2015年10月20日火曜日

ボルボS60T6 "ファイナル"ボルボ直6が大特価!

  いよいよ生産中止がアナウンスされてしまった「ボルボ」の直6エンジン搭載車ですが、中古車で検索すると未使用車が乗り出しで「400万円」という想像を越えたバーゲン価格でかなり多数並んでいます!日本向けの最終ロットも大人気で売り切れました〜!!!と景気良く報道されていましたが、どうやら・・・いろいろあるようです。しかし未使用の直列6気筒モデルが400万円なんてもう二度とないチャンスですから、もう反射的に考えちゃいましたよ! マンションの隣りの駐車場が空いたようだから思い切って押えておこうかな・・・S60ならギリギリ青空駐車場に停まっていてもおかしくないですかね?

  冷静に考えると「ランエボ"ファイナル"」に400万円を使っておいた方が、後々にプレミアが付いてお得感はあるんでしょうけどね。どうやらボルボ車の下取りは数年前から相当に酷くなっていると評判らしいので、乗り出しで700万円を越える高性能の「ボルボS60T6」が未使用とはいえ400万円が相場みたいです。フォードから中国資本へ売却されたときに、日本からの撤退が噂されてボルボの中古車価格が大暴落したことがありました。今でもまだ10年経っていないモデルが二束三文で売られていて、100万円以下でお手軽に輸入車をゲットするにはちょうどいいブランドとなっています。

  最近のボルボはディーゼル搭載を一気に進めてきました。ボルボ車の頑強なボデーのイメージからパワフルなディーゼルがどことなく合うのかもしれませんが、北欧スウェーデンはディーゼル車なんかとんでもない!という厳寒の地なんですよね。特殊な処理がされていない軽油(2号)の凝固点はマイナス5度くらいですから、東京でも真冬になれば注意が必要です・・・。冬になればマイナス15度くらいまで大丈夫な3号灯油が供給されるようですが、これは通常の気温ではエンジンを痛める可能性があるとか・・・。とにかく寒い地域でディーゼルはなかなか厄介な存在です。くれぐれも「ボルボはやっぱりディーゼルだよね!」なんて訳のわからないことを言わないようにしたいです。

  さてボルボの直列6気筒モデルに話を戻しますと、やっぱり無くなってしまうのは惜しいなと感じます。FFベースのクルマに重量のある6気筒エンジンを載せると、当然にクルマは前後重量バランスが厳しくなるので、ボディ全体をやや重くしてエンジン重量による影響を最小限に抑えよう設計されます。FF車のメリットとして軽量化があるわけですが、どうせクルマ全体を重くしなければいけないのならいっそのことAWD化してしまった方がいい!という判断もあるようです。

  アウディのように最初から縦置きエンジンを使ってフルタイムAWDをメインに仕立てる設計でも同じことが言えますが、どれだけ優秀なAWDシステムを構築しても、しっかりとクルマの挙動を抑え込む「しっとりとした」足回りが不可欠になります。クラウンやフーガのような国産のFRセダンはそれほどハンドリングを追求しない代わりに乗り心地重視のフニャフニャの足回りをつかいますが、ボルボS60やアウディA4に同じ方法は・・・基本的には好まれません。欧州での250km/h巡航性能を保証するとなると、BMW3シリーズのようなひたすらに無機質な乗り味にするか、CクラスやジャガーXEのように高級車に使われる重厚なサスペンションをコストをかけてでも仕込む必要があります。

  ボルボS60はBMWの方式を採り、アウディA4はCクラスやXEの方式を使いました(CやXEの方がA4の真似をしたわけですが)。ボルボS60は・・・FF車ベースという特性もあるのかもしれないですが、BMW3よりも前輪の接地感に手応えがあって、路面と前輪のコンタクトがそのまま操縦するワクワクにつながります。一方で3シリーズはというと、なんだかス〜・・・と走ります。特にタイヤの食い付きが悪いということはないですが、スタッドレスタイヤの味気ないフィールは、ハンドリングだけでなくアクセルやブレーキからもひしひしと感じます。これだけのぬるいフィールにさらに6気筒が積まれてハナ先が重くなるとやはりダルいかも・・・。

  さてボルボですが、スウェーデンのメーカーだけあって、過酷な路面状況があれこれ想定されているのか、実際に乗るとライバルとなるドイツ車や日本車よりも足回りのまとまりがいい!!!と素直に感じます。エンジン屋のBMWやホンダとは全く別の部分が優れたメーカーなんだ!という事実をまざまざと見せつけられます。スバルやBMWの足回りを強化したクルマに乗ると、特製ダンパーを使用した効果で入力に対する減衰力は確かなものを感じますが、ボルボの足回りとはダンパーに由来するものではなく、そもそものサスペンション自体の剛性の高さに秘訣がありそうです。

  堅牢なボデーを長年作り続けてきた結果、そのクルマ作りに合った秘伝のバネレートが選択されていて、その結果メルセデス、BMW、アウディよりも乗り味に優れるという評価につながっているようです(断定的なことは言えないですが・・・)。日本メーカーでしっとりとした乗り味を作るのが日産のスカイラインとマツダのアテンザの2台です。この2台は・・・足回りに関してはレクサスを完全に超越した高みに辿りついています。この2台に乗ったあとにレクサスGSに乗ると、あれれ?とレクサスの弱点が面白いくらいによくわかります。レヴォーグや3シリーズなんて・・・スカ/アテに比べればパサパサで無味乾燥です。しかしS60は不思議と好感が持てます。

  まとめると、スカイラインやアテンザに通じる「しっとり」系のGTツアラーが欲しい!という人には「ボルボS60T6」はかなり理想的なモデルと言えます。直列6気筒のスムーズな噴け上がりと、高級感溢れるエキゾースト(これ重要!)、ハンドリングも極めて上質で、飽きないドライビングができますし、なにより長距離を走るにおいて重要な「しっとり」とした乗り味が最大のセールスポイントです。もちろん3シリーズで長距離を走ったって体がユサユサされるということはないです。

  しかし「しっとり」系の乗り味は、3シリーズのようなとてもよく出来たクルマさえもさらに超越してしまうレベルです。何が違うかというと、加速・減速におけるGが滑らかに発生して、とても心地良く走りの「高級感」を作りだすところです。滑らかな加速Gは多段式ATで引き出すものだ!と決めつけているライターさん見かけますけど、これはミッションよりもむしろ足回りに起因するものですよ! 多段式が進めば設定にもよるでしょうけど、アクセルフィールと実際の加速がどんどん乖離して変な乗り味になります。ボルボ/日産/マツダ・・・これらの本気を体感してしまうと、ドイツ車やレクサスなんて二流に過ぎない・・・なんて思いっきり反感を買いそうな「余計な一言」がポロリと出てしまうんですよ。ちょうど1年くらい前のオートカーでの森慶太さんの記事にも同じようなことが書いてありましたけどね・・・。

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↓この本読んでやっぱりそうだよね!って気分でこの記事を書いちゃいました!とりあえず含蓄のあるいい本です!

  

  

2015年9月18日金曜日

BMW7シリーズ 「ちょっと中毒性がある!」

  存在そのものは知られているけど、誰もあまり本気では欲しがらないクルマ・・・。おそらくこれからも本格的な人気になることは絶対にないであろう不思議なクルマ・・・そんな不思議なクルマの代表格が「BMW7シリーズ」だと思います。映画「トランスポーター」を大興奮で見終った直後ならば、多くのミーハーな人が劇中での颯爽とした姿を見て「7シリーズいいなあ〜」といった想いを一時的に抱くでしょう。

  あるいはユーチューブで人気の「M's TV」を主催しているオサピーさんという人が乗っていたE66の後期モデルを見て、なんだかんだ言ってかっこいいな!!!って目からウロコの人もいるでしょう。あの大批判されたクリス=バングルの奇抜なデザインで登場も、後期モデルはいい感じで修正されていて、まだまだ艶やかな鮮度を保っています(前期から後期になって顔が完全に整形されました・・・)。

  そしてちょっと火が着いた勢いのままに7シリーズの中古車を検索しはじめると・・・、あれれ・・・?まだ10年も経過していないのに、100万円台〜200万円台と軽自動車並みに安いタマがズラリと並んでいます。これだけ安いのになんで売れ残るの?大排気量にありがちな不人気車ですか? 東京の西部(八王子辺り)にはダッジのマグナムやチャレンジャーなどのデカくてハイスペックなクルマを転がす粋な兄ちゃん達をかなり見かけますが、彼らにとってこのBMWのフラッグシップはあまり魅力的ではないのか? OHV8気筒のかったるいアメ車エンジンよりも、バルブトロニック初搭載で噴け上がりも凄まじいBMWの自然吸気8気筒のほうが単純に興奮できる思うのですが・・・。

  やっぱりこのクラスのBMWに好んで乗る連中なんて、しょせんは医者とか弁護士とかちょっと変わったヤツが多いですし、それらの多くが高級車をラグジュアリーなオトナの雰囲気で乗りこなすより、スバルユーザーのようなヤンチャさが目に付く純情派が多いみたいですから、そんなのと同一視されると考えるとちょっと乗りにくいのかもしれません。

  完全に余談ですけど、BMW一筋!とか宣言しているブログをちょいちょい見かけると、必ずと言っていいほどに書き方がインテリなんですよね。「修正主義」というか、研究者が自分の理論に実験結果をこじつけるかのような、ゴリゴリ感が文章全体に散らばっていてしばしば唖然とさせられる事が多いですね。BMWが・・・ホンダ車よりも噴け上がりが悪く、日産車にスペック面で歯が立たず、スバル車よりもトラクション性能が低く、マツダ車よりも静音性が低く、スズキ車よりも安全性が低いという現実が直視できていないんですよね・・・。プリウスのお下がりの素材に三菱のターボ技術使って南アフリカの会社に委託して作られてるのがBMWの現在位置なんですけどね・・・。

  そしてそんな南アフリカ製に乗っている輩ばかりが、私のブログに土足でやってきて「オマエの文章には根拠がない!」とか偉そうなコメント残していくのですから笑えます。こいつら本当にクルマのことわかってないんだな・・・などと思いながらも、要求された「根拠」をいちいち義務感に苛まれながらもイヤイヤ説明するんですけど、彼らがそういった真っ当な話をすぐに理解できるだけの柔軟な頭があるならば・・・南アフリカ製の右ハンドル限定のコクピットが歪なクルマを好んで買わないと思うんですよね。3シリーズの右ハンとか乗る度にハンドル軸が内側を向いているような気がしてならないんですよね。そもそもあの狭苦しいコクピットからして好きになれないですけど・・・。

