2013年11月15日金曜日

フェアレディZ・ニスモ 「軽くできない構造上の欠陥」

  クルマを速く走らせるには何が必要かを一番良く解っている日産が、大排気量NAのFR設計にこだわって作り続けているスポーツカーがフェアレディZです。6気筒エンジンを作らせたら世界一の日産だけあって、ハイパワーが正義のアメリカで今も売れ続ける人気モデルのようです。北米日産の顔といえる立ち位置から、ここまで大きなコンセプトの変更もなく、ズルズルと作り続けているようです。しかし実用性の低さから、だんだんと日本からはフェイドアウトしている印象もあります。

  実際に日本で新車で購入したユーザーが不満を持ちやすいクルマのようで、いわゆるミスマッチを生みやすいようです。ほとんど走ってないのに年数だけ経っている中古車が目立つのもこのクルマの特徴だったりします。たしかに気に入った人は他のクルマが目に入らなくなってしまうほど、中毒性の高いクルマなのですが、やはり2シーターなのに3.7Lで333psを発揮するエンジンはいくらなんでもやり過ぎで、ボクスターSやケイマンSよりも過激なクルマと言えます。

  一般的にポルシェ911と日産GT-R及びスカイラインがライバル関係にあると言われていて、それぞれのショートデッキ版が「ケイマン」と「フェアレディZ」となります。FRのフェアレディZはホイールベースが短くなったためスカイラインよりもピッチ方向に大きく荷重が変動しやすくなっていて、せっかく車重が軽くなった分のアドバンテージが生かせないクルマと言われています。つまり後輪にトラクションを保持し続けるのがかなり難しい設計になっています。

  一方でミッドシップのケイマンはホイールベースを切り詰めても、Zで起こるような弱点は出にくく、むしろハンドリングが冴え渡るので、この2台を比べるケイマンの方にクルマとしての完成度の高さがあります。フェアレディZは少しでもこの弱点を無くすためにロングノーズのスタイルを採用してエンジン搭載部をフロントミッドシップの位置にしたり、BMWと同じように後輪への荷重が十分に確保できるように、前後重量配分に留意した設計をしています。

  しかしこの設計がそもそもBMWと同等と言える欠陥となっていて、前後重量配分を限りなくイーブンにするために車体後方にエンジンと釣り合うだけの重さをぶら下げなくてはならず、車体重量を下げることに限界があります。マツダのロータリーエンジンやスバルのボクサーエンジンはフロントミッドシップに小型軽量でハイパワーのエンジンを積む事でポルシェに匹敵する性能を引き出していましたが、フェアレディZは高級車に使われる3.7LのV6エンジンをそのままドカンと載せてしまっています。

  たしかにこのエンジンは車重が2.7トンほどある日産製の救急車にも使われる強力なものですが、搭載車はいずれも車重を気にしないようなクルマばかりです。そこにラインナップされているフェアレディZは見た目よりももずっと重く、そういうクルマとは知らずに買ってしまう人が驚いてすぐに手放すようです。そういうことをあまり気にしない女性ドライバーに愛好者が多いようですが・・・。

  トヨタ(86)・スバル(BRZ)・マツダ(ロードスター/RX-7/RX-8)・ホンダ(S2000)が徹底的に考えた日本向けスポーツカーを作ろうとしている中で、完全に我が道を行っているフェアレディZですが、新しく登場した「フェアレディZ・ニスモ」は日産がこの中途半端な立ち位置で不人気となっているスポーツカーに再び魂を注入すべく作ったスペシャルモデルといったところでしょうか。VQ37VHRエンジンは直6時代のファンからは相変わらず批判されていますが、そろそろ日産のメカチューン熟成によってかなり良いものになってきたようです。

  スカイラインも国内は全車ハイブリッド化される中で、ガソリンNAを味わうクルマとしての価値は確かに認めますが、レクサスIS350やマークX350とは明らかに違うと唸らせるようなスポーツカーとしての「才能」が欲しいかなという気がします。ガルウイング付けて、可変リアスポイラーとかタルガトップとか「非日常」を楽しむアイテムでもあれば、所有そのものに価値も生まれてくるとは思うのですが・・・。

  

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