)を積んだロードスター版がエリーゼで、そのハードトップ版がエキシージだったようですが、2010年ヤマハがチューンしたエンジンの供給が終わると、この2つのモデルは方向性を分けて、トヨタの別々のエンジンを積むようになりました。現行ではエリーゼが1.6L(NA)、エリーゼSが1.8L(SC)、エキシージSが3.5L(SC)となっていて、エリーゼはマツダ・ロードスター、エキシージはポルシェ911の切り開いているマーケットに接近しているのが分ります。「ロードスターと911以外は亜流」とその著作で言い切ったライターがいましたが、ロータスのマーケティングはその言葉を見事に裏付けています。

  ロードスターと911ですからもちろん価格帯も大きく違うので、エリーゼとエキシージは今では価格差が大きく開いています。その中でエキシージのオープン版が出たのは、少なからずジャガーFタイプの商業的な成功がきっかけだったようです。日本価格では軽く1500万円を超えてしまう911カブリオレに対して、本体価格で1000万円を下回るFタイプとエキシージSロードスターは、かなり割安に感じます(あくまでスポーツカーに取り憑かれた人の感覚ですが・・・)。あとは日本でもアメリカでも「ポルシェの独裁」に対する倦怠感みたいなものも燻っています。新しく設計されたスポーツカーへの渇望はジャガーFタイプの販売を後押ししています(特にアメリカで)。

  今後はホンダもこのマーケットを狙ってNSXの価格設定をしているようで、「フェラーリの性能でポルシェの価格」といった文言がホンダの幹部からも出ているとか・・・。マツダもロードスターとは別の価格帯(600万円前後?)で2017年に新型RX7の投入を予定しているらしいです。そして同年にはトヨタとBMWのコラボによる新型スープラ/Z4も発売を予定しています。これに既存勢力である日産GT-Rとシボレー・コルベットを加えた、600~1200万円(日本価格)、そして300~600psくらいのリアルスポーツによる、まさに過当競争に突入していく様相を呈しています。他にもフォード(マスタング)やフィアット=クライスラー(アルファロメオ、ダッジ・バイパー)も、すぐにこの競争に参加できる能力を持っています。

  ロータスは現在はマレーシアのプロトンの傘下にあって、今後は経営効率を優先するためにライトウエイトスポーツの開発を凍結し、高級SUVなどの売れ筋を目指すといった予測もでてました。しかし現状では世界中のセレブがわざわざマレーシアメーカー傘下のSUVを積極的に選ぶとも思えないのですし、アメリカ市場を見ていてもランドローバーやジープといった伝統のブランドこそ伸びていますが、BMWやポルシェのSUVはそれほど歓迎されていません。やはりロータスは、発表と同時に著名人がこぞって予約を入れたという「エヴォーラ」のような個性的なクルマを作っていたほうが賢明じゃないかと思います。


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↓傑作エッセイ「スポーツカーを買うならば」が収録されてます!

  

  

  

  
  

  

  

  

2014年10月13日月曜日

ポルシェ・ボクスター 「ブランド求心力は意外なところに・・・」

  「欲しくなるようなクルマを作れ!」・・・クルマ雑誌のお便り欄やネットメディアのコメント欄でやたらと見かける「捨て台詞」です。成熟市場ではユーザーはどんどん"わがまま"になっているようで、なかなか良さそうなクルマでも「街中でたくさん見かけるから嫌」みたいな言葉を平気で投げつけられます。周囲の評価ばかりを気にしてクルマ選びをしていると、頭の中でネガティブな言葉だけが増幅されて、満足いくクルマには一生辿り着けないんじゃないですかね。「私のような終末国家のハンパものが贅沢にもクルマに乗らせてもらっている・・・」というくらいに心から感謝出来ないと「維持費が高すぎる」なんて不満が頭から離れずに楽しいはずのカーライフは完全に押しつぶされてしまいそうです。

  そんな"わがまま"なユーザーを上手く丸め込むかのように、自動車メーカーは小手先のアイディアを次々と繰り出していて、その成れの果てが「現在の状況」なんじゃないか!?なんてふと思ったりします。その過程でいろいろなアイディアがパクられ・選択・淘汰された結果が現在のラインナップなわけです。芯の通ったコンセプトが欲しいのに、不満を封じるための「応急処置の切り貼り」ばかりが目についてしまって幻滅してしまうこともしばしばあります。クルマの良し悪しはユーザーによって180度変わってしまうものですから一概には言えないですが、クルマ好きが集まった自動車メーカーが自信を持って世に出した「理想のドライビングカー」は一体どれなのか?そもそも現行モデル内に存在するのか?といった疑念が湧いてきます。そしてこれを一番問い正したい!と思うメーカーは意外なことに「マツダ」と「メルセデス」だったりします。

  トヨタなら「レクサスIS350Fスポ」、日産なら「スカイライン350GT」、スバルなら「WRX STI」、スズキなら「スイフトスポーツ」、ダイハツなら「コペン」、VWなら「ゴルフGTI」、BMWなら「M4」といった感じでそれなりに目星が付くものですが、「マツダ」と「メルセデス」にはそういうモデルが現状では見当たりません。どちらも各論として素材の良さは分るのですが、「必死の作り込み」が感じられないモデルばかりで、なんだかイマイチ惹きが弱いです。「どうせ頑張るだけ無駄だし」とは思ってないでしょうが、それでもなんだかユーザーを少々ナメている気がするのは私だけでしょうか。ファンを熱狂させるような「究極」の個性の作り込みを見せてほしいと思う反面、全ラインナップにわたって「メルセデスらしさ」「マツダらしさ」を行き渡らせる努力はとても良くわかるのですが・・・。

  沢村(慎太朗)さんに言わせれば、ベルリネッタもアヴェンタドールも「らしくない」モデルだそうで、その言葉をそのまま拝借すればフェラーリもランボルギーニも究極の作り込みをしなくなっているようです(あくまで4000万円払うという前提の話ですが・・・)。さてポルシェですが、個性を語らせれば世界的に知られたブランドでは随一の実力とはいえ、そのイメージリーダーを務める「911シリーズ」がどうもイケてないです。ド素人にも運転できるという日産GT-Rのコンセプトに同調した現行の991系になったとたんに、ファン離れがどっと加速したようで、どうもクルマ好きに無理してでも1500万円出させるだけのスピリッチュアルな魅力に欠けるようです。端的に言ってしまえばもっと興味深いクルマはたくさんあるってことです。

  失礼ついでに言っておくと、近年のポルシェはSUVやセダンでせっせと儲けるブランドというイメージが広がってしまったのも確実にイメージダウンにつながっています。高級SUVやサルーンにコンセプトを合わせたせいで不必要に豪華になってしまった911シリーズの内装は、あくまで頑固でハードなその乗り心地との間に明確な齟齬を起こしています。RRを安全に走らせるために太いグリップタイヤ(285~305!!!)を必要があるのはよくわかりますが、これではエアサスでも組み込まない限りどう足掻いても、内装にマッチするような乗り心地へと改善することは期待できないです。これだけのブランド車種を「ブレブレのコンセプト」と扱き下ろすのは正直心苦しいですし、身分不相応で失礼千万なのは重々承知ですが、やはり結果的に本物を求めるスポーツカーファンには敬遠されてしまうであろう要素がやたらと目に付いてしまいます。

  SUVやセダンをポルシェが作ってしまったことで自ら墓穴を掘ったという印象は多くのクルマ好きの方々も同調してくれると思いますが、ブランド自身の手によって911シリーズが持っていた「カリスマ性」というべきファンを惹き付ける「箔」をそいでしまいました。これまで少々のことは甘受して911シリーズに「心酔して」乗っていた層が、明確な快適さを持ったカイエンやパナメーラにどっと乗り換えた挙げ句に、今度は「(SUVやセダンなら)BMWの方が良くないか?」と気がついてしまうわけです。アウディ由来のV6よりもBMWのストレート6が絶対的に正義ではないかと・・・。そしてポルシェって一体何なの?何がしたいの?という疑心暗鬼に放り込まれます。

  2000年頃は「911シリーズ」のGTカーとしての地位は万全なもので、BMW M5(E39)やアストンマーティンDB7といった、それぞれブランド史上最高というほどの名車をことごとくなぎ倒した実力は、まさに世界のGTカーの頂点でした。その頃に大学生だった私にとって、ポルシェの2階級制覇(911ターボとボクスターS)という存在感こそがハイパフォーマンスカーの序列において絶対的なものでした。そしてGTカー部門で911ターボに必死に喰らい付いたのがM5で、ロードスター部門でボクスターSに唯一対抗しうるモデルがS2000だったので、BMWとホンダはポルシェに伍するエンジニアリングの名門というイメージも同時に出来上がりました。それから10年以上が経過して状況は大きく変わりました。

  911ターボとM5は北米市場を意識し過ぎたかのようにハイパワー化に邁進し、モンスター級の出力を様々な電制で抑え込んでドイツメーカーらしい安全性を確保したクルマに成り果てました。その途上には日産GT-Rという新たなる挑戦者が登場し、マセラティ・メルセデスAMG・ジャガー(Fタイプ)の参入により「最速」「官能」「ラグジュアリー」などなど評価のファクターも多岐に分かれ、ストイックに「GTカー」としての世界観を追うのではなく、「0-100のタイムは?」「ニュルのタイムは?」「エクゾーストの音作りは?」「変速速度は?」といった要素ごとの作り込み競争に走ってしまっている感があります。911に限った話ではないですが、その過程で2000年頃には確実にあった操る楽しさがかなりスポイルされたという専門家の意見がとても気になります。

  ボクスターSとS2000のロードスター対決も、今やS2000の撤退によってライバル無き「孤独なボクスター」になって数年が経過しています。2005年にはホンダVテックに勝負を挑むべくクーペ部門にケイマンを送り込みますが、欧州で熱狂的な支持を受けていたインテグラRは間もなく姿を消してしまいました。S2000とインテRの後継?としてホンダが新たに作ったCR-Zは、どう考えてもケイマンに対抗しようという意図は、いまのところは微塵も感じられません。ホンダが超一級品のスポーツメーカーだった事実はしだいに風化し、今やホンダの"スポーツカー・スピリッツ"は完全に過去のものになりかけているのが残念です。

  S2000に変わる新たな挑戦者が現れる気配はまだないのですが(フェアレディZカブリオレは重すぎ)、ボクスターは現行モデルも尚、S2000、MR-Sを愛好していた人々からも好意的な熱視線を浴びるモデルとして、日本でも異例のヒットを記録しました。日本にはマツダ・ロードスターという殿堂入りの名シリーズがまだまだ現役ですが、このクルマは操縦性という一つの極致を確立しつつも、弱気でリーズナブルな価格設定がゆえに、手軽でファッショナブルとして世界のベストセラーになってしまった複雑な素性のクルマです。ボクスターやS2000のようにオープンで200km/hを超えて走ってしまうのコンセプトに難があるという指摘もありますが、その意味ではマツダの発想は極めて理性的なものなんだとは思いますが・・・。

  何もかもがバブリーな中国や中東では911ターボが飛ぶように売れるそうですが、日本人の負け惜しみとして、もはや行き着くとこまで行き着いて身動きが取れなくなった911シリーズに何も期待はしてない!と言ってやりたいです(笑)。"操縦性"というキーワードをコンセプトに大きく内包するボクスターこそが、まだまだ2000年頃の古き良きメーカー対決の中心になってくれそうな発展途上の魅力十分だと思うのです。さらにマツダロードスターに200psオーバーのターボを載せるであろうフィアットの新型スポーツカーや、アルファ4Cカブリオレ、ロータスエキシージカブリオレとやや地味なところからですが好敵手は出て来ています。そしてホンダが開発中の2LターボMRの「新型S2000」が発売され、全ホンダファンの期待に応えて「打倒ボクスター!」を掲げるならば「ホンダはやっぱり最高だ!」と大いに盛り上がりたいと思います。


  
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2014年9月30日火曜日

アストンマーティン・V8ヴァンテージ 「10年落ちで古臭いけどまだまだ新車で売ります」

  日産のアンディ・パーマーとかいうカルロス・ゴーンの後継者と目されていた人物が、日産を辞めてアストンマーティンのCEOに就任したなんてニュースはどうでもいいのですが、このパーマー氏は日産時代にアストンマーティンの買収を盛んに主張していたようですね。パーマー氏は日産から離脱と言われてますが、これは実は策略で再び日産に再合流して、その結果アストンマーティンがルノー日産の傘下に入るという、ドラスティックな再編劇が始まるのかもしれません。メルセデスとの提携を深める日産は、インフィニティブランドで待望のLサイズ・ラグジュアリークーペをこの10月にも発表する予定で、日本メーカーが未だかつて見た事がない領域に足を踏み入れていくようですが、世界中に鳴り響くスーパーブランドを吸収するのは戦略上とても有効な気がします。

  日産はいわゆる「プレミアムブランド」の価格帯に伝統のスカイラインを格上げして来ました。レクサスISはとりあえず意識していないと陣営は言っているようですが、アルテッツァをルーツに持つ「IS」とスカイラインをルーツに持つ「Q50」の2台が登場したことで、このクラスのクルマは「特別」というわけではなく、ちょっと豪華に設えた「普通」のクルマというイメージが急速に広まっているように感じます。もちろんこの2台とどっこいの水準であるメルセデス、BMW、アウディブランドの各モデルも同様に「尊厳」を失いつつあり、たとえフラッグシップモデルであっても失礼ですがなんだか「つまらん」と感じてしまいます。そもそもこれらのブランドの上級モデルの主な需要はカンパニー・カーですから、いい意味で「普通」ではあるんですけど・・・。

  近頃ではプライベート・ラグジュアリーカーの「新御三家」として、マセラティ、ポルシェ、ジャガーが日本でもアメリカでも人気になっていて、いわゆる「高級車」ブランドの新しいスタンダードとして次第に認知されているようです・・・。しかしこの3ブランドも最近では徐々に廉価モデルが増えていて、ブランド内の平均車両価格も下がる一方のトレンドであり、まるでメルセデスやBMWがこの10年で選択した戦略をそのままなぞっているようです。このままでは数年もしないうちにメルセデスやBMWのような立ち位置の「普通」なブランドに成り下がっていくことが予想されます。さて今後3年の内に「超高性能車」をラインナップして"ハイクラス"を主張できるブランドは一体どれくらい残るのでしょうか。

  そんな中でアストンマーティンというイギリスを代表するGTカー・ブランドは、日本でもその希少さゆえに独特の存在感を放ちつづけています。BMWもランエボも大好きな英国人にとってはドイツブランドも日本ブランドもとても優秀なのは認めるところですが、それでもアストンマーティンだけは別格な存在だそうです。日本人にとってのGT-Rを作る日産のような存在なんですかね。しかし日産はなにやら国内の自動車ファンから辛辣な意見が多数よせられていて痛々しい限りではありますが・・・。個人的な意見ですが日産はもっとアストンマーティンのように愛されてもいいのではないかという気がします。そんな日本の魂の日産が、イギリスの魂のアストンマーティンを買収するなんてことが実現したら、両社の協業に思わずテンションが上がってしまいます。日仏英の3国連合による対VW包囲網という構図もドラマティックで、いかにもフランス人が国民感情を剥き出しに描きそうなプランですね。

  アストンマーティンの荘厳な世界観を纏ったGTカーボディに、日産が誇るGT-R用のV6ツインターボが鎮座してもまったくの興ざめなので、VWグループが誇るランボルギーニとポルシェの2トップのような共存関係を目指してほしいです。アストンマーティンは2007年にフォードグループから売却され、現在はクウェートの資本家集団に経営権を握られていています。その再編の影響はどれくらいあるのか解りませんが、2012年に発売したフラッグシップモデルの「ヴァンキッシュ」を最後に新型車の発表は凍結されています。いかにもアラブの王族が好みそうなV12のスーパースポーツを作っただけで、その下のサブモデルに関しては次世代モデルの開発が先延ばしされているようです。今年になりV8ヴァンテージとDB9という発売から10年経つ両古参モデルの特別限定車が発売されました。10年を超えるモデルサイクルを経てもなお発売が継続されるのは、軽く1500万円を突破するクラスのスポーツカーではほとんど不可能なほどの暴挙だと思うのですが・・・。

  いくらスポーツカーとはいえ、内装のデザインがここまで古くさく感じてしまっては、レクサス、アウディ、メルセデスなどの「普通」のブランドでは試乗の段階でテンションはガタ落ちしてしまうでしょう(つまり売れない)。しかしレクサスやアウディとは違ってアストンマーティンならば、ブランドが持つ超常的な世界観でユーザーを納得させてしまうのかもしれません。アストンマーティンは1940年代からスポーツカーを生産していますが、歴代の生産モデルが愛好家によってレストアを受けて、各モデルの現役率が驚異的に高いそうで、歴代の最量販車種であったDB7は現在でも9割が現役らしいです。つまりアストンマーティンの所有価値は、レクサスやアウディのように乗って内装を楽しむといった単一なものだけでなく、フェラーリやランボルギーニに匹敵あるいはそれ以上のプレミアムリセール価値が見込めることも含まれます。ゆえに内装が時代遅れだとしても何ら大勢に影響はなく、世界のクルマ愛好家は躊躇なく2000万円を注ぎ込むことができるようです。