  いまさらの話ですけど、BMWってEV以外のモデルは、全て3種類のBMWのプラットフォームと1種類のMINIのプラットフォームで賄っています。早い話が5、6、7シリーズ(共通L6プラットフォーム)が同じで、X5、X6が大型SUV用の特別シャシー(L4)を使い、残りは「L7」と呼ばれる汎用FRシャシーを使っています。そしてFFモデルはMINIのものを流用しています。2010年に一斉に採用されたL4・L6・L7の3つのプラットフォームは、L4が米国(スパルタンバーグ)、L6が本国、L7が南アフリカ(ロスリン)、中国(華晨)での生産を念頭においた生産地の役割分担もあるようですが、今後大きく販売を伸ばすと予測される中国市場におけるカテゴリーにあわせて、L6(上級)とL7(下級)の2つのシャシーを作ったと言われています。

  中国で最もシェアを持っているのはVWですが、これは中国国内で最大手の「第一汽車グループ」と組んでいることも大きく影響します。共産党幹部の専用車を手掛ける第一汽車は中国政府の手厚い保護が当然にあるので、VWとドイツ政府はあの手この手で擦り寄って大成功を収めました。その一方でトヨタとマツダは中国バブルが本格化する前に第一汽車との合弁を取り消しています。まだフォード傘下だったマツダはともかく、HV技術の流出を嫌って合弁の拡大を渋ったトヨタは完全なミスチョイスでした。

  ちょっと横道にズレましたが、そんな中国で影響力がある第一汽車グループのプレミアムブランド「紅旗」と一般ブランドである「第一大衆」がターゲットとする客層に合わせてBMWも「紅旗」=L6、「第一大衆」=L7と想定してのクルマ作りが行われているわけです。「紅旗」の主力車種はトヨタのライセンスを買い取ったクラウンマジェスタをベースとしたモデルで、「第一大衆」はVWのゴルフのセダン版であるジェッタをベースにしています。マジェスタに対抗するためにL6には同等の高性能サスが組み込まれました。一方でL7はゴルフ・ジェッタと同等のごくごく一般的なサスで間に合わせています。

  現行のF01/02モデルでは、シャシーが5シリーズ(F10系)と共通になったため、無理に750iを選ばなくても、550iでBMWのフラッグシップ気分が味わえる?といっても良さそうです。むしろエアサスなどのフワフワした要素を排除できる550iの方が純粋にドライビングを楽しめそうです。とは言っても550iも本体価格1100万円ですから・・・もしお金が出来てRC-Fでも買おうかな?というときには有力候補かもしれませんけど。

  BMWだからやはりシャシーのことを最優先に考えると、M3を買うぐらいなら550iを選ぶのが当然になると思います。さらに普段走らせるにしても、L7シャシーのBMWとL6シャシーのBMWでは乗り味が大きく違う(L7車で満足できるハンドリングが未だにない!)だけでなく、周囲からの視線も変わってきます。ただ悲しいのは5シリーズと7シリーズのデザインの差も案外無視できないことです。F10系5シリーズのエクステリアって決して褒められる出来ではないですし、6シリーズもスタイリッシュとはとても言えないやたらとメタボな印象(これはパナメーラの影響か?)で、結局のところ5・6・7の3台をじっくり見比べると、当たり前ではありますが全体的に伸びやかで、個性を感じさせるパーツも豊富に付いた7シリーズが圧倒的に優れています。

  「俺はBMWの自然吸気8気筒に乗りたいんだ!」っていう密かな願望と現実的な中古価格に魅せられて、先代7シリーズを300万円くらいの予算で本気で探してみよっかな・・・なんて衝動が週に2〜3度はやってきますね。個人的な理由ですが、実家の南側に3階建てをつくった方が5シリオーナーなので、家の前に横付けしてやろうかな・・・ってのもあるのですが、このクルマはなかなか中毒性がありますね。7シリーズ・シンドロームとでも名付けましょうか、それにしても中古価格は魅力だと思います。ちなみに先代の5シリーズも100万円前後のバーゲン価格ですけど7シリーズとは違う低スペックシャシーなのでダメですね(直6自然吸気はちょっと魅力ですが・・・)。

  
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2015年7月31日金曜日

アストンマーティンV8ヴァンテージ 「知られざる日本スペシャル!」

  今月号のルボランを読んでいたら、1000万円級スポーツモデル対決として、「ケイマンGTS」と「レクサスRC-F」の動力性能の比較テストに目が留まりました。車重1400kgと1800kgを比べるという企画になんじゃこりゃ?という想いを感じつつも、素直に読んでみるとなんでこの2台が選ばれたのか?という意図は十分に伝わってきます。おそらくこの企画は編集部がクルマ2台とサーキットを用意し、清水和夫氏がそれを存分に吟味してその性能と印象を記事にするという段取りになっているようです。

  少々失礼ですが、この2台をブッキングした編集部の人はとてもいい仕事をしていると思いますけど、肝心の清水氏がこの2台が選ばれた意図がイマイチ解っていないのではないか?という印象を受けました。ピュアスポーツの性能基準にするならまちがいなく「ケイマンGT-S」に軍配が上がるでしょうし、単純に一人乗車で限界性能を探るという条件ならなおさらで「レクサスRC-F」に勝ち目は無いわけです。しかし今回は「こんなアンフェアな条件でRC-Fを貶めるな!」なんて思いは少しも湧きませんでした。

  テスト結果も少々意外で、400kgも重い「レクサスRC-F」が「ケイマンGT-S」とブレーキ性能がほぼ一緒という驚異のデータが出ています。この結果はレクサスのイメージを大きく変えることになりそうです。なんといっても相手が「ブレーキ王」のポルシェです。「RC-F」が「BMWZ4」や「メルセデスSLK」にブレーキングで互角であっても全然驚きませんが、相手が「ケイマン」ですからこれは価値がデカいです。「レクサスRC-F」はこんなにいいクルマだったとは!あとは車重が150kg軽ければ、がむしゃらに貯金したいですけどね・・・。ちなみに何で清水さんは企画の意図がわかっていないのか?というと、この自然吸気スポーツモデル対決の場に、完全なる部外者といえるクソ・ターボの「BMW M3/M4」や新型の「C63AMG」を持ち出してきたことです。

  ほかのライターもしばしば「レクサスRC-F」のレビューで引用していますが、「BMW M3/M4」や「メルセデスC63AMG」はレクサスの開発者としては一番比較してほしくない相手なんじゃないですかね。おそらくレクサスの開発者は3シリーズやCクラスをある意味で軽蔑しているはずです。レクサスRCは発売当初から、トヨタのアイデンティティとも言えるハイブリッドユニットが設定されていますから、「燃費を気にする人」と「官能を求める人」を完全に分けたマーケティングをしています。それぞれに高い顧客満足度を目指していて、その中で5LのV8自然吸気という魅惑のユニットが実現しました。一方で最新のBMWやメルセデスは高性能モデルであっても10km/Lを軽く超える燃費を出さなければ!みたいな曖昧さが介在しています。「RC-F」と「M3/M4」を不用意に同列に置くライターを見かけるとちょっとデリカシーが無いな・・・と感じてしまいます。

  さてBMWやメルセデスを脇役に追いやり、輝きを見せる「ケイマンGTS」と「レクサスRC-F」ですが、このルボランの企画で明らかになったのは、1000万円使えるなら当然に選択肢に入るであろう、自然吸気のスポーツエンジンを持つこの2台が、どちらも「未完成」だったということです。400kgも重い相手である「RC-F」に加速も減速も同等の結果を出された「ケイマンGTS」には、やはり不満が残ります。旧式フラット6エンジンを使い続ける限界と、ポルシェがここ数年なかなかモノにできていない可変ダンパーを組み込んだ足回りの開発に、まだまだ大きな課題があることがハッキリしました。一方で「RC-F」はあと150kgのダイエットでクルマの価値が数倍上がる(価格も上がる?)、けど現状では「峠」では使い物にならないという話です。

  しかし実際に、ドイツと日本それぞれの頂点といってもいい2台にケチが付けられるほどの「理想的なスポーツカー」はどこにあるのでしょうか? 先日ちょっと人生観が変わるような体験をしました。長野〜群馬の県境の峠をゆるゆると走っていると、なんと「V8ヴァンテージ」を見かけました。「こんなところにアストンマーティン?」めちゃくちゃビックリして、停止して道を譲ったあとしばらく呆然と見送りました。有名な碓氷峠ではなくて、かなりマイナーな県道124号です。峠区間にはかなり長い区間センターラインもありませんし、その日は土曜日でライダーもちらほらと駆け抜けていきます、あんまり無茶できるルートではないですけど、早朝に走る分には交通量も少なくて気に入っているわけですが・・・。

  そんなところに「ヘビー級スポーツカー」がやってくるなんて考えもしなかったですけど、この「V8ヴァンテージ」にとってはここが最良のステージだ!と言わんばかりの滑らかでリズムのいい走りをしていました。「アストンマーティン」ってこんなに器用なクルマなの!?ってのが率直な感想でしたが、家に帰ってあれこれ調べると、「全長4385mm、ホイールベース2600mm、車重1630kg」に加えて「自然吸気4.7LのV8」しかも「ドライサンプ」。なるほど!こりゃ凄いや・・・。

  レクサスはより究極的な「RC-F」を目指すなら、この「V8ヴァンテージ」を手本に、構造そのものの軽量化と、エンジンのドライサンプ化で低重心とすることで、よりピュアスポーツに近づけるのでは?と思います。「ケイマンGTS」はミッドシップゆえにフロント荷重に問題が起こりやすく、旋回性能にムラが出てくるので、それを電子制御で過度に抑え込む設計は、今では安全上必須なんだと思います。しかも911を超えてはいけないという制約がブランド内で存在するのでパワー一辺倒にも出来ず、しかも「トヨタ86」のような気持ちよく振り回せるモデルも人気になっている中で、いまいち「売り」がハッキリしないクルマかもしれません。

  ポルシェというのはやはり「アウトバーン仕様」が原則のスポーツカーであり、ボクスターに使われた「プロムナードカー」という表現も、「トヨタMR-S」や「ホンダS660」といったミッドシップ2座オープンスポーツというグループを指すものであり、絶対的な戦闘力を高める方向には構造的に持っていきにくいという「矛盾」を孕んでいるように思います。やはりフェラーリだ!ランボだ!マクラーレンだ!とばかりにミッドシップを特別視する風潮が続く限りは、日本の「峠」を楽しむ究極のクルマ作りは進んでいかないのかもしれません。「V8ヴァンテージ」という知る人ぞ知る「日本スペシャル」に、近いクルマを出したレクサスは今後も応援したいですし、ポルシェにも次に登場する中型セダン「パジュン」発売の際には大いに期待したいと思います。


