「輸入車のスポーツカー」と聞くとなんだかと〜っても貴族趣味な感じがします。例えばイタリアのF社だったりL社だったり、あるいはイギリスの新興勢力M社だったりが販売するガチの「スーパーカー」をまずはイメージします。「こんなクルマを一体誰が買うの?」 ・・・バブルの頃ならいざしらず、低成長のまま20年が過ぎ去ってかなりまともな金銭感覚になってきた日本では、いよいよマニアかプロだけが買うクルマになってきたみたいです。日本では商売にならないと判断したようで、東京MSには「F」も「L」も「M」もすっかり来なくなりました・・・。調べてみると3000万円クラスのスーパーカーは最も多いモデルでも月に数十台が輸入されている程度に過ぎません。もはや「乗用車」ではなく、「競技用」もしくは「投機商品」なんですね・・・。
一度は話のネタに所有してみたい!と思ってもまずは当然にガレージが必要ですし、都内で屋根付き駐車場を確保するだけでも月5〜10万円くらいかかります。さらに車両保険は膨大な額に上りますし、都内の混雑した道を日中にゆっくりとしたペースで走っていると、突然発火する!なんていう恐ろしいリスクも、大衆的な日本の乗用車よりも圧倒的に高いようです。この手のクルマを公道で走らせる人向けに、エンジンルームに即座に消化液を流し込む装置なんてのも用意されています(これ付けると保険料がほんの少し割安になるらしい)。
日本車(トヨタ)の感覚では「V8やV10エンジンが燃えやすい」なんてことは考えられないのですが、3000万円もするスーパーカーだと高温多湿に耐えられない性能でも、どうやら許されるようです(わざわざFやLが東アジアにクルマを持ってきてテストなんてしない)。・・・この時点でよっぽどの信者でない限りはスーパーカーの「虚構」に気がつきます。ほかにもまだまだ唖然とさせられることがあるんですが、それはまたの機会に。
そんなわけのわからないスーパーカーなんぞ「日本には無い」ものとしておきましょう。他にも「輸入車スポーツカー」はまだまだたくさんあります。その中でも知名度ナンバー1ブランドはなんといっても「ポルシェ」です。世界最速に異常な執着を見せるブランドなのでトップエンドのカスタマイズカーになると、FやLと同等の価格になりますけども、一般モデルでは日本価格でもかなり良心的な600万円台から販売されています。そのボトムを担っているモデルが「ボクスター」という2シーター・オープンタイプのスポーツカーです。
1989年にマツダから発売されたロードスターの大ヒットによって、世界中のスポーツメーカーから「2シーター・オープン(通称ロードスター)」のクルマが次々と発売されました。ボクスターもその時に誕生したの1台です。初代(986型)、二代目(987型)を経て、三代目(981型・現行)で一気にデザインが洗練されて日本でもスマッシュヒットを飛ばしました。日本市場で次々とMTシフトを装備したスポーツカーが次々と姿を消していたこともあって、スポーツカー大好き・絶対MT派の人々から注目を浴びたというのもあったようですが・・・同じ年(2012年)に86/BRZも大ヒット。
2016年の今見ても十分にカッコいい三代目(981型)ですが、ポルシェのブランド戦略としてあらたに車名を変更して「718ボクスター」となり、エンジンが大幅に変わりました。「718」とはかつて4気筒エンジンを搭載していたポルシェのシリーズだそうで、改めてボクスターを「4気筒」のクルマとして定義するために、なんともドイツメーカーらしい四角四面なネーミングをしてきました。
1980~90年代のポルシェは、今では想像できませんがアメリカで盛んに叩かれていて、完全に行き場を失った名門ブランドでした。そんなポルシェの存続を支えてきたのは日本のバブル景気で、これが無かったらポルシェはこの世から消滅していただろうと言われています。しかしバブルも1990年代半ばから急速に陰りを見せ始めていて、再び窮地に追い込まれていたポルシェは藁にも縋る想いで、手持ちのスポーツカー「911」のシャシーを切り詰めて急ごしらえでボクスターを作りました。エンジンブロックも911と共通のままで水平6気筒をそのまま使いました。
その後ボクスターのハードトップ版としてケイマンが登場し、これにより911を小型&軽量化したような設計のケイマンは、911と同じエンジンを使ったモデルでは上位車の911より速い!なんて事態が起こってきたようで、当然にケイマンを指名買いしてくるユーザーもボチボチ現れ始めたようです。911の半額ぐらいのケイマンの方が性能が良くて売れてしまうという事態にポルシェもいよいよ手直しに動きだしたわけです。