  そして今回発売された2台の特別仕様車の内の1台が、あの沢村慎太朗氏がオートカーで「近年まれに見る本物」と言わせたV8ヴァンテージN430です。なにが本物か?ということがこの沢村さんのレビューの最大のオチになっていて、詳しくはオートカーを直接読んでみてほしいのですが、まあメチャクチャな暴論をぶち上げて、「スーパースポーツ=超高級車」としか解さないクソ素人を片っ端から薙ぎ払う恐ろしい切れ味を発揮しています。「アストンマーティンに乗って、その感想をブログでポエムしてるアホどもが語るような"官能性”なんてこのクルマには全く存在しない!」「だからこそ本物なんだ!」と素人相手に強烈な"コンビネーションパンチ"を繰り出しています。「オマエらは官能を理解できて無いから語る資格もないし、そもそもリアル・スポーツが何なのかも解ってない!」ってことのようです。

  メルセデス、BMWそれにポルシェやマセラティくらいなら、どんなアホが語っていようとも何とも思わないけど、アストンマーティンだけは絶対に許されない次元のブランドのようで、沢村さんがマジで"ピキる”というわけです。さあ男だったらアストンマーティン買って、「沢村さんはあーだこーだ言ってるけどさ、やっぱりこのクルマのツボは・・・」みたいなことをブログで騒ぎまくりたいと思っちゃいました・・・。V8ヴァンテージN430本体価格約1600万円か・・・はぁ〜。


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2014年9月12日金曜日

ポルシェ・ボクスター 「マツダロードスターとの対峙」

  マツダが新型ロードスターを公開しました。大ファンのブランドの看板スポーツカーですから、買う気があまりなくても気になってしまいます。デザインは見所たっぷりで、とても一言では語り切れない懐の深さを感じます。そして無意識のうちに所有のシュミレーションを始めてたりします・・・。とはいってもソフトトップの2シーターですから、長距離ドライブが好きな身としては完全に2ndカーでしか考えられません。

  500万円くらいで買える過疎地の物件に本拠を移し、現在の借マンションを事務所にするという構想(笑)を実現させない限りはロードスターはなかなか難しいですね。とりあえず田舎暮らしへの憧れだけは年々強まっていて、週末だけでもいいから静かな場所に居を構えたいと思っているので、いよいよ一念発起して物件を探し、隣接地にさらに300万円かけてガレージ作ってしまおうとあれこれ妄想を爆発させてます。近所(東京郊外)にある3000万円台の新築マンション買うよりも経済的にささやかなヴィジョンだとは思ってるんですが・・・。

  今住んでいるところは都心から電車で30分ほど離れた郊外ですけど、青空駐車場を1台確保するのがやっとですから、クルマバカにとっては「東京」なんてつくづく夢がない場所です。近隣にサーキットなんてありませんから、ランエボやシビックtypeRを買ってもその性能を試すことも出来ませんし、公道で交機の単車に狙われるのがオチです。休日に昼まで寝てしまったらもうクルマで出掛けるのが億劫になるほど、日中の道路の混雑はひどい有様です。クルマ好きが東京に住むなら高速の出入り口に近い所しかあり得ない!のかなと最近は思いますね。あと信号が無駄に多いのも・・・。ということでジジイになる前には埼玉だか群馬に引き蘢りたいものです。

  無事に田舎暮らしが達成できたなら、やはりスポーツカーを楽しみたいものです。ロードスターももちろんいいですけど、マツダならば復活するRX7にも大いに期待したいです。なんといっても田舎暮らしですから、ロータリーでも渋滞で燃費が極度に悪化したりしないでしょうから、都市に住む場合とは条件が全く変わってきます。ちょっと洒落た宿泊地や観光地に乗り付けるなら、ラグジュアリーに振ったものになる新型RX7が良さげですね。しかしせっかくガレージを用意するならばオープンスポーツを楽しみたいものです。東京でガレージ付き物件なんて中古でもとんでもない価格になりますし・・・。

  ロードスターのような素性の良いスポーツカーで、かつオープンのモデルとなると選択肢に上がってくるのが、ポルシェ・ボクスター。別に田舎だからといってバカにするつもりは無いですが、誰も見てない田舎住まいならば「S」や「GTS」じゃなくベースモデルで十分ですし、乗り出しで700万円でポルシェはなかなかお得感があります。東京近郊ではボクスターのベースグレードなんて滅多に見かけません。近所の青梅街道ですら新宿に向かって走り出せば、911がそこいら中に現れますから、ボクスターやケイマンに乗っててあまり気分のいいものではないんじゃないかという気がします。とにかく東京近郊にはとんでもない金持ちがちょっと多過ぎますから、とりあえずブランドのフラッグシップ格じゃないととても乗りにくいです。レクサスISとか乗ってるオッサンなんて気持ち悪がられるだけです。

  田舎ならばレクサスLSやメルセデスSクラスに乗ってる方が逆に怪しい人であって、男でも平気でISやCクラスに乗れる!そしてポルシェでもボクスターやケイマンを楽しむならやっぱり田舎住まいだな・・・。そしてソフトトップの難点(要ガレージ)さえ解決できれば、ボクスターのスタイルはケイマンよりも優れていますし、なんといっても日本の田園風景にありがちな幅員の狭い道をまったく苦にしない1801mmの車幅は、林道を心ゆくまで楽しむにはもってこいのサイズと言えます。

  先日、東京駅近くの八重洲ブックセンターに行ってきましたが、8フロアもある超大型書店にも関わらずクルマ関連の本があまり無かったのにはガッカリしました。鉄道よりも人気が無いのは解りますが、バイクや飛行機だけでなく、なんと船舶に関する本よりも少ないとは思いも寄りませんでした。東京のど真ん中に住んでる人はクルマになんて全く興味がないようです。クルマを所有する人なんて、経済感覚の欠如したアホか、渋滞にハマるのが趣味の暇人くらいにしか思われないです。トヨタが若者のために86を作ったところで、そんなものには東京人は全くと言っていいほど興味は起こらないです。なぜなら少しも楽しい気分になれないのを知っているから・・・。東京の真ん中じゃ若い女性がGT-Rやらアストンマーティンやらに平気で乗ってたりします。そこに86ではあまりに惨めじゃないですか?

  「人里離れた田舎でひっそりボクスターを楽しむ」これがこそが、ポルシェやドイツ人が考えるハッピーライフなんじゃないかと思います。約1000kgの軽量ボディが特徴の「マツダ・ロードスター」と1350kgほどある「ポルシェ・ボクスター」。優劣を語るのは野暮なことで、どちらもカーライフの「終着地」に相応しい「禅」的な佇まいを感じさせてくれます。日本全体では人口減に転じていてもまだまだ増え続ける東京都の人口。いくらエコカーがその経済性を追求したところで、自転車やバイクよりも所要時間はかかり、維持にもお金がかかる始末。「本末転倒」なんていう虚無感をアクアやプリウスを見かける度に感じてしまいます。私のような貧乏人には愛車に1000万円も2000万円もかけることにも明確な意義を見出せないです・・・東京のど真ん中に住む大金持ちの為のクルマでしかないと自分に言い聞かせます。

  とにかく金持ちいかんに関わらず、東京のど真ん中なんてクルマ好きにとっては苦痛以外の何者でもないと思います。その一方で田舎でボクスターを楽しみつつ、東京の事務所に出てくるときには小綺麗に洗練されたスバルWRX・S4に乗って・・・なんてボクサーエンジンライフはなかなか素敵だなと思いますね。もちろんロードスターかRX7を田舎で走らせつつ、アテンザで東京に出向くという「マツダ大好きライフ」もいいですけど・・・。  

  ちょっと勢いだけで書いてしまいまとまりの無いものになってしまいました。ボクスターの魅力をいろいろ考察・発見して再びプレゼンしてみたいと思います。


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2014年8月16日土曜日

レクサスRC-F「安心して買えるのは大事なこと」

  「ホンダNSXのテスト車両が燃える!」という衝撃的なニュースがありました。ポルシェ911GT3でも市販車で不良が相次いで発生して販売がストップするなど高性能車の過熱気味の開発競争は少なからず「ひずみ」を生んでしまっているようです。BMW-M、AMG、フェラーリの8気筒モデルが軒並み500psを超える段階に突入している現在では、超高級サルーンを作らないメーカーにとっては、「6気筒」で500ps超をキャッチアップしなければいけないという苦しい状況で、ホンダやポルシェといった実績のあるメーカーでもなかなか難しいようです。

  現在のところ大きな騒動が起こっていないGT-R(V6ターボ560ps)は見事に日産の自他共に認める世界最高の技術力を証明しています。ファンの一部から400psオーバーという無茶な要求を突きつけられているスバルは、「トヨタ基準の安全性」を楯にその要求を退けて従来通りの300psの新型WRXを作りました。スバルの技術力を持ってしても直4ターボで400psの安定したエンジンは難しいものがあるようです。その一方でとうとう生産中止が迫ってきたランエボXの欧州仕様は直4ターボで400psを出してます。こちらも特に大きな不具合といったことは聞きません。日産と並ぶ三菱の技術力の高さの面目躍如といったところでしょうか。

  日本の「能天気」な自動車メディアはメルセデスA45AMGの直4ターボ360psが市販車最強の4気筒みたいな宣伝をしています。別に事実誤認というわけでないですが、単に三菱が問題を抱えていて日本で400psの直4ターボを売らないだけです。この10年あまり国土交通省に嫌われ続けている三菱は、欧州版のランエボXの国内発売の認証を取るのが非常に面倒ということで300psに抑えたモデルのみを販売しています。国土交通省にサンプル数台を供出し、あれこれ技術説明をしてもなお、ネチネチした官僚の追求を躱さない限り許可は下りないですし、苦労して認証されたところでいったい日本でどれほど売れて儲かるのか?という問題もあります。

  しかしファン相手のスポーツカー商売というのは難しいもので、メーカーによってデチューンされたモデルはどうしてスポーツカーとしてのプレミアム価値に乏しく、将来的に最終型NSX-Rのような価格高騰につながるとも考えにくく、投機的な需要が引き出せません。そもそも2007年の発売時に株主のメルセデスの意向で三菱に送り込まれたコンサルファームによって、既に決まっていたランエボXの価格が相当引き上げられたあたりからケチが付いていて国内でのランエボ人気は完全に下火になりました。STIの限定モデルには今でも十分なプレミアが付きますが、経営権を外資に握られ、日本のファンに背を向けたランエボは価値が下がりつつあります。まあ日産GT-Rも同じようなものですが・・・。

  もしカーメディアが日本のクルマ好きの側に立ってモノを考えているのなら、三菱をメチャクチャにした張本人である三菱の旧経営陣とメルセデスに対して何らかの「遺恨」があってもよさそうですが、クルマ雑誌は5月あたり(増税後)から「メルセデス一色」になってます。さすがにどの雑誌も大同小異の文面でいい加減に飽き飽きしてしまいますね。アメリカ雑誌ではメルセデスなんてほとんど取り上げられてないですけど・・・。メルセデスに興味津々な人々を批判するわけではありませんが、メルセデスのFF車を見ると三菱が頭に浮かんでしまい、クルマ好きとしては全く興味が湧きません。なんでこんなメーカースピリッツが体現されないモデルをちやほや出来るのか不思議です。

  それにしても「4気筒エンジンの頂点に君臨するメルセデス」みたいなテンションで提灯記事に参加してくるアホライターまで駆り出されていたりして、なんでそんなジャーナリズムにカネを払っているのか・・・なんて嫌な気分になったりもします。そもそも4気筒エンジンに近年では何ら実績が無かったメルセデスが、「2Lで360ps」いきなりこんなにハイリスクなエンジンを作れるはずもなく、だれがどう考えたところで、AWD技術、FFベースのシャシー、とひっくるめて全て三菱ライセンスの技術を応用した結果に過ぎないとわかるはずです。もちろんメルセデスの直4とランエボの直4はボア×ストロークも違いますし、あまり滅多なことを言うものではないですが、常識的に考えて「畑違い」の分野でメルセデスが急成長したこととあの悪名高い「M&A」が無関係には思えないです。

  それでもやはりメルセデスが三菱の技術を信頼して、十分に安全な高性能車を日本のユーザーにそこそこ納得できる価格で提供していること自体はとても素晴らしいことだと思います。東京の環状7号線を走っていると「A45AMG」が混雑にイライラしながら走っているのをたまに見かけます。「こんなところで走らせるクルマじゃないだろ」という気もしますが、そんな場違い感からこのモデルが新規の高性能車ユーザーを増やしてくれているのでは?という推測もできます。都心でも使いやすいサイズの「AMGモデル」というのはなかなか購入意欲を刺激するでしょう。とりあえずこのクルマがとても「日本的な高性能車」であり、それが日産や三菱ではなくて「AMG」ブランドで発売された。メルセデスによる日本の直4ターボのスピリッツに対する「リスペクト」と考えれば共感できます。

  さて品質管理において長年世界のメーカーのお手本にされてきたトヨタが、いよいよ欧州市場にレクサスを送り込む「イメージリーダー」として、2ドアのグランドツアラーを作ってきました。さすが「石橋を叩いて渡る」トヨタの開発スピードというべきか、2015年に改めて「Dセグ2ドアクーペ」に「V8NAの450ps」というややフェードアウト気味(ホットハッチに押され気味?)のクラスのど真ん中に直球勝負を仕掛けてくるようです。先代のIS-Fはベース車のポテンシャルから、「シャシーが」「アシが」と批判があり本場ドイツのグランドツアラーに及ばず終いだったのですが、トヨタ初?のDセグV8だったことを考えると重要な「一歩」だったと思います。

  そして歴代の日本の名車が飛躍を遂げることが多い2代目となり、「2ドア」「新型シャシー」「LDH(レクサスダイナミックハンドリングシステム)」・・・もの凄いペースで進化を遂げ、IS350Fスポで福野礼一郎氏に「画竜点睛を欠く」と言わせたシートも、RC専用のものを用意したようです(東京MSで座ってきました)。これで一気にM3/M4との差を縮めて一気に逆転まであるのではないかと期待できます。何より福野氏が突いた点をすでにトヨタが先回りしている(解っている)点に好感が持てます。しかもベース車同士と戦いではIS350FスポがBMW435iを圧倒したといっていい内容で、乗って見るとあまりの満足感に「Fは要らないかも・・・」となってしまうくらいです。

  さらにRCのベースモデルはISよりもワイド&ローに設計されていて、タイヤハウスの寸法にも余裕が出てくるので。ISが隠し持っている4輪操舵という飛び道具を使うこともできます。さらに「RC-F」ならもう1段階ワイドな設計で前後の4隅にグラマラスな張り出したデザインを展開するでしょうから、GSのFスポと同等に使うこともできるでしょう。スカイラインが止めてしまった4WSを継承という展開もなかなかロマンがありますが、その乗り味がベテランの評論家にどんな風に受け止められるのでしょうか・・・。その辺がトヨタの悩みどころかもしれません。

  「A45AMG」が日本の自動車文化への「共鳴」ならば、「レクサスRC-F」はドイツのクルマ文化への「憧れ」か「リスペクト」といったところかもしれません。トヨタは真摯にドイツ車を研究しているようですし、開発担当者の言葉にもメルセデスやBMWへの賛辞が溢れています(マ◯ダや日◯は「ドイツメーカーなんて格下!」くらいに思ってそうですが・・・)。ぜひ「RC-F」には日本でもドイツでも絶賛されるようなクルマとして成功してもらいたいと願っています。



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2014年7月22日火曜日

メルセデスSクラス・クーペ 「トヨタのFCVなんかよりも世界にとって断然に重要なクルマ」

   とてもリアルでは口に出せないけども、いつかは絶対に乗ってやる(笑)!と密かに思っているクルマ、そんな代表格がメルセデスの2ドア・フラッグシップGTカーの「CLクラス」です。全グレードがV8以上で「偽物なし!」という抜群の”本物感”は、1000万円以上払うなら絶対に備えておいて欲しい「美点」ですね。こんなこと言うと怒られちゃいそうですけど、メルセデスもアウディもBMWもエンジン次第で価格がガラッと変わってしまうので、V6や直4が設定されているほとんどのモデルには、もはや「ステータス」なんて全く感じられないです。BMW635iなんてボディは立派ですけど載っているエンジンはハッチバックのM135iと同じですし・・・。

  そんなドイツ御三家の中でも「アウディR8」とメルセデスCL改め「Sクラス・クーペ」だけは、絶対に汚れない高級車の尊厳を保っています。大学を出て働き出したころから「メルセデスCL」だけは全然格が違う!とズブの素人ながらに思っていました。だいぶ後になってから、福野礼一郎というカリスマライターの著書の中にも「CLだけは正直言って羨ましいと思う。」という一節を見つけたときは、自分のセンスにちょっとだけ自惚れたりもしました「オレやっぱわかってる」(バカが・・・)。一度そんな体験をしてテンションが上がっちゃうと、もはや他のメルセデスの良さが見えてこなくなっちゃうから恐ろしいものです。

