2014年6月24日火曜日

日産GT-R 「もっとも身近なスーパーカーなんだけど・・・」

  BMWのM3/M4が新しくなって(F30系)登場しました。なんとかサラリーマンにも手が届く、人気ブランドのハイパフォーマンスマシンということで、自動車各誌が競うように報じていて何やら楽しげでもあります。ちょっと気になるのが、どの雑誌にも「ブルーM3」と「イエローM4」が出ていてなんだかイメージが膨らんでいかないんですよね。とりあえずこの2台しか世の中にはないのかな?と思いyoutubeを検索すると「ホワイトM3」もありました。

  さて今ではこういう事を書いても、ムキになって怒るBMWファンはいないと思いますが、新型M3/M4は「日本の2大メーカーをリスペクトしたクルマ」と言えるんじゃないでしょうか。トヨタとBMWの提携によってプリウスで使われるような軽量化技術をBMWがゲットして、その代わりにトヨタにBMWのディーゼルエンジンを提供するという「物々交換」が成立しました。その他にもBMWがトヨタにOEMでスペシャルティカーを供給するという契約もあるようですが、トヨタとしては「目の上のたんこぶ」である日産GT-Rを超えるDセグスポーツをBMWに開発させて、グローバルではホンダ以上に厄介な存在になってきた日産ルノーに打撃を与える狙いがあるのかもしれません。

  トヨタのバックアップを得たBMWは、自慢の直6エンジンに「日産方式」のツインターボを採用し、ベースは3Lながらもその性能をデビュー当初の日産GT-Rに近い出力まで引き上げてきました。単純な出力という意味ではポルシェ・パナメーラ4Sのダウンサイジングされた3LのV6ツインターボも420ps出ていて、従来の4.8LのV8NAよりも出力アップしているみたいですが、BMWの発表によるとこのVWグループのV6ツインターボよりも、さらにNAのように高回転で使えるスポーツエンジンになっているようです。偶然か必然かわかりませんが、ポルシェとBMWという日本でも影響力のあるブランドがほぼ同時に新型の6気筒ツインターボエンジンを作ってきました。

  BMWとポルシェのトップグレードのクルマが、改めて新型のターボエンジンを使うようになったことで、例のごとく評論家のみなさまは、これから出てくるレクサスのV8NAを積む「F」を批判するんだろうな・・・という嫌な予感がしますね。また性懲りも無く、「ポルシェやBMWはとっくにターボ化に舵を切ったのに、日本はまだまだ・・・」とか言うんだろうな。かつてホンダが幻の2代目NSXとして、ミッドシップのV10という「和製ランボルギーニ」を作ろうとしましたが、市販化には至りませんでした。そこで開発費を抑えたV6ターボで世界の超一流のスーパーカーを凌駕してしまったのが、日産GT-Rだったと思うのですが、それなのにそんな事実は「無かった」かのように無視して、「日本って本当に遅れてるよね!」とか仰られている記事が今月号の某雑誌にも載ってました・・・。

  2014年になって相次いでポルシェやBMWから6気筒ツインターボが出てくるのは、2007年からGT-Rが世界に大きなインパクトを与えてきたからなわけで、今発売されてるのは「第二世代」。いやGT-Rの設計思想が、それ以前のトヨタと日産による「直6ターボ」対決に大きく影響を受けているから、現在のBMW/ポルシェは「第三世代」になるんだと思います。「スープラ」「アリストターボ」vs「スカイラインGT-R」「セド/グロターボ」から綿々と受け継がれている高性能エンジンの系譜に、BMWやポルシェを巻き込んだ!というのは日本車ファンとしてとても誇らしいです。

  さて「第二世代」を担う一匹狼のGT-Rは今も現役バリバリです。デビュー当初からさらに熟成が進み、価格も200万円も上昇してしまいました。それでもパナメーラ4Sよりも断然に安いですし、BMW M3/M4と同じくらいの価格です。400ps台の両者に対して、現行GT-Rは550psまで引き上げられていて、やはり当初の設計思想の如くランボルギーニ・ガヤルドを射程に入れての開発が進んでいるようです。

