2014年8月16日土曜日

レクサスRC-F「安心して買えるのは大事なこと」

  「ホンダNSXのテスト車両が燃える!」という衝撃的なニュースがありました。ポルシェ911GT3でも市販車で不良が相次いで発生して販売がストップするなど高性能車の過熱気味の開発競争は少なからず「ひずみ」を生んでしまっているようです。BMW-M、AMG、フェラーリの8気筒モデルが軒並み500psを超える段階に突入している現在では、超高級サルーンを作らないメーカーにとっては、「6気筒」で500ps超をキャッチアップしなければいけないという苦しい状況で、ホンダやポルシェといった実績のあるメーカーでもなかなか難しいようです。

  現在のところ大きな騒動が起こっていないGT-R(V6ターボ560ps)は見事に日産の自他共に認める世界最高の技術力を証明しています。ファンの一部から400psオーバーという無茶な要求を突きつけられているスバルは、「トヨタ基準の安全性」を楯にその要求を退けて従来通りの300psの新型WRXを作りました。スバルの技術力を持ってしても直4ターボで400psの安定したエンジンは難しいものがあるようです。その一方でとうとう生産中止が迫ってきたランエボXの欧州仕様は直4ターボで400psを出してます。こちらも特に大きな不具合といったことは聞きません。日産と並ぶ三菱の技術力の高さの面目躍如といったところでしょうか。

  日本の「能天気」な自動車メディアはメルセデスA45AMGの直4ターボ360psが市販車最強の4気筒みたいな宣伝をしています。別に事実誤認というわけでないですが、単に三菱が問題を抱えていて日本で400psの直4ターボを売らないだけです。この10年あまり国土交通省に嫌われ続けている三菱は、欧州版のランエボXの国内発売の認証を取るのが非常に面倒ということで300psに抑えたモデルのみを販売しています。国土交通省にサンプル数台を供出し、あれこれ技術説明をしてもなお、ネチネチした官僚の追求を躱さない限り許可は下りないですし、苦労して認証されたところでいったい日本でどれほど売れて儲かるのか?という問題もあります。

  しかしファン相手のスポーツカー商売というのは難しいもので、メーカーによってデチューンされたモデルはどうしてスポーツカーとしてのプレミアム価値に乏しく、将来的に最終型NSX-Rのような価格高騰につながるとも考えにくく、投機的な需要が引き出せません。そもそも2007年の発売時に株主のメルセデスの意向で三菱に送り込まれたコンサルファームによって、既に決まっていたランエボXの価格が相当引き上げられたあたりからケチが付いていて国内でのランエボ人気は完全に下火になりました。STIの限定モデルには今でも十分なプレミアが付きますが、経営権を外資に握られ、日本のファンに背を向けたランエボは価値が下がりつつあります。まあ日産GT-Rも同じようなものですが・・・。

  もしカーメディアが日本のクルマ好きの側に立ってモノを考えているのなら、三菱をメチャクチャにした張本人である三菱の旧経営陣とメルセデスに対して何らかの「遺恨」があってもよさそうですが、クルマ雑誌は5月あたり(増税後)から「メルセデス一色」になってます。さすがにどの雑誌も大同小異の文面でいい加減に飽き飽きしてしまいますね。アメリカ雑誌ではメルセデスなんてほとんど取り上げられてないですけど・・・。メルセデスに興味津々な人々を批判するわけではありませんが、メルセデスのFF車を見ると三菱が頭に浮かんでしまい、クルマ好きとしては全く興味が湧きません。なんでこんなメーカースピリッツが体現されないモデルをちやほや出来るのか不思議です。