  そんな「CL」という車名もいよいよ消え、新たに「Sクラスクーペ」として生まれ変わりました。名称が変わったことにどういう意味があるかなんて、まったく興味ないですが、新しいデザインは・・・やっぱりいいですね。レクサスもBMWも同じですが、やはりフラッグシップというだけで何でもカッコ良く見えてしまう"補正"を考慮しても、なかなかのデザインだと思います。特に気に入っている点はサイドの窓がとても小さいことですね。2ドアのメルセデスはピラーレス(窓枠なし)なドアのイメージがありますが、その憧れを裏切らない辺りが伝統の高級ブランドらしいです。

  このクラスのクルマになるとパワートレーンなんて比べようもないし、とりあえず私ごときが乗ったところで全く不満なんてないでしょうから、唯一の懸念材料がデザインになるわけですが、とりあえず写真で見る限りはパーフェクトです。このクルマのデザインを見ていると、現在日本で発売されている3BOX車の何処が気に入らないのかに気づかされます。なぜ現行レガシィB4やレクサスGS、そしてV37スカイラインがダメなのか?それはこのSクラスクーペの隣りに並んだらハッキリすると思いますが、やっぱり繰り返しになりますが、サイドの窓がデカすぎます。これ不思議なことに一度気になるとそこばっかりに目が行ってしまうんですよね・・・。

  一方で、サイドの窓が小さくて良いと思うのがレクサスRCですね。ショートデッキというクーペの特徴を素直にデザインすれば当然ながら小さくはなります。おそらく年内に公開されるであろうスカイラインクーペも小窓になってセダンからイメージ一新するでしょう。4ドアセダンでもちゃんと小窓にこだわってデザインしているブランドも探せばあります。「三大・デザイナーズ・セダン・ブランド」と勝手に命名させてもらってますが、アストンマーティン・マセラティ・マツダの3つです。セダンのデザインを大いに語るに値するのは、この3つだけだと個人的には思っています。

  最近、実車を見かけていいなと思った「E63AMG」の4マティックの走りっぷりに興味があるのですが、この新型「Sクラス・クーペ」もなんと全グレードAWDになるようなので、同じような加速が楽しめると思われます。クルマのキャラクターを考えるとGT-R並みの加速なんて不必要だとは思いますが、メルセデス最大レベルの5027mmの全長ながら全高はCLAよりもさらに低い1411mmですから、これだけワイド&ローの設計ならば、さらにAWDにしてこれまでに無いラグジュアリーカーを作ろうという意欲の現れでしょうか。いったいどれだけ安定感があるのか・・・。

  トヨタやホンダがFCVを間もなく発売しようとするご時世に、車重2トンを500ps、しかも燃費はたったの5km/L程度の2人乗りのクルマを乗り回すなんて、もはや恥ずかしいという意見もよくわかります。しかし先日も連休の関越道・藤岡JCTで上信越道(軽井沢方面)の分岐に優雅に入っていくCLを見かけましたが、(勝手な想像で恐縮ですが)これこそが誰にも否定されないクルマの醍醐味だよな・・・と思います。90%以上が会社名義で買うという「LS」や「Sセダン」で同じことをしても、ただの"節税車"としてしか見られず小馬鹿にされますが、経費に計上できない2ドアのメルセデスフラッグシップで軽井沢の別荘に乗り付けるなんて生活を目指して頑張りたい!と思わせてくれる・・・もの凄く貴重な一台なので間違っても無くならないでほしいと願っています。

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2014年7月7日月曜日

ジャガーFタイプ・クーペ 「"分化型"メーカーの魅力」

  クルマについていろいろ知りたいと思い、あれこれとクルマ本を読んだり、詳しい人に話を聞いたりしていると、しばしば遭遇するのが「R32は凄かった!」みたいな旧型車への惜しみない賛辞です。昔ワルをやっていたオッサンなんかに喋らすと、「湾岸線で250km/hで走っている横を何台もすり抜けてってさ〜」なんて「本当かな?」という話がたくさん飛び出してきてリアクションに困ったりします。そういう時は「スゲっすね!」しか言っちゃダメです。変にツッコミを入れるとおかしな空気になりますから・・・。

  「昔のスポーツカーは"神"だったけど、今のスポーツカーは"クズ"ばっかだ・・・」みたいなことを言われちゃうと、作る側もどんどん臆病になっていきます。「ファンとは変化を望まぬ人々」という金言もありますが、RX8が、NCロードスターが、CR-Zが、86が浴びてきた批判がメーカーのやる気を失わせ、それらのクルマを楽しむユーザーの声を掻き消し、スポーツカーを巡るあらゆるエネルギーを吸い尽くしてしまう疫病神になっている気がしなくもないです。

  もっとも批判はあって然るべきだとは思います。出来ることならば相手に対して「思いやりのある批判」であればいいのですが、まあそんなに都合良く世の中が「理性的」であるなんて幻想でしかないですが。なにせ専門家の間でも「スポーツカーの定義」など千差万別で、中には極端な例ですが「BMWはスポーツカーだけど、スズキはスポーツカーではない」くらいのざっくりとした考えもあるようです。実際には「BMWもスポーツカーではない」と思うのですが。

  そもそも専用設計のスポーツカーってどれくらいあるの?って話です。本体価格1000万円以下で日本で発売されている専用設計車は・・・トヨタ86/スバルBRZ、マツダロードスター、ロータス(エキシージ、エヴォーラ、エリーゼ)、ポルシェ(ボクスター、ケイマン)、ジャガーFタイプに新たに発売されたアルファロメオ・4Cくらいなものです。あとは全てプラットフォームの流用による「改造乗用車」に過ぎません(ケータハムなどマイナーブランドを除く)。ほんの数年前までは他にもトヨタMR-S、ホンダS2000、マツダRX8そしてNSXがあったわけですが・・・。

  日本未発売のものを含めるともっと増えるか?というと、少なくとも日本で知れ渡っているメーカーからはこれに該当するモデルは作られていないと思います。それゆえにトヨタ86などは、世界各地で最大級の賛辞で歓迎されていますし、「こんなリーズナブルな価格で専用設計スポーツカーを作ってしまう"クレイジー"なメーカーはトヨタ(スバル)とマツダだけだ!」といって「日本の自動車産業」への尊敬を集めています。最近じゃ車種が少なくなったこともあり、86やロードスターの世界的な価値が十分に広まったこともあって、雑誌に叩かれることもなくなりましたし、「ロードスターと違ってZ4の直進安定性は凄い!」みたいな訳分かんない記事に出会うこともほとんどなくなりました。Z4は3シリーズのシャシーを切り詰めて使っているのだからそんなことは当たり前ですよね・・・。

  「ロータス」も「ポルシェ」もそしておそらく「アルファ4C」も、その専用設計の強みを十分に認識されて日本のオーナーからも愛されています。ゴルフをベースにした「アウディTT」や、スカイラインをベースにした「フェアレディZ」、インプレッサベースの「WRX」、Cクラスベースの「メルセデスSLK」とは旋回性能が断然に違うというのもありますが、やはり「専用設計」の魅力というのは大きいと思います。

  そしてこれらと同じように「専用設計」スポーツの強みを発揮して、既存のスポーツカブリオレを蹴散らして世界の注目を集めるジャガーFタイプとそのクーペ版も、「よくぞ!作ってくれました!」と歓迎したいです。先行発売されたコンバーティブルよりも断然にお買い得になったクーペはV6スーパーチャージャー(340ps)が823万円!そしてフェラーリやランボルギーニのラインナップにも劣らないハイパワーを誇るV8スーパーチャージャー(495ps)がなんと1029万円!の大バーゲン価格になっています。

  A45AMGの方が360psも出て658万円!だからお買い得といわれればそうかもしれません。どんな安いクルマでも昔にくらべて断然に高性能になった乗用車のシャシーに、ハイパワーのエンジン載せているだけで満足するならばそれがいいでしょう。メルセデスが鍛えぬいたシャシーのポテンシャルを存分に味わうというのも素晴らしい楽しみ方だとは思います。それは「GT-R」や「WRX」や「M3/M4」が日産、スバル、BMWのシャシーの優越性をアピールするものであるのと同じです。

  その一方で「サルーンとスポーツカーは違う」と考えるメーカー、トヨタ、マツダ、ジャガー、アルファロメオ、ポルシェがやっている「極限まで振り切った作り分け」というのも、「クルマの機能性の分化」を踏まえた上で味わうと、サルーンもスポーツカーもさらに「個性的」に感じます。「統合型メーカー」と「分化型メーカー」とどちらが良いかは好みによると思いますが、レクサスやフェラーリのサルーンサイドを担当するマセラティが、メルセデス、BMW、アウディを徐々に圧倒しつつあるのかなという気がします。

  

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↓このシリーズには珍しく技術的な解説がとても濃いです。
  

2014年7月1日火曜日

プジョーRCZ-R 「不遇の時期を越えて、いよいよベストバイなスポーツカーに」

  突然ですが、人間の感性なんてそれほど宛にならないですね。一度は毛嫌いするほどに批判的だったクルマが1、2年経つと「意外といいかも!」と思えてくることが結構あります。マツダファンにもかかわらず発売当初は「セダンにディーゼルってアホでしょ!」と決めてかかっていて、アテンザXDの重くてアクセルもブレーキも怠い意味不明なフィーリングが全く理解できませんでした。しかし1年経って再試乗すると自分のクルマ(GHアテンザ)とは、何から何まで真逆なのにそれはそれで楽しいかも・・・という前向きな印象に変わりました。ただ1年前はマツダの方向性の変化に「頭」が十分についていっていなかったってことなんですが。

  そんなクルマがもう1台あります。「車重1340kg 最高出力270ps・・・価格540万円」趣味のクルマに600万円使う人がどれだけおられるかわかりませんが、これはなかなかじゃないですか? もしある時、何らかのきっかけで「小金持ち」になってクルマ道楽ができるくらいのゆとりを持てたら、コレを買ってもいいかなって思いますね。何を「捕らぬタヌキの皮算用」やってんだとか言われそうですが、そういう事を常に考えている人の方が実現する可能性が高いと言われてますし、考えるだけならタダ!しかもとても楽しいですから日夜あれこれ想像しております。



  この「プジョーRCZ-R」ですが、メルセデスA45AMGとアウディTT-RSがエンジン出力で凌ぎを削っているなかで、慌ててプジョーが出してきたようなクルマです。360psくらいで争っている2台を追いかけるのに、1.6Lターボの270psじゃちょっと寂しいなと・・・プジョーの苦しい台所事情だけが目に付く、やや「貧乏くさい」スポーツカーといった印象でした。A45AMGやTT-RSよりも確実に安い!というのが取り柄というがなんともケチ臭く感じてしまいます。せっかくスポーツカー買うのにケチ臭いと思われるなんて嫌ですし、おとなしくフェアレディZでも買っておいた方がよっぽど幸せかもしれません。ということで発売当初はまったく理解ができませんでした。

  当初は1.6Lターボというスペックにも偏見がありました。やはり気筒当たり400ccだとメカチューニングの幅も限定されて、ターボでひたすら誤魔化すしかなくなるだろうし、しかも絶望的なまでのロングストロークエンジン、しかもホンダやアルファロメオのような極限の高回転を追求できるハイエンドな作りでもない、ただの貧乏くさいダウンサイジングエンジンなので回転数も満足に上げられません。欧州メディアの風当たりも日に日に強まっている「エコじゃない」BMW&PSAの1.6Lエンジンですが、非力なので車重が嵩むX1などのSUVにも使えないことが仇となって、BMWもプジョーも一般モデルへの採用には否定的になっているようで「斜陽」感がハンパないのです。そんなエンジンでも輝けるとしたらどんなクルマか?というと、軽量だけが取り柄ですから単純に軽いクルマということになります。そしてこのBRZ-Rもハイパワーの割に、BMW116iよりも100kg軽いということを考えると、いろいろ手段はあるのでは?という希望的憶測もできます。

  そもそもどんなエンジンを持ってきても、スポーツカーが「完全なる機動性」という理想を追求する限りはどうしても不満が出てきてしまうもので、スズキの軽エンジンを載せているケータハム・セブン160のように、軽量化を強引に押し進めることが「ベスト・ソリューション」と言えるかもしれません(まあエンジンなんて何でもいい)。RCZ-Rが達成した1340kgと270psというバランスはポルシェのボクスター/ケイマンに比肩します。「ホットハッチ」が本分であるプジョーがポルシェに張り合うのだから「挑戦」だか「下剋上」と言うべきでしょうが、堂々たるスタイリングは流石の一言で、特にリアデザインの艶やかさは、後から出て来た現行ポルシェ911の「991」にも大きな影響を与えたようです。

  フェイスリフトが一度あったとはいえ、デザインが風化しないのも素晴らしいです。もともとも設計はアウディTTのコンセプトをパクったのは間違いないでしょうが、TTをさらに超えていくほどのインパクトが過剰気味であったデザインがだんだんと見慣れてきて、いまではいい雰囲気に収まっている気がします。発売当初の印象はフロントマスクが派手過ぎて全く響きませんでしたし、どう考えても「リトラクタブル・ハードトップ」か「ミッドシップ」を連想するデザインなのに、ただの「FFクーペ」だとという「なんちゃって感」が満載なエクステリアも好きになれませんでした。

  内装も当初はベーズ車のプジョー308とほとんど同じでがっかり・・・なんて言われていました。しかしここ数年ではフィアット500やBMWミニが競うようにインパネデザインを改良するのを見て、プジョーも慌てて208のインパネにイルミネーションを取り入れるなど、内装なんて低価格車が拘るものに過ぎなくなっています。欧州のトレンドと言ってしまえばそれまでなんですが、スポーツカーの内装をデコるなんてトレンドはとっくに終わりを告げていて、いまでは華飾をやればやるほど、日産ジュークやスズキハスラーといった小型車の定番となっているカラフルなインパネを連想しますから、スポーツカーのイメージを高めるためとはいえ安易な内装デザインは命取りになる時代になっています。
  
  それでもエクステリアにおけるプジョーデザインの先進性とオリジナリティの「輝き」は、ここで挙げた「ささいな」疑念を全て埋め合わせるに十分なほどで、このクルマを選んだオーナーに「間違いではない!」とくれるだけの価値を証明してくれます。このクルマの小さな荷室に三脚を積んで、夜景の撮影に「出撃」するといった贅沢な使い方をしてみたいなと思う次第です。
  

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2014年6月24日火曜日

日産GT-R 「もっとも身近なスーパーカーなんだけど・・・」

  BMWのM3/M4が新しくなって(F30系)登場しました。なんとかサラリーマンにも手が届く、人気ブランドのハイパフォーマンスマシンということで、自動車各誌が競うように報じていて何やら楽しげでもあります。ちょっと気になるのが、どの雑誌にも「ブルーM3」と「イエローM4」が出ていてなんだかイメージが膨らんでいかないんですよね。とりあえずこの2台しか世の中にはないのかな?と思いyoutubeを検索すると「ホワイトM3」もありました。

  さて今ではこういう事を書いても、ムキになって怒るBMWファンはいないと思いますが、新型M3/M4は「日本の2大メーカーをリスペクトしたクルマ」と言えるんじゃないでしょうか。トヨタとBMWの提携によってプリウスで使われるような軽量化技術をBMWがゲットして、その代わりにトヨタにBMWのディーゼルエンジンを提供するという「物々交換」が成立しました。その他にもBMWがトヨタにOEMでスペシャルティカーを供給するという契約もあるようですが、トヨタとしては「目の上のたんこぶ」である日産GT-Rを超えるDセグスポーツをBMWに開発させて、グローバルではホンダ以上に厄介な存在になってきた日産ルノーに打撃を与える狙いがあるのかもしれません。

  トヨタのバックアップを得たBMWは、自慢の直6エンジンに「日産方式」のツインターボを採用し、ベースは3Lながらもその性能をデビュー当初の日産GT-Rに近い出力まで引き上げてきました。単純な出力という意味ではポルシェ・パナメーラ4Sのダウンサイジングされた3LのV6ツインターボも420ps出ていて、従来の4.8LのV8NAよりも出力アップしているみたいですが、BMWの発表によるとこのVWグループのV6ツインターボよりも、さらにNAのように高回転で使えるスポーツエンジンになっているようです。偶然か必然かわかりませんが、ポルシェとBMWという日本でも影響力のあるブランドがほぼ同時に新型の6気筒ツインターボエンジンを作ってきました。

  BMWとポルシェのトップグレードのクルマが、改めて新型のターボエンジンを使うようになったことで、例のごとく評論家のみなさまは、これから出てくるレクサスのV8NAを積む「F」を批判するんだろうな・・・という嫌な予感がしますね。また性懲りも無く、「ポルシェやBMWはとっくにターボ化に舵を切ったのに、日本はまだまだ・・・」とか言うんだろうな。かつてホンダが幻の2代目NSXとして、ミッドシップのV10という「和製ランボルギーニ」を作ろうとしましたが、市販化には至りませんでした。そこで開発費を抑えたV6ターボで世界の超一流のスーパーカーを凌駕してしまったのが、日産GT-Rだったと思うのですが、それなのにそんな事実は「無かった」かのように無視して、「日本って本当に遅れてるよね!」とか仰られている記事が今月号の某雑誌にも載ってました・・・。