  ランボルギーニもGT-Rも設計思想のベースにあるのが、欧州セレブの「貴族趣味」なモータースポーツ需要なので、日本のクルマ文化とは相容れないどこか異質な要素を感じてしまいます。「だからいいんだ!」という人もいるかもしれませんが、まったくサーキットにいかないのに550ps出せるユニットを積んでる意味があるのか?と言われると、これは「骨董品」趣味と変わらないのでは?という気がしてきます。

  BMWやポルシェが目指した400ps台の「第三世代」は、世界の多くの地域で愛される高性能車を目指す!という、「無国籍」で「フラット」な時代を象徴するような設計になっているように思います。「第二世代」のGT-Rも時代の流れに沿ってアップデートした「第三世代」仕様をそろそろ考えてもいい時期かもしれません。すでに日産はスカイラインをベースにした「オールージュ」という高性能セダンを市販する計画を見せています。これは4ドア車なので、サーキット使用には向かないと思われるので、現行GT-Rよりもいくらかデチューンしてラーニングコストや本体価格を抑えた「街乗り高性能車」になって登場してくれるのを期待したいです。


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2014年6月18日水曜日

メルセデスE63AMG・S・4MATIC 「都心に蠢くブラック・シャーク」

  「クルーズカー」や「GTカー」をあれこれ考えようという主旨でこのブログを始めたのですが、なんだか私自身のマインドが変化したこともあるのでしょうが、「別に高級車を田舎道で走らせてもツマンナくないか?」というちょっとした「自己矛盾」に陥ってしまいました・・・。とても当たり前のことなんですが、人口が多い地域では道路が整備されていて、ドライブには快適と思いきや昼間は渋滞で気持ちよくなんて走れないですし、結局は整備された道路は住宅地にamazonなどの拡大するネット通販の品物を届けるクルマが、1車線塞いで停まってたりすることがだんだんと多くなってきたように感じます。

  それなら人があまり住んでいない方へ行けば良いわけですが、需要がない道路というのは荒れ放題だったりして、夏は車体に傷がつきそうなほどに草生い茂っていて、冬は冠雪&凍結で大きなリスクを抱えながら走らなければいけません。もちろんこんな道を好き好んで走る人は多くないですから、いつ行ってもガラガラでその点では大満足なんですけど、さすがにこんなルートをジャガーFタイプで走ったら、いろいろ神経をすり減らしてしまいそうだな・・・、だったらスズキのジムニーで良くない?って思ってしまうわけです。しかしジムニーでドライブし始めたら、いよいよ「ぼっちドライブ」になっちゃいそうでそれも嫌ですね・・・。

  とにかく日本では(東京近郊では)ゆったりとジャガーを走らせるような、理想的なドライブロードなんて幻想に過ぎない!ということに気がついてしまったわけです。日本でカーライフを営む上で、投資効果が高いクルマというのは結局のところ、昼間のフォーマル・リムジンと深夜のプライベート・GTサルーンだけなんだなと・・・。よってブログ名も「フォーマル・リムジン or プライベートGTサルーン」に変えなきゃだめですね。ということで今後はここに主眼を置いて想いのたけを書いていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

  さて今回は、最近気になって仕方がない「E63AMG・S・4MATIC」を語りたいと思います。なんでこのクルマに夢中になっているかというと、いろいろな世界観が複合的に絡みあって、このクルマ1台の中にかつて憧れてきたいろいろな名車の要素が入っているように感じるからです。クルマにいくらか興味があった大学の頃の憧れはBMWのE39M5でした。あの頃のBMWのデザイン、特にE39はとても良かったように思います、実に感性に響きました。その後のモデルはなんだか「難解」になってしまって残念でしたが・・・素人な意見ですがバングルさんはホンダをパクリ過ぎた?のが大失敗な気がします。

  E395シリーズのあと、印象に残るデザインの高級サルーンは3代目アウディA6と5代目マセラティ・クワトロポルテが、先代のイメージを大きく打ち破って素晴らしかったですが、この3台ってなんだかんだで全て日本人デザイナーの手によるものなんですよね。結局は自分の感性は日本人特有のフィルターから逃れられないのかな?なんて不自由すぎる自分の能力に失望感もあったりするのですが、やはり新型コルベット(C7)を見てデザインに違和感を感じるなと思ったら、韓国人デザイナーが起用されているのが後からわかってなるほど!と納得したりしてます。