新たに発表された「718ボクスター/ボクスターS」では衝撃ともいえる4気筒ターボへの換装が断行されました。4気筒と6気筒ではエキゾーストの音質が大きく変わってくるので、より深い味わいを求めるユーザーは自然と6気筒ターボの「911」を納得して買うようになるだろうという目論見のようです。
それでも新たに4気筒化された「ボクスター/ボクスターS」がまたまたメチャクチャ速いらしいです。2.5L直4ターボを使う「ボクスターS」は、996世代の「911ターボ」と0-100km/hの加速タイムがほぼ同じです(4.2秒)。「911ターボ」というのは、911の中でも究極のバージョンとされていて、日産GT-Rが開発時にその性能を決めるターゲットとしたクルマです。4.2秒はRWD駆動のクルマにならば、まずは負けない素晴らしいタイムです(スーパーカー/競技用を除く)。例えばBMWのチューナーとして名高いアルピナのB6(FRモデル)やB4などと同じタイムです。850万円のボクスターSで1000万〜2200万円のアルピナと同等の加速性能というのは、ちょっとお買い得な気がします。
410ps〜600psで高性能な直6やV8のツインターボを使うBMWアルピナに対して、4気筒ターボ350psながらミッドシップによるトラクションの有利さと車体の軽さで対抗する718ボクスターS。なんだかそれぞれにクルマの個性が引き立ってきて、とてもいい感じになったんじゃないかと個人的には思います。4気筒ターボ化が発表された時には、ボクスター/ケイマンはもう終わった・・・なんて想いも少しはありましたけど、改めて4年が経過しても全く風化しないスタイルも素晴らしいですし、そもそもが日本車のアイディアから生まれたクルマだけあって、サイズも非常に日本の交通事情に合ってます。また予告されていた「値上げ」もボクスター(MT)で630万円から650万円へ20万円程度に収まっているので、性能のアップ分を含めれば妥当な線ではないかと思います。
直4でスポーツカーを仕立てるのは、日本メーカー各社も得意としてきたわけですが、これまでは一部のジャーナリストによって散々に貶されてきました。世界では伝説の名スポーツカーとして崇められているホンダの「インテグラtypeR」や「S2000」、あるいはスバル「インプレッサWRX STI」シリーズや三菱「ランエボ」シリーズなどへの評価が国内では案外低かったりします。気筒数を意識するのであれば静粛性を要求される高級セダンでやってくれ!と思うのですが、彼らはBMW、メルセデスの直4ターボ化には決して異議は唱えないんですよね。
スポーツカーだったらある程度は静粛性は犠牲になってでも、ミッドシップだろうがFRだろうが4気筒で高回転まで気持ちよく回せるエンジンを積んだらいいと思うんですよ。ボクスターSの2.5L4気筒ターボも7500rpmまできっちり回るようなので、欧州乗用車の4500rpmでデッドになるクソ・ターボとは前提が全く違うものになってると考えて良さそうです。
直4のFRセダンはとても許せない設計ですけど、直4のFRスポーツカーならば大いに歓迎したいです!ジャーナリストの節操の無い価値観なんて完全に無視して、ユーザーの良識に基づいて新たに4気筒ターボ化されたボクスターが正当な評価を受けて、さらに多くのユーザーに受け入れられるといいですね。ベースグレードの「ボクスター」は「水平対抗4気筒」の2Lターボで300psです。即座に日本の「あのクルマ」が浮かんでくるスペックです。
「ボクスターS」の2.5Lターボ(350ps)も・・・かつて「プアマンズ・ポルシェ」と呼ばれるクルマをアメリカでヒットさせた日本の「あのメーカー」が再びポルシェに挑むのにもちょうどいいスペックです。すでに脅威の圧縮比を達成している2.5Lターボが完成しているようなので、あとは「あのシャシー」に積むだけですね・・・。他にもフェアレディZの4気筒ターボ化や、86/BRZの高性能化にとっても良い指針になりそうです。「718ボクスター」は日本のユーザーと日本メーカーにとって良い刺激になってくれそうな予感がします。
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