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2015年7月19日日曜日

アウディTT 「VWグループがやや神憑っていると感じるところ」

  毎度毎度ですがハッキリ言ってしまうと、VWブランドのクルマはあまり好きではないです。理由はいくつか(も)あって、「華がない」「個性がなく愛情が持てない」「すぐ壊れそう」「エンジンが安そう」「エンジン以外も安そう」などなど・・・。そしてどのモデルも基本的にパッケージがオカシイのでは?と感じます。ゴルフ、パサート、ポロといったライバル関係のハッキリしたモデルはともかく、ザ・ビートルはクラシカルな復刻モデルだから仕方はないですけど、見るからに悪そうな居住性に耐えてまでこだわるデザインなのか?と素朴な疑問が湧きます。

  しかしVWの看板モデルである「ゴルフ」に乗ると、やはり評判通りにいい走りをします。輸入車ブランドだととりあえずハンドリングもペダルもコントロール領域が中途半端で、日本メーカーが誇る「看板車」と比較した場合に熟成不足がはっきりするものですが、ゴルフ7はターボエンジン搭載車としては見事なレベルの操作性を実現していると思います。この感覚はトヨタ車や日産車ではなかなか引き出せない、欧州小型車の雄VWだからこその「味」で、日本メーカーでいうとスズキに近いかなという気がします。「VW=ドイツ版スズキ」とカーメディアが解釈してくれればいいのですが、そういった表現はまず見た事がないです。

  何が言いたいか?というと、自動車メーカーはそれぞれに得意なサイズというのがあるってことです。トヨタとVWは得意としているサイズが違うので、マークXとパサートを比べればトヨタがいいと感じますし、オーリスとゴルフを比べるならば、やはりVWが優れているように思います。そしてVWに高級感であるとか、トヨタに機敏さを求めたりするのはやはり違和感を感じます。スズキ→ホンダ→VW→スバル→ポルシェ→BMW→マツダ→トヨタ→日産→メルセデスの順番で、得意とするサイズが大きくなり、看板モデルに置き換えるとスイフト→フィット→ゴルフ→インプレッサ→911→3シリーズ→アテンザ→クラウン→スカイライン→Sクラスでしょうか。まあクルマ選びの参考にしたいです。

  ポルシェに隣接しているエリアが、最も「走り」に関して期待できそう!なんて安易なことは言いたくないです! しかしスカイラインやマスタングがデビューしたいまから50年前にすでに前身モデルとなる「356」(1947年から生産)から引き継いだ名声を博していた「911」があって、今に至るまでに走りに関して妥協する事無く進化を続けてきた果ての「着地点」にはそれなりの重みがあるとは思います。「走り」に関して使いたい装備がちょうど収まる4シーター車のサイズ、あるいは直進安定性や旋回性能が無理なく発揮しやすいサイズなのだと推測できます。

  クルマのサイズに関しては、一般的にA、B、C、D、E、Lと6段階のセグメント表記が使われますが、結局のところは「911未満の大衆セグメント」「911ガチンコセグメント」「911・アッパーラグジュアリーセグメント」の3段階くらいで比べておけば十分じゃないか?と思っています。確かに基準となる「911」はベースモデルでも1000万円する高級スポーツカーなんですけど、その成り立ちは「乗用車としての理想の追求」であり、4シーターであることに常にこだわってきたわけですから、れっきとした「普通乗用車」です。まあ「911と同じ方向性のクルマ」とそれよりも「簡易的な小型サイズのクルマ」と「911よりもゆとりがある高級車」の3グレードにザックリと分けてしまえば、わかり易いですし、メーカーに変な言い訳をさせない効果もあります。

  ちょっと余談です。歴史的な背景から「911」をスタンダードにさせてもらいましたが、ポルシェが先述の「356」を発売した1948年の前年には、トヨタから「トヨペットSA」という当時としては非常にハイスペックなモデルが、91万円という法外な価格で発売されました(現在の価値で換算するとレクサスLFA以上!)。もしこのクルマがファンに愛され開発され続けたならば、トヨタから「911」みたいな伝統のGTモデルが生まれる可能性があったわけです。

  しかしナチスが作ったアウトバーンに相当するものが無かった日本では、ポルシェを育んだようなクルマ文化がすぐに発達しなかったのは仕方のないことだと思います。のちにモータリゼーションの象徴とされる名神高速が部分開業する1963年にスカイラインが登場してから、やっとポルシェの後を追い始めたようで、およそ15年のタイムラグがあったようです。ただし1964年にデビューしたばかりのスカイラインGTがポルシェ904GTS(ポルシェの高性能レース仕様車)と互角の性能を示した「伝説の日本GP」が最初のスカイライン神話として伝えられていますが・・・。

  さて話を戻しますが、「911未満セグメント」は、近年のダウンサイジングの潮流のなかで、なかなかの盛り上がりを見せているようです。先ほども申しましたが、トヨタや日産あるいはメルセデスといった門外漢が適当につくったクルマよりも、このセグメントに重点を置いているスズキ、ホンダ、VW、プジョーといったブランドのクルマがやはり乗ってみると好印象ではあります。マツダの取り扱いには悩みますが、このブランドにとってアクセラやデミオは決して「真打ち」では無いと思っています(RX7かコスモの復活を!)。このセグメントに新たに「高級化」の波を持ち込もうとしているのが、BMWミニとアウディです。911が1000万円なんだから、「911未満」でも500万円くらいしてもいいよね!といったところでしょうか。

  しかしベースモデルで500万円オーバー(542万円〜)というのは少々やり過ぎでは?というのが、いよいよ3代目になるアウディTTです(後から廉価モデル1.8Lが上陸?)。VWグループの共通プラットフォームを使った2Lターボですから、いわゆるゴルフGTIのアウディ版スペシャルティカーといった内容のクルマです。出力は230psまで上げてあり、ホイールベースを「2400mm」まで切り詰めてあることで、デザイン以外でもGTIとはいろいろと違った要素が多いクルマにはなっています。この2400mmというホイールベースに重要な意味があって、このサイズこそがポルシェ356の前にフェルディナンド・ポルシェが設計した「kdf」というVWの原点とされる名車と全く同じになっているのです。

  VWがグループ全体としてアウディTTにどのような使命を与えているのか?その詳しい内容までは伺いしれません。しかし世界のクオリティカーの「標準ゲージ」となった911に対し、「911未満セグメント」における理想型を目指したクルマとして、いろいろなことを暗示させてくれる設計のようには感じます。そして同時にVWグループとして「911アッパーラグジュアリーセグメント」には「ベントレー・コンチネンタルGT」が置かれています。いろいろなブランドを傘下に収めてそれぞれ適材適所で、「アウディTT」「ポルシェ911」「ベントレーコンチネンタルGT」という4シーターのGTカーを3クラスに分けて配置するというヴィジョンを見せられると、VWグループが自動車文化全体をとても良く考えているのが理解できます・・・。いや〜素晴らしいことだと思います!

  全くの余談ですが、
BMWグループは「ミニJCW」「M235i」「ロールスロイス・レイス」。
フィアットグループは「アバルト695ピボスト」「アルファ・ジュリアQFV」「マセラティ・グランツーリズモ」。
トヨタグループは「トヨタ86」「レクサスRC-F」「レクサスLSクーペ(登場予定)」。
ルノー日産グループは「ルノー・メガーヌRS」「GT-R」「インフィニティQ100(登場予定)」。
などなど非常に重要なモデルが多いですね。今後も覇権を賭けての好勝負が生まれることを期待したいです。

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↓沢村慎太朗さんが大活躍で読み応えありますよ!
  

  

  

  

2015年6月22日月曜日

シビックtypeR 「日本発売決定! ホンダの本気が見られる?」

  最近はホンダのニュースが連日のよう目にします。怒濤の新車攻勢で、しかもターボとハイブリッドが別のタイミングで出てくるので、1つのモデルで2度3度と露出します。先日も「ホンダ・新型ミニバン」とあるので、「え?」と見てみると、ちょっと前に発売されたステップワゴンのことだったりで、なんだ?この地道な草の根プロモーションは・・・。伝統の自然吸気Vテックからパワーユニットの大幅刷新の測ったホンダとしては世間の注目をなんとしても惹き付けていたいようです。

  さらにどういうカラクリかわかりませんが、完全にカーメディアをジャックしているのが「ホンダS660」です。マクラーレンに乗っているあのピストン西沢さんが納得して買った!なんて聞くと、とりあえず乗ってみないと!という気分にさせられます。他のモデルもなんだか「色気」がありますよね、グレイスもジェイドも決してクルマ好きにウケるタイプのクルマではないのですけど、カーメディアの評価はヴェゼルよりもずっと高い?気がします。どちらもターボ採用でちょっとイメージ変わったようで・・・(中国向け量販ユニットを使っているだけなんですけどね)。

  F1復帰の年(2015年)に合わせて、「NSX」と「シビックtypeR」の発売も決めていたようですが、肝心のF1が想像以上の苦戦を強いられていて、ホンダのイメージアップにはそれほど貢献していない・・・どころか、ほぼ"バックファイア"状態です。当初の2015年計画に綻びが出始めたことを察知したホンダはやや焦り気味にカーメディアに広告費をバラまいて、今後も続々と発売される新型モデルの話題作りに躍起になっているのかもしれません(予定通り売れないと困りますし)。ホンダの焦りがヒシヒシと伝わってくるようですが、実際には大したプロモーションもないのに秀逸なデザインで見事に大ヒットしたヴェゼル以降の新型モデルは、それぞれのジャンルでライバルに対して十分に競争力を持っています。そしてホンダの真骨頂と言うべきか、何より国内外の全てのブランドよりも「個性的かつ健康的なファミリーカー」を作れているように思います。「ミニバン」や「3列ピープルムーバー」なんて個人的にはあまり興味ないですけど、「なんだこれ!?」と興味を惹く何かがあるんですよね。トヨタ・エクスワイアは見かけても全くササりませんでしたが・・・。

  あとクルマ好きにとってちょっと嬉しいのは「ホンダ VS BMW」の土俵が突如出現したことでしょうか。「ジェイド」と「BMW2グランツアラー」はまるで示し合わせたように「3列シート・3気筒ターボ」をグローバルでの標準スペックとして登場しました。「日本が誇るエンジン屋のホンダ」と、「ドイツの一流エンジン系ブランドのBMW」が、新型モデルでここまで「シンクロ」するのもなかなか面白いです。「走り」という点では、ジェイドの方が重心の低さにこだわりがあってよさそうに見えますね。ただしどちらも米国市場には投入されておらず、中国マーケットを主戦場とするクルマのようで、日本のクルマ好きが愛するようなテイストとはややツボが違う気もしますが・・・。ファミリーカーを見て楽しい気分になるなんてほとんど無いですけど、そんなところがホンダとBMWのブランド力の「コアコンピタンス」なのかも。

