日産がスカイラインのボディにGT-Rのユニットを組み込んだ「スカイライン・オールージュ」というハイパフォーマンスセダンのプロトモデルを以前に公開していました。そのままの市販化に大いに期待してましたが、どうやら開発を中止してしまったという情報が年明けごろに駆け巡りました。現行のV37になっていよいよEセグに迫るサイズまで拡大したスカイラインだからこそ「最速セダン」の称号に相応しいクルマになりそうですし、最速GTカーとして「ポルシェ911ターボ」と伍する存在まで登り詰めた「GT-R」のV6ツインターボを使えば、十分にドイツメーカーがお互い凌ぎを削る「最速セダン」の座を奪うことができたでしょうが、情報が正しいならばなんとも残念なことです。
やっぱり日産は「最速」がもっとも似合うメーカーですし、日本の技術力を見せつけてきたこれまでの実績があったからこそ、ファンもアンチも含めあらゆるクルマ好きから一目置かれる存在でありつづけています。挑戦をやめた日産なんて・・・そんな逆風が吹いたときに重大さに気がつくのかもしれませんが・・・。さて実際に「最速セダン」の頂点に君臨するクルマは何かというと、ポルシェの「パナメーラターボS」ではなく、メルセデスAMGの「E63S4MATIC」だとされています。メーカーが公表している0-100km/hのタイムで3.6秒というスーパーカーを超える水準です。巷では「カイエンGTS」がスポーツカーを蹴散らす走り!などとやたらと持ち上げられていますが、その加速タイムはせいぜい5.1秒程度(ゴルフRくらい)です。しかし驚異の「直線番長」にしてSUV最速のカイエン・ターボSではなんと4.1秒に達するそうです。それでもまともに考えれば、最速SUVが最速セダンよりも速いなんてことはまずあり得ないわけですが・・・。
「ポルシェ」と「メルセデス」の2大高級ブランドが最速セダンの座をかけて対峙する中で、AWD専門ブランドの意地としてアウディからも「RS7スポーツバック」という5ドアモデルが発売されていて、こちらも驚異の3秒台を記録しています。そして意外なことに「スポーツセダン」の代名詞と思われてきたBMWですが、その最速を追求した「M5」はなんとタイムが4.3秒で、カイエンターボSに遅れをとってしまっています。あのBMWを象徴するような超絶パフォーマンスモデルが、SUVに加速勝負で勝てないなんてことがあっていいか? さらにこのままあと数年もスペックを変えずに放置すれば、間もなく発売されるという「VWゴルフ」のRを超える超絶スペックモデルにも追い越されるかもしれません。大排気量V8ツインターボを搭載したブランドアイコンの超高級車が、大衆向け小型車をベースにした直4ターボに負けるとなると、これは由々しき事件です。
おそらくBMWもその状況は十分に理解しているとは思いますが、新しいMモデルとなるM3/M4は、それとは全く別方向に進んでいるようで「燃費向上」を至上命題に掲げています。もっともM3は北米価格が6万2000ドル程度なので、実用性を高めつつBMWのパフォーマンスモデルを楽しんでもらおうという「市販車」目線が強いのかもしれません。誤解を恐れずに言ってしまうと、最近のBMWはまるでホンダ?あるいはスバルかマツダのような方針でクルマを開発していると言っていいかもしれません(それはそれで素晴らしいことですし・・・)。余談ですが、ホンダが近日の発表を予定しているといわれる新型NSXは、まさかカイエンターボSに遅れをとるなんてことはないでしょうけども、実際のところはどうなるのでしょうか?
BMW本体は、メルセデスやポルシェ/アウディと直接に争うことを避けていますが、日本への正規輸出ルートを持つチューナーの「アルピナ」から、6シリーズをベースとしたAWDハイパフォーマンスモデルの発売がアナウンスされました。「アルピナB6・ビターボ・グランクーペ・アルダッド」という長い名前になりましたが、公式タイムは堂々の3.8秒に達していて、これでBMWのセダンはSUVよりも遅いという「悪い噂」は払拭できそうなので、セダン好きとしてまずはめでたいことです。それにしても本体価格が2200万円で、2色(ブルーとグリーン)ある塗装オプションで60万円!だそうです。未塗装で納品してもらって、どっかの塗装屋に持ち込むなんて人もいるんですかね。
頂点のクルマ「E63S4MATIC」よりも400万円高い価格設定は、「AMG」=「アルピナ」だとするとそのまま「グランクーペ」仕様の価格差になるんですね。おそらく第2弾として「E63S4MATIC」と同じくらいのコスパを誇る「B5ビターボ・アルダッド」がすでに待機していると思われます。どうも現行の6シリーズはキャビンが膨らみ過ぎていて、あまり美しくないので、むしろシンプルな5シリーズをベースにしたモデルの方がそそられます(生意気言ってすみません)。そしてよりリアルなBMWを楽しむならば、ラジアルタイヤを装備し続けるアルピナやMを多少無理してでも買いたいですね。最近では韓国製ランフラットを標準装備するようになったBMWのベースモデルは、どれもこれもアシをゆるめて乗り心地を誤魔化していて、やや走りの本質を見失ってしまっている気がします(ほんとに生意気ですみません)。
それでもBMWがまだまだ開発の熱意を失わずに、メルセデス、ポルシェ、アウディに好き勝手にさせないという気迫をみせてくれたことは嬉しい限りです。メルセデスやアウディと比べて、BMWには今もなお日本人の繊細なタッチに十分に応えてくれるだけの洗練されたフィールのステアリング、アクセル、ブレーキがあります。その操縦感覚は、日産、マツダ、スバルが持つあの惹き込まれるような奥深いフィールにも対抗できる恐るべき輸入車ブランドです。8ATや直6がBMWの商品力という意見をプロ/素人問わずあらゆるところから聞きますが、そんなモジュラー的な部分ではなくて、なんといってもBMWはコクピット主義で、「操作感」こそに魂が宿っています。もし最速セダンを手に入れる時がやってきて、「E63S4MATIC」があり「RS7」がありそれと同等の価格で「B5ビターボ・アルダッド」が発売されたならば、こういう超絶クラスのクルマだからこそ、BMWが持つ「心地よさ」の中で楽しみたいと思いますね。・・・日産も考えを改めてくれないですかね。
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