  2014年になって相次いでポルシェやBMWから6気筒ツインターボが出てくるのは、2007年からGT-Rが世界に大きなインパクトを与えてきたからなわけで、今発売されてるのは「第二世代」。いやGT-Rの設計思想が、それ以前のトヨタと日産による「直6ターボ」対決に大きく影響を受けているから、現在のBMW/ポルシェは「第三世代」になるんだと思います。「スープラ」「アリストターボ」vs「スカイラインGT-R」「セド/グロターボ」から綿々と受け継がれている高性能エンジンの系譜に、BMWやポルシェを巻き込んだ!というのは日本車ファンとしてとても誇らしいです。

  さて「第二世代」を担う一匹狼のGT-Rは今も現役バリバリです。デビュー当初からさらに熟成が進み、価格も200万円も上昇してしまいました。それでもパナメーラ4Sよりも断然に安いですし、BMW M3/M4と同じくらいの価格です。400ps台の両者に対して、現行GT-Rは550psまで引き上げられていて、やはり当初の設計思想の如くランボルギーニ・ガヤルドを射程に入れての開発が進んでいるようです。

  ランボルギーニもGT-Rも設計思想のベースにあるのが、欧州セレブの「貴族趣味」なモータースポーツ需要なので、日本のクルマ文化とは相容れないどこか異質な要素を感じてしまいます。「だからいいんだ!」という人もいるかもしれませんが、まったくサーキットにいかないのに550ps出せるユニットを積んでる意味があるのか?と言われると、これは「骨董品」趣味と変わらないのでは?という気がしてきます。

  BMWやポルシェが目指した400ps台の「第三世代」は、世界の多くの地域で愛される高性能車を目指す!という、「無国籍」で「フラット」な時代を象徴するような設計になっているように思います。「第二世代」のGT-Rも時代の流れに沿ってアップデートした「第三世代」仕様をそろそろ考えてもいい時期かもしれません。すでに日産はスカイラインをベースにした「オールージュ」という高性能セダンを市販する計画を見せています。これは4ドア車なので、サーキット使用には向かないと思われるので、現行GT-Rよりもいくらかデチューンしてラーニングコストや本体価格を抑えた「街乗り高性能車」になって登場してくれるのを期待したいです。


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2014年6月18日水曜日

メルセデスE63AMG・S・4MATIC 「都心に蠢くブラック・シャーク」

  「クルーズカー」や「GTカー」をあれこれ考えようという主旨でこのブログを始めたのですが、なんだか私自身のマインドが変化したこともあるのでしょうが、「別に高級車を田舎道で走らせてもツマンナくないか?」というちょっとした「自己矛盾」に陥ってしまいました・・・。とても当たり前のことなんですが、人口が多い地域では道路が整備されていて、ドライブには快適と思いきや昼間は渋滞で気持ちよくなんて走れないですし、結局は整備された道路は住宅地にamazonなどの拡大するネット通販の品物を届けるクルマが、1車線塞いで停まってたりすることがだんだんと多くなってきたように感じます。

  それなら人があまり住んでいない方へ行けば良いわけですが、需要がない道路というのは荒れ放題だったりして、夏は車体に傷がつきそうなほどに草生い茂っていて、冬は冠雪&凍結で大きなリスクを抱えながら走らなければいけません。もちろんこんな道を好き好んで走る人は多くないですから、いつ行ってもガラガラでその点では大満足なんですけど、さすがにこんなルートをジャガーFタイプで走ったら、いろいろ神経をすり減らしてしまいそうだな・・・、だったらスズキのジムニーで良くない?って思ってしまうわけです。しかしジムニーでドライブし始めたら、いよいよ「ぼっちドライブ」になっちゃいそうでそれも嫌ですね・・・。

  とにかく日本では(東京近郊では)ゆったりとジャガーを走らせるような、理想的なドライブロードなんて幻想に過ぎない!ということに気がついてしまったわけです。日本でカーライフを営む上で、投資効果が高いクルマというのは結局のところ、昼間のフォーマル・リムジンと深夜のプライベート・GTサルーンだけなんだなと・・・。よってブログ名も「フォーマル・リムジン or プライベートGTサルーン」に変えなきゃだめですね。ということで今後はここに主眼を置いて想いのたけを書いていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

  さて今回は、最近気になって仕方がない「E63AMG・S・4MATIC」を語りたいと思います。なんでこのクルマに夢中になっているかというと、いろいろな世界観が複合的に絡みあって、このクルマ1台の中にかつて憧れてきたいろいろな名車の要素が入っているように感じるからです。クルマにいくらか興味があった大学の頃の憧れはBMWのE39M5でした。あの頃のBMWのデザイン、特にE39はとても良かったように思います、実に感性に響きました。その後のモデルはなんだか「難解」になってしまって残念でしたが・・・素人な意見ですがバングルさんはホンダをパクリ過ぎた?のが大失敗な気がします。

  E395シリーズのあと、印象に残るデザインの高級サルーンは3代目アウディA6と5代目マセラティ・クワトロポルテが、先代のイメージを大きく打ち破って素晴らしかったですが、この3台ってなんだかんだで全て日本人デザイナーの手によるものなんですよね。結局は自分の感性は日本人特有のフィルターから逃れられないのかな?なんて不自由すぎる自分の能力に失望感もあったりするのですが、やはり新型コルベット(C7)を見てデザインに違和感を感じるなと思ったら、韓国人デザイナーが起用されているのが後からわかってなるほど!と納得したりしてます。

  ちょっと横道それましたが、「E63AMG」というグレードが高性能セダンの先駆的存在であるM5にインスパイアされているという、性能面でのデジャブ感もありますが、W212系Eクラスのどことなく日本車調のルックスもなんだか親しみが湧いてきます。メルセデスという絶壁の高級感がだいぶ削ぎ落されて、Sクラスとの格差が果てしなく広がったとして、世間ではなにかと評判が悪いようですが、クラウンの等身大のライバルみたいな佇まいには親近感すらあります。ベースモデルのEクラスはカタログ価格をみるととても「親近感」は抱けないですけど、最近では底辺グレードを中心にバナナの叩き売り状態になっているとか・・・。

  先代クラウンみたいなデザインのセダンボディにV8ターボを押し込んだスポーツカーって聞くとなんだかワクワクしませんか? マジェスタの方向性を完全にスポーティに振ったみたいなクルマです。先代のマジェスタにもかなりの憧れがあって、V8廃止&ロイヤルと同じフェイスで、現行には惹かれる部分が少なく寂しく思っていたところだったので、「E63AMG」はそのイメージも上手く拾っているなと感じます。

  そして極めつけは、加速性能で日産GT-Rに迫るという点でしょうか。一度はGT-Rを所有してみたいなと思いますが、E63AMGならば夜の高速道路をGT-Rとほぼ同じテンションで楽しめてしまいます。AWDなので当然といえば当然ですが、メルセデスの高性能ブランドイメージを牽引する「SLS AMG」よりも優れた加速性能を持っているとメルセデスが公式に発表しているくらいですから、「E63AMG・S・4MATIC」はある意味ではメルセデスのフラッグシップサルーンと言ってもいい存在です。あのメルセデスの頂点に立つグレードのクルマならば多少は高くても所有する満足度は自然に高まります。乗り出しで1900万円くらいになるのでしょうか・・・むむむ(やっぱ無理だ・・・)。


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2014年6月10日火曜日

BMW・VISION FUTURE LUXURY 「BMWもREBORNする?」

  BMWのラインナップが増え過ぎて、マニアでもない限り全グレードなんて把握できないくらいになってしまいました。それでもグローバル販売の「重心」は今も尚、多くの市場で売れている3シリーズや5シリーズが担っていて収益の柱であることは変わっていないようです。しかし時代ともに市場のトレンドは変化し、かつてBMWがメルセデスから奪い取ったD/Eセグプレミアムカーのシェアを、今度はアウディや(比較的)低価格で高品質を掲げるレクサス・インフィニティそれにヒュンダイの上級グレードなどに脅かされつつあり、BMWも年々商売がやりにくいと感じてきているようです。

  BMWは1990年代に栄華を極め、2000年代中頃までは好調を維持していましたが、2004年にドイツ以外の地域(米国サウスカロライナ)での生産が始まり、廉価グレードのBMWが世界にバラまかれ年産100万台を超えたあたりから変調が始まりました。現在では南アフリカ・インド・中国の新興国3拠点を中心に生産能力を増強しつつあり、グローバルで年産200万台までの拡大を目指しているといわれていますが、先進国を中心に販売が伸び悩んでいて150万台前後で足踏みが続いています。

  専門家の分析によると、BMWは従来は高性能セダンに特化した技術開発をコアコンピタンスとして、独自の地位を築いてきましたが、その一方で量産化へのコスト管理や小型車開発技術は苦手としていました。それでも経営陣は業界トップクラスの収益体制、具体的に数字を挙げると総資本利益率(ROI)で26%だそうですが、に固執しつつも生産台数を倍増させるという無謀なプランを強硬に推し進めたため、徐々に機能不全に陥ってきているといわれています。ちょっと悪口を書くと、トヨタとはとても比べ物にならないお粗末なコスト管理の元で作られた3シリーズが、はるばる南アフリカから日本まで運ばれてきて、販売コスト&利益を賦課して最終的に450万円とかいう本体価格で売られています。トヨタは愛知県で3シリーズよりも高品質の部品を使って、同じようなクルマを作って約250万円で売っているのです。BMW離れは必然の成り行きと言えます。

  先進国のユーザーがBMWに求めるものは、ドイツで作っていて高品質で先端技術を盛り込んだ、唯一無二の高性能セダンだったりするわけですが、その期待にある程度は応えることができるであろう「BMWらしい」モデルを日本で買おうとすると、もっともお手頃なものでも本体価格がなんと902万円!の「535i」というグレードになります。さすがはROI 26%!といったところでしょうか・・・。とりあえず「一般論」として日本で新車のBMWを買うなら1000万円以上のものじゃないと「満足」はできないと思います。失礼千万ですが、本来のBMWの「ユーザー像」に適った人々の意見を要約すると、日本の津々浦々で見られる1000万円しないモデルを満足そうに乗っている人は、「ブランドの本質」を気にしない、あるいは分らない人達と見做しているそうです・・・恐ろしや。

  ちなみに日本で買うと乗り出しで1000万円を超えてしまう「535i」はアメリカではこれよりも相当にやすい55,100米ドル(約550万円)で買えるのですが、それでも10,000米ドル程度安い日本や韓国メーカーのライバル車に徐々にシェアを奪われているようです。まあ世界ではそんな評価に甘んじているクルマに1000万円も払うならば、とある著名なアメリカ人ジャーナリストが「自動車史上で最も完璧なクルマ」と呼んだレクサスLSを買った方が良さそうだなと思うわけです。

  そんな曲がり角を迎えていたBMWが、いよいよイメージを一新するような次世代モデルを次々と発表しています。今やBMWジャパンが最も期待しているといっても良いモデルが小型EVの「i3」です。このクルマをBMWが手掛ける必然性があったのか?という疑問はとりあえず置いておいて、デザインを軽視して普及に失敗した日産リーフや三菱Iミーブといった国産EVとは全く別次元の「ワクワク感」を素直に評価したいと思います。いよいよBMWにも1000万円以下(半額の500万円ほど)でも買う価値のあるクルマが出てきました。

  アクセラを押しのけてWCOTYデザイン賞を見事に獲得した「i3」とほぼ同時に発表された「i8」もとても興味深いモデルです。デザインが素晴らしいだけでなく、BMWらしい4座の「グランドツアラー」で得意なセダンではなく、ポルシェ911のようなタイプのクルマになっていて、2000万円という価格を忘れてあれこれと使い方が想像できます。3シリーズなみのサイズがあるので、スポーツカーにありがちな窮屈さは軽減されてそうです。もしこれが1000万円前後で発売されていたら、かなりのバックオーダーを抱えて「3年待ち」とかいう事態になりそうな気がします(だから2000万円なのか・・・)。

  そしてこの2台のEVとともにBMWの新たなデザインコンセプトを示しているのが、北京モーターショーで公開された「VISION FUTURE LUXURY」という7シリーズに変わるフラッグシップサルーンの原型と思われるショーカーです。7シリーズでは、メルセデス・マセラティ・レクサスに対抗するだけの魅力が足りないのは誰の目にも明らかだったわけですが、その3ブランドに真っ向から挑む「ラグジュアリーカー」として、局面打開を図る意図がよくわかります。特に素晴らしいのはエクステリアで、現行のSクラス・クワトロポルテ・LSの3台は外装がやや保守的で革新性に乏しいのが「玉にきず」だったりするわけですが、BMWがこれをそのまま製品化するならば、デザイン面で優位に立てそうな実力を感じます。

  内装はライバル3車と甲乙付け難い高品質なもので、去年FMCで話題になったSクラスの内装をもキャッチアップした先進性と世界観を持っているのがわかります。シフトレバーが存在感を発揮しているのがBMWらいしなと思います(さすがにサイドブレーキは無いですが)。これまで敢えて7シリーズを選んできた人の多くは、ライバルモデルには希薄な「ドライバーズカー」としての価値を評価してきたと思いますが、その伝統をしっかり受け継いでいるところに、ライバルブランドの模倣ではない!という気高いプライドを感じます。


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2014年5月29日木曜日

BMW M4 「F30系の一つの落とし所」

  BMW4シリーズは昨年の中頃に発表されてまだ1年も経っていないので、クルマのキャラクターもよく解らない部分もあるのですが、1つだけハッキリしていることは、「BMWのスピード感覚は素晴らしい!」ということでしょうか。スピードといっても加速や最高速が抜きん出ているという話ではなくて、矢継ぎ早に派生モデルを増やして「マルチ」なグレード展開に持ち込んでいるBMWの経営のスピード感覚が素晴らしいということです。

  トヨタや日産が数年かかって「コンバーティブル」をやっと出すのに対して、クーペ発売とほぼ同時に「コンバーチブル」が完成し、M社とアルピナ社から高性能版がそれぞれ発売され、そしてすでにグランクーペも完成しているわけですから、BMWファンならずとも、「華やかだな」と何やら惹き付けられる部分はあると思います。何より感心するのが、日本メーカーにはなかなか見られないプラス思考で、ベース車のF30セダンがBMWの最量販車種に相応しい活躍ができていないという(若干の)逆風の中で、ここまで強気にモデルを「乱発」する決断力は間違いなく世界ナンバー1でしょう。ホンダにもこれくらいの思い切りの良さがあれば・・・。

  さて4シリーズですが、ベース車のセダンが走りや内装の水準から「500万円のマークX」というやや不名誉な評価をされたことで、当初からあまり期待値が高くなく、評論家筋のコメントも「BMWを気楽に乗りたいならいいんじゃない!?」くらいのものが多いように感じます。F30セダンは新型の軽量シャシー(L7)採用に加えて、ランフラットタイヤを装備した上で一定以上の乗り心地を追求しようとした結果、サス剛性などBMW本来のアイデンティティに関わる部分に大きく手を入れてしまったため、特に輸入車大好きの評論家からの批判が絶えないですが、いくらBMWとはいえ新しいことにチャレンジすればそれなりに拙さを露呈してしまうのも仕方ないことでしょう。

  F30セダンも年次改良によって、初期の絶望的なまでの「裏切り」はなくなったようですが、それでもコスト削減を大前提としなければいけない最量販車の悲しい運命からは脱却できていないです。もはや「BMWではない!」とまで言わせた安定感の無さは、4シリーズのクーペボディでは全高が低く、重心が下がった結果ある程度は改善されています。しかしロール幅の絶対値が減ったことで、当たり前ですが入力による衝撃はより大きなものになっていて、セダンよりも乗り心地は悪くなっている部分もあります。

  やはり「限界が低い」設計の範囲内では、どう足掻いても納得いくパフォーマンスは出せない・・・という想いが、評論家筋の「見切った」ようなコメントにつながってしまうようですが、こんなクルマを、例えば435iは乗り出しでおよそ800万円ですが、売ってしまうBMWジャパンってのもまたスゴいインポーターですね・・・。そんな4シリーズにも先代の3シリーズクーペから変わって良くなった点もいろいろあります。一番のポイントは、何となく手狭で貧乏臭かった3シリーズクーペと違って、後席の空間にも配慮されたレイアウトです。クラスが変わるほどの拡大というわけではないのですが、「スポーティ」で「一人乗り」のイメージが強かった先代から、「ラグジュアリー」な「デート車」へと大きな転換を果たしています。

  以前なら無理して6シリーズの中古車を選んでいた人の中でも、4シリーズならば「許容範囲」という意見はあるでしょうし、4シリーズ設置の最大の狙いは「ラグジュアリー・クーペ」ユーザーの関心を集めることにあります。しかし6シリーズとは別の簡易的なシャシーを使った4シリーズではコアな「自動車好き」には簡単には訴求できません。おまけにベース車が「BMWらしくない」という烙印が押されてしまっていては、やや絶望的なように思えます。ただし6シリーズにしても車重2トンを誇る巨漢で、そのスタイリングに惚れて盲目的に購入に走る人もいるようですが、「自動車好き」が絶賛するタイプのドライビングカーというわけではないんですよね・・・。