  今回復活する「シビックtypeR」は、ここ最近のホンダ車を微笑ましく思いつつも、やや距離を感じていたクルマ好きにとっては、久々に「前のめり」になるホンダのスペシャルティカーです。しかし予想されている日本価格はなんとも強気な「600万円以上」だそうで・・・欧州でも日本でも「メルセデスA45AMG」と同等の価格というのは、一体どう受け止められるのでしょうか。まあホンダにしてみたら、「メルセデスA45AMG」は一流ブランドにとっては「畑違い」のスモールカーでFFベース!しかもただの直線番長でしかない!というクルマでユーザーを増やしたい!という世の中をナメきった態度が少々気に入らないのでは?と察せられますが・・・。「typeR」はこれとはレベルが全然違うということを、価格面で十分に示しておきたいということなのかもしれません。

  けれども日本で発売開始するときには、「typeRがこんなに高いなんて!これならA45AMGを買うよ・・・」なんて言い出す不埒な連中がそこら中から湧いてくるでしょうね・・・。カーメディアのプロライターの中からも・・・出てくる? もし有名ライターだったらブログで糾弾してやります。もちろんまだ乗ってないですけど「typeR」ですから乗り心地は果てしなく悪いのは十分に想定されますから、普段の足にするなら「A45AMG」という意見ももちろん一理あります。1台所有ならばほぼ間違いなく「A45AMG」の方がベターでしょうが、スポーツカーの本質にこだわる熱い人にとっては結論は言うまでもありません。

  「3ペダルのみ」のtypeRと、「2ペダルのみ」のA45AMGは、実際のところユーザーの取り合いに発展することはほぼ無さそうです。この棲み分けはこのクラスにとっては非常に大切な要素だと言えます。3ペダルと2ペダルを併存させるようになって間もなく、「ランエボ」の消滅がアナウンスされ、「WRX」もイマイチ盛り上がりに欠けるなどなど、「AWDターボ」という世界観を作り上げたこの2モデルは「冬の時代」を迎えました。もっともそれ以前にモータースポーツへの参戦が無いなかでは開発も何を拠り所にしていいか分らない状況が問題だとは思います。2000年に登場したWRX STIは先代よりもホイールベースを縮めて後席の居住性などまるで無視した設計でしたが、それは全てWRCに勝つため!でそれが「是」とされた頃(しかもスバルの業績は危機的)に比べれば、現行モデルを取り巻く環境なんてもはやスバルですらないと言う人も・・・。

  三菱やスバルよりも断然におカネがあるホンダには、このクレイジーなまでの「ストイックなジャパンスポーツ」の伝統を守りたいという責任感が感じられます。今後は全くの白紙だそうですが、なんとか盛り上がるといいですね。ホンダは2015年に3台のスポーツカーを発売し、それぞれがスポーツカーの細分化した「役割」に適った設計になってます。「スーパーカー」「レーシングカー」「プロムナードカー」の3つの代表的な機能を、それぞれ「NSX」「シビックtypeR」「S660」という枠組みの中で、(完成度はともかく)徹底的に追求する姿勢は称賛に値すると思います(上から目線で恐縮です)。どこぞの大手メーカーが「ドリフトカー」なるお遊びジャンルを開拓していらっしゃいますが、なんか少々マヌケじゃないですか?

  フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンに「V6+HV」で対峙する「NSX」や、ボクスター、ロードスター、SLK、Z4といった「オバさんスポーツカー(プロムナードカー)」にエントリーする「S660」もそのコンセプトの追求は十分に素晴らしいと思います。しかしですね・・・NSXを楽しむにはやっぱり有名な高級住宅地に大豪邸、あるいは都心のタワーマンションが必要ですよ。S660は自然豊かな所に立地する風情ある別荘のガレージに置いておきたいですし、そしてtypeRを楽しむならばサーキットが必須じゃないかと。ストイックなクルマ作りは結構ですが、やはり社会全体が豊かに底上げされないと、なかなか望んだ結果を出すのは難しいかもしれないですね。なんだかんだでプレリュードみたいな欲望の詰まった「かっけー」デザインのクルマがまだまだ結果を出しやすいのかもしれません(だからどうした?)。

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↓このロゴが一番威圧感ありますよ!「AMG」とか「M」とか外してこれ付けましょう!
レクサスなんかにもどうですか?

  

  

  


  

  

2015年6月11日木曜日

BMWアルピナB6 に超絶AWDが設定されました!

  日産がスカイラインのボディにGT-Rのユニットを組み込んだ「スカイライン・オールージュ」というハイパフォーマンスセダンのプロトモデルを以前に公開していました。そのままの市販化に大いに期待してましたが、どうやら開発を中止してしまったという情報が年明けごろに駆け巡りました。現行のV37になっていよいよEセグに迫るサイズまで拡大したスカイラインだからこそ「最速セダン」の称号に相応しいクルマになりそうですし、最速GTカーとして「ポルシェ911ターボ」と伍する存在まで登り詰めた「GT-R」のV6ツインターボを使えば、十分にドイツメーカーがお互い凌ぎを削る「最速セダン」の座を奪うことができたでしょうが、情報が正しいならばなんとも残念なことです。

  やっぱり日産は「最速」がもっとも似合うメーカーですし、日本の技術力を見せつけてきたこれまでの実績があったからこそ、ファンもアンチも含めあらゆるクルマ好きから一目置かれる存在でありつづけています。挑戦をやめた日産なんて・・・そんな逆風が吹いたときに重大さに気がつくのかもしれませんが・・・。さて実際に「最速セダン」の頂点に君臨するクルマは何かというと、ポルシェの「パナメーラターボS」ではなく、メルセデスAMGの「E63S4MATIC」だとされています。メーカーが公表している0-100km/hのタイムで3.6秒というスーパーカーを超える水準です。巷では「カイエンGTS」がスポーツカーを蹴散らす走り!などとやたらと持ち上げられていますが、その加速タイムはせいぜい5.1秒程度(ゴルフRくらい)です。しかし驚異の「直線番長」にしてSUV最速のカイエン・ターボSではなんと4.1秒に達するそうです。それでもまともに考えれば、最速SUVが最速セダンよりも速いなんてことはまずあり得ないわけですが・・・。

  「ポルシェ」と「メルセデス」の2大高級ブランドが最速セダンの座をかけて対峙する中で、AWD専門ブランドの意地としてアウディからも「RS7スポーツバック」という5ドアモデルが発売されていて、こちらも驚異の3秒台を記録しています。そして意外なことに「スポーツセダン」の代名詞と思われてきたBMWですが、その最速を追求した「M5」はなんとタイムが4.3秒で、カイエンターボSに遅れをとってしまっています。あのBMWを象徴するような超絶パフォーマンスモデルが、SUVに加速勝負で勝てないなんてことがあっていいか? さらにこのままあと数年もスペックを変えずに放置すれば、間もなく発売されるという「VWゴルフ」のRを超える超絶スペックモデルにも追い越されるかもしれません。大排気量V8ツインターボを搭載したブランドアイコンの超高級車が、大衆向け小型車をベースにした直4ターボに負けるとなると、これは由々しき事件です。

  おそらくBMWもその状況は十分に理解しているとは思いますが、新しいMモデルとなるM3/M4は、それとは全く別方向に進んでいるようで「燃費向上」を至上命題に掲げています。もっともM3は北米価格が6万2000ドル程度なので、実用性を高めつつBMWのパフォーマンスモデルを楽しんでもらおうという「市販車」目線が強いのかもしれません。誤解を恐れずに言ってしまうと、最近のBMWはまるでホンダ?あるいはスバルかマツダのような方針でクルマを開発していると言っていいかもしれません(それはそれで素晴らしいことですし・・・)。余談ですが、ホンダが近日の発表を予定しているといわれる新型NSXは、まさかカイエンターボSに遅れをとるなんてことはないでしょうけども、実際のところはどうなるのでしょうか?

  BMW本体は、メルセデスやポルシェ/アウディと直接に争うことを避けていますが、日本への正規輸出ルートを持つチューナーの「アルピナ」から、6シリーズをベースとしたAWDハイパフォーマンスモデルの発売がアナウンスされました。「アルピナB6・ビターボ・グランクーペ・アルダッド」という長い名前になりましたが、公式タイムは堂々の3.8秒に達していて、これでBMWのセダンはSUVよりも遅いという「悪い噂」は払拭できそうなので、セダン好きとしてまずはめでたいことです。それにしても本体価格が2200万円で、2色(ブルーとグリーン)ある塗装オプションで60万円!だそうです。未塗装で納品してもらって、どっかの塗装屋に持ち込むなんて人もいるんですかね。

  頂点のクルマ「E63S4MATIC」よりも400万円高い価格設定は、「AMG」=「アルピナ」だとするとそのまま「グランクーペ」仕様の価格差になるんですね。おそらく第2弾として「E63S4MATIC」と同じくらいのコスパを誇る「B5ビターボ・アルダッド」がすでに待機していると思われます。どうも現行の6シリーズはキャビンが膨らみ過ぎていて、あまり美しくないので、むしろシンプルな5シリーズをベースにしたモデルの方がそそられます(生意気言ってすみません)。そしてよりリアルなBMWを楽しむならば、ラジアルタイヤを装備し続けるアルピナやMを多少無理してでも買いたいですね。最近では韓国製ランフラットを標準装備するようになったBMWのベースモデルは、どれもこれもアシをゆるめて乗り心地を誤魔化していて、やや走りの本質を見失ってしまっている気がします(ほんとに生意気ですみません)。

  それでもBMWがまだまだ開発の熱意を失わずに、メルセデス、ポルシェ、アウディに好き勝手にさせないという気迫をみせてくれたことは嬉しい限りです。メルセデスやアウディと比べて、BMWには今もなお日本人の繊細なタッチに十分に応えてくれるだけの洗練されたフィールのステアリング、アクセル、ブレーキがあります。その操縦感覚は、日産、マツダ、スバルが持つあの惹き込まれるような奥深いフィールにも対抗できる恐るべき輸入車ブランドです。8ATや直6がBMWの商品力という意見をプロ/素人問わずあらゆるところから聞きますが、そんなモジュラー的な部分ではなくて、なんといってもBMWはコクピット主義で、「操作感」こそに魂が宿っています。もし最速セダンを手に入れる時がやってきて、「E63S4MATIC」があり「RS7」がありそれと同等の価格で「B5ビターボ・アルダッド」が発売されたならば、こういう超絶クラスのクルマだからこそ、BMWが持つ「心地よさ」の中で楽しみたいと思いますね。・・・日産も考えを改めてくれないですかね。