  ちょっと横道それましたが、「E63AMG」というグレードが高性能セダンの先駆的存在であるM5にインスパイアされているという、性能面でのデジャブ感もありますが、W212系Eクラスのどことなく日本車調のルックスもなんだか親しみが湧いてきます。メルセデスという絶壁の高級感がだいぶ削ぎ落されて、Sクラスとの格差が果てしなく広がったとして、世間ではなにかと評判が悪いようですが、クラウンの等身大のライバルみたいな佇まいには親近感すらあります。ベースモデルのEクラスはカタログ価格をみるととても「親近感」は抱けないですけど、最近では底辺グレードを中心にバナナの叩き売り状態になっているとか・・・。

  先代クラウンみたいなデザインのセダンボディにV8ターボを押し込んだスポーツカーって聞くとなんだかワクワクしませんか? マジェスタの方向性を完全にスポーティに振ったみたいなクルマです。先代のマジェスタにもかなりの憧れがあって、V8廃止&ロイヤルと同じフェイスで、現行には惹かれる部分が少なく寂しく思っていたところだったので、「E63AMG」はそのイメージも上手く拾っているなと感じます。

  そして極めつけは、加速性能で日産GT-Rに迫るという点でしょうか。一度はGT-Rを所有してみたいなと思いますが、E63AMGならば夜の高速道路をGT-Rとほぼ同じテンションで楽しめてしまいます。AWDなので当然といえば当然ですが、メルセデスの高性能ブランドイメージを牽引する「SLS AMG」よりも優れた加速性能を持っているとメルセデスが公式に発表しているくらいですから、「E63AMG・S・4MATIC」はある意味ではメルセデスのフラッグシップサルーンと言ってもいい存在です。あのメルセデスの頂点に立つグレードのクルマならば多少は高くても所有する満足度は自然に高まります。乗り出しで1900万円くらいになるのでしょうか・・・むむむ(やっぱ無理だ・・・)。


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2014年6月10日火曜日

BMW・VISION FUTURE LUXURY 「BMWもREBORNする?」

  BMWのラインナップが増え過ぎて、マニアでもない限り全グレードなんて把握できないくらいになってしまいました。それでもグローバル販売の「重心」は今も尚、多くの市場で売れている3シリーズや5シリーズが担っていて収益の柱であることは変わっていないようです。しかし時代ともに市場のトレンドは変化し、かつてBMWがメルセデスから奪い取ったD/Eセグプレミアムカーのシェアを、今度はアウディや(比較的)低価格で高品質を掲げるレクサス・インフィニティそれにヒュンダイの上級グレードなどに脅かされつつあり、BMWも年々商売がやりにくいと感じてきているようです。

  BMWは1990年代に栄華を極め、2000年代中頃までは好調を維持していましたが、2004年にドイツ以外の地域(米国サウスカロライナ)での生産が始まり、廉価グレードのBMWが世界にバラまかれ年産100万台を超えたあたりから変調が始まりました。現在では南アフリカ・インド・中国の新興国3拠点を中心に生産能力を増強しつつあり、グローバルで年産200万台までの拡大を目指しているといわれていますが、先進国を中心に販売が伸び悩んでいて150万台前後で足踏みが続いています。

  専門家の分析によると、BMWは従来は高性能セダンに特化した技術開発をコアコンピタンスとして、独自の地位を築いてきましたが、その一方で量産化へのコスト管理や小型車開発技術は苦手としていました。それでも経営陣は業界トップクラスの収益体制、具体的に数字を挙げると総資本利益率(ROI)で26%だそうですが、に固執しつつも生産台数を倍増させるという無謀なプランを強硬に推し進めたため、徐々に機能不全に陥ってきているといわれています。ちょっと悪口を書くと、トヨタとはとても比べ物にならないお粗末なコスト管理の元で作られた3シリーズが、はるばる南アフリカから日本まで運ばれてきて、販売コスト&利益を賦課して最終的に450万円とかいう本体価格で売られています。トヨタは愛知県で3シリーズよりも高品質の部品を使って、同じようなクルマを作って約250万円で売っているのです。BMW離れは必然の成り行きと言えます。