  むしろ「ドライビング」と「ラグジュアリー感」の両方を楽しめる4シリーズのサイズが、シャシーやら設計やらの話を抜きにすると理想的と言えます(もちろん好みの問題ですが、一般論として・・・)。ということでBMWとしては是が非でも4シリーズに世間の注目が集まるようなグレードを設定したい!というのが本音だと思われます。ディーゼルやコンバーチブル、グランクーペなどいろいろと「刺さる」ポイントを投げかけて、数打ちゃ当たる作戦?といった感じでしょうか。

  そんなバラエティ豊かな4シリーズの決定版と言えるグレードがやはり「M4」なんだと思います。たしかに価格は仰天の1000万円越えなんですが、4シリーズ唯一のMTモデルを設置するなど話題を振りまきつつありますが、やはりF30系を悩ませるランフラットタイヤを使わないという選択が「M4」における最大のポイントかもしれません。同様にランフラットを使わないM235iも断然に乗り心地が良いようで、M4も期待ができます。直6ツインターボの新開発ユニットに軽量CFRPルーフの採用など、他にも「刺さる」点はいっぱいあって、いよいよ4シリーズに本命が登場したと言えるかもしれません。
  

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2014年5月20日火曜日

マツダ・アテンザ 「スカイラインとVIPカーの隙間」

  自動車雑誌を開くと、最近では小さなモデルばかりが多いことに気がつきます。読んでいる世代の多くが、暇な引退世代だったりするようで、ライターの皆様の文章もまさに高齢者ユーザーをターゲットにしたものが多い気がします。BMW1シリーズ、メルセデスAクラス、VWゴルフ、アルファロメオジュリエッタといずれも、「日本車と同じように手軽に乗れます!」みたいなことが強調されている気がします。「ターボエンジンは低速トルクがあって街乗りでも乗り易い」などと言われていますが、そんなことを強調されても全く欲しいとは思わないのですが・・・。

  日本市場全体が高齢者中心だから仕方のないことですが、もっと乗っていて気分がいい「優雅な」クルーズカーが欲しいなと思っているので、Cセグ以下の「スモール」や「ミニ」の記事は飛ばして読んでしまいます。そうすると「Car and Driver(日本版)」などは、ほとんどの頁を飛ばしたあげく、「月間販売台数」と「オーナーズクラブ紹介」を過ぎ「定点観測」に辿り着きます。この頁は東京の青山で通るクルマを観測するというなかなか面白い企画なのですが、そこに掲載されるアルファ166とかを見て、「いいなあ〜」と思ってしまいますね。

  仕事の帰り道に日産の新型スカイラインを見かけました。前々から思っていたのですが、このクルマはどうも「貧相」でダメですね。事前の期待が大きすぎたのもあるのですが、どうも高級サルーンとしてグッとくるものが無いのです。最も気に入らないのが側面窓がむやみやたらと広いことです。やはり高級車たるものはキャデラックCTSのように高くて特徴があるショルダーラインこそが命です。レクサスISも先代からデザインが飛躍的に進化しましたが、最も高級車然な雰囲気を与えているのが、少々過剰気味とも言えるショルダーラインです。

  スカイラインは車幅の割に小さく見えるのは「なで肩」なショルダーラインによるところが大きい気がします。車高を低く見せる4ドアクーペ風なアプローチとも言えますが、結果としてなんだかシルビアを少し大きくしたイメージに収束してしまい、高級感が損なわれています。デビュー時には随分と話題になったメルセデスCLSやCLAもまた「なで肩」デザインなので、個性的なスタイリングではありますが、どうも重みがなくやはりやや貧相に見えます。

  ただし「なで肩」は悪いことばかりではありません。かつてマークⅡの兄弟車として発売されていた、トヨタ・ヴェロッサというセダンも全体的に軽さを帯びた「なで肩」デザインだった為に、当時のマークⅡ需要を担っていた「VIPカー」愛好家から嫌われ、販売不振のまますぐにモデル廃止に追い込まれました。その希少なシルエットは皮肉にも、現在では同時期のマークⅡとは違って古さを感じさせない良さがあったりします。それ以上に重要なのは「なで肩」はVIPカー愛好家から敬遠されるという点です。

  VIPカーとは日産のシーマ、グロリア、セドリック、トヨタのセルシオ、マジェスタ、クラウン、マークⅡなどの中上級セダンをベースにした改造車を指します。暴走族やローリング族の御用達車種として親しまれた結果、やや反社会的なイメージが強くなり、日産もトヨタも企業イメージを守るために、これらのモデルを廃止したり、大幅に値上げするなどしてシーンの幕引きを図っていますが、ピーク時はクラウンもマークⅡも月販2万台を超えていたこともあり、まだまだタマ数が多いようで街中でもよく見かけます。最近ではいよいよ発売から8年が経過したレクサスLSなどこれに加わっているようです。

  昔からスカイラインはこれらVIPカーとは一線を画してきましたが、新型スカイラインもまた高級化が進んだと言われつつも、伝統のポリシーをある一面ではしっかりと守っているのだなと気づかされます。「VIPカーと思われたくない!」そういう意味では新型スカイラインを敢えて選ぶ意味はあると思います。ボディがまだまだ小振りなレクサスISに関しても同じことが言えますが、どちらにせよ「ラグジュアリーでプライベート感がある」クルーズカーのイメージが足りないですね。どうも2台とも冒頭で述べたような「高齢者シフト」をメーカーが意図しているように感じます。

  「VIPカー」か?「高齢者向け」か?という絶望的な選択をユーザーに強いている限りは本格的なセダン人気はやって来ないでしょう。そんな状況の中から現れ、話題をさらっていったのが、マツダ・アテンザだと言えます。先代のアテンザはスカイラインのようなやや小振りでスポーティさを売りにした、セダン/ワゴン/ハッチバックの3タイプあるDセグ車でしたが、現行のアテンザは「VIPカー」に仲間入りしない程度に立派で、「スカイライン」のような貧相さを排除した高級感溢れるデザインを取り入れたセダンが大きくイメージを牽引しています。そして一応、派生車種といった立場でホイールベースまで違うワゴンも設定されています。

  マツダのデザイナーがセダンの魅力を引き出すために、「非VIPカー」で「非スカイライン」という考えを持っていたかどうかはわかりません。しかし実際に国産・輸入を問わず現行モデルの3BOXカーを選ぶとしたときに、これまでは無意識にアウディA6やBMW5に引っ張られてしまっていた人々(実際にこのクラスの輸入車シェアはかなり高い)にとって、国産にも選択肢が出来たと感じられる状況へと変わってきたように思います。このアテンザが切り開いた道を辿って、今後はレガシィ、レジェンド、フーガがさらに趣向を凝らして登場してくれば、「セダンが面白い」時代がやってくる予感がします。

  
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2014年5月10日土曜日

シトロエンDS4 「ベストデザイン オブ CセグHB」

  日曜日の中央自動車道・石川SA。まだ朝6時だけども、ここのラーメンは美味しいから空いている時間に寄る時は食べておきたくなる。東名&新東名のSAはどこも「味がしない」「干し肉&干し野菜」の食べたことを後悔するレベルですが、中央道ではそういう粗悪さがあまり見られない。そもそもラーメンの旨さなんて千差万別なので、「日本一旨い!」とか短絡的なことは言いませんけど、早朝でも美味しく完食できるという「普通さ」がSAの食事ではなかなか得られません。

  国立・府中ICから中央道に乗って5分足らずでもう休憩。しかも「朝からラーメン!?」と怪訝な表情の彼女を連れて駐車場を歩いていると、2人同時に同じクルマに眼が釘付け。視線の先に停まっていたのが白いボディにシルバーのラインを輝かせた「シトロエンDS4」!これはなかなか実車を見る機会が少ないクルマの1つです。街で見かけるシトロエン車はC3とDS3のBセグの2台が断然に多いです。理由は単純明白でこの2台が趣味のクルマとして非常に完成度が高い!といってしまえばそれまでなんですけど、「コンパクト高級車」というコンセプトを見事にクリアしている希有なモデルとして、弱小ブランドのクルマながら十分に存在感を発揮できています。

  C3/ DS3よりも一回り大きいCセグHBの「DS4」は、やはりメルセデスやBMWまで参戦してくるクラスになるので、ある程度の苦戦は致しかたないところです。しかもアルファロメオ・ジュリエッタと並んで、ベースグレードで単純に比較すると、ゴルフや1シリーズ、Aクラスといった有名どころよりも高い価格設定ですから、結局のところ相当なシトロエン贔屓の人しか購入しようと思わないわけです。このクルマと共通設計のプジョー308も販売は低迷していて、「カブリオレ」「リトラクタブルハードトップ」といった個性を求めるユーザーには愛されていますが、今後は日本での商売はいろいろ難しそうです。

  それでもやはり「スペック表に載らない個性」ってのがあるんですよね!いや〜恐れ入りましたこの「シトロエンDS4」は文句なしにカッコイイです! 「マツダ・アクセラ」が一念発起してゴルフ・1シリーズ・Aクラスをまとめて負かしに行きましたが、やはり世界は広いです・・・上には上がいるもんですね。マツダ視点での話で恐縮ですが、マツダデザインの真価は「サイドシルエットのバランスの良さ」にあって、そこから回り込んだフロントやリアの造形とシルエット全体の整合性もドイツ車全般を見下すことも出来るほどに突き抜けたセンスの良さが光ります。しかしシトロエンDS4も360度あらゆる視点において隙がないです。

  さらに言うならば、マツダが「鼓動」デザインに目覚めるよりも早く「デザインの時代」の到来を告げたのがシトロエンの「DSライン」で、マツダの現在の方針は完全にこれの「後追い」と言えます。シトロエンのデザインも「DSライン」が出来る前をみれば、極めて平凡なものだったりするのですが、いざフランスのブランドが本気でカッコいいデザインを作ってくると、「シトロエンってのは抜群にセンスがいい!」みたいなことを調子良く言って叫んでしまいます・・・日本人のコンプレックスは悲しい限りです。

  シトロエンは「ハイドロサス」のフラッグシップC5以外は全て、トーションビームです。ゴルフ・1シリーズ・Aクラスのユーザーからしてみれば、高級車=「マルチリンク」であることがポイントだったりするのでしょうけど、最近のトレンドである低燃費化の切り札として、あらゆる部品の「軽量化」の中でサスペンションをより簡素なものに変える動きもあります。軽量化か?安定性か?の二者択一といったところでしょうか。

  ただ現実問題として「独立担荷式」(マルチリンクなど)を信奉しているドイツ車&マツダ&フォードがそのアドバンテージをどこまで使えているかは非常に微妙なところで、この前もある評論家がフィエスタ(車軸式)はメルセデスCクラスより乗り心地が良いと強調していた。この「下剋上」現象が起こっているのは、今が欧州車にとっては設計面で大きな変化を必要とする過渡期であることによるようです。

  近年では250km/hといったハードな走行条件を意識しなくなったため、ポルシェやガヤルドのようなスポーツカー並みのサス剛性を強調した設計から開放され、車重があるクルマの方がバンプしないから乗り心地がいいという時代でも無くなったってことです。車体を軽い小型車の簡易的サスに付随するバンプストッパーの性能・品質が向上して「逆転現象」が起こったわけです。このバンプストッパーによる仕上げで欧州車らしからぬ乗り味で革新的な立場にいるのが何を隠そう「シトロエン」です。まあメルセデスも新型CクラスではSクラス用のサスを投入して「名誉挽回」を図ってきましたが・・・。

  もちろん「乗り味」の好き嫌いはあるでしょうけど、ゴルフやフォーカスの先を行くシーンを変えるかもしれない前衛的な姿勢を持ったクルマなので、まあいいんじゃないかという気がします。PSAの「右ハン&4AT」はカスと専らの評判でしたが、今回正規輸入はすべて右ハン!・・・しかし車幅がだいぶ広がったためにハンドルやペダルの位置といったネガはだいぶ抑えられたようです(ただし右ハンだけブレーキがVW日本仕様並みにカスらしいが・・・)。さらにC3/DS3は未だに4ATですが、C4/DS4はC5と同じ6ATに変更されていますので、こちらも「すぐ壊れるゴミ」というシロモノではなくなりました。

  だいぶ話が長くなってしまいましたが、スタイルはこのクラスでは「断トツでナンバー1」です。気になる点は「価格」と「ブレーキ」だけでしょうか。ただし悪いと言ってもゴルフと同程度ですよ!ってことです。なかなか今の日本のニーズに合ったクルマなんじゃないかと思うのですがいかがでしょうか。

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シトロエンDS4 動画

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2014年4月28日月曜日

マセラティ・"アルフィエリ"・コンセプト 「マセラティ版フェアレディZか?」

  マセラティと聞くと、私のような貧乏人にはなかなか縁が無いブランドなんですが、いよいよ「グランツーリズモ」の中古車が500万円を切る価格帯になってきて「無縁」とまではいかないくらいかな・・・。しかしイタリア車に限った話ではないかもしれないですが、欧州ブランドの塗装は酷いもので中古車の「色褪せ」っぷりはなかなか悲惨。街を行くクワトロポルテの「くたびれた」個体の多さにはビックリしますね。いくら憧れのブランドだからといっても、これじゃあ何処に行っても恥ずかしい限り。

  なので「マセラティ」に乗るならば、一世一代のお買い物覚悟で新車を買うべきと考えているのですが、本体価格が「1550万円!!!」に圧倒されてしまいます。「まあポルシェにしとこうかな・・・」なんて獲らぬ狸のなんとやら・・・な感想が思わず漏れますね。最近では「ギブリ」という、やや価格を抑えた戦略モデルの投入で、日本他の主要市場で軒並み前年比300~400%アップを記録しているマセラティは、この「アルフィエリ」という名の2ドアクーペと、さらに1000万円を切る価格帯のSUV(レヴァンテ)まで投入して、さらなるシェア拡大(ブランド安売り)を画策しているようです。

  この「アルフィエリ」開発のきっかけは、ジャガーFタイプの成功だと言われています。1000万円クラスのスーパースポーツ市場は、「ポルシェ911」「日産GT-R」「シボレーコルベット」による三つどもえのスピード対決が異次元過ぎて、これまでは新規参入はほぼ不可能と思われていました。しかしジャガーがあっさりと「突破」したことで、このスーパースポーツ3台の予想外の「顧客満足度の低さ」が露呈しました。0-100km/hのタイムが3秒台であることを、実際のユーザーはそれほど重要視してはいないようです。

  この事実はマセラティにとっては恰好のチャンスということで、その設計を見ると随所にジャガーFタイプを参考にしたと思われる箇所が見られます。「RエンジンRWD」の911と「FエンジンAWD」のGT-Rが基準となるクラスですから、とても「FエンジンRWD」に「4座」という高級車風情の「通常のマセラティ」の定番設計では勝負にならないということで、今回は「2+2座」を採用し限りなくホイールベース中央にドライバーシートを持ってくる設計になっています。911やGT-Rに対抗する「Fタイプ」「コルベット」は完全な2座ですから、ほぼそれに近い設計を踏襲しています。

  これにフェラーリ・カルフォルニアのFR向け8気筒エンジンが載れば、ガヤルドの設計を取込んだアウディR8みたいな立ち位置のクルマになります。詳細は発表されていませんが、全長を考えると「アルフィエリ」はマセラティの新設計ではなく、フェラーリカルフォルニアから基本設計を移植したものと考えられます。マセラティブランドだとしてもV8が載ればフェラーリに近い価格になるようですが、マセラティの主力エンジンはV6ターボへと移行しているので、こちらの搭載モデルならば1000万円以下に収まりジャガーFタイプと競合するようです。

  ジャガーFタイプは1000万円を下回る本体価格で、一般的なクルマ(大衆車・プレミアムカー)とはハッキリと一線を画した「スーパーカー」としてのシルエットを持っています。全長は同じ2ドアの「XK」(4780mm)と比較して300mmほど短くなっているのですが、クルマが持つ存在感は全くと言っていいほどに損なわれていません。「2シーター・マジック」と言うべきでしょうか、2座のクルマがやや珍しくなってきた現代では独特の「高級感」を再び持つようになってきたのかもしれません。ト◯タM◯-Sとかが街に溢れていた昔は、この手のクルマはだいぶ印象は安っぽかったのですが・・・。

  ジャガーに倣って、「グランツーリズモ」を400mmほど縮めた「アルフィエリ」もまた、エクステリアは完全に「特別なクルマ」を表現しています。コンセプトカーのボディが「シルバー」に塗装されているせいもあって、正面は「メルセデスSクラスクーペ」や新たに投入されるBMW8シリーズのプロトとされるモデルに近い印象ですが、側面からリアにかけてどこから見ても、その辺に溢れているレ◯サスやメル◯デスといった「自称:高級車」とはまったく違う磨き抜かれたディテールを誇っています。これで1000万円以下ならばFタイプ同様にお買い得と言えるのではないでしょうか?