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2015年5月30日土曜日

レクサスRC-F 「一般人でも手が届くと社長が言ってますね・・・」

  いやー!モリゾー社長の仰る通りです! 「男だったらアルファードかレクサスRC-Fで間違いない!」くらいの放言をする自動車メーカーのトップを日本車ファンはずっと待ち望んでいましたよ。トヨタグループが全力を上げて最良のプライベート用途の高級国産車を模索したところ、この2台をそれぞれ究極の形にすることで収束しました!という意味のことを、分り易く「一般の人々でも手が届いて、しかも誰が見ても魅力満載のクルマ」と言っていましたが、なかなか自信満々な3月期決算発表での言葉だったと思います。

  レクサスRCではなくて、「レクサスRC-F」という言葉のチョイスにはやっぱり引っ掛かりを感じます。もちろんユーザー目線で判断すれば、「F」の一文字でクルマの意味合いが大きく変わりますし、「F」が無ければRCには全く興味が無いという人も多いはずです。実際のところベースのRCでも十分に素晴らしいクルマではあります。とりあえず同じベースモデルのBMW4シリーズやアウディA5には全く負けてないです。けれどもモリゾー社長は言うわけです。欧州のライバル車に勝っているとはいえ、ベースのレクサスRCでは平凡過ぎてもはや注目を浴びることすらできない、つまり魅力的ではない・・・(欧州車なんか本当につまらんし)。

  その一方で「RC-F」には、世界の自動車ユーザーが熱狂できる要素が十分に詰まっている!世界の人々が心の底から求めているクルマだ!と高らかと宣言しているわけです。これは無類のクルマ好きとして知られるモリゾー社長が、非常にバランス感覚に富んだ価値観を持っていることを表していませんか? 特にGTカーを愛する人々にとって、ライバルメーカーの雲行きが怪しくなってきていて、BMWやメルセデスAMGなどの欧州メーカーがハイテク機構を付けたV8自然吸気エンジンを開発できなくなりました。そんなトレンドに失望してミッドシップスポーツなどへ流出しそうな人々を、再びGTカーへ振り向かせるために、レクサスはどこまでもフィールに拘って作りましたよ!だから本当にクルマの解る人ならばドイツ車のターボ付きV8よりもレクサスRC-Fの方が優れていることがわかるはずです!まあ解る人がのれば、まったく異次元の気持ちのよさですよ!ってところでしょうか。

  今回のRC-Fに採用されたV8自然吸気の意味を俯瞰すると、2010年頃にアウディRS5とBMW・M3(E90)が繰り広げていたV8自然吸気の「ガチ・エンジン対決」に5年遅れでレクサスが参戦してきた格好に見えなくもないです。この2台(FRとAWDの変則対決ですが・・・)に匹敵するだけのシャシー(現行GS/ISから)を新たに開発し、いよいよクラス最良のGTクーペを作り上げたわけですが、目指すターゲットだったはずのM3は先に新世代(F30)へと移行して、V6のツインスクロールターボへと方向性を変化させてしまいました(ちょっと失敗?)。そして取り残された「RS5」も「AWD&自然吸気」というなんともヘンテコな設計がちょっと災いしてしまい、日産GT-Rよりも「遅い・うるさい・曲らない・止まらない・価格が高い」という立場に追い込まれ、全く売れる要素無しのクルマになっていまいました。

  しかし現行のRS5に搭載されている4.2L自然吸気ユニットは、2000年代に大躍進を遂げたアウディの象徴ともいえる素性の良いスーパーなエンジンなんです。4.2Lの過給なしで450psを搾り出すために、ほぼ物理的な限界値といわれるスピードまでピストン速度が上げられていて、エンジン屋アウディの技術の高さを如実に示すサーキット仕様のウルトラ超高回転エンジンです。8500rpmまで軽く噴け上がる「ロング」ストロークのエンジンなんて、他にはほとんど例はなく、せいぜいホンダの「Vテック」くらいのものです。しかしこういったエンジンを市販車で使う時代は徐々に終わりを迎えていて、現在のアウディの新型車に搭載されるV8は4Lターボは、気筒休止機構(バンクの半分だけを直4として使う)を組み込んだ、フィーリング的には全く「残念」なエンジンに成り果てています。

  これまで主導権を持っていた2台が、全く脚光を浴びずにフェードアウトするタイミングを狙って、残った市場をごっそりと持っていくのは、実にトヨタらしいマーケティングではあります。ホンダS2000とマツダRX8が相次いで市場から消えるタイミングで86/BRZを大ヒットさせた手腕は記憶に新しいです。しかしこの「RC-F」に関してはそんな顧客の分捕り合いなんてことはどうでもよいことで、このクルマが持つ「存在価値」は、アウディやBMW、メルセデスAMGなどとは本質的に無関係です。トヨタが1989年の初代セルシオ登場とともに作り続けてきた「UZ」「UR」シリーズのV8エンジンは、「量販メーカー・トヨタ」とは全く違う「世界最良の高級車メーカー・トヨタ(レクサス)」の根幹となる技術であり、トヨタの歴史の中でもおそらく最も気合いを入れて開発されてきたエンジンだと思います。つまり「こだわりのトヨタ」を買うなら迷わず「UR」(V8搭載モデル)にしておけ!ということです。

  モリゾー社長が「RC-F」と名指しするほどに「F」に拘った背景には、おそらく作り手側として絶対的に自信を持って提供できるクルマはこれだ!といった想い(共通認識)があったのだと思います。それとももしかしたら、社長の肝入りで作られた「RC-F」が86ほどには反響を得られていないことに少々焦りを感じているのかもしれません。さっさとこのクルマで結果をだしてGTカー好きな顧客を抱え込むことに成功したら、満を持してレクサスLSの2ドアクーペ版を発売する予定のようです。

  実際のところ3.5LのV6自然吸気を積むレクサスに乗ると、期待が高過ぎるせいか思ったほど感心できなかったりします。もちろんそれでも欧州車のスカスカな直4ターボとカスカスなステップATに比べれば、ペダルの踏み方一つで「走り」にキャラクターが出るなど、高級車としての魅力は高いですけど、「特別なステージのクルマ」という意識は残念ながら持てないです。あくまで「普通のクルマ」です。それこそレガシィB4とかティアナで十分じゃない?って思う水準です。モリゾー社長が「一般の人でも手が届く」といった意図は、RC-Fを買ってぜひ「特別なクルマ」を感じてください!というメッセージが込められているようです。これはいよいよ買うしかないかな・・・。


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2015年5月10日日曜日

メルセデスAMG GT 「スーパーカーの新時代が来た?」

  「ランボルギーニ」や「アストンマーティン」といったスーパーカー・ブランドのクルマが多く流通する地域は、今では完全に「中東」「中国」へとシフトしているようです。「ブガティ・ヴェイロンを持っている人と知りあいだよ!」と言われ、へぇ〜と思って聞いてみると、「その人は香港に住んでいる中国人だけどね』といった顛末だったりします。それらの地域は今ちょうど30年前の日本のバブルに近い経済状況になっていることで、クルマにお金をかけることに非常に意味が高いのだと思います。バブル期の上層階に位置する顧客の要求は、誰も持っていない「レア」な孤高のラグジュアリー・スーパーカーへと突き進みますから、高級車の価格もどんどんつり上がっていく傾向にあります。中国や中東で商売する人にとって必須なものといえば、いまでも「パテック」や「ヴァシュロン」クラス(つまり最上級)の高級腕時計なんだそうです。

  日本や欧州のような成熟市場では、クルマや時計にやたらとお金をかけなくても、いくらでも「信用」を担保する方法はあるので、年商100億の会社を作るために、4000〜5000万円もする「ファントム」「ミュルザンヌ」「アヴェンタドール」に乗る必要はほとんどないです。しかし、クルマは全て軽自動車で良いとも思いません。やはり成熟市場といえども、ある程度のクルマは必要で、それぞれの目的に合った「それなりのクルマ」を選ぶことには、大きな意味(効用)があります。例えば、私はクルマがとても好きなので国産・輸入モデル問わずに気になったらすぐに試乗に行ってしまうのですが、当然にディーラーにはクルマで出掛けていきますから、「メルセデス」「BMW」「レクサス」「アウディ」「ポルシェ」といった高級車のディーラーにでも気兼ねなく入れるように、某国内メーカーのフラッグシップモデルを使っています。

  これは決してそうしたブランドへ「国産のコンパクトカーでいくのは恥ずかしい!」という意味ではありません(まあ多少は気になりますが)。あくまでも試乗したあとに、自分のクルマに戻って帰る時に、惨めな気分にならないようにするためです。日本のブランドのフラッグシップモデルならば、とりあえず「ポルシェ911」に乗っても、「レクサスLS」に乗ってもそれほどに落差を感じることはないですから、試乗を終えて自分のクルマが嫌いになったなんてことは1度もないです。「走行性能」も「乗り心地」も「内装」も揃って高いレベルにありながら、維持費もそれほど高くないので、壊れるまで買い換えなんてできないと試乗に行く度に感じます。そしてがっかりしないだけでなく、試乗するクルマの特徴を理解する物差しとしても良く機能しますし、ドライバーが受ける「フィール」を比較的に判断しやすいと思っています。

  試乗して見積もりを貰ってあれこれ実際に考えると、今の日本のような成熟市場で今後は存在感を増してくるであろうクルマが、「レンジローバー・イヴォーグ」「レクサスRX/NX」「ポルシェ・マカン」といったスタイリッシュでラグジュアリーなファミリーユースな高級SUVでしょうか。そしてそれよりも「プライベート感」「非日常」「走り」を求める人々には、「アウディTT」「ポルシェ・ボクスター/ケイマン」のような2シーター・ラグジュアリーをセカンドカーとして所有するスタイルが、そこそこ広まりそうな予感です。もちろんこれら500~800万円くらいの価格帯は決して安くないですし、フーガHVやレジェンドが買えてしまうと考えると「あれれ・・・」という気がしますが、それでもアルファードの代わりにこれにする!と言われれば納得できる部分もあるのではないでしょうか。ここでちょっと気がつくのが、傘下のランボルギーニを中東や中国で売りまくりつつも、同じく傘下のポルシェで上手く成熟市場のニーズを拾っているVWグループの見事な戦略です。