  それにしても「4気筒エンジンの頂点に君臨するメルセデス」みたいなテンションで提灯記事に参加してくるアホライターまで駆り出されていたりして、なんでそんなジャーナリズムにカネを払っているのか・・・なんて嫌な気分になったりもします。そもそも4気筒エンジンに近年では何ら実績が無かったメルセデスが、「2Lで360ps」いきなりこんなにハイリスクなエンジンを作れるはずもなく、だれがどう考えたところで、AWD技術、FFベースのシャシー、とひっくるめて全て三菱ライセンスの技術を応用した結果に過ぎないとわかるはずです。もちろんメルセデスの直4とランエボの直4はボア×ストロークも違いますし、あまり滅多なことを言うものではないですが、常識的に考えて「畑違い」の分野でメルセデスが急成長したこととあの悪名高い「M&A」が無関係には思えないです。

  それでもやはりメルセデスが三菱の技術を信頼して、十分に安全な高性能車を日本のユーザーにそこそこ納得できる価格で提供していること自体はとても素晴らしいことだと思います。東京の環状7号線を走っていると「A45AMG」が混雑にイライラしながら走っているのをたまに見かけます。「こんなところで走らせるクルマじゃないだろ」という気もしますが、そんな場違い感からこのモデルが新規の高性能車ユーザーを増やしてくれているのでは?という推測もできます。都心でも使いやすいサイズの「AMGモデル」というのはなかなか購入意欲を刺激するでしょう。とりあえずこのクルマがとても「日本的な高性能車」であり、それが日産や三菱ではなくて「AMG」ブランドで発売された。メルセデスによる日本の直4ターボのスピリッツに対する「リスペクト」と考えれば共感できます。

  さて品質管理において長年世界のメーカーのお手本にされてきたトヨタが、いよいよ欧州市場にレクサスを送り込む「イメージリーダー」として、2ドアのグランドツアラーを作ってきました。さすが「石橋を叩いて渡る」トヨタの開発スピードというべきか、2015年に改めて「Dセグ2ドアクーペ」に「V8NAの450ps」というややフェードアウト気味(ホットハッチに押され気味?)のクラスのど真ん中に直球勝負を仕掛けてくるようです。先代のIS-Fはベース車のポテンシャルから、「シャシーが」「アシが」と批判があり本場ドイツのグランドツアラーに及ばず終いだったのですが、トヨタ初?のDセグV8だったことを考えると重要な「一歩」だったと思います。

  そして歴代の日本の名車が飛躍を遂げることが多い2代目となり、「2ドア」「新型シャシー」「LDH(レクサスダイナミックハンドリングシステム)」・・・もの凄いペースで進化を遂げ、IS350Fスポで福野礼一郎氏に「画竜点睛を欠く」と言わせたシートも、RC専用のものを用意したようです(東京MSで座ってきました)。これで一気にM3/M4との差を縮めて一気に逆転まであるのではないかと期待できます。何より福野氏が突いた点をすでにトヨタが先回りしている(解っている)点に好感が持てます。しかもベース車同士と戦いではIS350FスポがBMW435iを圧倒したといっていい内容で、乗って見るとあまりの満足感に「Fは要らないかも・・・」となってしまうくらいです。

  さらにRCのベースモデルはISよりもワイド&ローに設計されていて、タイヤハウスの寸法にも余裕が出てくるので。ISが隠し持っている4輪操舵という飛び道具を使うこともできます。さらに「RC-F」ならもう1段階ワイドな設計で前後の4隅にグラマラスな張り出したデザインを展開するでしょうから、GSのFスポと同等に使うこともできるでしょう。スカイラインが止めてしまった4WSを継承という展開もなかなかロマンがありますが、その乗り味がベテランの評論家にどんな風に受け止められるのでしょうか・・・。その辺がトヨタの悩みどころかもしれません。

  「A45AMG」が日本の自動車文化への「共鳴」ならば、「レクサスRC-F」はドイツのクルマ文化への「憧れ」か「リスペクト」といったところかもしれません。トヨタは真摯にドイツ車を研究しているようですし、開発担当者の言葉にもメルセデスやBMWへの賛辞が溢れています(マ◯ダや日◯は「ドイツメーカーなんて格下!」くらいに思ってそうですが・・・)。ぜひ「RC-F」には日本でもドイツでも絶賛されるようなクルマとして成功してもらいたいと願っています。



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