  
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マセラティ・アルフィエリ・コンセプト」動画

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2014年4月21日月曜日

BMW M235i 「残念ながら次を待つべき」

  BMWがかなり意識してCMを仕立てていて、70年代の名車を引き合いに出していることからも、引退世代の人々に買ってもらいたいという意図が良くわかる。30~40代といった従来のBMWのターゲット層は今回は完全に置き去りにされている。中にはあのCMでBMWの本質に触れた気分になって買ってしまう若者もいるのかもしれないけど、まだ買うのは早いのかなという気がします。これからこのモデルはさらに良くなっていくのは確実ですから!

  以前に他のブログで「限りなくポルシェに近い!」なんて軽々しく言ってしまいましたが、あと100kgはシェイプアップしないとケイマンの代替モデルには成れないですね。RWDならばミッドシップの方がプロペラシャフトの分だけ確実に重量が稼げますし、この「M235i」のようなFRだとどうしても前方に搭載されるエンジンによって前後重量配分に偏りができてしまい、トラクションを確保するため(駆動輪に車重がかかるようにする)にもクルマ全体を重くしなければいけなくなります。これを抜本的に解決するには、BMWが新型で軽量化された直6エンジンを開発するしかない!となってしまうわけです。

  BMWや日産はセダンベースの改造スポーツモデルを主眼にしているので、ポルシェ(911、ボクスター、ケイマン)を相手にするならば、構造的なハンデキャップを抱えていることになります。VWグループのようにアウディはFFベースでポルシェはRRベースといったトラクション重視の設計はやはりとても説得力がありますし、メルセデスやレクサスのように「スポーティ」をFRで追求することは無益と判じるのも極めて合理的です。「FRだけど根性(技術)でカバーするぞ!」みたいなバカ全開の男臭さが、BMWや日産GT-Rの魅力だったりするのかもしれませんが・・・。

  BMWが最近発売したM3/M4は目一杯?の軽量化に取り組んでいて、400psオーバーのスペックで1500kg程度まで抑えることに成功しています。これでパワーウエイトレシオは従来モデルよりも大幅に向上していて、さすがにスーパースポーツの911GT3には及びませんが、RWDモデルの911カレラSと同水準にまで持ち込んでいます。BMWの執念を感じるM3/M4なんですが・・・いまいち盛り上がっていないのが残念です(価格かな?)。

  さてそんなM3/M4と比べてしまうと1550kgとややウエイトダウンが不十分な印象があるM235i。あれだけスポーティさをCMでアピールしておきながらも、乗り味重視のヘビーな設計にはBMWのしたたかさすら感じます。去年の半ばに報道された南アフリカのロスリンでラインオフしたプロトタイプは車重1350kg程度と報じられていましたが、フタを開けてみると全くコンセプトが変わってしまうほどの1550kgに落ち着きました。果たしてプロトにあった問題点とは何だったのか?考えられるのは2点で、1つは「静音性・乗り味がいまいちだった(ので防音材を追加した)」。もう1つはあまり想像したくないのですが、「軽量化のための素材が高コストなために仕様が変更された」です。

  どちらの理由にせよ新規設定された2シリーズクーペの最終的なコンセプトは、スポーティではなく、高級感ある乗り味に落ち着きました。BMWにおけるこのクルマのポジションを考えると「スポーティ」を連想してしまいますが、乗ってみてビックリの静粛性だったりするわけです。スポーツカーを心から渇望する人にとっては物足りなさがあるでしょうけど、これからBMWオーナーになる人にとっては「さすがはBMW!スポーティモデルでも高級感が隠し切れない!」という満足感につながるのかもしれません。実際にそういうクルマに満足する人が大多数というのも事実なんですが・・・。やっぱり次が見てみたい気がしますね!


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BMW2クーペ」CM動画

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2014年4月14日月曜日

ジャガーFタイプ 「越えられない壁」

  スーパーカーの線引き?というわけじゃないのですけど、「リアル」での会話で話題になったときに、どうしようもない違和感を感じることが・・・。スポーツカーといってもその中ではピンキリで「Fタイプ(1000万円)」「アヴェンタドール(4000万円)」「ヴェイロン(2億円)」の3台は全然別の次元のクルマなんだ!という前提がない人(普通の人ですが・・・)と話をするときは結構厄介だなと思います。とりあえず私のような貧乏人は「Fタイプ」には興味あるけど、「アヴェンタドール」「ヴェイロン」クラスには全く感心がないわけです。

  「この前ジャガーFタイプっていう新型スポーツカー見たんですけど、"存在感"が想像よりも断然にスゴくて!やっぱり音かな・・・」とか率直な感想を述べたりと、まああれこれ話した後で、最後にボソっと「やっぱスーパーカーといえばヴェイロン」みたいなこと言われると、思わず「え?」ってフリーズしちゃいそうになります。そして内心ではヴェイロンなんてコストと使用環境考えるとスーパーカーというより「飛べない自家用ジェット」じゃん! VWもそんなくだらないもの(失礼!)をつくる暇があったら、ホンダみたいに小型ジェット機でもつくればいいじゃん。

  「Fタイプ」も「ヴェイロン」もひとまとめに「スーパーカー」と分類するのが、ちょっとややこしいです。人によっては「Fタイプ」はただのスポーツカーだと主張されるかもしれませんが、日本車初のスーパーカーがホンダの初代NSXだとするならば、このFタイプもスーパーカーでいいと思います。そして実際に道でこれらのスーパーカーに出会うと、もう全てが違うことにガキみたいに興奮してしまいます。

  「マセラティ・グランツーリズモ」や「BMW6」を見ても「いいな〜」とは思いますが、スーパーカーを見た時の「心が震える」感覚とは、残念ながら全く異質で、あくまで「良いデザインの高級車」でしかありません(良いデザインのクラウン?くらい)。FRに4座というありきたりな「高級車設計」であることと、ブランドの他のモデルとデザインを共通としている点がプレミアムブランドの「高級乗用車」であり、その既成概念を全て打破した段階のクルマに「スーパーカー」のオーラが宿るのかなという気がします。

  先日、某高級住宅街の路上でジャガーFタイプに遭遇しました。時速30km程度の低速で狭い路地を突き進んでいましたが、やはり別格ですね。この街区にはパナメーラが青空駐車されていたり、路地に面する住宅前の駐車場の半数以上がドイツ車によって占められているような場所なんですが、Fタイプの「破壊力」は完全にそれらの上に位置しています。その光景を見てこのクルマの隠された「価値」はこれだ!と気がつきました。

  最近ではメルセデスやBMWの価値がかなり暴落していて、輸入車大好きなライター達もこの状況を機敏に感じ取っているようで、昔と比べてEクラスや5シリーズを絶賛するような記事は見られなくなりました。誤解を恐れずいうならば、Eや5が例えばマツダアテンザと比べて良いクルマだと確信させてくれる決め手がなくなってしまったことが大きいのかも。アテンザだけではなく、プレミアムセダンを喰ってしまうような好デザインのクルマは着実に増えてきています。

  もはやAMGやRSといった高性能モデルとレクサスLSやメルセデスSのようなクルマじゃないと「プレミアムブランド」の価値を十分に表現できなくなってきたわけです。カッコ悪いしエンジンは4気筒ターボだし、「メルセデスって何?」「BMWって何?」・・・まあそういう時代です。そんな中途半端なターボエンジン載せるくらいなら、トヨタに頭下げて、プリウス用とカムリ用のHVシステムを貰い受けて1〜7シリーズとA~Sクラスまでベースグレードに使えばいいと思ってしまうくらいです。

  閑静な高級住宅地の近くには必ずといっていいほど「反社会勢力(ヤクザ)」が存在したりしているわけで、Fタイプを見かけた街でも黒塗りのLSやマジェスタが列を成して狭い路地を走ることがあります。そんな場所でLSやSクラスに乗りたいと思いますか? なのでヤクザに思われたくないけど、国産車には無い魅力を備えたクルマに乗りたいという人には「Fタイプ」というのはかなり理想的な選択じゃないでしょうか?


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「ジャガーFタイプの試乗動画」

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2014年4月10日木曜日

BMW M5 「過去のクルマか・・・?」

  「BMWを買うなら絶対にこれ!」みたいなことを言う生意気で世間知らずなアホが10年前にはありふれていたけども、最近じゃ成人式のアンケートで乗りたいクルマの上位にランクインするのは「M5」じゃなくて「BMW(?)」らしい。確かに今どき「現行M5」を大都市の中心部以外で乗り回している人を見かけると、ほぼ例外なく「穏やかな顔」で「眼光は鋭い」。推定される職業は「不動産経営」「貸金業」「水商売」・・・。

  一方で「現行3シリーズ」に乗っている人は「眼が死んでる」。そして推定される職業も「不動産経営(市役所勤務の公務員)」「貸金業(農協勤務)」「水商売(学校の先生)」くらいですかね。「イメージで語るな!」って怒られそうですけど、3シリーズ乗って老後の心配も無いならば「まったく不自由ない生活」じゃないですか?うらやましい限りです。

  ちょっと話が変わりますが、とあるブログでゴルフに乗っている人が、トヨタアクアが売れまくっている状況を悲観して「趣味のクルマ」を買う人が少なくなって嘆かわしい!とぼやいておられました。・・・この人は前々から思っていたのですけど「天才」。つっこみどころがあり過ぎて頭がヘンになりそうです。そもそも「VWゴルフ」ってどう考えても趣味のクルマじゃないですよね?

  やはり趣味のクルマの代名詞といったら「M5」かな。もちろんトヨタ86だってスズキスイフトスポーツだって「趣味のクルマ」ですけど、あくまでフェラーリやランボルギーニのように形から入るタイプ(怒られそうだ・・・)。やっぱりM5はそれらとは完全に一線を画す存在。「外装デザイン」も「車内の質感」も「乗ってからの加速」も、わざと「特別感」を出そうとしないところがBMWの究極的な「美学」。でもとりあえず抜群に速いし300km/h(出したことないから分らないけど・・・)出ちゃうと言われても十分納得できます。

  さてなんで今さら現行M5かと言いますと・・・、ジュネーブMSで登場した「7シリーズクーペ」にがっかりしたからです。M5の「コンサバセダンデザイン&超絶本格性能」とM6の「究極的ラグジュアリー感」この対極の2トップこそがBMWの頂点には相応しいと思うのですが、7シリクーペこと「ピニンファリーナ・グランロッソクーペ」の無機質さとマセラティの後追い感はいかがなものかと。こんなことを言っては失礼千万ですが、このクルマを見てるとBMWのグリルってプレミアムブランドの中でも超絶にダサいなと感じてしまいます(シルバー着色はやめて〜)。


  
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2014年3月31日月曜日

メルセデスCクラス 「恐るべき説得力で電光石火の〇〇退治!」

  いや〜これは驚いた・・・!ってのは去年の暮れの段階での概要が明らかになった時の素直なリアクション。そしていよいよ日本での発売も夏に予定され、ドイツでは試乗会が始まったタイミングで、輸入車大好きな評論家の皆様が「うふぉ!うふぉ!」とものすごいテンションで絶賛合戦を繰り広げております。確かにこれはスゴそうだ・・・。「レクサスIS」「VWゴルフ」「マツダアクセラ」「日産スカイライン」と各メーカー渾身の1台が次々と発売されていますが、それらを全部まとめて超えてしまうほどの「破壊力」がメルセデスの新型Cクラス(W205)にはあります。

  思えばCクラスは「Dセグセダン」というクラスの中で、それほど頭角を現すクルマではありませんでした。やはり世界でも有数の「メルセデス」というブランドの中での立ち位置は低く、「ベイビー・メルセデス」と揶揄されるポジション。この"蔑称"の意味するところはメルセデスが「全く本気を出していないクルマ」という厳しい評価を受けてのもの。よって本気で相手にはしない人も多かった。確かにW204(先代)までのCクラスは「控えめ」なクルマで、400万円以上という車両価格を考えても金持ちのオバさんくらいしか似合わないものでした。

  さらにモデルチェンジがSクラス、Eクラスの後に回されてしまうということもあり、既発のSやEのデザインをモデファイした内外装はデビュー直後からどうしても印象が薄くなってしまうという不運な境遇でもありました。当然ながら業界全体の流行からも遅れがちで、場合によってはVW、ホンダ、マツダといった一般ブランドのDセグよりも古くさく見えてしまうなど、プレミアムカーとしての威厳すらも満足に保てない部分がありました。もちろん全てはこのクラスで勝負しようとしないメルセデスの方針が原因です。Cクラスを豪華に作るとSやEのシェアが奪われるという当然のマーケティング上の判断ではありますが・・・。

  しかし市場環境は2000年代の後半から大きく変わりはじめ、プレミアムカーではなくエコカーを好む高所得者層が現れるなど、メルセデスのターゲットとする層の嗜好も多様化が顕著になりました。いよいよメルセデスも考えを改めて、Cクラスの下に新たにA/CLAという入門モデルを設定し、その最廉価クラスから比べると明らかに差がつくほど魅力的なCクラスを新たに発売して、多くの新規顧客を呼び込みブランドのすそ野を拡大する狙いがあるようです。これまでCクラスが負ってきたややネガティブな役回りはA/CLAに受け渡し、新型Cクラスはまさに「脱皮」しました。

  先代まで批判が強かったエンジンは、ターボとディーゼルが既に用意されているようで、ハイブリッドも後から追加され3種類のユニットを揃えるBMW3のスタイルを踏襲し、購入者にもっともハマるものを「選ばせる」というスタンス。ちょいとびっくりしたのが6気筒モデルをガソリンでもディーゼルでも用意しないという「割り切り」です。直4のFRという設計は道義的な問題も感じるのですが、メルセデスがスバルやマツダのフィールド(直4のDセグ)で堂々と戦おうという姿勢は評価したいです。

  出力面では必要十分なレベルしか用意しないけれども、それ以外の部分では、ややつけあがり気味の「一般ブランド」を一気に突き放すというなかなか「あっぱれ」なプレミアムブランドとしての立ち振る舞い。そしてもちろんしっかり保険も掛けていて、Cクラスを選ぶ必然性を確保するための秘策が、このクラスでは例を見ない「エアサス」の導入。これにはレクサスの開発者も泡を吹いたのでは? ラグジュアリーとスポーティを高度にまとめ上げた傑作車である現行レクサスISがすでに丸裸にされていて、まさかの正攻法によるCクラスの反撃。

  マセラティのような高級イタリア車的な内装を取り入れてドイツ勢と対峙したはずのレクサスISに対して、今度のCクラスはより深い「マセラティ的官能」へ大きく接近して応戦。デビュー時にはBMW3や先代Cクラスには確実に完勝した現行のISですが、このCクラスの出来映えは見事で完全に抜き返されました。福野礼一郎というジャーナリストが、自身の最新作で「強調」していたこと、それは「レクサスISにやられたBMW3は年次改良ですぐに抜き返した!ドイツメーカーの執念はスゴい!」というものでしたが、メルセデスもまた「ラグジュアリー」において、ドイツメーカーらしい執念を見せ、レクサスに強烈な一撃をお見舞いしたように思います。

  確かにまだまだ「Cクラス」というと「いい年したオッサンが乗るクルマではない!」という意見もあるでしょうし、社会的身分が高い人には乗りたくても乗れないという人もいるでしょう。やはり世の中「プライドを持って生きる」ことはとても大切ですので、そういう意見もまた「もっとも」だと思います。「偏見」と言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、まだまだDセグが高級車の中心を担うことにはやや違和感があります。

  しかし社会の変化よりも一足早く、メルセデスとレクサスは「ガチンコ」のバトルをDセグプレミアムで勃発させました。もはやCクラスやISを「本気ではないクルマ」と言う人は少数派じゃないかと思います。組織に属さない自由人にとっては、プライベートカーとして、何かと使い勝手も良く満足できるクルマが驚くべき短期間で「2台」、思わず衝動的に買ってしまいそうですね。それでもとりあえず後悔することは無さそうです。(余談ですが、BMWというブランドは硬派なんだなと改めて思いますね・・・)


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2014年3月27日木曜日

レクサスRC 「やたらとスポーティだが・・・」

  レクサスのカタログモデルとしては久しぶりの「屋根が開かない」2ドアモデルとなる「レクサスRC」。これまでのコンバーチブルとはちょっと勝手が違って、どう個性を出していくかの選択にやや戸惑っているのでは?というのは余計なお世話か。ライバルはクーペを作り慣れているBMWとインフィニティ。そしてこのレクサスRCの最大のミッションは、北米市場で展開されるであろう「BMW4 vs インフィニティQ60」という、クーペ頂上決戦に参入して一定のシェアを得ること。

  去年暮れの東京MSのレクサスブースの中心は完全にこのRCでした。期待を大きく上回るエクステリア、特にリアの造形は4シリーズを飛び越えて、BMWの「イディア」でもある6シリーズに迫る艶かしさが感じられます。顔面はドイツ車ばりの個性でBMW4に伍する出来で、お尻はVC36スカクーを相手に堂々と立ち回れるほどの高級車調。これならばジャガーやアルファロメオにだって対抗できる。さすがはトヨタといった仕事ぶりで同じ土俵に立てれば常に優位になるように出来てます。

