2015年5月30日土曜日

レクサスRC-F 「一般人でも手が届くと社長が言ってますね・・・」

  いやー!モリゾー社長の仰る通りです! 「男だったらアルファードかレクサスRC-Fで間違いない!」くらいの放言をする自動車メーカーのトップを日本車ファンはずっと待ち望んでいましたよ。トヨタグループが全力を上げて最良のプライベート用途の高級国産車を模索したところ、この2台をそれぞれ究極の形にすることで収束しました!という意味のことを、分り易く「一般の人々でも手が届いて、しかも誰が見ても魅力満載のクルマ」と言っていましたが、なかなか自信満々な3月期決算発表での言葉だったと思います。

  レクサスRCではなくて、「レクサスRC-F」という言葉のチョイスにはやっぱり引っ掛かりを感じます。もちろんユーザー目線で判断すれば、「F」の一文字でクルマの意味合いが大きく変わりますし、「F」が無ければRCには全く興味が無いという人も多いはずです。実際のところベースのRCでも十分に素晴らしいクルマではあります。とりあえず同じベースモデルのBMW4シリーズやアウディA5には全く負けてないです。けれどもモリゾー社長は言うわけです。欧州のライバル車に勝っているとはいえ、ベースのレクサスRCでは平凡過ぎてもはや注目を浴びることすらできない、つまり魅力的ではない・・・(欧州車なんか本当につまらんし)。

  その一方で「RC-F」には、世界の自動車ユーザーが熱狂できる要素が十分に詰まっている!世界の人々が心の底から求めているクルマだ!と高らかと宣言しているわけです。これは無類のクルマ好きとして知られるモリゾー社長が、非常にバランス感覚に富んだ価値観を持っていることを表していませんか? 特にGTカーを愛する人々にとって、ライバルメーカーの雲行きが怪しくなってきていて、BMWやメルセデスAMGなどの欧州メーカーがハイテク機構を付けたV8自然吸気エンジンを開発できなくなりました。そんなトレンドに失望してミッドシップスポーツなどへ流出しそうな人々を、再びGTカーへ振り向かせるために、レクサスはどこまでもフィールに拘って作りましたよ!だから本当にクルマの解る人ならばドイツ車のターボ付きV8よりもレクサスRC-Fの方が優れていることがわかるはずです!まあ解る人がのれば、まったく異次元の気持ちのよさですよ!ってところでしょうか。

  今回のRC-Fに採用されたV8自然吸気の意味を俯瞰すると、2010年頃にアウディRS5とBMW・M3(E90)が繰り広げていたV8自然吸気の「ガチ・エンジン対決」に5年遅れでレクサスが参戦してきた格好に見えなくもないです。この2台(FRとAWDの変則対決ですが・・・)に匹敵するだけのシャシー(現行GS/ISから)を新たに開発し、いよいよクラス最良のGTクーペを作り上げたわけですが、目指すターゲットだったはずのM3は先に新世代(F30)へと移行して、V6のツインスクロールターボへと方向性を変化させてしまいました(ちょっと失敗?)。そして取り残された「RS5」も「AWD&自然吸気」というなんともヘンテコな設計がちょっと災いしてしまい、日産GT-Rよりも「遅い・うるさい・曲らない・止まらない・価格が高い」という立場に追い込まれ、全く売れる要素無しのクルマになっていまいました。

  しかし現行のRS5に搭載されている4.2L自然吸気ユニットは、2000年代に大躍進を遂げたアウディの象徴ともいえる素性の良いスーパーなエンジンなんです。4.2Lの過給なしで450psを搾り出すために、ほぼ物理的な限界値といわれるスピードまでピストン速度が上げられていて、エンジン屋アウディの技術の高さを如実に示すサーキット仕様のウルトラ超高回転エンジンです。8500rpmまで軽く噴け上がる「ロング」ストロークのエンジンなんて、他にはほとんど例はなく、せいぜいホンダの「Vテック」くらいのものです。しかしこういったエンジンを市販車で使う時代は徐々に終わりを迎えていて、現在のアウディの新型車に搭載されるV8は4Lターボは、気筒休止機構(バンクの半分だけを直4として使う)を組み込んだ、フィーリング的には全く「残念」なエンジンに成り果てています。

  これまで主導権を持っていた2台が、全く脚光を浴びずにフェードアウトするタイミングを狙って、残った市場をごっそりと持っていくのは、実にトヨタらしいマーケティングではあります。ホンダS2000とマツダRX8が相次いで市場から消えるタイミングで86/BRZを大ヒットさせた手腕は記憶に新しいです。しかしこの「RC-F」に関してはそんな顧客の分捕り合いなんてことはどうでもよいことで、このクルマが持つ「存在価値」は、アウディやBMW、メルセデスAMGなどとは本質的に無関係です。トヨタが1989年の初代セルシオ登場とともに作り続けてきた「UZ」「UR」シリーズのV8エンジンは、「量販メーカー・トヨタ」とは全く違う「世界最良の高級車メーカー・トヨタ(レクサス)」の根幹となる技術であり、トヨタの歴史の中でもおそらく最も気合いを入れて開発されてきたエンジンだと思います。つまり「こだわりのトヨタ」を買うなら迷わず「UR」(V8搭載モデル)にしておけ!ということです。

  モリゾー社長が「RC-F」と名指しするほどに「F」に拘った背景には、おそらく作り手側として絶対的に自信を持って提供できるクルマはこれだ!といった想い(共通認識)があったのだと思います。それとももしかしたら、社長の肝入りで作られた「RC-F」が86ほどには反響を得られていないことに少々焦りを感じているのかもしれません。さっさとこのクルマで結果をだしてGTカー好きな顧客を抱え込むことに成功したら、満を持してレクサスLSの2ドアクーペ版を発売する予定のようです。

  実際のところ3.5LのV6自然吸気を積むレクサスに乗ると、期待が高過ぎるせいか思ったほど感心できなかったりします。もちろんそれでも欧州車のスカスカな直4ターボとカスカスなステップATに比べれば、ペダルの踏み方一つで「走り」にキャラクターが出るなど、高級車としての魅力は高いですけど、「特別なステージのクルマ」という意識は残念ながら持てないです。あくまで「普通のクルマ」です。それこそレガシィB4とかティアナで十分じゃない?って思う水準です。モリゾー社長が「一般の人でも手が届く」といった意図は、RC-Fを買ってぜひ「特別なクルマ」を感じてください!というメッセージが込められているようです。これはいよいよ買うしかないかな・・・。


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