  そんなVWグループに対抗すべく、古豪ブランド・メルセデスが新たに日本でも打ち出してきたのが、上位ブランド「メルセデスAMG」です。狙いとしては従来の「AMGモデル」をややブランド価値が曖昧になってきたメルセデス本体と切り離すことで、「価値ある高性能車を、素晴らしい価格で提供する!」といった新たなステージのブランドとして再構築することのようです。AMGモデルにはフェラーリやランボルギーニと同じように、マイスターの手組みによって作られる「専用チューンエンジン」が載っていて(一部は違いますが)、プレミアム商品を成立させるだけのストーリー性に富んでいますし、その精神に共感出来るならば2000〜3000万円に達する価格でも安く感じるくらいです。しかし成熟市場ではやはり3000万円以上する「趣味のクルマ」は売りにくいのが実情のようで、これまでのAMGのイメージを牽引していた「SLS」はだいぶ苦戦したようで、中古車市場でもタマ数が少なく、もっともリーズナブルなモノでも2000万円の価格が付いています(ちなみにSLSの本体価格は2560万円〜)。

  もちろん2000万円台の住宅を建てる日本人はそれこそたくさんいますから、3000万円のスーパーカーを買える人だってまだまだ少なくないですし、現実に東京の中心からだいぶ西に寄ったやや辺鄙な私の自宅の周辺でも何度かSLSを見かけたことがあります。それでも30年前のバブル期のようにサラリーマンがこのクルマに群がらないのは、(上から目線で恐縮ですが)日本人に大まかな価値観が身に付いてきたからだと思います。これまで舶来品に一方的に流され続けてきた日本人の意識を、ガツンと一発変える非常に大きな仕事をしたのがもちろん水野和敏氏が率いたGT-Rの開発チームというわけです。

  何が言いたいかというと、「Before・GT-R」と「After・GT-R」で日本のみならず成熟市場のスーパーカーに対する認識は大きく転換し、GT-Rショック(革命)を経たことで日本のスーパーカー市場は、「植民地からの独立を果たした」ということです。海外の高級ブランドの「言い値」で日本人ユーザーが有り難がってクルマを買う時代は2007年を境に終焉しました。そんな時流を全く読めずに登場した「BMW i8」は見事に惨敗し(あまり売る気はないようですが)、逆に時流を読み過ぎた「ジャガー・Fタイプ」は、なんでそんなに安いの?とツッコミが入りそうな価格設定になっていたりします。

  そして「SLS」の代わりに投入された新生「メルセデスAMG」のイメージリーダーとなる「GT」もこれまた「あっけにとられる」価格設定で、なんとSLSよりも1000万円も安い「本体価格1580万円〜」となっています。上級モデルの「GT・S」も(安いという意味で)破格の1840万円〜となっていて、なにやらこのフラッグシップの降臨に合わせて、1830万円だった最速セダンこと「E63・S・4MATIC」の価格が1727万円にこの4月から改定されたりしています(特にエンジンの仕様変更等はありません5.5Lターボのままです)。明らかにこれまでのAMGとは別のマーケティングが発動しているのを感じます。

  「メルセデスAMG」の公式HPを見ると、どうやら「様々なボディタイプ」が選べることを特徴にした、新しいスタイルの「高性能車ブランド」を目指しているように感じます。「コンパクト」「セダン」「ステーションワゴン」「クーペ」「ロードスター」「シューティングブレーク」「SUV」の7分類という大所帯を、大資本グループ傘下のレクサスやアウディに先んじて揃えた戦略は果たして上手くいくのかわかりませんが、ライバルはいまだに「上級レクサス」「上級アウディ」のブランド価値さえ確立できていない段階なので、それなりの「先行者利益」があるように思います。この新ブランドの求心力に引き寄せられ、700万円で「GLA45」を購入した顧客を、さらに「C63」「E63」「CLS63」へと誘導していくことになりそうです。

  スカイラインと同じ栃木工場のラインで製造されるGT-Rよりも、専用のAMGファクトリーで手組みされる「メルセデスAMG」の希少性・ストーリー性が薫るモデルの方が、同じお金を払うなら満足できるんじゃないですか?といわれたら、迷いが吹っ切れてハンコを押してしまいそうです。もちろん「日産GT-R」だってエンジンの原価だけで320万円かかってます。発売当初の777万円という本体価格の40%以上を占めている、高付加価値なクルマなのは間違いないですし、日本市場に価格破壊をもたらしている「ジャガー」のV8、V6エンジンに使われるスーパーチャージャーは、「日本イートン」という外資系ではありますが、従業員20名の日本の中小企業の技術力が光る「逸品」です。

  今後は「メルセデスAMG」「ポルシェ」「GT-R・日産」「ジャガー」がそれぞれのスピリッツを十全に発揮して、高性能車の可能性をさらに切り開いていってくれると思います。「高剛性ボディ」vs「アルミ軽量ボディ」、「8気筒」vs「6気筒」、「ツインターボ」vs「スーパーチャージャー」vs「自然吸気」、「RWD」vs「AWD」、「DCT」vs「ステップAT」などなど、まだまだクルマ好きを満足させてくれるに足るだけの多くの選択肢を与えてくれるブランドにはぜひ頑張ってもらいたいです。レクサス、BMW、キャデラック、フォード、アルファロメオ、ホンダ、マツダといった業績が好調な自動車グループの高性能を謳うブランドにもさらなる奮起を期待したいものです。

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2015年4月20日月曜日

メルセデスAMG C63 「E63S・AMGが大幅値下げしたなら、こっちも安くして!」

  いきなりですが「Dセグ・セダン」というのは、とってもとっても使い勝手がよろしく、ひとたび乗り始めるとなかなか止められないなんともクセになる「絶妙さ」が売りです。その一方でまだまだ「高級感がイマイチ」という意見も根強いようです。ゆえに「実用性」は満点でも、それ以外の点はあまり期待できないので、代表モデルであるレクサスISやBMW3シリーズの売れ筋が520万円(本体)というのは、やはりちょっと高過ぎるかな?という印象です。明らかにコンセプトで示すメインターゲットは、「若年層」「女性」「引退世代」で、この価格設定は"ベビー"でもやはり「セレブ」向けなクルマです。高級スーツを着込んで乗るようなクルマではない・・・と言われたらその通りかな?

  取り回しが気になってDセグセダンを選ぶくらいなら、いっそのことスポーツカーにする!というのも「大人な選択」なのかもしれません。といってもひと昔前と違って2ドアでオシャレなスペシャリティクーペはもはや「絶滅危惧種」ですし・・・、フェアレディZなんて至る所の中古屋に転がっていて「バナナの叩き売り」状態ですから、とても新車で買う気なんて起こりません。ひと昔前ならば、「ホンダS2000」がまだ現役で、「クライスラー・クロスファイアー」「プジョー・クーペ407」「アルファ・ブレラ」「VWイオス」などなどいろろありましたが・・・これらの2ドアが絶版しております。

  今でもBMW・メルセデス・アウディからそれぞれ複数の2ドアが出てますけど、この3ブランドから500万円くらいで買える2ドアってどうも「安っぽい」印象があります。無理して輸入車に乗っている感が出てしまうのも嫌ですね。そして何より、最近のDセグセダン(特にFR)は急速に後席の居住性が向上しているので、現行では3シリーズもCクラスも「実質2シーター」なクルマではなくなりました(まだ狭い?)。なのでスポーツクーペとは以前よりも「互換性」はなくなっていて、4ドア4シーターのパッケージが「商品価値」に織り込まれています。

  そしてちょっと前までは、評論家がしばしば新型のDセグセダンに対して、車幅は1800mmを越えてはダメだ!みたいなことを盛んに言ってましたが、これがまったくの真逆で、ワイドなボディはとっても見栄えがして、都内の道路事情を考えても苦労するところなんてほとんど無いです。東京の中心部でも何気に増えているBMWの4シリーズ(3シリーズをワイド化)をみるとこれはこれで全然ありだと思います。予想外に東京の風景に馴染みますね。むしろ高級車であることを意識し過ぎたグリルの現行クラウンよりもずっと東京っぽいです(名古屋のクルマが当たり前ってのはやっぱり変かも・・・)。

  残念ながら前評判の割に思ったほどは売れなかった新型メルセデスCクラスも、先代から大きく車幅を拡大して登場して、スタイリングに関しての不満はだいぶ少なくなったとは思います。先代はというと、サイズもそうですが、日中の2車線道路でサイドに並んだときに、日産ブルーバードシルフィかトヨタプレミオみたいな側面をしていて、今のメルセデスの各モデルとはだいぶ質感に差があります。これがたった1度のフルモデルチェンジだけでライバルブランド(質感に関して先頭を走るのはアウディとレクサス?)と全く遜色ない水準まで上げて来ました。

  もう何度も街中で見て確認しているので、これはもうメルセデスの狙いなんだと思うのが、「フロントデザインのチョイス」ですね。Cクラスのフロントはなかなか立派で、正面からみれば「C」だか「S」だか分からないくらいです。よくよく見れば、CLAとCLSはほぼ瞬時に違いがわかってCLAはとっても・・・な印象を与えるのに対し、Cクラスは真上からでも見ない限りはDセグより上のクルマに見えます。レクサスISや3シリーズがそうですが、上から見るとトミカのミニカーを見ているような縦:横の比でしかないことがわかります。しかし上からの見た目なんてハッキリ言ってどうでもいいですけど。

  デザインも立派になって、4シーターセダンとしての価値も持つようになったCクラスですが、日本向けの搭載エンジンがややショボい直4ターボのみです。ここまで気合いいれてサスペンションまで高級なものに変えたのだから、間もなく登場すると言われる新しい縦置き直6ターボ(できれば自然吸気)まで用意して登場してほしかったです。以前から他のブログで言っているのですが、FRの直4サルーンなんて一体誰得?なんだろう・・・ってことです。とっても悲しいことに欧州メーカーが一斉にターボを使い出してから、いろいろとクルマの意味が変節してきています。ダウンサイジングがメーカー都合の我田引水のように使われ、コンパクトカーと高級サルーンの境目があっさりと「クロスオーバー」しています。

  ユーザーが「コンパクトカー」に求める条件と、「高級サルーン」に求める条件のどこに合致する点があるんですかね? メルセデスはその境目を意図的に壊し、「コンパクトカー」を求めるユーザーに300万円台の「メルセデス」を提案し、「高級サルーン」を欲しがるユーザーには「メルセデスの品格は700万円〜ですよ!」みたいな商売を仕掛けるのでしょうか? 先代に比べて格段に良くなったCクラスに決定的に欠けているピースが、「高級サルーン」に不可欠なマルチシリンダーのエンジンです。何故だろう?と思っていたら、どうやら年内にはV6(直6ではない!)とV8がいよいよやってくるそうです。一つは従来からあった「メルセデスAMG・C63」で今回は5.5Lターボに換装されて登場するそうです。もう一つは「メルセデスC450AMG」というV6ターボだそうです。なんでAMGが付くの?・・・乗り出しはどちらも1000万円オーバーかな?