  これでレクサスISと同等の走行性能と内装が加われば十分に競争力を発揮しそうだけども、どうやら今回はさらなる「ブレークスルー」を狙っているらしい。まあこのクルマでスーパーGTに参戦して相当にお金を使っているわけだから、必勝を期して完璧な体制を整えるのも当然ではあるけど。RCから導入されるFスポ専用シートは東京MSで体験してきました。どうやら高級車にレザーシートという時代はいよいよ終わりを告げそうな予感がします。

  もちろん屋根が開くクルマならホコリ対策でレザーシートが必須なんでしょうが、最近の新素材ファブリックは座り心地がどんどん向上するし、見た目の耐久性もレザーより断然に良くなっている気が。そして内装デザインに占めるシートの役割はかなり大きくなっていて、ハイセンスな空間は必ずしも「木目パネル&レザーシート」ではなくなっていて、カーボンパネルにステッチ入りのウレタンファブリックシートがぐんぐんきています。

  BMW4、スカイラインクーペ、レクサスRCといったキャラクターを考えると、確実に「後者」が選択されますし、メルセデスSもジャガーXJも若い層を取込むために「意図的」に木目を放棄しています。まあこんな「変革」の時期に久しぶりにクーペを発売するレクサスにはそれなりのリスクがあるように思います。

  レクサスRCはスポーティなシートやアルミペダルを標準装備する「Fスポ」でクルマのイメージを作ろうとする意図を感じます。そもそもDセグクーペが500〜600万円という価格で買う側の立場に立ってみると、本当に欲しい要素は、シートやペダルなどいくらでも「後付け」できる部分ではない気がします。例えば「スポーツモード」にした時にHVのモーター制御が変わり300ps超の出力になる!みたいなワクワクする装備だったり、ラグジュアリーカーとして振るならば助手席オットマンシートを付けるなど、「このクルマじゃなきゃダメ」と思わせる仕掛けが必要じゃないですかね。こんな機能は300万円もしないアバルト595や日産ティアナでも出来てしまうことなのですが・・・。

  トヨタが想定しているのは、おそらく「レクサス版の86」といった立ち位置なのかな。86がいいなと思うけど世間体がという裕福なおじさんたちに買ってもらおうという魂胆があるように思います。しかし本当にスポーツを志向するなら専用設計の86を買うでしょうから、あまりにもRCがスポーティだけというのは疑問な気がします。どうせそこまで気にしてクルマ買う人は少ないだろうと、クラウンと同じように考えているのであれば「地獄に落ちろ」と願わずにはいられません。




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2014年3月21日金曜日

ベントレーコンチネンタルGT 「人生の醍醐味を感じさせてくれるクルマの生き残り」

  メルセデスCLが新たにSクラスクーペとなって発売されるようです。2000万円クラスの超高級車なんて、どう考えても残念ながら縁が無さそうです。現行CL・AMGが7年落ちで400万円くらいになるでしょうけど、いろいろハードルが高いかな(潔癖性など・・・)。メルセデスの最高級車なんてそれほど興味は無いのですけど、CLだけはまったく別物で、理由は「2ドア = ドライビングカー」だから。SLやCLSは街中にうようよしてますけど、CLを街で見かけることはとても稀で、このクルマだけは正直言って羨ましいと思ってしまいます。

  CLは同年代のメルセデスラインナップと比べても、特別な内装が与えられていて、SLやCLSみたいに「V6」という情けないグレードはありません。つまり街で見かけるCLは全て正真正銘の超高級車。その一方でSLやCLSは100万円台の中古車がたくさん溢れてますから、どうも「嘘くさい」と思ってしまいます(ほとんどV6ですし)。もしなんかのきっかけでお金を持つようになった時に買うであろうクルマは、CL(Sクーペ)かレクサスLSのどちらかだと思います。いや・・・候補がもう一台くらいあったかも。

  CLと同じくらい「官能的」で憧れるクルマは、マセラティグランツーリズモ!なんかじゃなくて、ベントレー・コンチネンタルGTですね。英国が誇る超高級ブランドの2ドアクーペ。おそらくラグジュアリー基準ならば世界で最も魅力的なドライバーズカーです。中古車価格は10年落ちで600万円。希少性もあるでしょうがCL・AMGを超える評価額が付いております。600万円という多少は現実味がある価格だと、ほんの一瞬だけ前のめりになりますが、すぐに「いやいや・・・これじゃダメだ」とすぐに我に省りますが。

  フェラーリやらランボルギーニやらいわゆる超高級車というのは、日本では大抵は「スーパースポーツ」だったりするわけですが、こういうクルマを所有することをちょっとでも想像すると、なんだか言いようのない背徳感に襲われます。そして彼女や母親の悲しむ顔が頭の中でぐるぐる回るので、「こんなクルマ買うなんてバカバカしいな」とすぐに否定。それじゃあ911やGT-Rならどうか?これもやはり「ダメではないか」と最近思うようになりました。やはりクルマは人生を豊かにするためのものですから、最も尊重されるべきは家族と楽しいクルーズができ、その価値が十分に分かる性能、つまり「乗り心地」だと思うのです。

  ちょっとバカな想像ですが、もし私に相応の経済力があって、超高級車に乗れるとなったら、やはり家族との時間を豊かに共有できて、自分も最大限に満足できるクルマを選びたいですね。そこで数あるモデルの中から残るのが、今のところ「CL」「LS」「コンチネンタルGT」の3台。まあ残りの人生をこの3台のどれかに辿り着けるようにひたすらに頑張るだけ・・・なんと単純!(とてつもなく難しいですが・・・)。とりあえず人生を頑張ろうと思わせてくれるクルマを作った「メルセデス」「レクサス」「ベントレー」は偉い!ということは確かです。





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2014年3月14日金曜日

BMW435iコンバーチブル 「BMW最強の千両役者!」

  旧3シリーズクーペにも設定されていた「コンバーチブル」が早くも復活しました。神奈川県を代表するドライブルート・R134を走っていると外国人やら50代くらいの夫婦やらが良くドライブに使っているのを見かけます。ゴルフだと敬遠したくなるほど退屈だけど、ゴルフカブリオレなら夢中になる気持ちもわかったりしますが、4シリーズにもどうやら同じことが言えそうですね。

  旧3シリーズクーペもそうでしたが、新たな4シリーズクーペはデザインに大きな「欠陥」があります。全てはセダンをベースに設計しているBMWの方針が原因なのですが、本来は後ドアがあるべきところの側面パネルが徹底的に「野暮ったい」のです。私の場合はこの部分を見るだけでこのクルマを所有したいという気まぐれが一瞬で消し飛びます。新しく車名も4シリーズになって、今度こそは何らかのデザイン上の工夫があると思ったのですが、やはりそこまではコストが回らないだろうなという予感はありました。

  ただし旧3シリーズクーペも同じですが、BMWにはこのデザイン上の欠点をボディ形状によって補っているクルマを発売しています。そのボディタイプがまさにこの「コンバーチブル」です。電動で格納されるハードトップという日本人をターゲットにしたモデル。メルセデスもBMWも同じことが言えますが、「日本人に便宜図ったぞ!」という恩着せがましいモデルはやたらと価格が高く設定される傾向にあります。たとえば「アクティブハイブリッド」とか。まあ「付加価値」と考えると当然のことなんですが・・・。

  つまり、旧3も新4もクーペのデザインに「アラ」を作って見せつけておいて、後から出して来るのが、直6ターボ限定の「コンバーチブル」。価格は軽く800万円オーバーですが、ルーフを格納するリアのデザインはギミック感がアクセントになっていて、艶やかでデザインだけですでに買う気にさせてくれます。そして何物にも代え難いオープンの開放感を味わうためのモデル。目的意識も明確になりやすいので、800万円という価格でも現実感がある人ならば、ニーズさえ一致してしまえば、いまさら「BMWだから嫌だ!」という人は極少数でしょう。

  妥協点もないわけではないですが、BMWにここまで至れり尽くせりの「日本スペシャル」を作らせておいて、今さらのように「L7プラットフォームで800万円は高い」とか「ルーフの開閉でトラクションが変わってしまう」みたいな理由で断念する人は、ややクルマに対する感度が「独特すぎる」という気がします。3シリーズのセダンやクーペでは「その気」になれないのは「L7」がどうこうと言うよりも、BMWの熱意に疑問を感じるというのがネガティブな要素として働くからであって、この「コンバーティブル」に関しては別次元の情熱を感じるので欲しくなる人が多いはずです。

  あとはルーフが開く事によって「趣味のクルマ」であることが強調されますから、40~50歳代の男性が乗っていてもそれほど違和感はないです。社会への適切な感性をお持ちの善良な中年男性ならば、「違和感がない」ことを理由に率先してこのコンバーチブルを選ぶということもあるでしょう。本来は5や7シリーズなどの上級モデルに乗っておかないとカッコつかないですけど、「海」や「ドライブ」をさらに強く連想させてくれるこの435iコンバーティブルも上級モデルに負けないくらいに「正義」だと言っていいでしょう。そういった感覚すらも日本にいるとBMWのマーケティング餌食になってしまうのは悲しいことです。北米価格(550万円)との開きがブランド内でも特に大きい気が・・・。

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2014年3月7日金曜日

ロータス・エヴォーラS 「クルマは考え方一つで・・・」

  いつも気分転換に国道299号線を走るのですが、そこにつながるバイパス沿いにロータスとシトロエンのディーラーが軒を連ねているところがあります。どちらも小型の店舗なのですが、クルマがよく見えるように置かれています。ロータス店舗の一番目立つところに置かれているのがエキシージ。やはり現行ロータスの3モデルの中でも特に冴え渡るエクステリアは看板モデルの風格十分です。

  そのエキシージと同じロータスらしいデザインを纏ったエリーゼとエヴォーラはだいぶ印象が違って見えます。外観上の大きな違いはフロントグリルで、3分割されワイド&ローを強調したエキシージに対し、エリーゼとエヴォーラのグリルはかなり小振り。印象としては日産GTRのようなエキシージに対し、エリーゼ、エヴォーラはマツダロードスターに近いです。実際に用途もそれに近く、それぞれGT-Rとロードスターのライバル車みたいな設定で、唯一の4座モデルのエヴォーラは他の2台と異なりややコンフォートに振っていて、遮音性も高く設計されていて居住性に配慮がされているようです。

  日本市場のロータスを取り巻く環境は相当に厳しいようで、今回新たに発売された「エヴォーラS」は売り切れとなった5年前のモデルよりも、オプションの標準化などを含め総額で200万円近い実質値引きが付くようで、さらにこの3月いっぱいは旧型の在庫一掃セールでベースのエヴォーラが710万円の特別本体価格になるのだとか(まだ残ってたの?)・・・。

  今回はFMC無しに再発なので、ロータスも相当に弱気のようです。確かに2009年の段階とは市場環境も一変していて、4座スポーツの最高峰ポルシェ911が現行991になって内外装が大幅に良くなりました。さすがに2009年から持ち越しのエヴォーラSには既視感がチラホラします。けどロータスが生み落とした世界にもあまり台数が多くないクルマですから、大量生産車とは違う基準の普遍的価値が備わっています。

  さらにポルシェ911はレトロなスポーツカーから近未来のラグジュアリークーペへと脱皮を図っているようで、FMCの度にコクピットから慣れ親しんだレバーが一本ずつ消えていっています。スポーツカーならサイドブレーキレバーは必須と考えるなら、もうポルシェは手遅れで、これが付いているロータスの方に愛着を感じるかもしれません。

  エヴォーラSのライバルとなるスポーツカーの「内装事情」は結構深刻な問題が起きています。進化し過ぎの感があるポルシェ911に対して、いくらなんでも時代遅れ感がハンパ無くて古臭いのが日産GT-Rで、両者の距離は相当に広がっていて正直言ってどちらも相当に違和感があります。性能だけでドイツ車と日本車がシーンを代表してしまっているところに齟齬があるようで、スペック的には地味に見えるエヴォーラSやマセラティ・グランツーリズモ辺りの方が所有欲をくすぐってくれます。

  911やGT-Rはその高い知名度から注目こそしますが、実車を見ると・・・もちろん興奮はしますし、とても美しいクルマだなと思うのですが、特別に「これを絶対買うぞ!」と思わせてくれるポイントは意外と少ないです。GT-Rや911を差し置いても、エヴォーラSのリアハッチゲートのコミカルな開き方と、そこに現れるかわいらしいラゲッジブースを見るとかなり心が揺さぶられます。

  そこに旅行トランクを詰め込んで、秘境の温泉宿までドライブ・・・。なんて使い道がありありと浮かんできます。月1回の温泉orペンションドライブに使うだけでも10年で120回。クラウンとエヴォーラSのレンタカーとしての費用対効果の差額を1回5万円と見積もれば600万円分の価値は付いてくるわけです。載っているエンジンは本体価格500万円のクラウンアスリート3.5Lのものをスーパーチャージャーで過給した高性能エンジンですから、1100万円で買えるなら少しはお得かな?という気がします。維持費は勘案していないですけど・・・。



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↓スポーツカーでオーディオは邪道かもしれないですが、最新のGT-Rやエヴォーラはなかなか楽しめそうです。ベースメントジャックスなんて聴いてみたいですね。
  

2014年2月26日水曜日

マセラティ・ギブリ 「このクルマで月産4万台はちょっと・・・」

  高級車にとってはどれだけ売れたかはあまり重要ではないですが、マセラティは新しい戦略の中でセダンとSUVの合計2車種を追加し、グローバルで年産4万台を目指すと発表しました。プレミアムブランドにとっての4万台/年はというと・・・、メルセデスとBMWが日本で1年間に売る台数くらいです。しかし全車最低でも1000万円以上のマセラティと比較してもまったく無意味です。日本ではBMWとか高級車として扱われていますが、アメリカでは欧州高級ブランドとしてはマセラティ、メルセデス、ポルシェが「御三家」として人気と権威があり、その一方でBMW、ジャガー、アウディなどはスポーティブランドでインフィニティ、アキュラ、レクサスと同じような意味合いみたいです。

  ちょっと余計ですが、日本で売っているメルセデスの安いのはアメリカにはラインナップされていません。北米メルセデスは30000ドルの価値に満たないクルマは置かない方針があるようですね。そのかわりにスマートブランドがあります。よって日本ほどメルセデスの低価格化は進んでいないです。底辺が30000ドルのメルセデスに対して、マセラティのボトムグレードのギブリが66000ドルです。いやまてよ660万円でマセラティが所有できるならとアメリカ在住の人なら思いそうですね。並行輸入業者に頼めば?なんて考えが頭をよぎりますね。マセラティに乗りたい!と強く思う人は数十万人?それ以上はいるでしょう。

  アメリカ価格ならマセラティの戦略もわかりますが、日本価格は940万円! 蛇足ながらメルセデスCLSが北米で72000ドル、日本で945万円というほぼ同じような価格帯で、日本でも人気を博したので、ギブリも同じようになんとか売れるだろうという見通しか。こういうクルマって場所によっては需要はとてもあって、東京に点在する住みたい街ランキングの上位になるようなところの集合住宅駐車場ってかなり見栄の張り合いがあるみたいです。私のマンションは幸いにもステップワゴン、ボクシー、ハイエース、ラフェスタという並びなので、どんなクルマでもいいので気が楽です。

  東京吉祥寺で見かけたデザイナーズマンションは小さな青空駐車場にアウディS5、ボルボV60、レクサスCTの3台でしたが、なかなかプレッシャー感じそうな配置だなと思いました。都内のさらに高級な家賃50万円以上みたいなマンションの地下駐車場ではさらに凄いレベルのプレッシャー合戦がありそうです。赤坂ミッドタウンの地下駐車場にマーチが停まってると思ったらBMW1シリーズだった!なんて錯覚してしまうほどに高級車のオーラって凄いんですよね。1800mm幅の国産セダンでもランボルギーニの隣りに停まると5ナンバーに見えてしまいます。ワイドローのシルエットはかなり錯覚しますね。

  マセラティの活躍する場所はこういう地域なんだと思いますが、このギブリは1900mmオーバーの車幅が実は最大のセールスポイント。このクルマならば隣りにヴェルリネッタがこようがウラカンがこようがとりあえず貧相に見えることはないでしょう。他の地域ではネガティブな要因になる1900オーバーの車幅なんですが・・・。逆に内外装の質感はこれまでのマセラティよりもだいぶ落ちる印象で、内装が気に入って買うという人は稀なケースでしょう。ギブリが欲しくてディーラーに見に行ったらクアトロポルテの内装の格差を見せつけられて、さらにグランツーリズモの内装も見たらさらに大興奮で、もうギブリのことは忘れているかも。全てのモデルの内装が極上がこのブランドの魅力ではあったんですけどね・・・。


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2014年2月20日木曜日

スカイラインHV 「プレミアムを驚かす・・その根拠は?」

  プレミアムカーとは何か? ブラックジョークをひとつ、「新車販売時に多額のプレミアム(利回り)が計上されていて、買ってすぐに中古車価格が約半分まで落ち込むクルマ」。よってそこまで下がらないフェラーリなどはプレミアムカーではないようです。とりあえず値落ちさえさせれば何でもプレミアムカー? 半額まで下取りが下がるのに最低でも5年以上はかかる軽自動車やミニバンは間違っても該当しないわけです。

  さて本体価格450万円のV6HVセダンに生まれ変わった新型スカイラインですが、どう考えても「即時半額」というほど下取り価格が下がるとは思えません。よって結論としては「プレミアムを驚かす」云々の前に新型スカイラインそのものがプレミアムでは無いわけです。そもそもこれだけのクルマが450万円ってどう考えても安過ぎる。せめてプレミアムカーを名乗るなら、レクサスのように車体価格にぎっしりと「ディーラー入場料」分を賦課するべきだったかもしれません。

  しかし残念なことに日産系ディーラーには、アレな人々が喜びそうなラウンジなんてないです。GT-Rの水野さんは専用の商談ルームを作れって凄い剣幕で主張したそうですが、その点に関してはこの人はレクサスと気があっていたのでしょう。それでも硬派な日産(パンチパーマの元ヤンがクルマ開発してます)からしてみたらレクサスなんて女々しいと映るでしょうし、レクサスのやり方は全てが大嫌いなんだろうなと思います。そしてその想いがそのまま「なぜ?ありきたりのプレミアムカーを選ぶのか?」という暴言になるのでしょうね。それにしても「ありきたりのプレミアムカー」ってどのクルマを指しているのでしょうか?