  先進国のユーザーがBMWに求めるものは、ドイツで作っていて高品質で先端技術を盛り込んだ、唯一無二の高性能セダンだったりするわけですが、その期待にある程度は応えることができるであろう「BMWらしい」モデルを日本で買おうとすると、もっともお手頃なものでも本体価格がなんと902万円!の「535i」というグレードになります。さすがはROI 26%!といったところでしょうか・・・。とりあえず「一般論」として日本で新車のBMWを買うなら1000万円以上のものじゃないと「満足」はできないと思います。失礼千万ですが、本来のBMWの「ユーザー像」に適った人々の意見を要約すると、日本の津々浦々で見られる1000万円しないモデルを満足そうに乗っている人は、「ブランドの本質」を気にしない、あるいは分らない人達と見做しているそうです・・・恐ろしや。

  ちなみに日本で買うと乗り出しで1000万円を超えてしまう「535i」はアメリカではこれよりも相当にやすい55,100米ドル(約550万円)で買えるのですが、それでも10,000米ドル程度安い日本や韓国メーカーのライバル車に徐々にシェアを奪われているようです。まあ世界ではそんな評価に甘んじているクルマに1000万円も払うならば、とある著名なアメリカ人ジャーナリストが「自動車史上で最も完璧なクルマ」と呼んだレクサスLSを買った方が良さそうだなと思うわけです。

  そんな曲がり角を迎えていたBMWが、いよいよイメージを一新するような次世代モデルを次々と発表しています。今やBMWジャパンが最も期待しているといっても良いモデルが小型EVの「i3」です。このクルマをBMWが手掛ける必然性があったのか?という疑問はとりあえず置いておいて、デザインを軽視して普及に失敗した日産リーフや三菱Iミーブといった国産EVとは全く別次元の「ワクワク感」を素直に評価したいと思います。いよいよBMWにも1000万円以下(半額の500万円ほど)でも買う価値のあるクルマが出てきました。

  アクセラを押しのけてWCOTYデザイン賞を見事に獲得した「i3」とほぼ同時に発表された「i8」もとても興味深いモデルです。デザインが素晴らしいだけでなく、BMWらしい4座の「グランドツアラー」で得意なセダンではなく、ポルシェ911のようなタイプのクルマになっていて、2000万円という価格を忘れてあれこれと使い方が想像できます。3シリーズなみのサイズがあるので、スポーツカーにありがちな窮屈さは軽減されてそうです。もしこれが1000万円前後で発売されていたら、かなりのバックオーダーを抱えて「3年待ち」とかいう事態になりそうな気がします(だから2000万円なのか・・・)。

  そしてこの2台のEVとともにBMWの新たなデザインコンセプトを示しているのが、北京モーターショーで公開された「VISION FUTURE LUXURY」という7シリーズに変わるフラッグシップサルーンの原型と思われるショーカーです。7シリーズでは、メルセデス・マセラティ・レクサスに対抗するだけの魅力が足りないのは誰の目にも明らかだったわけですが、その3ブランドに真っ向から挑む「ラグジュアリーカー」として、局面打開を図る意図がよくわかります。特に素晴らしいのはエクステリアで、現行のSクラス・クワトロポルテ・LSの3台は外装がやや保守的で革新性に乏しいのが「玉にきず」だったりするわけですが、BMWがこれをそのまま製品化するならば、デザイン面で優位に立てそうな実力を感じます。

  内装はライバル3車と甲乙付け難い高品質なもので、去年FMCで話題になったSクラスの内装をもキャッチアップした先進性と世界観を持っているのがわかります。シフトレバーが存在感を発揮しているのがBMWらいしなと思います(さすがにサイドブレーキは無いですが)。これまで敢えて7シリーズを選んできた人の多くは、ライバルモデルには希薄な「ドライバーズカー」としての価値を評価してきたと思いますが、その伝統をしっかり受け継いでいるところに、ライバルブランドの模倣ではない!という気高いプライドを感じます。


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