  ちょっとまとまりの無い内容になってしまいましたが、簡単に結論的な「希望的憶測」を付け加えてまとめると、「メルセデスに楽な商売をさせるほど、日本市場は甘くはない!」ってことを他のブランドは示すべきではないですかね。例えば・・・ホンダは自慢の2Lターボをアコードに載っけて日本に凱旋させてはどうですかね。スバルはレガシィが自然吸気だけの設定になってCVTとの相性が一気に良くなりましたから、ここで6気筒ボクサーを積んで高級化を狙ってはどうでしょうか? そしてマツダは・・・AWD化したアテンザに秘密裏に開発しているという新型ロータリーを積んじゃえ! 「セダン市場」というと各メーカーともに近寄りたくないかもしれないですが、今や玉石混交の「いいクルマ」市場で、「ポルシェ・マカン」と「トヨタ・アルファード」が異種格闘技戦を繰り広げています。セダンは脇役でいいのか?

全く触れませんでしたが「E63AMG・S・4MATIC」のカタログ本体価格が200万円ダウンしました!


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↓V35スカイラインが55万円で売ってますよ!

2015年3月21日土曜日

スカイラインクーペ 「苦悩?新型モデルに期待」


  ジュネーブモーターショーで、年内に発売が予定されているスカイラインクーペのプロとタイプが公開になりました。このクルマの現在位置は日本生産&日本販売のモデルとしてはかなりの「変わり種」と言えるもので、日産の懐の深さを端的に示す1台となっています。それゆえに今後のトレンドを業界がどのように考えているかを占う意味で重要な意味があります。海外の自動車ファン、特に熱烈なハイエンドスポーツモデルのユーザーからも絶賛されている日産の技術力とその崇高なまでのプライドには大いに期待ができますが、それと同時に今回のモデルチェンジではいよいよ大きな「経営判断」が下されるのは避けられない状況ではあります。そして何よりも因縁のレクサスがいよいよ2ドアクーペを復活させたことでこのクルマの市場が大きな影響を受けるのは必至です。

  日産にとっておそらく頭が痛いのは、この手のラグジュアリーカーのユーザー層は病的なまでの「ブランド志向」が顕著に顕われていることです。クルマの性能よりもまずは「ブランド力」が絶対条件でクルマを選ぶ人が圧倒的に多いです(反論もあるでしょうが)。マーチやキューブと同じ「日産」マークに我慢が出来ないというユーザーが間違っているのではなく、「ラグジュアリーカー」の本質を突き詰めると販売チャンネルを分けることに異論を差し挟むのは不粋です。そして安易な「ブランド志向」は日本に限った話ではなく、むしろ欧州や中国市場のほうが顕著といえます。評論家に世界の頂点に立ってトヨタやGを制する勢いだと絶賛されるVWでも、まさかのゴルフ派生の2ドア(3ドア)クーペのシロッコやイオスが不振でモデル廃止へと追い込まれています。VWは途上国でのノックダウン生産で台数を稼ぐメーカーであり、それらの国々で十分に根を張った現在では欧州や北米といった先進国市場を逆に軽視する方針へと変わっています。VWのクルマをみてゾクゾクするような所有欲に駆られることなんてふつうは無いですし、ラグジュアリー路線の派生モデルなど経営上では邪魔でしかなく、今後は傘下のアウディに役割を集約していくようです。

  日産の身内であるルノーや、日本では高級車と思っている人すらいるプジョーやシトロエンも2ドア(3ドア)の販売にはかなり慎重になってきました。現在クルマ雑誌で猛烈にプッシュされているプジョー308も、カローラのような素っ気なさという本来の姿のまま日本にも導入されました。まあクルマそのものを真っ当に評価すると200万円台前半まで価格を下げられればガソリン2Lのアクセラと同じくらいになりますから、それなりに納得できますが・・・。またプレミアムブランドへの脱皮を目指しているマツダも、やはり2ドアを作って売らなければ、「ブランドの確立」とまでは認められませんし、ブームが去ればまた薄利多売の競争サイクルへと逆戻りし苦境に追い込まれるはずです。そしてトヨタの下請けとしてメキシコで頑張るつもりでしょうか?

  マツダ車が目指す欧州市場では一般的なブランド(非プレミアム)では2ドア車の販売は難しくなってきたのは間違いないです。北米では従来からホンダがシビックやアコードの2ドアを販売するなどのうらやましい環境が続いていますが、これもまた中国から富裕層が多く移住するなどで消費の嗜好も年々変わりつつあるようです。去年のマセラティの躍進などは消費税の駆け込み需要やアベノミクスで盛り上がった日本を上回る割合で増加しています。アメリカに移住した中国人がギブリを喜んで買っているというデータこそありませんが、マセラティと聞くとやや盲目的になってしまうのが東アジア人の特徴なのは我々も薄々気がついてしまうところです。

  日本では「なんでインフィニティなんだ!」という日産ファンからの反発も大きいようですが、日本でもラグジュアリーなクルマのユーザーは明らかに移住してきた中国人かそれに近い価値観を持った日本人なのはトヨタ・日産の一致した判断のようです。私も富裕層向けサービスに従事していますが、中国人のお客様の割合は想像以上に高くなってきています。近年の日産は外国人のトップによる長期政権が続いていて、ほかの日本メーカーが舌を巻くような合理化政策を強烈に押し進めています。幾多のモデルが現行のノートやエクストレイルなど集約されていて、これらに対する批判的な意見もあるようですが、日本の道路環境を考えるとターボではなくスーパーチャージャーだろうというこだわりや、SUVとしての妥協ない基本性能の高さは、クルマ好きなら「世界最高のメーカー」と手放しで誉めたいはずです。残念ながら多くの一般ユーザーはそんなことは知らない(どうでもいい)ようですし、輸入車が大好きな評論家の皆様は意図的にこの事実を「黙殺」しています。

  自身がクルマ好きであることをやたらと吹聴するトヨタの社長の影響もあってか、スカイラインクーペのライバルとなるべく登場したレクサスRCは、ラグジュアリーというよりもスポーティさを強調した仕上がりになりました。少なくともソアラではなくスープラを作ろうとした意図は十分に感じられます。その一方で従来のスポーティで武骨(貧相)でラグジュアリーには程遠いイメージの歴代「BMW3クーペ」の殻を突き破って登場したBMW4シリーズは、MTモデルの廃止などと合わせてエクステリアで主張するクルマへと劇的な変化を遂げました。そんな方向性をかなり評価する向きもあるようで、近頃では都内のあちこちで(中央区から八王子市まで!)よく見かけるようになりました。ややギラついた塗装が気になるレクサスRCに対して、4シリーズは定番&安定のBMWホワイトがとても様になっていて新たにBMWジャパンを救う救世主になりそうな予感です(400万円で3気筒モデル出す?)。RCも4シリーズもそれぞれに好みがあるでしょうが、私が思うに2台が並んだときに引き立て役に回るのはレクサスの方かもしれません。

  RCも4シリーズも価格相応に非日常感は味わえるという意味で、なかなか無視できない魅力があるのではないか?と見直しつつあります(上から目線で恐縮ですが)。そこに投入されるスカクーがどういう方向性を示すかには大いに注目です。先代モデルではこのカテゴリーの主導権を握っていたBMWの直6ターボを軽く捻るくらいに清々しいまでの3.7Lにまで拡大したV6自然吸気で、あっさりとBMWを窮地に追い込みました(BMWの自滅説もありますが)。フェアレディZと共用されるこのユニットは、ポルシェの独壇場となっていた「6気筒自然吸気&MT」という聖域に切り込むためのもので、これぞまさに日産が得意にしてきたオーバースペック(やりすぎ)モデルです。そして間違いなく日産車の魅力はここにあるのですが、そんなモデルをやや勢いで買ってしまったミーハー(軽はずみ)なユーザーにとっては、このユニットの北米基準のオイルイーターっぷりが手に余ることも多いようです。3.7Lのスカイラインを持っている知り合いは「ぜんぜん乗ってないよ〜!」と口癖のように言っています。

  スカイラインクーペと平行して開発が進んでいるという35フェアレディZの動向も気になりますが、現行まで共通のユニットを使ってきた両車ですが、経営効率を無視してでも今回は別々のユニットを用意するのではないかという気がします。スカクーは4シリーズとRCを相手に、長距離を楽しめる王道GTカーとして燃費に配慮したハイブリッドの投入も当然にあるでしょうし、居住性に劣るZはポルシェ(ケイマン)を追従する従来の路線(V6自然吸気&MT設定)を継承すると思われます。さて公開された新型スカクー(インフィニティQ60)ですが、リアデザインになにやらデジャブ感が・・・これはメル◯デスSク◯スクーペにそっくり! マーケティングの基本は「分り易さ」というならばまあ納得できますね、こりゃあ誰が見ても高級車というお尻になってます。セダンより高いお金を払ってわざわざクーペを買うわけですから、一目見てマ◯クXにそっくりな最近の日本車セダンに流行しているデザインとは一線を画す存在でなければいけません。

  このデザインから無理矢理にパワーユニットを選ぶとしたら、やはり高出力&高トルクを発生させる現行エンジン(3.7L自然吸気)かそれ以上のスペックが欲しいです。インフィニティFX用に作られているガソリンのV8か、ディーゼルの3L・V6ターボを載せてRC-FやアルピナD4に張り合ったバリエーション展開しても良さそうです。しかし現実には211psのメルセデス2Lターボの冴えないエンジンが主力になりそうな予感です。コンバーチブルで2Lターボという極めてトヨタ的なスペックの「セレブなオバさん専用モデル」が登場しそうです。たとえどんな設計であれ、ある種のユーザーに恩恵があり、そのモデルが存続するに足るだけの台数がグローバルで稼ぎ出せるのであれば結構なことですが、「オバさん専用モデル」(2Lターボ)にいい年したオッサンがドヤ顔で乗ってたりするのは勘弁してほしいですね・・・。