  日産がふてぶてしく言い放ちたくなる気持ちはとてもよくわかります。例えばライバル車にレクサスIS300hという他車とパワーユニットを広く共通するクルマがあり、燃費と必要十分な加速に長所がある直4HVユニットで人気です。一方で新型スカイラインが採用したV6HVは燃費こそIS300hに劣りますが10km/Lは十分に確保でき、その上で高級車に相応しいハイパワーとAWDが設定できオールウェザーでの安定走行可能という世界のトレンドをHVで実現してしまうなど、確実にメカとして数段階上だと客観的に評価できます。

  そしてドイツのプレミアム御三家となると、HVが設定されるのはかなり高額のグレードのみに限定され、一般的にはガソリンターボのモデルが主流です。ドイツではHVが主流ではないという事情もありますが、クリーンかつハイパワーを追求するならば、レクサスや日産のHVシステムが彼らの今後の目標になるのかもしれません。とにかく新型スカイラインのユニットはDセグに限らず、高級車全体で見ても世界最先端&最高水準にあるといっても過言ではないわけです。

  しかしメカとして最高水準と考えるのはあくまで作る側の言い分であり、必ずしも最先端の新型スカイラインが既存技術で作られたV6スーパーチャージャーのジャガーXFよりも、プレミアムカーとして高く評価されるか?というと一筋縄ではいかないと思います。日産には日産の考え方があり、ジャガーにはジャガーの考え方があり、それぞれに支持するファンがいます。プレミアムカーの本質にどちらが近いかは、この2台のどちらが生き残っていくかによって明らかになると思います。

  世界市場をくらべ、日本はあらゆる意味でオーバースペックと考えられています。世界では2Lの直4ターボエンジンさえ積んでいれば、確実に高級車として扱われますが、日本ではそうは考えられていません。日産の謳い文句にも少なからず、恵まれた環境の日本車の現在地がわからなくなっている「奢り」を感じてしまうのです。日産のセールスマンはこれから新型スカイラインがいかに優れたクルマかということを顧客にオラオラで説明することでしょう。ともすれば450万円という価格は安過ぎると感じるくらいかもしれません。

  日産の最先端の研究を否定するつもりはありませんが、その一方でジャガーのように数あるパワーユニットから敢えて主流ではないスーパーチャージャーを選ぶメーカーもあります。直4ターボの廉価モデルも用意する一方で、V8スパチャーのさらに過激なユニットも用意しています。日産のセールスマンの説明を聞くまでもなくスカイラインの凄さはわかると思いますが、プレミアムカーとして最高に自分を満足させてくれる1台が絶対に日産のV6HVユニットと決まるのでしょうか? プレミアムカーに求められる「官能」という観点で新型スカイラインはジャガーXFの全てのグレードを凌駕したと言えるのでしょうか? まだまだ井の中の蛙と笑われてしまう危うさがあるように感じます。

  
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2014年2月14日金曜日

ホンダ・レジェンド 「日本市場での逆転は可能か?」

  日本で一番売れているEセグセダンと言えば、トヨタクラウン一派なんですが、2012年の末にFMCを果たした現行モデルは、発売予定日が大きくズレ込むなど、トヨタの看板モデルとは思えないドタバタっぷりでした。完成したモデルは設計変更の痕がありありと見えるハリボテグリルと、完全に浮き足立ったサイドデザインが至近から見ると気になるのですが、遠方からのシルエットは上手くまとめられている印象でしょうか。

  クラウンに限らず他のEセグセダンも改めて見てみると、トレンド・趣向や統一感が希薄な「無味乾燥」デザインに陥っているものが多いです。このクラスのクルマは快適に長距離ドライブを過ごせる素晴らしい装備が当たり前なのですが、デザインがイマイチだと宝の持ち腐れですね。Dセグ直4を膨張させたアテンザが売れたので、このサイズのクルマが嫌われているわけではないようなので、そろそろため息が出るような「王道Eセグセダン」に登場してくれないかなと思いますよね。

  5mに迫る伸びやかで美しい車体に3m近いホイールベースでゆったりとした車内。1.8トンの車体を駆動させる極太タイヤとしなやかな乗り心地を実現する複雑なサスペンションを余裕で収納するワイドなボディ。トラクション、ブレーキング、ハンドリングの三大性能を最大限に引き上げるスペシャルな統御システム。オールウェザーに対応するマルチパフォーマンス(AWD?)。そして何より統一感があり洗練されていて格調がある内外装。

  量産車にも関わらずコストの壁を打ち破り、ライバル車が全く追従できないレベルまで作り込もうという発想は、おそらく100年近くに渡る自動車の歴史の中でもバブル期の日本メーカーにしか無かった発想だと思います。トヨタも日産もホンダもマツダも三菱もスバルもその競争の果てに大怪我をした過去のトラウマの影響でしょうか、現在でもそういうクルマ作りを禁忌している様子が伺えます。

  しかしその後の20年で世界の機械工業、特に東アジア地域の発達で、バブル期よりもあらゆるシステムが安価に調達できるようになっていています。バブル期に作ったら1億円くらいはしたであろうGT-Rが2007年には800万円で発売されるまでになりました。それならば、20年前に各メーカーが作ろうとしていた「夢のクルマ」を今こそ作ってしまえばいいのでは?という気がします。

  先述のクラウンは確かに高級車ではあると思いますが、トヨタ渾身のハイテクカーといった的外れな表現は、さすがにトヨタの宣伝文句には登場しませんでした。このクルマを従来の枠を超えた「夢のクルマ」と思っている人は皆無だと思います。クラウンを販売するトヨタの営業力は確かに大きいのでしょうが、それでもオーリスのようにコケるクルマはいくらでもあります。オーリスと違って強力なライバルが少ないクラウンだからこそ営業力でなんとかなっているのでしょう。

  逆に言うと、このクラスに革新的な新型車が登場すれば、予想以上に大きなムーブメントが起こり業界地図が塗り変わるほどの異変が起こるかもしれません。ボディサイズが拡大したアテンザが最近では雑誌でクラウンと比較されたりするようになっていますが、新型アテンザもこのジャンルでちょっとしたブレークスルーを起こしたと言えます。しかし直4モデルのアテンザでは、残念ながら「Eセグの本丸」までは到達できないでしょう。

  いよいよ2014年の末には、満を持してホンダ・レジェンドが復活を遂げます。日本メーカーの中でもホンダは、自らが計画したコンセプトを正確に再現する能力に長けていてるので、「クラウンの牙城を潰す」というミッションを忠実にこなしてくると思われます。先代モデルの段階ですでにレクサスLSに匹敵する装備を持っているほどの素性の良さに加え、新たに次期NSXと共通の駆動システムの採用などブランディング戦略にも力が入っています。レクサスLSやメルセデスSクラスと同等の内装を誇るセダンが、リッター15km以上の好燃費で登場したら・・・。いよいよ高級車の常識が変わってしまう大事件になるのではと期待が持てますね!

「次期ホンダ・レジェンド北米版プロト」の関連記事(別ブログへのリンク)

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2014年2月6日木曜日

BMW M5(E39系) 「最高のドライビングセダン?」

  先日、妹の運転の実家のドライブに付き合った。何気なくとなりと走るクルマを見ていると、きれいにレストアされたセルシオ(20系前期?)にブレンボ製ブレーキを付けて満足げに走る真面目そうなお兄さんを目撃した。サイドのビームラインを少し強調させた外装には堅実さが滲み出ているし、ブレーキのオレンジを際立たせるようにホイールもグレーの控えめなもので、センスいいなと素直に思ったのですが、セルシオにブレンボなんて付けたらせっかくの電子制御エアサスの乗り心地が台無しになるのでは・・・。

  それでもまあ「究極のスポーツセダン」を作ろうというお兄さんの気持ちは分からないでもないですね。バブルの遺産とでもいうべき好素材のセルシオが格安で手に入るなんて、改めて日本は幸せな国なわけです(アメリカほどではないけど・・・)。そして誰しもセダン好きならば、一度は最高の「居住性」「車格」「動力性能」を持ち合わせた究極のセダンというものを想像してしまうはずです。

  異端児的自動車ライターとして知られる沢村慎太朗氏がその著作で、「極論するとスポーツカーはマツダロードスターとポルシェ911の2台に集約される」みたいなことを書いていました。この2台以外は雑味が混じった改造乗用車か、亜流のパクリに過ぎないという、実にこのライターらしい名言(迷言)です。しかし本物のスポーツカーに乗りたいと思っている人にとっては金言で、あれこれ迷う必要もなくなるし、他のクルマを気にする必要もないわけです。卓越した見識と知性(表現力)を持っていて、十分に信頼に足るライターがここまで言い切ってくれるのだから、考えるのが苦手な私なら素直に従っておこうと思ってしまいます。

  どうせだったら沢村氏には、セダンに於ける「究極の2台」もぜひ発表してほしいくらいです。もし実現したらおそらく素直に従います! いや大いに参考にさせてもらうくらいかもしれませんが・・・。400万円以下に収まるクルマと無制限のクルマの究極の2台。スポーツカーと違っていろいろな判断基準があるので、まあ難しいですね。それと同時に車種も少なくなってきているので、「該当車なし」なんていう恐ろしい結論も予想されます。私もセダン好きの端くれなのである程度の考えはあるのですが・・・。それはずばり「マツダアテンザとBMW M5」です。

  自分で運転して満足できるセダンの中で、金額無制限でその性能が究極的だと感じられるクルマは実際はあまり多くは無いです。レクサスLSやメルセデスSクラスといった失敗があり得ないレベルの超高級セダンに、ドライビングファンという要素は薄く、アテンザやレガシィといったスポーツセダンの延長線上には無いです。じゃあアテンザやレガシィを選ぶ感覚をそのまま超高級モデルに当てはめるとするならば? 想定されるのは・・・、現行モデルではM5やアルピナB5の他にはパナメーラくらいしか思いつかないわけです。

  それでも何かが違うなと感じます。M5は先代のE60系から500psを超える出力を誇るようになり、欧州に君臨するドライビングセダンの雄の地位を投げ捨てて、北米のマッスルカー市場に大きく擦り寄った印象があります。B5も同様の変身を遂げていますし、パナメーラに至ってはデビュー当初から北米寄りです。現行のF10系もまた同じ路線でさらにパワーアップされています。いずれのモデルも2ペダル(AT)のみの設定しかなく、どうも「走りのセダンの究極型」としての大事な何かを無くしてしまっている気がするのです。

  私がクルマの車種が少しずつ分かり始めた大学時代に、スポーツセダンの最高峰として君臨していたM5(E39系)は、控えめなデザインと1800kgの車重を誇る立派なボディながら、走りはポルシェ911ターボに迫ると評されていたのを今でも思い出します。まだ日本車が280psで縛られていた頃に、400ps(V8ターボ)でそれを6MTで操るというコンセプトにはまさしく「輸入車」としての際立った存在感がありました。それこそ現在のポルシェ911くらいの個性を感じました。以来M5にはずっと一目置いてきたのですが、今のM5(F10系)にはどうも説得力がありません・・・。

  もちろん「V8の高出力化&AT制御」ということが、そのままカマロやマスタングのパクリとは思いません。しかし7,8年前に日本に鳴り物入りで導入されたダッジ・チャージャーがアメリカ車のイメージをいくらか変える好デザインだったことなどもあり、M5のイメージは私の中で一気に霞んでしまったのも事実です。いまでもM5にはチャージャーの3倍の価格に相当する価値があるのか?とたまに考えてしまいます。ダッジ・チャージャーはW210以降BMWにブランド力で遅れをとりつつあったメルセデスが、腹いせに日本に持ってきたメルセデスシャシーのアメリカ車という噂もあります。

  さて今年レクサスはGS-Fというおやおや?な新規車種を発売すると言われています。現行レクサスIS-Fの5L(V8)のNAで423psがそのまま5シリーズ同格のGSに載るわけですからこれは期待したいですね。一部のクルマに興味が無いと思われるクソメディアが、ドイツ車に対抗するならば500ps以上は出さないと!みたいな妄言を連発してますが・・・どうなることやら。


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2014年1月27日月曜日

日産・フェアレディZ34 「ポルシェもいいけど国産スポーツも・・・」

  ポルシェ911現行(991型)のラインナップが次々に登場して実に華やかです。ボトムのグレードでも1200万円ですから、(あくまで想像ですが)実際に選ぶとなるととんでもなく迷ってしまいそうです。オプションではなくボディ形状や「4」なのか「S」なのか「ターボ」なのかといったエンジン&駆動形式が多彩過ぎるなんて凄いことです。ポルシェの最大の敵と見做されている、最強ジャパンメーカーの日産は、7年目にしてやっとGT-Rのユニットバリエーションを2つにするのだとか・・・。これが水野さんが引退した新しい日産の方針のようです。

  GT-RやフェアレディZが単一のパワーユニットにこだわってきたのは、水野さんが提唱する「サーキットでも街乗りでもクルマにとって理想のパワーユニットは1つに決まる」という哲学に基づいていたようです。その独創性に溢れる考え方がGT-Rの誕生には不可欠だったわけで、デビューからの僅かな期間で世界のスーパーカー・シーンを席巻したのだから説得力があります。GT-Rが登場してその挑発的な姿勢に、いままでポルシェに愛着を持っていた人々には複雑な感情が渦巻いたようです。

  そんな日産がこれまでの主張を変えて、ポルシェのコンセプトを踏襲するかのGT-Rのグレードを分けたことに、「ほら見た事か!」とばかりに国産車に手厳しいジャーナリストが騒ぎ出したのもまあ想定内のことでしょうか。水野さんに肩入れするわけではありませんが、デビュー当時の孤高のコンセプトこそがGT-Rの魂であり、ポルシェ911ターボと同等の価格の「GT-Rニスモ」なんて魅力ないですね・・・。天下の日産がポルシェと同等のコストで同等の性能のクルマ作って何が楽しいのでしょうか?「ドイツ車の真似」なんて・・・韓国や中国のメーカーと同じ目線でしかないわけで、そんなことしていたら経済の成長力の差であっさりと抜かされてしまうということが分からないとは愚かなことです。

  それでも日産にはまだまだ世界の最先端を走るクルマを作る!という気概は十分にあるようで、新型スカイラインことインフィニティQ50に込められた日産スピリッツにはまだまだ期待したいです。さらに北米ではスポーツカー・アイコンとしての地位を確立しているフェアレディZにも世界の最先端メーカーとしての日産の気概を感じることができます。このクルマの魅力は、その動力性能ももちろん素晴らしいのですが、ポルシェ・ケイマンなどのライバルの2シータースポーツに比べてどこまでもリードした豊かなデザインです。

  日本にいると日産の代表的なクルマという親近感から、そのデザイン上のアドバンテージには気がつきにくいのですが、ポルシェやジャガー(XK、Fタイプ)を相手にしても決して負けないくらい素晴らしいです。32型はさすがに古くさいですが、33型、34型(現行)と流暢なデザインが続き、デザインに優れたモデルであると海外では広く認知されています。日本人の意識ではメルセデスSLKやBMW Z4に目が行きがちのようですが、Z33(02年デビュー)とSLK(04年デビュー)を比べれば、デザインだけでも日産の完勝は明らかですし、Z4(03年デビュー)は外装デザインこそZ33と互角ですが、内装を比べるとずいぶん古臭く感じます。もっともZ33のデザインも初代TT(98年デビュー)に大きくインスパイアされてはいるのですが・・・。

  耐久性に優れる日産の大排気量NAエンジンならば20年30万キロでも平気で走るでしょうし、ドイツ車の上を行くボディ剛性は経年劣化にも強く、ドイツのように手入れをして長く乗るというスタイルも実践できます。そして33や34に関してはスポーツカーとしての普遍的なスタイルを確立しているので、NSXやRX-7FD3Sのようにいつまでも現役バリバリの新鮮さを維持してくれます。日産の開発者が所有者の幸せを第一に考え抜いて作った傑作車です。911の華やかさもいいですが、ポルシェよりも幸せになれるスポーツカーがフェアレディZなんじゃないかと思います。