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2015年3月3日火曜日

アストンマーチン・ラピード と アキュラ・レジェンド

  福野礼一郎氏のレビューをまとめたムック「晴れた日にはクルマに乗ろう・総集編」が先日発売されました。かつて「クルマの神様」という一切広告を載せないクルマ雑誌を企画したこともある福野氏ですが、フェアな言論!という視点ばかりに神経が行き過ぎたせいか、「クルマの神様」はハッキリ言って誌面レイアウトのセンスが悪過ぎでした。クルマ雑誌の写真を見てガッカリしてしまうのはやっぱりマズいです。それなのに日本の自動車雑誌はスクープばかりに重点を置いているものが多く、擬装で全くディテールがハッキリしない写真を特ダネだとドヤ顔で出してくるのでツマラナイなと思っています。

  そんな気分をスッと晴れやかにしてくれるのがこの新しい「福野」ムックです。とっても晴れやかでいい写真が誌面の大部分を覆い尽くしています。そのほとんどのカットに福野さん自らが映り込んでいて、なかなかのナルシストぶりなのですが、例えばミスターGT-Rの水野さんが語ればそのクルマがカッコ良く見えてくるのと同じで、福野さんが乗るものは片っ端からとても良いクルマに見えてくるのでとても不思議です。余談ですが沢村(慎太朗)さんが微妙な表情で一緒に映り込んでいるクルマには少々複雑な感情が芽生えます。フェラーリでも嘲る規格外な変人ライターのオーラでしょうか・・・。オートカー・ジャパンの休刊は残念です。

  簡単に言うと、福野さんが乗る(評する)アストンマーティン・ラピードはこのクルマが持つ個性を存分に発揮して光輝くのですが、沢村さんが乗るラピードは「とらえどころがない」なんていうなかなか当意即妙な表現を、沢村さんの顔面が見事に表現していたりします。私のような乗る機会もまず無いド素人が読んでいると、ラピードというクルマのイメージが180度転換してしまいますね・・・。今回の「福野ムック」の写真を見て改めてこのクルマはどこから見ても隙がないデザインで、内装も2300万円という価格を納得させるだけのコーディネートで、一目見て専用設計部品の利用率が相当に高そうです。

  サイズは長さがおよそ5mで幅1930mmですから、新しく出るホンダのレジェンドに近いようです。完全3BOXのレジェンドに対し、リアがゲート式の新世代ラグジュアリーサルーン設計(パナメーラやテスラモデルS)になっているラピードなので、多少は意味合いが変わってくるかもしれません。純然たるスポーツブランドの「アストンマーティン」とメガ・コンストラクターの中では最もスポーティと言われる「ホンダ」。そして2300万円vs700万円という価格差3倍以上ですから、お互いに意識などしてないかもしれません。ただホンダとしては2代目NSXの発売と重なるわけですから、ホンダ並びにアキュラのブランドイメージを劇的に前進させるためにも、もっと新型レジェンドのデザインで「攻めて」も良かったように思います。ホンダの役員がラピードみたいなデザインのレジェンドに乗れば、日本の自動車メーカーもなかなかクールですね。

  もちろん人それぞれに好みがあるでしょうし、パナメーラやラピードのような「リアハッチ型」のラグジュアリーサルーンに違和感を感じる人もいるでしょう。レジェンド発売と同時に公開された「無限」のレジェンド用パーツをフル装備すれば相当にカッコいいですから、無理にラピードのような凝った造形を追いかける必要はないわけです。しかしホンダが再び輝くためには、メルセデス・BMW・アウディ・レクサス・インフィニティがひしめく「画一的プレミアム」路線ではなく、これらを一気に捲り倒すくらいの圧倒的なイマジネーションによる勝利を目指すべきだったのではないかと思います。新型レジェンドはすでに北米ではアキュラRLXとして発売されていますが、販売状況はとても好調とはいえません。堅調な収支を続けているホンダとしては大ナタを振いにくい状況ではあるのでしょうが・・・。

  アキュラがパナメーラやラピードを意識したようなラグジュアリー&プライベートサルーンを企画すること自体に無理があるという見方もあるでしょう。パナメーラやラピードですら大して売れていなのに、ホンダが未体験のジャンルに首を突っ込んでわざわざ参入するなんていうプランは役員からのゴーサインがどうせ出ないだろう・・・と設計陣は最初から諦めていたのかもしれません。あくまで私の推測に過ぎませんが、そんな消極的な印象がどうしても消せない新型レジェンドは発売2年間でアメリカ市場で輝くことはありませんでした。

  しかし2015年のうちに新型NSXの発売を計画しているホンダですから、トップレベルの性能を備えたスーパースポーツを投入するという意味では、ポルシェやアストンマーティンと肩を並べる存在になります。この新型NSXを成功させるためにも、アキュラのイメージを劇的に変えるような惹きの強いプライベートサルーンを作っておく必要があったのではないかと思います。まあ素人の浅はかな考えに過ぎないわけですが・・・。


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2015年1月26日月曜日

メルセデスが醸す高級車オーラの本質

  マツダがアウディやBMWのようなブランドを目指して、ブランド内の「デザインコンセプト」を定めたイメージ改革を進めています。マツダの狙い通りに現在でも多くの市場で販売は好調に推移しているので、戦略としてはかなり上手くいっているようです。マツダが目指す所はどこなのか定かではありませんが、しかしその目指す先だと一般にいわれているドイツ車、その中の老舗中のp老舗・名門メルセデスはというと「デザインコンセプト?そんなものはもうどうでもいいよ・・・」と言わんばかりの、自由なデザインを展開するようになっています。

  確かに現行のSクラスとCクラスはどこか似ていますし、この後にフルモデルチェンジを迎えるEクラスもこの2台と同じようなデザインになることでしょう。そしてAクラスから派生した一連のFF車もプライベートブランドとは一見思えないようなフロントググリルのパーツの使い回しが目立ちます。しかしメルセデス本来のステータスを存分に持った花形グレードのクルマであるSクーペ・SLGTといったラグジュアリーなモデルはより自由でかつブランド内でも格別の存在感を持つオリジナリティ溢れるデザインに仕上がっていて、アウディやBMWではなかなか見られないメルセデス特有の重厚感がそこにはあります。

  メルセデスのそれらのモデルのデザインは、簡単に言ってしまえば「大人の男」のクルマへの憧れをそのままデザイン化したものです。その作り込み具合は高いといえば高いし、低いといえば低いし人によっていろいろな判断基準がありますが、この手のクルマを求めるユーザーのイメージをかなりの段階まで具現化させていて、量販車ブランドの中ではその「完成度の高さ」には確実に価値があります。例えばメルセデスSLと同じような「エモーション」を追求したクルマとしては、フェラーリ・カルフォルニアやマセラティ・グランカブリオといったクルマがあります。どちらもブランド内では走行性能よりもラグジュアリーに重きを置いているモデルです。マセラティといえばラグジュアリーの権威的なブランドですが、近年ではややフォーマルなセダン(ギブリ)やさらにSUVで販売台数の大幅な拡大を狙っています。そんな拡販戦略とは無関係な立場にグランカブリオというクルマはあります。余談ですが都内を走っていてもこのクルマは極めてレアなのでなかなか所有欲をそそります。

  そんなグランカブリオとは違って、明治通りを走れば必ず1台は見かける頻度で出てくるのがメルセデスSLです。ポルシェ911と並んで、自他共に認める筋金入りのナルシスト系が乗る「超定番モデル」といっていいくらいで、大都会・東京で最も愛されているクルマかもしれません。東京はナルシストが好きなものがたくさんある街ですから、そんな風景を大いに盛り上げるのがポルシェ911だったりメルセデスSLだったりで、土日になればフェラーリもランボルギーニもマクラーレンも何台も見かけます。それはそれでとても辻褄が合っています。東京の夜景が見渡せるタワーマンションとその地下駐車場にメルセデスSLが、東京人のかなりリアリティのある日常です。

  こんなこと書くと怒られちゃいそうですが、タワーマンションのショールームにやってくる人々を観察していると結構面白いです。やっぱりこういうものに憧れて東京にやってくるんだろうな・・・(別にバカにしてないですよ)。六本木、赤坂、丸の内、表参道にある商業施設に行くと、やたらとたくさんの駐車場管理係の人がいます。高齢者ドライバーにとって機械式の駐車場はかなり不親切ですから、安全な運営のためにも必要なのかもしれませんが、人がたくさんいて、間隔も広くてドアパンチを喰らう心配が無いとても高級感ある駐車場が「東京らしい」駐車場と言えるのかもしれません。新宿にある都庁も駐車場料金は人が配置されていて手渡しになっています(税金のムダ?)

  メルセデスSLは車重がかなり嵩む超ヘビー級のオープンクーペですから、走りを楽しむ人からしてみたら価格に見合わない難物です。もし日本メーカーが真似をして同じようなモデルをつくったら、スーパーカー大好きな評論家連中によって、あれこれ好き勝手なことを言われてしまいそうです。しかし彼らは内心では納得していなくても、メルセデスSLに対して厳しい意見を言う事はまずありません。日本の評論家を黙らせるだけの風格がメルセデス(SL)、マセラティ(グランカブリオ)、フェラーリ(カリフォルニア)には備わっています。世界中に愛好家(好事家)を持つこの3つのブランドはそれぞれの「エゴ」を21世紀になっても尚、商売として成立させています。そういう夢のある商売に対する暗黙の敬意ということなのでしょう。

  中にはフェラーリだろうがメルセデスだろうが容赦なく牙を剥く評論家もおられます。たくさんの評論家が溢れる中で生き残るためという意図も多少はあるでしょうが、やはりこれこそが自動車評論の本来の姿なのだという強い自負(信念)が根底にあると思います。そのクルマが売れていて(多くの人が満足していて)、それでもダメだよ!という敵をたくさん作るタイプの評論には勇気とエネルギーが相当要ることでしょう。けどそんな生真面目な評論家の意見など馬耳東風のごとく、そもそも東京に生きるVIPな人々は、自動車専門誌をじっくり読む暇なんてないですから、「沢村慎太朗って誰だ?」と何も臆することなく、自分の感性にかなり合っているメルセデスSLを好むようです。

  メルセデスの中長期的な変化は、今後さらに顕著になっていくように思います。マイバッハを廃止して、その顧客の受け入れ先としてメルセデスブランドの内部に「マイバッハ」と命名されたモデルを新たに投入するようです。これまではマイバッハの下に位置づけられていたメルセデスを最上級のブランドとし、その中で上限を取り払ったラグジュアリーなモデルをも同ブランド内で手掛けていく戦略が既定路線です。ポルシェとベントレーを合わせたようなブランドへとイメージを作り上げつつ、アウディのような小型モデルを量販してさらなる利益を出していく戦略自体は、レクサスやインフィニティでも急速に模索されているようですが、メルセデスが現在のところは最先端を走っているようです。

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